2017年06月30日

東京都議会議員選挙:安倍政権低落の予兆となるか

来る7月2日投票の東京都議会議員選挙は、首都とはいえ一地方議会の議員の選挙にすぎない。にもかかわらず、どうも今回は国政選挙並みの注目を浴びているようだ。

理由の1つは、そのタイミング。先の国会で、「共謀罪」法案を委員会の中間報告を受けて(=委員会採決をすっ飛ばして)国会決議を行うという暴挙に出て、例によって強引に成立させてしまった。この「非道」は、ひとえに「早く成立させて国会を閉幕し、加計学園問題に関する追及から逃れようとしたのだ」との見方がもっぱらである(まあどう言い訳しようと、そうとしか思えないよな)。

その直後に行われるこの選挙。しかも国会閉幕後の各メディアの世論調査で安倍内閣の支持率が急落し、不支持率と支持率が逆転した。

(あわてて安倍首相が記者会見を行い、「加計学園問題については、今後も丁寧に説明する努力を積み重ねたい」などと口にした。これまでも特定秘密保護法や安保関連法など「問題法案」が成立するたびに同じことを言ってきたが、本当に丁寧に説明したことは一度としてないので、このコメントは全く信用できない

「安倍支持急落」を受けて行われるこの選挙、その結果は安倍政権への都民のYes/Noの表われであると見ていいだろう。特にこの首都東京は地方と比べて革新の気風が強く、「潮の流れの変化」がかなりビビッドに選挙結果に出る。これが今回の選挙が国政選挙並みに注目されているもう1つの理由で、その結果は安倍政権への国民の評価を先取りすると目されているのだろう。安倍晋三大嫌いの私としては、これまで「我が世の春」とやりたい放題をやってきた安倍政権に何らかの鉄槌が下され、盤石と思われてきた安倍政権が低落に向かうきっかけになってくれることを期待している。


実際、ここのところの「もり・かけ」問題と、それに対する安倍首相や菅官房長官をはじめとする閣僚たちのあまりにも誠意に欠ける国会答弁や会見に、国民の胸中には相当な怒りのマグマが噴き上げてきているようだ。これがボディーブローのようにじわじわと安倍政権を追い詰めることになるのではないか。いや、そうでなくてはいけない。「こんなメチャクチャな政治はもはや許せん」と心ある有権者は思っているだろうし、その行方は海外からも注目されているだろう。

(憲法9条改正についての安倍首相の国会答弁「自民党総裁としての考え方は読売新聞に詳しく書いてあるので、ぜひ熟読していただきたい」は、今のところ私的には「安倍語録・ダントツワースト1」だ)

都民、そして日本国民の「政治的良心」が問われる今回の選挙である。


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2017年05月21日

三権分立/機能しているアメリカ、機能していない日本

トランプ政権とロシアの不透明な関係を調査するため、アメリカ司法省はモラー元FBI(連邦調査局)長官を特別検察官に任命した。

この疑惑は、昨年の大統領選挙期間中から取り沙汰されていた(ロシアがクリントン陣営にサイバー攻撃を仕掛け、これにトランプ陣営の関係者が関わっていたとの疑い)。この捜査にあたっていたFBIに対し、トランプ大統領は突如コミー長官を解任した。これは捜査への政治的圧力との見方が強く、露骨な捜査妨害ではないかとトランプ政権への批判が高まっている。

この特別検察官任命のニュースを聞いた時、私のみならず多くの日本人はこう思っただろう。「アメリカは三権分立が、そして民主主義がちゃんと機能している国なんだな。」これ以前にも、トランプ大統領が出したかの悪名高い大統領令「中東など7か国出身者の入国を禁止する」を連邦地裁が差し止め、これを控訴裁が支持するという「慶事」があった。アメリカでは、行政のトップの決定に司法がこうして正しいブレーキをかける。そして行政府の1つである司法省でさえ、「大統領の暴挙許すまじ」と、継続捜査のために特別検察官を任命する。立法府である連邦議会でも、野党の民主党のみならず与党の共和党内からも、トランプ政権に対する批判が噴出しているようだ(もっとも、共和党からの批判は昨年の選挙中からあったが)。このバランスのすばらしさは、さすが「民主主義の総本山」である。この事件は、かつてのウォーターゲート事件をもじって「ロシアゲート事件」と呼ばれており、トランプ大統領の弾劾やら辞任やらが早くもささやかれているようだ。


三権のバランスがすばらしく取れているアメリカ。翻って、我が日本はどうか。「安倍一強時代」の今、安倍首相のやることに対して行政府からブレーキがかかることなど、全く期待できない状況だ。森友問題も昭恵夫人への喚問は実現せず、8億円減額処理の担当者たちは「適正な処置だった」と繰り返すのみ。新たに浮上した、加計学園(理事長は総理の友人)の学部新設について「総理の意向」が働いたという疑惑についても、総理本人はこれを全面否定。文科省の担当職員へのヒアリングもわずか半日で終了、「文書の存在は確認できなかった」とし、早々に調査を打ち切っての幕引きを図っている。ここにも、早くも今年の流行語大賞の本命と目される「忖度(そんたく)」が働いたのか(間違いなくそうだろうが)。

司法も、沖縄の米軍基地の移設問題で政府の意向通りの決定を下し、すでに工事が始まっている。下級審の決定によって稼働が差し止められていた原発も、上級審で覆されて稼働を再開している。下級審が下した画期的な判決や決定が上級審で政府寄りに覆されることは今に始まったことではないが、最近はその傾向がさらに顕著だ。

立法府である国会でも、安倍首相はじめ閣僚の全く誠意に欠ける答弁が目立つ。金田法相はほとんど自分の言葉で答弁ができず、ついには法務省の専門家を国会に呼んで代わりに答弁させる始末。最悪は安倍首相で、憲法改正についての答弁を求められ、「自民党総裁としての考えは読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひ熟読してほしい」と言い放った。憲法63条には、「閣僚は答弁のために出席を求められた時は出席しなければならない」と定められている。そして「出席したからには、答弁には誠実に対応せよ」というのがこの条文の趣旨だろう。しかるに国会での答弁において「新聞を読め」というのは、答弁への誠に不誠実な対応であり、憲法63条の趣旨に反している。つまり憲法を改正する前に、その憲法に違反することを首相はやってしまっているのだ。しかしこの傍若無人に対し、野党は有効な反撃ができていない。結局は数で押し切られ、ほとんどすべてが政権のなすがままに事が運んでしまうのだ。

そして本来は政府から独立した機関である日本銀行も、今や有名無実化したアベノミクスを後押しする、ただの「政府御用銀行」に成り下がっている。毎年発行される膨大な赤字国債を大量に買い取り、一向に改善されない財政赤字を下支えしている。


こう見てくると、「立法」「司法」「行政」の三権のうち、行政がやたらに膨張し、他の2つの「権」はこれに追随しているだけという状況になっている。行政の膨張は今に始まったことではないが、それが今の安倍政権では顕著になっている。「三権分立」が今の日本政治では機能せず、行政の膨張、いや暴走が続いているのだ。

第二次安倍政権の発足以来、つまり「安倍独裁政治」が始まって以来、安倍首相の暴走はとどまるところを知らない。特定秘密保護法、安保関連法、カジノ法、そして今度の共謀罪法案。国民の知る権利を奪い、自衛隊を危険な任務に就かせ、国民を公営ギャンブルに引き込み、そして国民を裏で監視する。この国を国民主権から国家主権へと造り変えようとしているのがはっきりわかる。そして国家主権にすることは、これすなわち行政府のトップである総理大臣自身の権力が極大になることを意味する。つまり安倍首相という人は、日本をよい国にするためではなく、国民の生活をよりよくするためではなく、己の権力を際限なく大きくするために一連の政策を進めているのだ。安倍晋三というただ一人の男の野望のために、日本国と日本国民が非常に危険な状況にどんどん流れて行っているのだ。これまでの安倍政権の歩みは、こう考えるとすべてのことがつながり、腑に落ちてくる。

そしてこの仕上げが、祖父の岸信介の念願であった憲法改正である。これによって「安倍晋三の野望」はほぼ完成し、我が愛すべき母国は「ポイント・オブ・ノーリターン」に行きついてしまう。ポスト安倍は誰になるのか知らないが、権力者というものは、手にした権力は維持したがり、振り回したがるものなのだ。だから後任が誰になっても、一度極大になった首相と政府の権力は、そのあとも猛威を振るい続けることになるだろう。まさに識者が言う「戦前回帰」、国家権力が暴走して戦争へ突き進んだ、あの時代への「時計の針の逆回し」である。これはちょっと極端な想像かもしれないが、そういうきな臭さがじわじわと広がっている恐怖感は確かに感じられる。


この「安倍の暴走」を招いた一番の原因は何か。安倍首相本人の、政治家としてそして人間としての資質の問題もあるだろう。周囲を固める閣僚らが「勝ち馬に乗れ」とばかりに乗っかってしまい、この傍若無人な首相への批判が党内から出ないという異常な状況のせいでもあるだろう。しかし私が思う最大の原因は、国民がこんな安倍政権をいまだに支持し、選挙で勝たせてしまったからだ。「3分の2」をいとも簡単に許し、数を与えてしまったがために、これまでにも増して暴走するようになってしまったのだ(共謀罪の審議はたったの30時間。安保関連法では100時間かけていたのだが)。

いくら痛烈に批判しても、選挙で勝たせてしまったら全く無意味なのだ。それはこれまでの幾度の選挙が物語っている。次の選挙はいつになるのかわからないが、日本国民の皆さん、また次の選挙でも与党に勝たせますか? そして「安倍一強」、いや「安倍一狂」状態をさらに加速させるんですか? あなたのお子さんやお孫さんの世代に、簡単には消えない禍根を残すことになりますが、それでいいんですか? 「仕事が忙しくて政治のことなんか見てるヒマない」とおっしゃるかもしれませんが、あなたの愛するご子孫が、とても危険で息苦しい状況に置かれるかもしないんですよ? それでいいんですか?


1億2千万の日本国民の皆さん、お忙しいでしょうけど、ここで一度足を止めてじっくり考えて下さい。今日本は、どんどん危ない道を進みつつあります。このすばらしい歴史ある国を、あの戦前の息苦しい時代に戻したいですか? その息苦しさ、すでにあちこちで始まっていることに気がついていますか? 


昭和戦前なんて、私にとっては「歴史」でしかなかった。あんな時代、司馬遼太郎さんが「鬼胎の時代」と呼んだ異常な時代が、またやってくるかもしれないなどとは夢にも思わなかった。ただ正直、いくら安倍首相が強権を振るったとしても、あそこまでひどいことにはならないだろうと思う。しかし、「あの時代」を思い起こさせるようなことがじわじわと進んでいるということ自体が大問題なのだ。

これだけははっきり言える。安倍晋三首相は、戦後の歴代首相の中でダントツで最悪の総理大臣だ。こんな強権、いや狂犬政治を許しては、日本国と日本国民はどんなとんでもないところへ連れて行かれるか知れたものではない。日本国民の皆さん、このこと、本気で考えて下さいね! 本気で肝に銘じて下さいね!

posted by デュークNave at 11:56| Comment(0) | 政治・時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月08日

浅田真央引退 〜繋げた伊藤みどりからの「トリプルアクセルの系譜」〜

浅田真央が自身のブログで現役引退を表明した4月10日、私は前の週から「あること」に取り組み始めたばかりだった。フィギュア大ファンで、このブログにも多くのフィギュア関連の記事を載せている私が、浅田の引退についてのブログ記事をまとめようと思ったら優に数日はかかる。「根性なし・根気なし」のノーコン人間を自認するこの私が、始めたばかりのことを横に置いてこんなことをしたらまた挫折するのは目に見えている。なので、書きたい気持ちをずっと抑えていた。また、浅田真央の引退についての記事は安易に書けるものではないので、じっくり頭の中でまとめてから書きたいという思いもあった。

その後2週間にわたり、この「あること」もしんどくなるような仕事が続いたのだが、何とか乗り切ってGWを迎えた。GWも「あること」でスケジュールはみっちりだったのだが、この最終盤にきてようやく少し余裕が出てきたので(というより、そればっかりで連休を過ごすのが嫌だったので)、1か月近く経ってようやく、「我が思いのたけ」をギュッと凝縮して、ここに記すことにする(まともに書いたら、どんどん長くなって収拾がつかなくなるだろうから)。


【 出場すれば書かずにはいられない、それが浅田真央 】

彼女の引退表明のあと、私は購読している毎日新聞の彼女に関する記事をすべてスクラップした。朝刊・夕刊・日曜版あわせ、実に19。スポーツ面はもちろん、1面・社会面・社説、「記者の目」、さらには日曜版の、普段は芸能関係の記事が多いコラムでも扱っていた。浅田真央という選手が、単なるアスリートを超えた「国民的アイドル」だったことを示す、この記事の多さと幅の広さである。

世間的にはこうだが、自分自身の彼女への関心度はどうだったのか。それを確かめるべく、このブログ内で「浅田真央」で検索してみた。その数、実に46。カテゴリー「フィギュアスケート」の記事が総数61、2度のオリンピック(2010バンクーバー・2014ソチ)の記事はカテゴリー「五輪・世界大会」に入っているので、これを加えて65。フィギュア関連の記事の70%超で彼女を取り上げていることになるのだ。というか、浅田真央が出場した試合で彼女についてコメントしないことなどありえないので、残り30%は彼女が不出場だったGPシリーズなどなのだろう。つまり出場すれば、記事にした確率100%。いつどんな大会に出場しても、常にセンターに置かれ、注目を一身に浴び、書き手は書かずにはいられない。浅田真央とはそういう選手だったのだ。


【 つないだ伊藤みどりからの「バトン」:応援せずにはいられない 】

GPファイナル4回優勝、世界選手権3回優勝、バンクーバー五輪銀メダル。しかしこれは、彼女の戦績の「上澄み」を記したにすぎない。浅田真央という選手の大きな功績の1つは、フィギュアスケートという魅力あふれる世界を、日本全土に広げ、浸透させたことにある。老若男女を問わず愛され、誰もが「真央ちゃん」と呼んで応援したくなる、その愛くるしいルックスと、スケートへの純粋で真摯な姿勢。彼女の出現によって、フィギュアスケートの日本における認知度は飛躍的に高まった。

しかし私個人としては、「自分をフィギュアスケートの世界にいざなってくれた大恩人」伊藤みどりから始まる「トリプルアクセルの系譜」を、浅田真央が引き継いでくれたことに最大の功績と意義を見る。伊藤みどり本人が、毎日新聞紙上で「トリプルアクセルに挑戦し続けてくれてありがとう」とコメントし、Number誌上でも「真央ちゃん、引退おめでとう」の特別メッセージを贈っているように、浅田真央は伊藤みどりからの「トリプルアクセルのバトン」を受け取り、最後までそのバトンを持って走り続けた。1988年のカルガリー五輪での伊藤みどりの演技に魅了されて以来のフィギュアファンである私にとって、その伊藤みどりの系譜を継ぐ浅田真央は、応援せずにはいられない選手だったのだ。


デビューが早かったので、この世界で21年過ごしてもまだ26歳。これからの人生の方がはるかに長い。「人間・浅田真央」がどんな生き様を見せてくれるのか、これからどんなことに挑戦してくれるのか。長年のファンとして、じっくり温かく見守ろう。

(とりあえずはフィギュアの試合で「解説者・浅田真央」のコメントが聞きたい。橋大輔、織田信成、鈴木明子といった同時代を戦った選手たちは、みなすばらしい解説をしてくれている。世界のヒロイン・浅田真央の解説は、さぞ聞く者の心に染みるものになるに違いない。楽しみだ


P.S. 浅田真央の引退と被ってしまって目立たなかったが、村上佳菜子も引退を表明した。羽生結弦と同世代で、同じ2010-11シーズンにシニアデビュー。いきなりGPシリーズ優勝・GPファイナル表彰台を遂げたシンデレラガールだった。その後も着実に成長し、その弾ける笑顔でファンにアピールしてきた。しかしここ数年はジャンプに苦しんで伸び悩み、若手の追い上げを受けていた。昨年末の全日本選手権のFSで渾身の演技を見せ、演技終了後、感極まってリンクに伏してしまった。今思えばあの時、「これが現役最後の演技」と覚悟していたのだろう。

同期の羽生結弦が世界王者になったのと比べると、その才能を十分には発揮できずに終わった感があり、ファンの一人としては残念だ。しかしその情感あふれるしっとりとした演技は、観る者に訴えた。非常にファンの多い選手であり(リンクに現れた時の歓声の大きさがそれを物語る)、記録よりも記憶に残る選手だ。浅田真央と同様、彼女の人生もこれからまだまだ長い。何より、その「弾ける笑顔」をいつまでも失わずにいてほしいものだ。

(個人的には、2014-15シーズンのSP「『オペラ座の怪人』から“Think of me”」が、彼女の明るくまぶしい雰囲気にマッチしていてすばらしかった。あれが我が「村上佳菜子・ベスト演技」だな)

posted by デュークNave at 12:08| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月02日

新しい地平に立ったチャンピオンたち:男子シングルは究極の日本勢1−2フィニッシュ 〜フィギュアスケート世界選手権2017〜

「すごい」としか言いようがない。今季のフィギュアスケートのクライマックス・世界選手権は、史上空前のハイレベルな戦い。女子シングルでは若きディフェンディングチャンピオンが、またも完璧な滑りで世界最高得点をマークして連覇達成。そして男子シングルは、五輪チャンピオンがFSで空前の高得点を叩き出して3年ぶりに王座奪還、さらに日本の誇る「2トップ」がダントツの1−2フィニッシュを決めた。


【 女子シングル 】

大会直前、日本のエース・宮原知子がケガによる欠場を表明。急きょ本郷理華が出場することになった。来年の平昌五輪の出場枠(上位2選手の合計順位が13位以内なら3枠、14〜28位なら2枠)がかかる世界選手権で、GPファイナル2位・全日本選手権3連覇中のエース宮原の欠場は非常に痛かった。急な出場になった本郷、初出場の樋口新葉三原舞依にかかったプレッシャーは大きかっただろう。

本郷と樋口は、シーズン後半のジャンプの不安定さをこの大舞台でも克服できなかった。本郷はFSで転倒1度に加え、3つのジャンプでアンダーローテーション判定を受け、技術点が伸びなかった。樋口も転倒1度にダウングレードや着氷の乱れがあり、得意のジャンプで得点が伸びなかった。ただ演技構成点では4項目で8点台を得ており、表現力の成長は示すことができた。

この中で会心の演技を見せたのが三原だ。SPでは最終盤の3フリップでまさかの転倒があり15位に沈んだが、FSではジャンプを次々にきれいに決め、すべての要素でGOE加点を得る完璧な演技。5コンポーネンツでも4項目で8点台の高評価。FSでは4位に入り、総合でも5位にジャンプアップ。初出場の大舞台で見事入賞を果たした。

しかしこの結果、上位2選手(三原・樋口)の順位合計は16(5+11)となり、日本女子シングルの平昌五輪への出場枠は2にとどまった。宮原の欠場がやはり響いた。年々レベルが上がり、層が厚くなっている日本女子シングル。この2枠の巡っての来季の戦いは熾烈になりそうだ。


我が目を疑ったのが、SP4位のアンナ・ポゴリラヤ。冒頭の3ルッツがシングルに抜けたのがつまずきの始まりで、ジャンプで3度の転倒(計4点の減点)。気落ちした最後のスピンもレベル2にとどまり、FSではまさかの15位。総合でも13位に沈んだ。演技終了後、あまりの出来にリンクに泣き伏してしまった。

昨季の世界選手権で3位に入り、今季のGPシリーズ(連続優勝)やファイナル(3位)でも持ち味を生かしたすばらしい演技を見せていた。「これは一皮むけたな。新しい境地に入ったかな」と、ファンの1人として心から喜んでいた。それだけに、このクライマックスでの大ブレーキは信じられない。でもそのしっとりとした雰囲気が醸し出す、艶のある演技は魅力たっぷりだ。まだ18歳、来季は熾烈なロシア国内の争いを勝ち抜いて、五輪の舞台でまたあでやかな演技を見せてほしい。


表彰台の両サイドを占めたのが、今大会大躍進のカナダ勢。3位のガブリエル・デールマン、2位のケイトリン・オズモンドは、ともにスピードと躍動感あふれる演技を得意とする。その勢いそのままに、SP・FSともにほとんどノーミス。演技構成点でも8点台後半から9点台の高得点で、技術性・芸術性を併せ持つ総合力の高さを見せた。ともにパーソナルベストを更新し、見事に初の世界選手権の表彰台に昇った。この結果、カナダは五輪出場枠「3」を確保。これはロシアのみならずカナダ勢も、日本の強力なライバルになりそうだ。


このハイレベルな戦いの中、まったく揺るがない演技を見せたのが、シニアデビューの昨季GPファイナル・世界選手権2冠、今季もファイナル連覇の「盤石の女王」、エフゲニア・メドベージェワだった。本当にこの人の演技は、とても人間業、しかもまだティーネージャーの成せる業とは思えない。非常にハイレベルな演技構成にもかかわらず、ほとんどミスがなく、しかもGOE加点を得られる要素をそちこちに散りばめている。まさに「女王の勝利の方程式」であり、これを完璧にこなした。FS154.40、トータル233.41はともに世界最高得点を更新。圧巻の連覇を果たした。


来年の五輪、このメドベージェワの「盤石の牙城」を崩せる選手はいるのか。正直、昨季・今季のこのあまりの盤石ぶりを見ると、「大きなミスをしない限り、彼女の五輪女王の座はほぼ決定じゃないのか?」と思ってしまう。彼女を倒すには、限界に挑むようなハイレベルの演技構成を完璧にこなして初めて勝負になるのだ。しかしこれはハイリスクハイリターン、至難の業だ。


【 男子シングル 】

中継のテレビ局が「真・4回転時代」と銘打った今大会。だがこの4回転、選手の取り組み方は大きく2つに分かれるようだ。

1つは、羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェン、ボーヤン・ジンに代表される、4回転の種類と回数を増やし、よりハイレベルなジャンプ構成を追求する選手たち(高目追求派)。もう1つは、ハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャン、ジェイソン・ブラウンに代表される、4回転は2種類程度に抑え、ジャンプの精度を上げ、演技構成を熟成させて勝負する選手たち(熟成派)だ。

これは過去にもあった構図だ。2010年のバンクーバー五輪で、4回転を跳ばなかった「熟成派」イバン・ライサチェクが優勝し、4回転を跳んだ「高目追求派」エフゲニー・プルシェンコは銀に甘んじた。しかしその後、4回転を複数回跳ぶチャンが世界選手権を3連覇し、他の選手たちは「打倒・チャン」のために「高目追求」を余儀なくされた。その流れの中で羽生が2014年のソチ五輪を制し、その後も宇野ら気鋭の若手の台頭で「高目追求派」が有利に推移していた。しかし、世界選手権では「熟成派」のフェルナンデスが2015・2016年を連覇。「高目追求」はリスクが高いので、彼らにミスが出て「熟成派」が完璧な演技をすると、その円熟の技が勝ってしまうのだ。

昨年のGPファイナルでは、フェルナンデスとチャンがジャンプで失敗し、「高目追求派」の羽生・チェン・宇野が表彰台を占めた。今季のクライマックスではどちらに軍配が上がるのかが注目された。


SPでは、フェルナンデスの熟練の技が冴え、SBを更新してトップに立つ。同じくSBを更新して2度目の100点台を獲得した宇野が2位につける。3位にはこれも100点台に載せたチャンが続く。注目の羽生は4サルコウで転倒し、5位発進。4位にボーヤン・ジン、6位にネイサン・チェンが入り、FSの最終組はこの6人となった。「高目追求派」4人・「熟成派」2人。現在の男子シングルの勢力図そのままのメンバーである。


さて、その結果は! 今年は「高目追求派」の完勝に終わった。「熟成派」の2人はともにジャンプにミスが出て技術点が伸びなかった。「熟成派」はもともとのジャンプ構成の得点が低いので、ミスをしては「高目追求派」に太刀打ちできない。「完璧に演じなければならない」というプレッシャーを常に背負うのが「熟成派」の宿命なのだ。GPファイナル同様、2人の世界王者がこのプレッシャーに負けた。

そして表彰台を占めたのが、「高目追求派」の3人。銅のボーヤン・ジンは、わずかなポイント差でGPファイナル進出を逃した悔しさを、この大舞台にぶつけた。SP・FSを通じてノーミス、すべての要素でGOE加点を得る会心の演技。5コンポーネンツでもほぼ8点台を獲得し、総合力の高さを見せつけた。2年連続の銅・表彰台。彼のキレのいいジャンプ(特に4ルッツの高さは圧巻!)のファンである私にとっても、彼の復活は非常にうれしい。


昨季の世界選手権ではFSの演技後半で尻すぼみし、7位に終わった宇野昌磨。その悔しさを抱き続けて挑んだ今季、GPシリーズ優勝・2位、ファイナル3位、全日本初優勝と着実に結果を積み上げてきた。その集大成と臨んだ今大会で、最高の結果を出した。

冒頭、今季後半から取り組んだ4ループを見事に決める。シニアデビュー以来、この吸収の速さが彼のすばらしさだ。続く「ギネスホルダー」4フリップもきれいに決める。次の3ルッツで着氷が乱れ、エラーエッジになったのが唯一のミスで、あとはほぼプラス評価。特に後半の3アクセル−3トウで+3.00、3アクセル−1ループ−3フリップで+2.57と、疲れが出る演技後半のジャンプで大きな加点を得ているのがすごい。演技構成点でもすべて9点台を得て、「高目追求」のみならず「熟成」も併せ持ったすばらしい作品に仕上がった。FSで初の200点越え(214.45)、トータルでも初めて300点を越え(319.31)、2度目の世界選手権で堂々の2位表彰台をゲット。見事に去年のリベンジを果たした。


しかし日本のエース、いや世界のエースはもっとすごかった。SP5位、トップのフェルナンデスとは10点以上の差。完璧に演じなければ王者奪還は成らない状況の中で、それをやってのけるすごさ。「絶対王者」を自認する羽生結弦の底力を見た。

まさに「完璧」を絵に描いたような演技だった。先日の大相撲春場所での横綱稀勢の里の逆転優勝の時も思ったが、「どうしてこんなことができるのか」。すべての演技要素が流れるように美しく進み、観る者はただただ酔いしれるのみ。すべての要素で加点を得ているのはもちろんだが、圧巻なのは、3つの4ジャンプ(単独)と3つのコンビネーションジャンプですべて2点以上の大きな加点を得ていること。加えて、5コンポーネンツはすべて9点台、4項目が9点台の後半である。昨季のGPファイナル、「SEIMEI」で世界最高得点をマークした演技を彷彿とさせるが、今回は10点アヘッドを逆転しなければならないという逆境の中にあったので、「気迫」という要素がかなり色濃く加わっていたのではないか。まさに底力である。

FSは223.20。自らが持つ世界最高得点を更新し、トータル321.59。3年ぶりに世界王者の座を奪還した。そしてこの瞬間、日本勢圧巻の1−2フィニッシュが成り、平昌五輪出場枠「3」が確定した。これ以上ない最高のフィニッシュだった。


この男子シングルの結果を見て思うこと:「高目追求派」がミスせずにこなしたら、「成熟派」は勝ち目がないということだ。「高目追求派」はもともとの演技構成レベルが高いので、多少失敗しても勝負になる。しかし「成熟派」はノーミスでこなして初めて勝負になるのであって、今回のようにミスが出ては「高目追求派」に大差をつけられてしまう。

来季はいよいよ五輪シーズン、この2つの「流派」の趨勢はどうなるか。「高目追求派」はこのままを維持するか、さらに4ジャンプのレパートリーを増やすかになるだろう。一方「成熟派」は、勝つために「高目追求派」に宗旨替えするのか、そのままさらなる熟成に努めるのか。その動きを見守りたい。


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2017年03月27日

3月26日は「ミラクル記念日」 in Sports 〜大相撲、そしてセンバツ〜

こんな結末をいったい誰が予想できただろうか。「勝ってくれ」とはもちろん誰もが思っていただろうが、逆転優勝するには、手負いの体で今場所絶好調の相手を2番連続で倒さねばならなかったのだ。


【 連勝ストップ、そしてケガ:休場必至と思われたが 】

大相撲春場所、新横綱・稀勢の里は12日目まではほぼ盤石の取り口で全勝を続けていたが、13日目に先輩横綱・日馬富士の鋭い押しに圧倒され、土俵下に落ちた。しかもその際に左肩と胸を強打し、救急車で搬送された。休場は濃厚かと思われたが、稀勢の里は強行出場を決める。しかし14日目の横綱鶴竜戦は、立ち合い全く力が入らずにもろ差しを許し、あっけなく土俵を割る。一方1敗で追っていた大関照ノ富士が13勝目を挙げ、優勝争いの単独トップに立った。稀勢の里が逆転優勝するには、千秋楽の本割での直接対決と優勝決定戦とで照ノ富士に連勝しなければならなくなったのだ。しかし14日目の取り口を見ると、「連勝どころか、本割でもまともに相撲が取れないのではないか。照ノ富士があっさり勝って優勝を決めるだろう」と誰もが思っていたに違いない。


【 どうしてこんなことができるのか:2度起きた奇跡 】

そして結び前の本割。向こう正面解説の舞の海秀平さんが「稀勢の里が勝つには、やや右に変わり気味に立って右上手を取り、右から投げを打って決めるしかない」と語った。確かに左がほとんど使えない以上、右からの攻めに活路を見出すしかなさそうだった。しかし立ち合いでその通りに右に変わり気味に立ったが待ったがかかり、手口を見られてしまった。さてどうするのか。仕切り直しの立ち合い、今度は左に変わって差し手争い。昨日よりは左腕が使えているようだが、照ノ富士に右前みつを許す苦しい体勢になる。ここで照ノ富士が寄って出るが、稀勢の里は左下手を抜き、体を開きながら左で頭を押さえ、右からの突き落とし。これが見事に決まり、照ノ富士は土俵に這った。

奇跡が起こった。ほとんどまともな相撲にならないと思われたのが、苦しいながらもどうにか組み止め、足の動きと体のバランスで照ノ富士のパワーをかわした。どうしてこんなことができるのか。とにかく、これで優勝決定戦である。


その決定戦。今度はどう取るのか。立ち合い、稀勢の里はもろ手突きに出たが、照ノ富士に入りこまれてもろ差しを許す。一気に出る照ノ富士。しかし稀勢の里はまたも体を開きながら、右からの小手投げ。照ノ富士の体がわずかに先に土俵に落ちた。

(この瞬間、支度部屋で観ていた弟弟子の関脇高安(今場所12勝3敗の好成績)は、大粒の涙を流して号泣した。この2人の関係、かつての千代の富士と北勝海(現・八角理事長)に似ている)

またも奇跡が起こった。またも苦しい体勢からの逆転勝ち。そしてまたも、足の動きと体のバランスで照ノ富士のパワーをかわした。ほとんどあり得ないと思われた、本割と決定戦での連勝。それを目の当たりにして、私はまた思った。「どうしてこんなことができるのか」


【 ”ZONE”? 本人が感じた「何か見えない力」 】

この夜の番組で稀勢の里は「足は元気なので、足で何とかしようと思った」と語った。言葉通り、2番とも足の動きで手にした白星だった。しかしこの連続の奇跡は、それだけで説明できるものではない。本人が「何か見えない力を感じた」と語ったように、いわゆる“ZONE”に入っていたのか。あるいは稀勢の里の逆転優勝を願うファンの思いが、空気になって背中を押したのか。とにもかくにも大相撲春場所は、稀勢の里本人にとってもファンにとっても、想像をはるかに超えたドラマティックな形で幕を閉じた。


【 甲子園でもミラクル:2試合連続引き分け再試合 】

大阪で起きたこの超弩級のミラクル。しかしお隣の兵庫県・甲子園球場でも、史上初のミラクルが起きていた。第89回選抜高校野球第7日、2回戦。第2試合の福岡大大濠−滋賀学園戦と、第3試合の健大高崎−福井工大福井戦が、ともに延長15回・引き分け再試合になったのだ。1大会で2試合、しかも連続での引き分け再試合は、春夏通じて史上初である。

第2試合は緊迫した投手戦の末、1−1の引き分け。第3試合は、9回までは点の取り合いで7−7。しかし延長戦に入ってからは、互いにチャンスを作るがピッチャーの踏ん張りで得点を許さず、そのまま引き分けとなった。


この第3試合の延長戦は大相撲中継と同時進行で進んでいたため、私は両方の観戦で大忙しだった。稀勢の里−照ノ富士戦を見逃すわけにはいかないので、本割と優勝決定戦の時とその前後はNHKGに合わせ、それ以外はEテレにチャンネルを回して観ていた。おかげで本割の時だったか決定戦だったかは「記憶にない」が(最近の流行り言葉)、14回裏の健大高崎の1死満塁のサヨナラチャンスを観られなかったのが残念だった。「機動破壊」ファンの私としては、このチャンスで念力を込めて応援したかったのだが・・・。

(余談だが、私のこの「記憶にない」は何の罪もないが、安倍昭恵さん、石原慎太郎さん、稲田防衛大臣さん、あなた方の「記憶にない」はそれじゃ済みませんよ!)


この日関西の地で起こった2つの奇跡。3月26日は、スポーツの世界での「ミラクル記念日」として、我が記憶にとどめておこう。

posted by デュークNave at 03:37| Comment(0) | スポーツ-全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする