2017年11月28日

男子は上位が順当にファイナル進出/女子は期待と想像をはるかに超える好結果に 〜フィギュアGPシリーズ最終戦・スケートアメリカ〜

ついに迎えたGPシリーズ最終戦。男子は4つ、女子はわずか1つの残されたファイナルへの椅子をめぐって、厳しい戦いが繰り広げられた。


【 男子 】

ロシア大会優勝のネイサン・チェン、NHK杯優勝のセルゲイ・ボロノフは4位以上、NHK杯2位のアダム・リッポンと中国杯2位のボーヤン・ジンは表彰台でファイナル決定、というのが大会前の状況だった。

結果的には、このポイント上位4人が順当にファイナルの椅子を占めた。ボーヤン・ジンは、故障明けなのかコンディションの影響なのか、SP・FSともトレードマークの4ルッツを跳ばず、その得意のジャンプにも乱れが見えた。総合4位にとどまったが、シリーズ2戦の総得点できわどくファイナル進出を決めた。「元祖・驚異の4ジャンパー」の切れ味鋭いジャンプが影をひそめてしまったこの試合だが、ファイナルの大舞台までの2週間、どう立て直してくるか。

SP3位のセルゲイ・ボロノフはFS、NHK杯ほど完璧ではなかったものの、堅実な演技で表彰台を確保した。冒頭、4トウループ・3トウループのコンビネーションをきれいに決める。その後のジャンプに若干の乱れは出たが、最後までスピードの落ちない気迫のこもった演技だった。3位表彰台を確保し、3年ぶり2度目のファイナル進出を手にした。30歳、2006-7シーズンからGPシリーズに参戦しているベテラン。ファイナルでまたその円熟の技を見せてほしい。

アダム・リッポンは地元アメリカの大声援を受け、またも「魅せた」。FS、NHK杯で鮮やかに決めた冒頭の4ルッツで着氷が乱れ、右肩を痛めたようなしぐさを見せた。しかしかまわず演技を続け、続く3フリップ−3ループの高難度コンビネーションを流麗に決める。この後も、4ジャンプはないもののその完成度の高さ、流れるような華麗な演技で観る者を惹きつける。解説の佐野稔さんが絶賛したポジションのきれいなレイバックスピンで演技を締め、場内は再び大歓声。SPの順位を守って2位をゲット、見事に2年連続のファイナル進出を決めた。

ネイサン・チェンは、SPで世界歴代4位の高得点(PB)を叩き出し、2位以下に15点以上の大差をつけた。それで油断したわけではないだろうが、得意の4ジャンプに乱れが出た。冒頭の4ルッツ−3トウループの超高難度コンビネーションは目にも鮮やかに決めたが、4フリップで手をつき、4サルコウは2回転に抜ける。しかし演技後半、4ルッツをまたもやきれいに決めて大きな得点を得る。しかしこの後の4ジャンプでまた着氷の乱れや転倒があり、演技終了後は顔をしかめた。だが実況のアナウンサーが語っていたように「きわめて挑戦的なプログラム」で、技術点の基礎点が他を圧して高く、加えて演技構成点でも高い評価を得るため、多少のミスが出ても他の選手を下回ることはない。貫禄の優勝で堂々のファイナル進出。昨季からさらに大きく成長した感があるネイサン・チェン、これはファイナルや来る平昌五輪では、羽生結弦や宇野昌磨の強力なライバルになりそうだ。


【 女子 】

最終戦を控えて、残る1枠を争うのは3人。樋口新葉が3位・2位で24ポイント。スケートカナダ3位のアシュリー・ワグナー、NHK杯3位のポリーナ・ツルスカヤは、ともに優勝すればファイナル確定。2位なら樋口との総得点の争いになる。…しかし結果は、思いもよらぬものになった。


SPでジャンプにミスが連発し、8位と出遅れたツルスカヤ。FSでは全体的にまとまった演技だったが、ジャンプの回転不足などで思ったほど得点が伸びなかった。この時点ではトップに立ったが、優勝するにはどうだ?というレベルだった。すると次走、ブラディー・テネル(アメリカ)が、GPシリーズデビュー戦で会心の演技を見せてツルスカヤを上回った。これによりツルスカヤは最高でも2位となり、2戦の総合得点で樋口を下回るため、ファイナル争いから脱落した。

残るアシュリー・ワグナーは、思わぬアクシデントに見舞われた。前半の3つのジャンプを無難にこなした時は順調に見えたのだが、突然演技を中断してしまう。実は1週間前から右足首の感染症にかかっており、それが完治しないままの出場になっていたのだ。歴戦の強豪がこんな形でリタイアするのはとても残念だ。彼女のダイナミックな演技、ぜひ五輪の舞台で見たい。回復と復活を祈るばかりだ。

しかし、これで樋口新葉のファイナル初出場が決まった。あとはこの大会の優勝、表彰台の行方を見つめるだけになったのだが…、ここからが我が期待と想像をはるかに超える展開になった。


もともとSPを宮原知子坂本花織がワンツーで終えたこと自体、うれしい驚きだった。宮原は長いブランク明け2戦目、坂本はシニアデビュー2戦目。まだ上位を占めるのは難しいかなと思っていたのだ。そしてFSでは、この我が驚きをさらに大きく膨らませるサプライズが待っていた。

坂本は、間違いなくキャリア最高の演技。冒頭からジャンプをことごとく決め、着氷も非常に滑らか。映画「アメリ」を独特の振付で表現し、自分の世界を創り上げていた。後半最大の得点源、2アクセル−3トウループ−2トウループのコンビネーションも完璧に決め、ノーミスでフィニッシュ。両手を挙げて大きく飛び跳ね、喜びを爆発させた。得点は141.19、PBを10点以上更新した。トータルでは公式戦で初めて200点を突破、さらに大きく超える210.59。この時点で文句なしのトップになった。続くデールマンが不本意な演技に終わったため、最終滑走の宮原を残し、日本勢2年ぶりのGPシリーズ優勝が決まった。


そして宮原。2週間前のNHK杯ではFSでジャンプにミスがいくつか出て、「ミス・パーフェクト」復活への道はまだまだ遠いな、と思わせた。それからわずか2週間、どこまで持ち直してきたか注目していたのだが、…驚いた。

演技冒頭から、安定したジャンプを次々に決める。実況のアナウンサーが「2週間前はうまくいかなかったジャンプを、ことごとく成功させています!」と驚いていたが、観る側も驚きの連続だった。「NHK杯であれだけ乱れていたジャンプを、どうしてわずか2週間後にこんなにきれいに決められるんだ?」1つジャンプを決めるたびに驚きが増幅されていく。そしてほぼノーミスでフィニッシュ!「ミス・パーフェクト」復活の瞬間だった。日本勢、そして自身2年ぶりのGPシリーズ優勝。これは平昌五輪出場への強烈なアピール、そして足掛かりになった。

このサプライズな好結果もさることながら、ケガによる大きなブランクが、彼女をより強く大きくした感がある。リハビリ中に他の競技の選手たちと交流し、視野が広まったとのこと(卓球の石川佳純と食事に行くほどの仲になった)。確かに彼女の演技からも、その雰囲気からも、今まで以上の落ち着きや精神的なゆとりが感じられる(キスアンドクライで手でハートマークを作るなど、「まじめ一徹」だった彼女にはなかった柔らかさだ)「大きくなったな、宮原知子!」日本女子の第一人者が還ってきた、これは素直にうれしい。


大会前、ファイナルへの残り1枠をめぐる状況を目にした時、私はこう思っていた。

「ツルスカヤかワグナーが優勝したら樋口のファイナルはなしか。となると宮原と坂本に頑張ってもらうしかないな。この二人がワンツーフィニッシュして樋口がファイナル出場、なんてことになれば最高なんだけどな。でもちょっと無理だろうな。坂本はまだシリーズ2戦目だし、宮原はまだ完全には復活できないだろうし。どっちかが表彰台に上がるかどうか、ってところだろうな」

ところが結果は、「最高なんだけどちょっと無理だろう」と思っていたことが実現してしまったのだ! 驚きとともに、深い感銘を味わった私でありました。

来るGPファイナル、そして暮れの全日本選手権が本当に楽しみになってきた。それにしても、この宮原・坂本の躍進を目にすると、日本女子の五輪出場枠が2つしかないのが、今さらながら恨めしい。何とかならんのか! …ならんよなあ。

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2017年11月20日

宇野昌磨、執念のファイナル進出/ロシアティーネージャーがまたもや席捲 〜フィギュアGPシリーズ第5戦・フランス杯〜

GPシリーズもいよいよ大詰め。4戦を終えて男子はミハイル・コリヤダ、女子はエフゲニア・メドベージェワ、カロリーナ・コストナーがファイナル進出を決めている。今大会も、順位によってファイナル進出が決まる選手が男女ともいる。さて、結末はいかに?


【 女子 】

ポイントランキング上位の3選手が順当に表彰台を占め、順当にファイナル進出を決めた。しかしその演技内容は、SP・FSともミスが散見し、やや低調だった。

ケイトリン・オズモンドはSPは完璧だったが、FSでは演技後半ジャンプにミスが目立ち、4位にとどまった。しかしSPの貯金が効いて表彰台は確保し、2年連続のファイナル進出を決めた。得意の豪快なジャンプがファイナルでも炸裂するか。

アリーナ・ザギトワは中国杯と同様、SPでジャンプにミスが出てまさかの5位発進。しかしその遅れをFSで取り戻すのも中国杯と同じ展開で、7つのジャンプをすべて後半に持ってくるタフなプログラムを、またもや完璧にこなした。中国杯を上回るPBをマークし、またもや逆転優勝。堂々の初のファイナルの椅子を手にした。FSでのこの爆発力、とてもシニアデビューとは思えない。ファイナルの大舞台では、2戦ともミスが出たSPをどう仕上げるかが課題になるだろう。

ミスが出た上位2選手を尻目に、SP・FSとも抜群の安定感を見せたのがマリア・ソツコワだった。持ち前の優雅で柔らかな演技を今回もふんだんに見せ、華麗な舞いを披露した。この人はザギトワのような爆発力はないが、確実に上位を占める堅実さがあり、観ていて安心できる。ここでも総合2位を確保し、昨季に続いてのファイナルの座をつかんだ。


三原舞依はまたも惜しいところで表彰台を逃した。SPのコンビネーションジャンプで、壁に近づきすぎてセカンドジャンプが乱れ、4位と出遅れる。FSではすべてのジャンプをきれいに決め、ほぼ完璧な演技を披露したが、上位3選手の牙城を崩すには至らなかった。あのSPでのジャンプのまさかのミスがなければ…と悔やまれる。この悔しさを、暮れの全日本に思い切りぶつけてほしい。

白岩優奈はSPをノーミスでこなし、PBをマークして3位発進。FSでもきらびやかな笑顔を見せながら、のびのびとした演技を披露した。最後の3ループで転倒したのが惜しかったが、ここでもPBを更新し、総合は6位。完璧ではなかったものの、本人としては今大会はかなり満足度が高かったのではないだろうか。暮れの全日本で、また華のある演技を見せてほしいものだ。


この結果、ファイナルへの椅子は5つが埋まり、残るは1つ。24ポイントで待つ樋口新葉の初のファイナル進出なるかは、最終戦・スケートアメリカの結果次第だ。


【 男子 】

今大会の男子シングルは、1人の選手以外語る気がしない。宇野昌磨! 第2戦・スケートカナダで優勝後にインフルエンザを発症し、練習を再開したのは1週間前。表彰台を確保できれば3年連続のファイナル進出が決まる今大会、コンディションが万全なら十分射程内なのだが、体力不足・練習不足で、果たしてどこまでできるのか。


SP、冒頭の4フリップで転倒。飛び上がった瞬間、軸が傾いていた。「やはりこれは無理なのか」と観ていたが、後半の4トウループ・3トウループを見事に決める。これはもう「根性! 気合い!」としか言いようがない。続く3アクセルもやや揺らぎながらこらえる。PBには遠く及ばないものの90点台は確保し、フェルナンデスに続く2位につけた。

そしてFS。フェルナンデスが優勝すれば4位でもファイナル決定という状況だったが、今のコンディションでは4分半の長丁場、ジャンプがガタガタになってもおかしくはない。実際直前の6分間練習でも、4ループは跳ばず、4フリップはことごとく抜けていた。観る側も、恐らくは本人も不安なまま、演技に入った。

冒頭、練習では避けていた4ループに挑み、見事に降りる。続くイーグルからの3アクセルは、好調時と変わらない、流れるような着氷。3ルッツは着氷が乱れたが、大きなミスはないまま演技は後半へ。大きな山場・4フリップを、両足着氷ながら降りる。これも「気合い!」である。しかしこの後4トウループで転倒、続く4トウはこらえるが、宇野のトレードマークといえる3アクセル−1ループ−3フリップ(サードジャンプをサルコウではなくフリップにするのが宇野オリジナル)で転倒。しかし最後のジャンプ・3サルコウ−2トウを決め、コレオシークエンス〜コンビネーションスピンと、最後までスピードが落ちなかった。これまた「根性!」である。「今は自分が一番の敵」と語っていた宇野、守りに入らずに攻め続けた。FSでは1位、総合ではしっかり2位を守り、ファイナル進出を手にした。

試合後のインタビューで「これ以上につらい試合は、今後一切ないかなと思います。『この辛さがあったから今がある』と、今シーズンの後半に言える試合にできたらいいなと思います」と語った宇野。まさに万感の思いがこもった言葉だろう。最悪の状態でも踏みとどまることができる精神力と、それを支える技術力。大事な五輪シーズンにこういう経験ができたことは、彼をさらに大きく成長させるのではないか。この意味で今回のこの苦境は、まさに「禍転じて福」。それを世界に知らしめる大舞台が、間近に迫っている。


男子は第5戦を終えて、まだファイナルへの椅子が4つも残っている。大本命・羽生結弦がリタイアし、常連のフェルナンデスやパトリック・チャンがほぼ無理という状況だからだ。最終戦・スケートアメリカではネイサン・チェン、ボーヤン・ジンの「驚異の4ジャンパー」や、セルゲイ・ボロノフ、アダム・リッポンらが最後の椅子を争う。結果次第ではジェイソン・ブラウンが残る可能性もある。さて、6人の顔ぶれはどうなるのか!


posted by デュークNave at 06:30| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月12日

ボロノフ、30歳の初戴冠・女王メドベージェワとロシア勢のダブル優勝/宮原知子は「まずまず」の復活 〜フィギュアGPシリーズ第4戦・NHK杯〜

大会直前、優勝候補筆頭の羽生結弦が、練習中にジャンプで転倒して右足を負傷、欠場するという衝撃のニュースが飛び込んできた。これでGPファイナルへの出場も不可能になり、ファイナル5連覇も潰えた。大事な五輪シーズンに世界No.1選手にこんなアクシデントが起こるとは、「スケートの世界には神も仏もないのか」と毒づきたくなる。暮れの全日本選手権には出場できる見込みとのことでホッとしたが、とにかく早くケガを回復してほしい。

【 女子 】

昨年の全日本以来、11か月ぶりの試合への復帰となった宮原知子。「体は100%回復したが、演技はまだ70%の出来」という不安を抱えたまま、ぶっつけ本番でGPシリーズの初戦を迎えた。確かにSP・FSともジャンプにらしからぬミスが出たが(特にFS後半の3サルコウは、彼女にはありえないような体勢の乱れ方だった)、70%にしてはかなりまとまった演技だったと思う。練習の虫で鳴る彼女が、長いブランクの後ようやく試合に復帰できた喜びが伝わってくるような、観る者に訴える演技だった。総合5位、今の時点ではこんなものだろう。次戦はスケートアメリカ、そして目指すは暮れの全日本選手権。あと1か月余り、あの抜群の安定感を取り戻すことができるか、刮目しよう。

本郷理華は初戦のスケートカナダで取られた回転不足をかなり改善し、持ち前のダイナミックな演技を見せてくれた。ジャンプにまだいくつか乱れがあり、総合は7位に後退したが、演技の内容は上向いていると思う。暮れの大一番までにどこまで仕上げてくるか。

シニアデビューとなった白岩優奈。そのキレのいいジャンプに私はジュニア時代から注目していたが、さすがにNHK杯という大舞台で緊張したのか、SP・FSともジャンプが本来の出来ではなかった。しかしジャンプのキレのよさとスピード感のある演技はやはり魅力的だ(タイプとしては樋口新葉に似ていると思う)。総合8位、まだまだ伸びしろたっぷりの彼女、次戦のフランス大会では本来のジャンプが見たいものだ。


またもや驚異の新星が現れた。これがシニアデビュー戦となるポリーナ・ツルスカヤ(ロシア)。SP・FSともほとんどミスがなく、高いレベルでの安定した演技を披露した。171cmの長身と長い手足を生かした優雅な動き。「ロシアにはまだこんな選手もいたのか」と驚かされた。聞けば、彼女もメドベージェワと同じコーチとのこと。中国杯でのザギトワと同様、この選手もシニアデビュー戦から驚かせてくれた(ただツルスカヤは、ジャンプの構成は「後半に固め跳び」ではなく、オーソドックスに前後半バランスよく跳ぶ)。総合3位で表彰台をキープ。次戦はスケートアメリカ、優勝できればファイナルも射程内だ。

カロリーナ・コストナーは、持ち味の優雅で柔らかな演技を今回も存分に見せてくれた。ジャンプのレベルがさほど高くはないため技術点は高くないが、演技構成点で稼げるのが彼女の強みだ。総合2位を確保し、ファイナルへの進出も決定。こういう「味のある演技」を見せてくれる選手が世界の舞台に復活してくれるのは、ファンの一人としてとてもうれしい。

優勝は、当然のようにエフゲニア・メドベージェワしかしFSでは冒頭のコンビネーションでまさかの転倒、続く3ルッツも着氷が乱れた。しかしここから持ち直し、大崩れしないのが女王たるゆえんだ。両足にテーピングして臨んでいる今大会、コンディションは万全ではないのだろう。それでも優勝してしまう地力の強さがこの人にはある。シリーズ連勝で貫禄のファイナル進出。絶対女王の3連覇なるか。…しかし現時点で、彼女の女王の座を大きく揺るがすような選手は見当たらないが…。


【 男子 】

羽生結弦の欠場で一気に混戦模様となった今年のNHK杯男子シングル。表彰台を占めたのはベテラン勢だった。優勝したセルゲイ・ボロノフは30歳、これがシリーズ初優勝となった。特にすばらしかったのはFSで、ジャンプはすべて着氷に乱れのないほぼ完璧な出来。スピンやステップもダイナミックに演じ、大きな盛り上がりの中でフィニッシュ。場内は満場のスタンディングオベーションに包まれた。恐らくはスケート人生最高の演技だっただろう。終了後のインタビューで、日本語で「ツカレター」とつぶやいて場内を沸かせ、観客にわかりやすいように、ロシア語ではなくやや苦手な英語で話すなど、ファンへの配慮も見せてくれた。ロシアは男子もまだまだ健在である。

2位はこの日28歳の誕生日を迎えたアダム・リッポン。FSでは冒頭で4ルッツを見事に決めた。もともと4ジャンプにはさほど執着せず、演技構成でアピールする選手だが、この4ルッツの成功で技術点を押し上げ、見事に表彰台をつかんだ。その独特の表現力にファンも多いリッポン、次戦のスケートアメリカで、また地元の熱狂的な声援を受けるか。3位には29歳のアレクセイ・ビチェンコ(イスラエル)が入り、表彰台は歴戦の強豪が若手を退ける結果となった。


私の大好きなジェイソン・ブラウンは残念な結果となった。SPで僅差の3位に入り、優勝ならファイナル決定という好位置につけた。キスアンドクライで「ゆずるさんへ、 はやく よくなってください!! ジェーソン」という日本語の手書きのメッセージを掲げ、もともと多い日本のファンにさらに強くアピールした。しかしFSでは2本の3アクセルでともに転倒したため技術点が伸びず、惜しくも表彰台を逃した。しかしその芸術的でエンターテイメント性に富む演技は魅力たっぷりだ。来年の五輪や世界選手権で、また彼の「芸術品」に会えることを願いたい。


日本勢は、体調不良で欠場した村上大介に代わり急きょ出場した友野一希が7位入賞と健闘した。GPシリーズデビュー戦が急に回ってきて準備不足だったと思うが、SPでPBを大幅に更新する会心の演技を見せた。FSでも4ジャンプは決められなかったものの、最後までスピードの落ちない躍動感のある演技を披露した。19歳、今後の伸びしろを考えれば、大変貴重な経験になっただろう。


posted by デュークNave at 11:31| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月05日

樋口新葉、初のファイナルへ大きく前進/ロシアからまた驚異の新星・ザギトワ 〜フィギュアGPシリーズ第3戦・中国杯〜

女子は、これがシリーズ初戦となる三原舞依、2戦目の樋口新葉、本田真凜の日本勢。強豪ひしめくロシアからは、エレーナ・ラジオノワ、エリザベータ・トゥクタミシェワに、昨季ジュニア2冠のアリーナ・ザギトワ。さらに昨季世界選手権銅のガブリエル・デールマンが加わり、ファイナルに向けた激しい戦いが繰り広げられた。男子は2015・2016世界選手権連覇のハビエル・フェルナンデスに、2016・2017世界選手権連続銅のボーヤン・ジン、ロシア杯3位のミハイル・コリヤダ、2015スケートアメリカ優勝のマックス・アーロン。日本からは昨季全日本選手権2位の田中刑事が参戦した。



【 女子 】

SPを終えた時点で、首位デールマンと7位三原の差はわずか3.75。些細なミスで順位が大きく変わる、非常に厳しい戦いになった。このプレッシャーのかかる状況で、日本の3選手が持ち味を発揮した。本田(総合5位)は前戦・スケートカナダと同様ののびのびとした演技を披露した。前半のコンビネーションのファーストジャンプが2回転になったのが唯一のミスだが、これを最後のジャンプを2アクセルから3フリップに変えることで取り返す冷静さ。また一つ成長した姿を見せてくれた。三原はいつもながらの安定した演技。青と白のグラデュエーションのコスチュームがとてもよく似合う。ほとんどのジャンプをきれいなランディングで降り、スピンやステップも流麗にこなした。PBには届かなかったが、総合4位。次戦のフランス大会に希望を残した。


ロシア大会で3位表彰台をつかんだが、目標のファイナル進出のためには最低2位が必要となる樋口。SP2位から迎えたFS、上位選手が次々と高得点をマークする中でかなりのプレッシャーがかかったはずだ。しかし、そんな状況はどこ吹く風といった見事な演技を見せてくれた。高くキレのあるジャンプ(特に前半・後半の両方に入れた3ルッツ−3トウループの高難度のコンビネーションは完璧だった)、「007・スカイフォール」のテーマに合わせたパフォーマンスで観る者を惹きつける。「絶対にファイナルに出る!」という気迫がありありと伝わってくる、すばらしい演技。見事に2位表彰台をゲットした。

シニアデビューの昨季は、フランス杯で3位に入ったが、次戦のNHK杯で表彰台を逃し、ファイナル進出はならなかった。その後の四大陸選手権や世界選手権ではジャンプに精彩を欠き、下位に沈んだ。「あのジュニア時代の大物感はどこに行ったんだ」といぶかっていた私だったが、この中国杯で面目を一新した。「強くなったな、樋口新葉・・・!」これでファイナルへ大きく前進するとともに、平昌五輪の出場枠も視界に入ってきた。


SP上位の2人はジャンプのミスが響いた。1位のデールマンは序盤に豪快なコンビネーションを披露したが、後半のいくつかのジャンプで着氷が乱れ、技術点が伸びなかった(総合6位)。2位のラジオノワは、情感あふれる演技を見せてくれたが、後半のジャンプの着氷にややスムーズさを欠き、GOEが伸びなかった。表彰台は確保したものの、5年連続のファイナル進出はかなり厳しくなった。


この大激戦を制したのは、これがシニアデビュー戦となったザギトワ。私にとっては初お目見えだったのだが、「これが本当にシニアデビューの15歳か」と思わせる落ち着きと大人びた雰囲気がある。まずSP、いきなりステップシークエンスから始まった。「あれ、ということは3つのジャンプは後半に持ってくるのか。女王・メドベージェワと同じ構成だな」と思っていたらその通りで、その後半の最初のジャンプが3ルッツ−3ループの最高難度のコンビネーション。惜しくもループで転倒してしまったが、その他のジャンプはきれいに決め、ステップやスピンも完成度が高い。また振付も細かなところに工夫が行き届いていて、この点でもメドベージェワのシニアデビューの時と似ている。聞けばメドベージェワとコーチが同じとのことで、ここで納得。転倒という大きなミスがあったにもかかわらず、SPは僅差の4位発進(転倒がなかったら余裕の首位だった)。

そしてFSも、7つのジャンプをすべて後半に跳ぶという驚異のタフネスプラン。シニアデビューの年にこんな冒険的な構成を組めるのも、同窓の先輩の世界2連覇という「大成功例」があるからだろう。しかしそれをこなせる実力が伴わなければ、この意欲的なプログラムは絵に描いた餅になってしまうのだが・・・、これを15歳の少女がものの見事にやってのけた。前半、コレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスをあでやかにこなす。そして後半、まず3ルッツ−3ループを鮮やかに決め、SPのリベンジを果たす。この後のジャンプも、メドベージェワ顔負けの手を挙げたジャンプを次々と決め、着氷の乱れもほとんどない。大きな盛り上がりの中でフィニッシュ、堂々の逆転優勝。まさに圧巻のシニアデビューだった。

ザギトワのこの圧巻の演技を目の当たりにして思うこと:「平昌五輪の金はメドベージェワで決まりと思っていたが、強力な対抗馬が現れたな」。シニアデビュー年にしてこの完成度・熟成度の高さは、まさに先輩メドベージェワを彷彿とさせるのだ。次戦・フランス杯が待ち遠しい。現時点では、平昌五輪のロシア女子代表は、メドベージェワ、ザギトワ、そしてソツコワの3人・・・かな?


【 男子 】

すばらしくハイレベルな戦いとなった女子と比べ、男子は、はっきり言ってしょぼかった(笑)。上位選手で完璧な演技を見せたのは、SPでのコリヤダと田中、FSでのアーロンぐらいで、他はジャンプのミスが多く、他よりミスの少ない選手が上位に残ったという結果になった。

田中刑事は、SPはTV解説の佐野稔さんが絶賛していたように、ノーミスのすばらしい演技だった。しかしFSでは、冒頭の4サルコウは決めたものの、演技後半、3ループを跳びに行こうとして転倒する(これはあとでわかったことで、演技中はなぜ転倒したのかわからなかった)など、ジャンプに抜けや着氷の乱れがあり、不本意な出来だった。故障明けだったこの大会、シリーズはこの試合のみ。五輪切符は暮れの全日本選手権にかかっている。あと1か月余り、コンディションをどこまで上げてこれるか。


前世界王者・フェルナンデスは、「どうしたんだ?」と思うほどFSでジャンプが乱れた。ほとんどクリーンなジャンプがなく、技術点が伸びない。総合6位に沈み、4年連続のファイナル進出は絶望的になった。パトリック・チャンと同様、かつての世界チャンピオンがジャンプの乱れに苦しんでいる。


「元祖・驚異の4回転ジャンパー」ボーヤン・ジンも本来の出来ではなかった。FS冒頭、トレードマークの4ルッツで手をつき、続く4サルコウもステップアウト。結局4つの4ジャンプはいずれもクリーンに跳べなかった。技術点の基礎点の高さで2位を確保したが、ファイナルや五輪を考えると多くの課題が残った。


SPでベスト演技を決めて100点越えを果たし、PBを更新してトップに立ったコリヤダ。しかしFSでは、シリーズ初優勝のプレッシャーからか、ジャンプに転倒や抜けが出た。しかし後半に4トウループをきれいに決めたのが効いて、SPのリードを守ってシリーズ初優勝。初めてのファイナル進出を決めた。層の厚い女子に圧倒されているロシア男子、新星が大舞台で羽ばたけるか。


上位選手が不出来な中で、会心の演技を見せたのがアーロンだった。パワフルでダイナミックなジャンプを次々に決め、PBを更新して見事に表彰台をつかんだ。2015年のスケートアメリカで「大当たり」し、宇野昌磨の「日本選手初のシニアデビュー戦でのGPシリーズ優勝」を阻んだ。私にとっては「憎き男」だったアーロンだが(笑)、この演技には素直に「あっぱれ!」を差し上げよう。


これでシリーズは早くも前半戦が終了。次戦は日本開催のNHK杯である。羽生結弦の第2戦、そしてケガで戦線を離れていた宮原知子の復帰戦でもある。日本女子の第一人者・宮原がどこまで回復しているのか。まさに「刮目して」見つめよう。


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2017年10月30日

宇野昌磨、もはや貫禄の優勝/本田真凜はほろ苦いシニアデビュー 〜フィギュアGPシリーズ第2戦・スケートカナダ〜

男子は昨季の世界選手権銀メダリスト・宇野昌磨と、2011〜13年に世界選手権3連覇のパトリック・チャン、ジェイソン・ブラウンが登場。女子は参戦4年目の本郷理華と、これがシニアデビューとなる本田真凜の日本勢に、アンナ・ポゴリラヤ、マリア・ソツコワのロシアティーネージャー、アシュリー・ワグナー、昨季世界選手権銀メダリストのケイトリン・オズモンドと実力者がひしめき、激戦が予想された。


【 女子 】

五輪シーズンにシニアデビューとなった本田。このGPシリーズの結果も「2枠」の重要な選出基準になる。それがプレッシャーになったのか、SPではジャンプにミスが出た。冒頭の3ルッツ−3トウのセカンドジャンプで転倒。後半の3ループはきれいに決めたが、2アクセルがシングルになってしまい、規定により得点にならず。演技後の表情は曇ったままだった。しかしFSではふっ切れたのか、本来の伸びやかなスケーティングが戻った。冒頭の3ルッツをきれいに決め、続く3フリップ−3トウも流れよく決める。後半のコンビネーションジャンプもクリーンに降り、ほぼノーミスの演技。SPの10位から総合5位にジャンプアップした。課題は残ったものの、まずまずのデビュー戦か。次戦は中国杯に「連闘」で臨む。この経験をどう生かすか。

本郷はSP・FSとも大きなミスなくまとめたが、ジャンプで着氷のわずかな乱れや回転不足が散見し、得点が思ったより伸びなかった。不調に終わった昨季からの巻き返しを図る今季だが、昨季も苦しんだジャンプの微妙な乱れをまだ修正しきれていないようだ。しかし総合6位にとどまったので、次戦に望みを残した。

ワグナー(3位)とソツコワ(2位)はともに持ち味を発揮した。ワグナーはジャンプにわずかな乱れがあったものの、持ち前のダイナミックな演技を披露し、SP7位から表彰台へ。ソツコワも優雅で柔らかな表現力を存分に見せ、SP3位からポジションを上げた。この人の高いレベルでの安定感は、女王メドベージェワにも迫る感がある。

SP2位のポゴリラヤと1位のオズモンド。FSの曲はともに「ブラックスワン」だが、明暗が分かれた。オズモンドはジャンプに抜けや転倒があったものの、持ち味のスピードあふれるダイナミックな演技をふんだんに見せ、SPのリードを守って優勝。昨季世界選手権2位の実力を示した。かたやポゴリラヤは、前半のジャンプはきれいに流れよく決めたが、後半のコンビネーションから乱れが見え始め、抜けや転倒、スピンでも転倒するなど、まさに負の連鎖。シーズン前にケガをし、十分に練習ができないままに迎えた本番だったそうだが、後半にその不安が出てしまった形だ。昨季のシリーズ連勝・ファイナル3位で一皮むけたかと思った彼女だったが、また試練が襲ってきている。大事な五輪シーズン、立て直しはできるのか。


【 男子 】

無良崇人のFSの曲は「オペラ座の怪人」。2014年の同じスケートカナダで圧巻の演技を見せて逆転優勝した、メモリアルな曲だ(私の中では、この時のFSでの演技が無良のベストパフォーマンスだ)。五輪シーズンに思い入れの強い曲を再度持ってきて勝負してきたが・・・、ジャンプにことごとくミスが出て、総合12位に沈んだ(本人も「ここ数年で一番悪い出来だった」と嘆いた)。本人もこのままでは終われまい。次戦のスケートアメリカまで、どう持ち直してくるか。

パトリック・チャンはジャンプに乱れが出た。「熟成派」のチャンは、ジャンプを完璧に決め、得意の表現力、演技構成で高得点を狙う戦略だが、そのジャンプにミスが出ては、「高目追求派」の宇野には勝てない。このままでは今季は苦しい戦いを強いられそうだ。

ジェイソン・ブラウンは、もともと4ジャンプはほとんど跳ばない(SPでは回避)。昨今の「4回転戦争」には背を向け、その独特の表現力と演技構成で勝負する。そのため残念ながら優勝を争うには至らないのだが、彼の芸術的な演技は観る者を魅了してやまない(私も彼の演技の大ファンである)。今大会もSP・FSとも、彼にしかできないステップや振付を披露して見事に2位をゲット。次戦・NHK杯で、日本のファンの前でまたすばらしい芸術作品を見せてほしい。

SPで100点台をマークして首位発進の宇野。FSの曲は、2年前に演じた思い入れのある「トゥーランドット」。そして演技構成は、4ジャンプ4本、そのうち3本を後半に入れ、コンビネーションも後半に3本入れる、極めてハイレベルなジャンプ構成だ。この過酷な構成を、やや乱れはあったものの最後までやり抜き、FSでも200点近い高得点。総合では300点を超え、2位に40点近い差をつけての優勝。シニア3年目の今季、もはや貫禄さえ感じさせる圧勝劇である。五輪シーズンに極めて意欲的なプログラムで挑む宇野。そのより高みを目指す姿勢には、羽生結弦と同じ目線の高さを感じる。今季、どこまで飛んでいくのか、目が離せない。


posted by デュークNave at 06:16| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする