2017年07月03日

「安倍暴政」への怒りが爆発:都民ファースト第一党に・自民、歴史的惨敗 〜東京都議会議員選挙〜

昨日投開票が行われた東京都議会議員選挙で、小池百合子東京都知事が代表を務める都民ファーストの会は、追加公認を含む55議席を獲得して第一党となった。小池知事を支持した公明党・東京生活者ネットワークを含めて79議席を獲得し、過半数の64議席を大幅に上回った。一方第一党だった自民党は23議席と選挙前の57議席から激減し、過去最低の38議席をも大きく下回る歴史的惨敗を喫した。(投票率は51.27%:前回より7.77%↑)


都民 6→55  自民 57→23  公明 22→23  共産 17→19  民進 7→5  ネット 3→1  維新 1→1


それにしても、これほどの大激震になるとは予想していなかった。1週間ほど前の調査では自民と都民の支持がほぼ拮抗していたので、両者がきわどく第一党を争うことになるのだろうと思っていた(そうなったら私はかなり落胆していたと思うが)。しかしフタを開けるとこの大変動。昨夜のNHKの開票速報では、都民の当選確実が次々と決まる一方、自民はなかなか当確がつかなかった。開票結果も、都民は多くが上位当選を果たしているが、自民はぎりぎりで当選している選挙区が多い。これは当選者数のみならず、いわゆる「票田」も、都民が大きく広げ、自民は大幅に縮小してしまったことを示している。

(私の選挙区でも、都民は2人がワン・ツーフィニッシュを飾る一方、前回トップ当選を果たした自民の現職が敗れ、今回の全体の選挙結果を端的に示す形となった)

私は3日前の記事で「特にこの首都東京は地方と比べて革新の気風が強く、『潮の流れの変化』がかなりビビッドに選挙結果に出る。」と述べ、それなりの変化が起こることを予想しかつ期待していたのだが、この結果は我が予想と期待をはるかに上回った(ホリエモン的に言えば「想定の範囲外」だな)


これは国政選挙ではないが、この劇的な大変動は、明らかに「安倍一強」国政への都民の批判、拒絶反応が強く現れている。豊田衆議院議員の秘書へのパワハラ・暴言、稲田防衛大臣の問題発言、さらには今回の選挙を統括した下村東京都連会長(元文科大臣)の加計学園からの献金疑惑など、選挙直前に新たな問題が発生したことも影響したと思うが、大元は「もり・かけ問題」や「共謀罪」の強引な成立をはじめとする、安倍政権への都民の怒りである。要するに、「どうせ国民はまた忘れてくれるよ」とタカをくくった(=国民をバカにした)ことへの強烈なしっぺ返しを、都民が安倍政権に食らわせたということだ。

(今回の自民党の選挙ポスターには、例によって安倍首相の「遠くを見る」写真とともに、右下に小さく「政治は国民のもの」と書かれていた。私はこのポスターを目にするたびに、ブチ破ってやりたい衝動に駆られた。よくもしゃあしゃあと「政治は国民のもの」などと書けるものだ。本音は「政治はオレのもの」だろうが!)


さてこの結果を受け、自民党はどう反応するのだろうか。安倍首相や菅官房長官が「これは一議会選挙の結果であり、国政とは関係ない」などと言おうものなら、国民の怒りのマグマはさらに噴き上がるだろう(その方が展開としては面白いのだが)。まあしばらくは、自民党のリスクマネジメント能力、国民の「空気」を読み取る感性はどの程度のものか、お手並み拝見だな。そして国民の皆さん、この「東京の乱」をここにとどめず、全国規模に広げましょうね!


P.S. 今後の注目は、小池知事が国政への進出をいつ始動するかだ。当面は都政の足元を固めるべきだが(築地市場の豊洲移転問題や東京五輪など、大きな課題が待っている)、本人の最終的な狙いは当然国政にあるだろうし、今回の選挙結果は都民のそれへの期待の大きさを表している。今の国政では「安倍政権NO!」の意思の受け皿がない。いずれ小池氏が「国民ファーストの会」でも旗揚げし、自民党に対峙することを多くの国民が期待しているのだろうと思う。その機が熟すのはいつか、今後の政局を注視したい。

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2017年06月30日

東京都議会議員選挙:安倍政権低落の予兆となるか

来る7月2日投票の東京都議会議員選挙は、首都とはいえ一地方議会の議員の選挙にすぎない。にもかかわらず、どうも今回は国政選挙並みの注目を浴びているようだ。

理由の1つは、そのタイミング。先の国会で、「共謀罪」法案を委員会の中間報告を受けて(=委員会採決をすっ飛ばして)国会決議を行うという暴挙に出て、例によって強引に成立させてしまった。この「非道」は、ひとえに「早く成立させて国会を閉幕し、加計学園問題に関する追及から逃れようとしたのだ」との見方がもっぱらである(まあどう言い訳しようと、そうとしか思えないよな)。

その直後に行われるこの選挙。しかも国会閉幕後の各メディアの世論調査で安倍内閣の支持率が急落し、不支持率と支持率が逆転した。

(あわてて安倍首相が記者会見を行い、「加計学園問題については、今後も丁寧に説明する努力を積み重ねたい」などと口にした。これまでも特定秘密保護法や安保関連法など「問題法案」が成立するたびに同じことを言ってきたが、本当に丁寧に説明したことは一度としてないので、このコメントは全く信用できない

「安倍支持急落」を受けて行われるこの選挙、その結果は安倍政権への都民のYes/Noの表われであると見ていいだろう。特にこの首都東京は地方と比べて革新の気風が強く、「潮の流れの変化」がかなりビビッドに選挙結果に出る。これが今回の選挙が国政選挙並みに注目されているもう1つの理由で、その結果は安倍政権への国民の評価を先取りすると目されているのだろう。安倍晋三大嫌いの私としては、これまで「我が世の春」とやりたい放題をやってきた安倍政権に何らかの鉄槌が下され、盤石と思われてきた安倍政権が低落に向かうきっかけになってくれることを期待している。


実際、ここのところの「もり・かけ」問題と、それに対する安倍首相や菅官房長官をはじめとする閣僚たちのあまりにも誠意に欠ける国会答弁や会見に、国民の胸中には相当な怒りのマグマが噴き上げてきているようだ。これがボディーブローのようにじわじわと安倍政権を追い詰めることになるのではないか。いや、そうでなくてはいけない。「こんなメチャクチャな政治はもはや許せん」と心ある有権者は思っているだろうし、その行方は海外からも注目されているだろう。

(憲法9条改正についての安倍首相の国会答弁「自民党総裁としての考え方は読売新聞に詳しく書いてあるので、ぜひ熟読していただきたい」は、今のところ私的には「安倍語録・ダントツワースト1」だ)

都民、そして日本国民の「政治的良心」が問われる今回の選挙である。


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2017年05月21日

三権分立/機能しているアメリカ、機能していない日本

トランプ政権とロシアの不透明な関係を調査するため、アメリカ司法省はモラー元FBI(連邦調査局)長官を特別検察官に任命した。

この疑惑は、昨年の大統領選挙期間中から取り沙汰されていた(ロシアがクリントン陣営にサイバー攻撃を仕掛け、これにトランプ陣営の関係者が関わっていたとの疑い)。この捜査にあたっていたFBIに対し、トランプ大統領は突如コミー長官を解任した。これは捜査への政治的圧力との見方が強く、露骨な捜査妨害ではないかとトランプ政権への批判が高まっている。

この特別検察官任命のニュースを聞いた時、私のみならず多くの日本人はこう思っただろう。「アメリカは三権分立が、そして民主主義がちゃんと機能している国なんだな。」これ以前にも、トランプ大統領が出したかの悪名高い大統領令「中東など7か国出身者の入国を禁止する」を連邦地裁が差し止め、これを控訴裁が支持するという「慶事」があった。アメリカでは、行政のトップの決定に司法がこうして正しいブレーキをかける。そして行政府の1つである司法省でさえ、「大統領の暴挙許すまじ」と、継続捜査のために特別検察官を任命する。立法府である連邦議会でも、野党の民主党のみならず与党の共和党内からも、トランプ政権に対する批判が噴出しているようだ(もっとも、共和党からの批判は昨年の選挙中からあったが)。このバランスのすばらしさは、さすが「民主主義の総本山」である。この事件は、かつてのウォーターゲート事件をもじって「ロシアゲート事件」と呼ばれており、トランプ大統領の弾劾やら辞任やらが早くもささやかれているようだ。


三権のバランスがすばらしく取れているアメリカ。翻って、我が日本はどうか。「安倍一強時代」の今、安倍首相のやることに対して行政府からブレーキがかかることなど、全く期待できない状況だ。森友問題も昭恵夫人への喚問は実現せず、8億円減額処理の担当者たちは「適正な処置だった」と繰り返すのみ。新たに浮上した、加計学園(理事長は総理の友人)の学部新設について「総理の意向」が働いたという疑惑についても、総理本人はこれを全面否定。文科省の担当職員へのヒアリングもわずか半日で終了、「文書の存在は確認できなかった」とし、早々に調査を打ち切っての幕引きを図っている。ここにも、早くも今年の流行語大賞の本命と目される「忖度(そんたく)」が働いたのか(間違いなくそうだろうが)。

司法も、沖縄の米軍基地の移設問題で政府の意向通りの決定を下し、すでに工事が始まっている。下級審の決定によって稼働が差し止められていた原発も、上級審で覆されて稼働を再開している。下級審が下した画期的な判決や決定が上級審で政府寄りに覆されることは今に始まったことではないが、最近はその傾向がさらに顕著だ。

立法府である国会でも、安倍首相はじめ閣僚の全く誠意に欠ける答弁が目立つ。金田法相はほとんど自分の言葉で答弁ができず、ついには法務省の専門家を国会に呼んで代わりに答弁させる始末。最悪は安倍首相で、憲法改正についての答弁を求められ、「自民党総裁としての考えは読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひ熟読してほしい」と言い放った。憲法63条には、「閣僚は答弁のために出席を求められた時は出席しなければならない」と定められている。そして「出席したからには、答弁には誠実に対応せよ」というのがこの条文の趣旨だろう。しかるに国会での答弁において「新聞を読め」というのは、答弁への誠に不誠実な対応であり、憲法63条の趣旨に反している。つまり憲法を改正する前に、その憲法に違反することを首相はやってしまっているのだ。しかしこの傍若無人に対し、野党は有効な反撃ができていない。結局は数で押し切られ、ほとんどすべてが政権のなすがままに事が運んでしまうのだ。

そして本来は政府から独立した機関である日本銀行も、今や有名無実化したアベノミクスを後押しする、ただの「政府御用銀行」に成り下がっている。毎年発行される膨大な赤字国債を大量に買い取り、一向に改善されない財政赤字を下支えしている。


こう見てくると、「立法」「司法」「行政」の三権のうち、行政がやたらに膨張し、他の2つの「権」はこれに追随しているだけという状況になっている。行政の膨張は今に始まったことではないが、それが今の安倍政権では顕著になっている。「三権分立」が今の日本政治では機能せず、行政の膨張、いや暴走が続いているのだ。

第二次安倍政権の発足以来、つまり「安倍独裁政治」が始まって以来、安倍首相の暴走はとどまるところを知らない。特定秘密保護法、安保関連法、カジノ法、そして今度の共謀罪法案。国民の知る権利を奪い、自衛隊を危険な任務に就かせ、国民を公営ギャンブルに引き込み、そして国民を裏で監視する。この国を国民主権から国家主権へと造り変えようとしているのがはっきりわかる。そして国家主権にすることは、これすなわち行政府のトップである総理大臣自身の権力が極大になることを意味する。つまり安倍首相という人は、日本をよい国にするためではなく、国民の生活をよりよくするためではなく、己の権力を際限なく大きくするために一連の政策を進めているのだ。安倍晋三というただ一人の男の野望のために、日本国と日本国民が非常に危険な状況にどんどん流れて行っているのだ。これまでの安倍政権の歩みは、こう考えるとすべてのことがつながり、腑に落ちてくる。

そしてこの仕上げが、祖父の岸信介の念願であった憲法改正である。これによって「安倍晋三の野望」はほぼ完成し、我が愛すべき母国は「ポイント・オブ・ノーリターン」に行きついてしまう。ポスト安倍は誰になるのか知らないが、権力者というものは、手にした権力は維持したがり、振り回したがるものなのだ。だから後任が誰になっても、一度極大になった首相と政府の権力は、そのあとも猛威を振るい続けることになるだろう。まさに識者が言う「戦前回帰」、国家権力が暴走して戦争へ突き進んだ、あの時代への「時計の針の逆回し」である。これはちょっと極端な想像かもしれないが、そういうきな臭さがじわじわと広がっている恐怖感は確かに感じられる。


この「安倍の暴走」を招いた一番の原因は何か。安倍首相本人の、政治家としてそして人間としての資質の問題もあるだろう。周囲を固める閣僚らが「勝ち馬に乗れ」とばかりに乗っかってしまい、この傍若無人な首相への批判が党内から出ないという異常な状況のせいでもあるだろう。しかし私が思う最大の原因は、国民がこんな安倍政権をいまだに支持し、選挙で勝たせてしまったからだ。「3分の2」をいとも簡単に許し、数を与えてしまったがために、これまでにも増して暴走するようになってしまったのだ(共謀罪の審議はたったの30時間。安保関連法では100時間かけていたのだが)。

いくら痛烈に批判しても、選挙で勝たせてしまったら全く無意味なのだ。それはこれまでの幾度の選挙が物語っている。次の選挙はいつになるのかわからないが、日本国民の皆さん、また次の選挙でも与党に勝たせますか? そして「安倍一強」、いや「安倍一狂」状態をさらに加速させるんですか? あなたのお子さんやお孫さんの世代に、簡単には消えない禍根を残すことになりますが、それでいいんですか? 「仕事が忙しくて政治のことなんか見てるヒマない」とおっしゃるかもしれませんが、あなたの愛するご子孫が、とても危険で息苦しい状況に置かれるかもしないんですよ? それでいいんですか?


1億2千万の日本国民の皆さん、お忙しいでしょうけど、ここで一度足を止めてじっくり考えて下さい。今日本は、どんどん危ない道を進みつつあります。このすばらしい歴史ある国を、あの戦前の息苦しい時代に戻したいですか? その息苦しさ、すでにあちこちで始まっていることに気がついていますか? 


昭和戦前なんて、私にとっては「歴史」でしかなかった。あんな時代、司馬遼太郎さんが「鬼胎の時代」と呼んだ異常な時代が、またやってくるかもしれないなどとは夢にも思わなかった。ただ正直、いくら安倍首相が強権を振るったとしても、あそこまでひどいことにはならないだろうと思う。しかし、「あの時代」を思い起こさせるようなことがじわじわと進んでいるということ自体が大問題なのだ。

これだけははっきり言える。安倍晋三首相は、戦後の歴代首相の中でダントツで最悪の総理大臣だ。こんな強権、いや狂犬政治を許しては、日本国と日本国民はどんなとんでもないところへ連れて行かれるか知れたものではない。日本国民の皆さん、このこと、本気で考えて下さいね! 本気で肝に銘じて下さいね!

posted by デュークNave at 11:56| Comment(0) | 政治・時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月08日

浅田真央引退 〜繋げた伊藤みどりからの「トリプルアクセルの系譜」〜

浅田真央が自身のブログで現役引退を表明した4月10日、私は前の週から「あること」に取り組み始めたばかりだった。フィギュア大ファンで、このブログにも多くのフィギュア関連の記事を載せている私が、浅田の引退についてのブログ記事をまとめようと思ったら優に数日はかかる。「根性なし・根気なし」のノーコン人間を自認するこの私が、始めたばかりのことを横に置いてこんなことをしたらまた挫折するのは目に見えている。なので、書きたい気持ちをずっと抑えていた。また、浅田真央の引退についての記事は安易に書けるものではないので、じっくり頭の中でまとめてから書きたいという思いもあった。

その後2週間にわたり、この「あること」もしんどくなるような仕事が続いたのだが、何とか乗り切ってGWを迎えた。GWも「あること」でスケジュールはみっちりだったのだが、この最終盤にきてようやく少し余裕が出てきたので(というより、そればっかりで連休を過ごすのが嫌だったので)、1か月近く経ってようやく、「我が思いのたけ」をギュッと凝縮して、ここに記すことにする(まともに書いたら、どんどん長くなって収拾がつかなくなるだろうから)。


【 出場すれば書かずにはいられない、それが浅田真央 】

彼女の引退表明のあと、私は購読している毎日新聞の彼女に関する記事をすべてスクラップした。朝刊・夕刊・日曜版あわせ、実に19。スポーツ面はもちろん、1面・社会面・社説、「記者の目」、さらには日曜版の、普段は芸能関係の記事が多いコラムでも扱っていた。浅田真央という選手が、単なるアスリートを超えた「国民的アイドル」だったことを示す、この記事の多さと幅の広さである。

世間的にはこうだが、自分自身の彼女への関心度はどうだったのか。それを確かめるべく、このブログ内で「浅田真央」で検索してみた。その数、実に46。カテゴリー「フィギュアスケート」の記事が総数61、2度のオリンピック(2010バンクーバー・2014ソチ)の記事はカテゴリー「五輪・世界大会」に入っているので、これを加えて65。フィギュア関連の記事の70%超で彼女を取り上げていることになるのだ。というか、浅田真央が出場した試合で彼女についてコメントしないことなどありえないので、残り30%は彼女が不出場だったGPシリーズなどなのだろう。つまり出場すれば、記事にした確率100%。いつどんな大会に出場しても、常にセンターに置かれ、注目を一身に浴び、書き手は書かずにはいられない。浅田真央とはそういう選手だったのだ。


【 つないだ伊藤みどりからの「バトン」:応援せずにはいられない 】

GPファイナル4回優勝、世界選手権3回優勝、バンクーバー五輪銀メダル。しかしこれは、彼女の戦績の「上澄み」を記したにすぎない。浅田真央という選手の大きな功績の1つは、フィギュアスケートという魅力あふれる世界を、日本全土に広げ、浸透させたことにある。老若男女を問わず愛され、誰もが「真央ちゃん」と呼んで応援したくなる、その愛くるしいルックスと、スケートへの純粋で真摯な姿勢。彼女の出現によって、フィギュアスケートの日本における認知度は飛躍的に高まった。

しかし私個人としては、「自分をフィギュアスケートの世界にいざなってくれた大恩人」伊藤みどりから始まる「トリプルアクセルの系譜」を、浅田真央が引き継いでくれたことに最大の功績と意義を見る。伊藤みどり本人が、毎日新聞紙上で「トリプルアクセルに挑戦し続けてくれてありがとう」とコメントし、Number誌上でも「真央ちゃん、引退おめでとう」の特別メッセージを贈っているように、浅田真央は伊藤みどりからの「トリプルアクセルのバトン」を受け取り、最後までそのバトンを持って走り続けた。1988年のカルガリー五輪での伊藤みどりの演技に魅了されて以来のフィギュアファンである私にとって、その伊藤みどりの系譜を継ぐ浅田真央は、応援せずにはいられない選手だったのだ。


デビューが早かったので、この世界で21年過ごしてもまだ26歳。これからの人生の方がはるかに長い。「人間・浅田真央」がどんな生き様を見せてくれるのか、これからどんなことに挑戦してくれるのか。長年のファンとして、じっくり温かく見守ろう。

(とりあえずはフィギュアの試合で「解説者・浅田真央」のコメントが聞きたい。橋大輔、織田信成、鈴木明子といった同時代を戦った選手たちは、みなすばらしい解説をしてくれている。世界のヒロイン・浅田真央の解説は、さぞ聞く者の心に染みるものになるに違いない。楽しみだ


P.S. 浅田真央の引退と被ってしまって目立たなかったが、村上佳菜子も引退を表明した。羽生結弦と同世代で、同じ2010-11シーズンにシニアデビュー。いきなりGPシリーズ優勝・GPファイナル表彰台を遂げたシンデレラガールだった。その後も着実に成長し、その弾ける笑顔でファンにアピールしてきた。しかしここ数年はジャンプに苦しんで伸び悩み、若手の追い上げを受けていた。昨年末の全日本選手権のFSで渾身の演技を見せ、演技終了後、感極まってリンクに伏してしまった。今思えばあの時、「これが現役最後の演技」と覚悟していたのだろう。

同期の羽生結弦が世界王者になったのと比べると、その才能を十分には発揮できずに終わった感があり、ファンの一人としては残念だ。しかしその情感あふれるしっとりとした演技は、観る者に訴えた。非常にファンの多い選手であり(リンクに現れた時の歓声の大きさがそれを物語る)、記録よりも記憶に残る選手だ。浅田真央と同様、彼女の人生もこれからまだまだ長い。何より、その「弾ける笑顔」をいつまでも失わずにいてほしいものだ。

(個人的には、2014-15シーズンのSP「『オペラ座の怪人』から“Think of me”」が、彼女の明るくまぶしい雰囲気にマッチしていてすばらしかった。あれが我が「村上佳菜子・ベスト演技」だな)

posted by デュークNave at 12:08| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月02日

新しい地平に立ったチャンピオンたち:男子シングルは究極の日本勢1−2フィニッシュ 〜フィギュアスケート世界選手権2017〜

「すごい」としか言いようがない。今季のフィギュアスケートのクライマックス・世界選手権は、史上空前のハイレベルな戦い。女子シングルでは若きディフェンディングチャンピオンが、またも完璧な滑りで世界最高得点をマークして連覇達成。そして男子シングルは、五輪チャンピオンがFSで空前の高得点を叩き出して3年ぶりに王座奪還、さらに日本の誇る「2トップ」がダントツの1−2フィニッシュを決めた。


【 女子シングル 】

大会直前、日本のエース・宮原知子がケガによる欠場を表明。急きょ本郷理華が出場することになった。来年の平昌五輪の出場枠(上位2選手の合計順位が13位以内なら3枠、14〜28位なら2枠)がかかる世界選手権で、GPファイナル2位・全日本選手権3連覇中のエース宮原の欠場は非常に痛かった。急な出場になった本郷、初出場の樋口新葉三原舞依にかかったプレッシャーは大きかっただろう。

本郷と樋口は、シーズン後半のジャンプの不安定さをこの大舞台でも克服できなかった。本郷はFSで転倒1度に加え、3つのジャンプでアンダーローテーション判定を受け、技術点が伸びなかった。樋口も転倒1度にダウングレードや着氷の乱れがあり、得意のジャンプで得点が伸びなかった。ただ演技構成点では4項目で8点台を得ており、表現力の成長は示すことができた。

この中で会心の演技を見せたのが三原だ。SPでは最終盤の3フリップでまさかの転倒があり15位に沈んだが、FSではジャンプを次々にきれいに決め、すべての要素でGOE加点を得る完璧な演技。5コンポーネンツでも4項目で8点台の高評価。FSでは4位に入り、総合でも5位にジャンプアップ。初出場の大舞台で見事入賞を果たした。

しかしこの結果、上位2選手(三原・樋口)の順位合計は16(5+11)となり、日本女子シングルの平昌五輪への出場枠は2にとどまった。宮原の欠場がやはり響いた。年々レベルが上がり、層が厚くなっている日本女子シングル。この2枠の巡っての来季の戦いは熾烈になりそうだ。


我が目を疑ったのが、SP4位のアンナ・ポゴリラヤ。冒頭の3ルッツがシングルに抜けたのがつまずきの始まりで、ジャンプで3度の転倒(計4点の減点)。気落ちした最後のスピンもレベル2にとどまり、FSではまさかの15位。総合でも13位に沈んだ。演技終了後、あまりの出来にリンクに泣き伏してしまった。

昨季の世界選手権で3位に入り、今季のGPシリーズ(連続優勝)やファイナル(3位)でも持ち味を生かしたすばらしい演技を見せていた。「これは一皮むけたな。新しい境地に入ったかな」と、ファンの1人として心から喜んでいた。それだけに、このクライマックスでの大ブレーキは信じられない。でもそのしっとりとした雰囲気が醸し出す、艶のある演技は魅力たっぷりだ。まだ18歳、来季は熾烈なロシア国内の争いを勝ち抜いて、五輪の舞台でまたあでやかな演技を見せてほしい。


表彰台の両サイドを占めたのが、今大会大躍進のカナダ勢。3位のガブリエル・デールマン、2位のケイトリン・オズモンドは、ともにスピードと躍動感あふれる演技を得意とする。その勢いそのままに、SP・FSともにほとんどノーミス。演技構成点でも8点台後半から9点台の高得点で、技術性・芸術性を併せ持つ総合力の高さを見せた。ともにパーソナルベストを更新し、見事に初の世界選手権の表彰台に昇った。この結果、カナダは五輪出場枠「3」を確保。これはロシアのみならずカナダ勢も、日本の強力なライバルになりそうだ。


このハイレベルな戦いの中、まったく揺るがない演技を見せたのが、シニアデビューの昨季GPファイナル・世界選手権2冠、今季もファイナル連覇の「盤石の女王」、エフゲニア・メドベージェワだった。本当にこの人の演技は、とても人間業、しかもまだティーネージャーの成せる業とは思えない。非常にハイレベルな演技構成にもかかわらず、ほとんどミスがなく、しかもGOE加点を得られる要素をそちこちに散りばめている。まさに「女王の勝利の方程式」であり、これを完璧にこなした。FS154.40、トータル233.41はともに世界最高得点を更新。圧巻の連覇を果たした。


来年の五輪、このメドベージェワの「盤石の牙城」を崩せる選手はいるのか。正直、昨季・今季のこのあまりの盤石ぶりを見ると、「大きなミスをしない限り、彼女の五輪女王の座はほぼ決定じゃないのか?」と思ってしまう。彼女を倒すには、限界に挑むようなハイレベルの演技構成を完璧にこなして初めて勝負になるのだ。しかしこれはハイリスクハイリターン、至難の業だ。


【 男子シングル 】

中継のテレビ局が「真・4回転時代」と銘打った今大会。だがこの4回転、選手の取り組み方は大きく2つに分かれるようだ。

1つは、羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェン、ボーヤン・ジンに代表される、4回転の種類と回数を増やし、よりハイレベルなジャンプ構成を追求する選手たち(高目追求派)。もう1つは、ハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャン、ジェイソン・ブラウンに代表される、4回転は2種類程度に抑え、ジャンプの精度を上げ、演技構成を熟成させて勝負する選手たち(熟成派)だ。

これは過去にもあった構図だ。2010年のバンクーバー五輪で、4回転を跳ばなかった「熟成派」イバン・ライサチェクが優勝し、4回転を跳んだ「高目追求派」エフゲニー・プルシェンコは銀に甘んじた。しかしその後、4回転を複数回跳ぶチャンが世界選手権を3連覇し、他の選手たちは「打倒・チャン」のために「高目追求」を余儀なくされた。その流れの中で羽生が2014年のソチ五輪を制し、その後も宇野ら気鋭の若手の台頭で「高目追求派」が有利に推移していた。しかし、世界選手権では「熟成派」のフェルナンデスが2015・2016年を連覇。「高目追求」はリスクが高いので、彼らにミスが出て「熟成派」が完璧な演技をすると、その円熟の技が勝ってしまうのだ。

昨年のGPファイナルでは、フェルナンデスとチャンがジャンプで失敗し、「高目追求派」の羽生・チェン・宇野が表彰台を占めた。今季のクライマックスではどちらに軍配が上がるのかが注目された。


SPでは、フェルナンデスの熟練の技が冴え、SBを更新してトップに立つ。同じくSBを更新して2度目の100点台を獲得した宇野が2位につける。3位にはこれも100点台に載せたチャンが続く。注目の羽生は4サルコウで転倒し、5位発進。4位にボーヤン・ジン、6位にネイサン・チェンが入り、FSの最終組はこの6人となった。「高目追求派」4人・「熟成派」2人。現在の男子シングルの勢力図そのままのメンバーである。


さて、その結果は! 今年は「高目追求派」の完勝に終わった。「熟成派」の2人はともにジャンプにミスが出て技術点が伸びなかった。「熟成派」はもともとのジャンプ構成の得点が低いので、ミスをしては「高目追求派」に太刀打ちできない。「完璧に演じなければならない」というプレッシャーを常に背負うのが「熟成派」の宿命なのだ。GPファイナル同様、2人の世界王者がこのプレッシャーに負けた。

そして表彰台を占めたのが、「高目追求派」の3人。銅のボーヤン・ジンは、わずかなポイント差でGPファイナル進出を逃した悔しさを、この大舞台にぶつけた。SP・FSを通じてノーミス、すべての要素でGOE加点を得る会心の演技。5コンポーネンツでもほぼ8点台を獲得し、総合力の高さを見せつけた。2年連続の銅・表彰台。彼のキレのいいジャンプ(特に4ルッツの高さは圧巻!)のファンである私にとっても、彼の復活は非常にうれしい。


昨季の世界選手権ではFSの演技後半で尻すぼみし、7位に終わった宇野昌磨。その悔しさを抱き続けて挑んだ今季、GPシリーズ優勝・2位、ファイナル3位、全日本初優勝と着実に結果を積み上げてきた。その集大成と臨んだ今大会で、最高の結果を出した。

冒頭、今季後半から取り組んだ4ループを見事に決める。シニアデビュー以来、この吸収の速さが彼のすばらしさだ。続く「ギネスホルダー」4フリップもきれいに決める。次の3ルッツで着氷が乱れ、エラーエッジになったのが唯一のミスで、あとはほぼプラス評価。特に後半の3アクセル−3トウで+3.00、3アクセル−1ループ−3フリップで+2.57と、疲れが出る演技後半のジャンプで大きな加点を得ているのがすごい。演技構成点でもすべて9点台を得て、「高目追求」のみならず「熟成」も併せ持ったすばらしい作品に仕上がった。FSで初の200点越え(214.45)、トータルでも初めて300点を越え(319.31)、2度目の世界選手権で堂々の2位表彰台をゲット。見事に去年のリベンジを果たした。


しかし日本のエース、いや世界のエースはもっとすごかった。SP5位、トップのフェルナンデスとは10点以上の差。完璧に演じなければ王者奪還は成らない状況の中で、それをやってのけるすごさ。「絶対王者」を自認する羽生結弦の底力を見た。

まさに「完璧」を絵に描いたような演技だった。先日の大相撲春場所での横綱稀勢の里の逆転優勝の時も思ったが、「どうしてこんなことができるのか」。すべての演技要素が流れるように美しく進み、観る者はただただ酔いしれるのみ。すべての要素で加点を得ているのはもちろんだが、圧巻なのは、3つの4ジャンプ(単独)と3つのコンビネーションジャンプですべて2点以上の大きな加点を得ていること。加えて、5コンポーネンツはすべて9点台、4項目が9点台の後半である。昨季のGPファイナル、「SEIMEI」で世界最高得点をマークした演技を彷彿とさせるが、今回は10点アヘッドを逆転しなければならないという逆境の中にあったので、「気迫」という要素がかなり色濃く加わっていたのではないか。まさに底力である。

FSは223.20。自らが持つ世界最高得点を更新し、トータル321.59。3年ぶりに世界王者の座を奪還した。そしてこの瞬間、日本勢圧巻の1−2フィニッシュが成り、平昌五輪出場枠「3」が確定した。これ以上ない最高のフィニッシュだった。


この男子シングルの結果を見て思うこと:「高目追求派」がミスせずにこなしたら、「成熟派」は勝ち目がないということだ。「高目追求派」はもともとの演技構成レベルが高いので、多少失敗しても勝負になる。しかし「成熟派」はノーミスでこなして初めて勝負になるのであって、今回のようにミスが出ては「高目追求派」に大差をつけられてしまう。

来季はいよいよ五輪シーズン、この2つの「流派」の趨勢はどうなるか。「高目追求派」はこのままを維持するか、さらに4ジャンプのレパートリーを増やすかになるだろう。一方「成熟派」は、勝つために「高目追求派」に宗旨替えするのか、そのままさらなる熟成に努めるのか。その動きを見守りたい。


posted by デュークNave at 13:21| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする