2015年04月01日

「思いの強さ」でリベンジを果たした両校が初の決勝進出 〜第87回選抜高校野球・準決勝〜

大会初の休養日を経て行われた第87回選抜高校野球・準決勝は、2試合とも「歴史的」と呼ぶべき結果となった。

(私事だが、昨日は急に仕事が休みになり、日曜日の準々決勝に続いて準決勝をじっくりと観ることができた。そこで目の当たりにしたこの「歴史的事件」。これは子供のころからの高校野球大好き人間の私への、野球の神様の御計らいとしか思えない。この幸運に心から感謝、だ


【 第1試合 : 敦賀気比 11−0 大阪桐蔭 】

昨夏の甲子園でも準決勝で激突した両校。この時は敦賀気比が初回に5点を奪いながら、エース平沼が大阪桐蔭打線の猛打を浴び、9−15で逆転負けを喫している。敦賀気比としてはこの時の雪辱を期しての一戦だった。

試合は思いもよらぬ展開になった。初回、2死満塁で背番号17の6番・松本が満塁弾を左中間スタンドに叩き込む。続く2回、3本の長打で2点を追加し、なおも2死満塁として、打席はまたも松本。「2打席連続満塁ホームランなんかになったら、史上初じゃないか」と私が心でふっとつぶやいたら、本当にその通りになった。内角のストレートをうまく腕をたたんでとらえ、打球はレフトスタンドへ。1試合で2本の満塁弾は大会タイ記録だが、それを同じ選手が、2打席連続で、しかも2イニング連続で達成したのは、春夏通じて初めてのことだ。こんな歴史的瞬間を目の当たりにできた幸運に、私は野球の神様に素直に感謝した。

この松本の二振りで昨夏のリベンジを果たした敦賀気比だが、エース・平沼の好投も見逃してはいけない。「1回表に満塁弾で大量リード」これは昨夏の準決勝も同じだった。この時は5点を先制したが、1・2回で5点を奪われて同点に追いつかれた。その後も猛打を浴び、平沼は12失点で6回途中で降板し、大逆転負けを喫した。

しかしこの試合の平沼は、4点リードの初回、10点リードの2回をともに冷静に抑えた。野球、特に高校野球は、点を取ったそのあとの守りでしっかり抑えることが大切だが、大量リードに浮つくことなく抑えることができたのは、昨夏の苦い経験を教訓にして心身にしみこませていたからだろう。力任せではない、緩急を使い、内外角に投げ分け、コンビネーションのいい投球で強打の大阪桐蔭打線を翻弄し、散発4安打の見事な完封勝ちを収めた。


【 第2試合 : 東海大四 3−1 浦和学院 】

戦前の予想では、投打ともに上回る浦和学院が有利と目されていた。昨秋の明治神宮大会では、10−0の6回コールドで浦和学院が圧勝している。しかし東海大四は、この時のリベンジを期してこの冬、雌伏の時を過ごしていた。

2回、浦和学院は連打で1死1・3塁のチャンスをつかみ、エース・江口が自らライト線へタイムリー2塁打を放って先制。しかし続く1死2・3塁を東海大四のエース・大澤がしのぎ(2死後の1・3塁で、2番・台の三遊間へのゴロを、サード立花が好捕して1塁に刺したのが大きかった)、最少失点で抑えた。

その裏、東海大四は先頭の4番小川が死球で出塁し、送りバントで2進。内野ゴロで3進後、7番大澤が高目のスライダーにうまくバットを合わせてセンター前にタイムリー。こちらもエースが自ら殊勲打を放った。このあと死四球で満塁とし、1番富田の放った1・2塁間へのゴロをセカンド台が弾き、大澤が生還(これはエラーというには気の毒なむずかしいゴロだった)。先制されてすぐに追いつき、さらに逆転に成功。試合の流れを引き戻す、東海大四のすばらしい反発力だった。

3回表、浦和学院は先頭の津田が左中間に2塁打を放つ(これは低目の速球を上から叩いた見事な一打。浦和打線のすごさが垣間見えるすばらしいバッティングだ)。しかし1死後、5番幸喜の放った痛烈なピッチャーライナーを大澤が弾き、これをショート富田がダイレクトキャッチ。目の前に2塁ランナーの津田がいて、一瞬でダブルプレー。「こんなことがあるのか」というプレーだが、球運が東海大四に傾きつつあることを示したシーンといえた。

この後も再三のピンチを粘り強く防ぎ、1点リードのままで迎えた6回裏、東海大四は1死1・3塁から大澤が初球セーフティースクイズを鮮やかに決め、貴重な追加点を挙げる。この前に6番塩田が振り逃げで生き、2塁走者が3進している。この3進があったからのスクイズであり、このあたりにも東海大四の球運を感じた。

2点差で迎えた9回表、浦和学院は1死から連打で1・2塁とし、同点のランナーを出す。しかしここでも大澤がふんばり、後続を連続のフライに打ち取ってゲームセット。東海大四は目標だった「打倒・浦和学院」をついに果たし、初の決勝進出。北海道勢としても、第35回大会(1963年)の北海以来、52年ぶり2度目の決勝進出となった。これもまた歴史的な快挙である。

(ちなみに52年前の北海の決勝進出では、準決勝で優勝候補の早実と対戦し、9回裏にエース吉沢の逆転サヨナラランニングホームランで劇的な勝利を挙げている。北海道勢の活躍は常にドラマを生むようだ)


東海大四の勝因:すぐに同点・逆転した反発の強さもあったが、大澤投手をはじめとする粘り強い守りが第一だと思う。9安打を浴び、再三のピンチを迎えながら、冷静で丁寧な投球を続けた大澤と、それを支えたバックの好守。そしてそれぞれの胸中にあったのはただ一つ、「打倒・浦和学院」だっただろう。


第2試合でTV解説の鬼嶋一司氏が「今日勝った2チームは、ともに『思いの勝利』でしたね」と語った。浦和学院の森監督も試合後「相手の方が勝つ執念が上でした」とコメントした。ともに昨年の屈辱を胸に、見事にリベンジを果たした両チーム。どちらが勝っても初優勝である。今は決戦の時をじっと待つのみだ。

posted by デュークNave at 07:15| Comment(0) | スポーツ-高校野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月21日

毎年春と夏に舞い降りる、「甲子園」という名の聖地

スポーツ専門誌「Number」の最新号は、「甲子園最強高校伝説 覇者たちの夏」と題する甲子園特集。

(当初の発売予定は2週間前だったが、なでしこジャパンの快挙で急遽予定を変更した。この臨機応変さはさすがNumberである)


(主な内容)

・[巻頭スペシャル対談] 江川卓×桑田真澄 「甲子園の神に魅入られて」

・PL学園 「KKの背中を追え」 〜春夏連覇組の85年と87年〜

・池田 「怪童たちが見た天国と地獄」 〜82年早実戦と83年PL戦〜

・早稲田実業 「早実三代」 〜王貞治、荒木大輔が語る〜

・駒大苫小牧 「尽きせぬ闘志がこじ開けた扉」 〜2004年決勝 vs済美〜

・佐賀北&佐賀商業 「重なり合う旋風の轍」 〜二つの奇跡を辿る〜

・熊本工業 「無冠の古豪が貫く流儀」 〜44勝で優勝ゼロの謎に迫る〜

・常総学院 「木内幸男、名将最後の哄笑」 〜常識を超え続けた60年〜


私のような永年の高校野球ファンにはたまらない記事の連発で、夕食の時間も忘れて読みふけった。

そして読みふけるうち、思わず赤ペンを取り出してあちこちに線を引き始めた。ハードカバーや文庫本を読む時にはいつも赤ペンを用意する私だが、雑誌を読みながら赤ペンを手にすることはめったにない。しかし今回のNumberには、思わずそうしたくなるような「名言」が散りばめられていたのだ。

その名言をここに抜粋する。

【江川・桑田の対談より】

江川「僕、甲子園と阪神甲子園球場は違うと思ってるんです。甲子園っていうのは春と夏、どこからかやってきます。神様が甲子園を置いておく場所があって、そこからピューッとやってくる。で、高校野球が終わると、またフッといなくなる。そこには阪神が本拠地としている阪神甲子園球場が元通り。春と夏だけ、神様が高校生のために甲子園という聖地を届けてくださると・・・僕は今でもずっとそう思ってます」

この言葉には、安易にコメントできない、というより許されないだろう。その魅力を味わった人たちだけに語ることが許される、アンタッチャブルな世界だ。

【早稲田実業「早実三代」より】

王「(甲子園大会が)東京でないところでやっているというのが魅力というか、独特の色になっている。なんでも東京で日本一が決まる中で、高校野球の日本一だけは西の甲子園で決まる。西の人にとっては甲子園大会は誇らしい勲章みたいなものなんじゃないだろうか

こんな切り口で甲子園大会を見たことはなかった。巨人(東京)での栄光を打ち捨てて西のダイエー(福岡)に飛び込み、苦闘の末にここでも栄冠を勝ち得た王さんならではの「外からの視線」だ。

【佐賀北&佐賀商業 「重なり合う旋風の轍」より】

1994年決勝、9回表に決勝の満塁ホームランを放った佐賀商・西原:
「打席に入る前から、周り全体がスローモーションのようになっていた。ボールが糸を引くように見えて。すごくいい集中力というか。僕は滅多に初球を打たないんですけど、気がついたら身体が勝手に反応していた」

2007年決勝、8回裏に逆転満塁ホームランを放った佐賀北・副島についての記述:
「(2球目から)先の記憶は断片的だ。バットを振る。ボールを捕らえる。一塁へ走り出す。レフトが見送っている・・・記憶が戻るのは、ベンチに座ってからである。『頭が真っ白になって、気がついたらベンチでみんなと抱き合ってました』」

これはともに、「ZONE」に入っていた典型的な例だ。同じ佐賀県の同じ公立校が、同じように決勝戦での満塁ホームランで優勝する。これも「勝利の女神の見えざる手」の計らいなのか。

【常総学院 「木内幸男、名将最後の哄笑」より】

木内「嬉しそうな顔をしてマウンドに上がったピッチャーは、みんないいピッチングをするんだよ」

常総学院とライバル関係にある水城・橋本監督:
「普通、練習試合っていうと、選手の練習だと思うでしょう。でも、木内さんは違うんです。練習試合を通して、ありとあらゆる戦術を監督が練習してるんですよ。そうやって持ち駒を掌握しているからこそ、公式戦になったときに意のままに選手を使うことができるんです」

木内「勝って不幸になる人間はいないのよ。それに、勝って喜びを知れば、人間は我慢ができるようになる。つまり、修養を積ませるには勝つチームにするのが一番カンタン。それに気づいちゃったのよ!」


「木内マジック」と呼ばれた奇策の内実は、選手の能力や性格を把握していたからこその起用、采配だった。本人にとってはマジックでも奇策でも何でもなく、常に根拠のあることだったのだ。


「甲子園」は、そこを目指す者にとっても、そこでの熱戦の数々、幾多のドラマを見つめる者にとっても、汲めども尽きぬ魅力にあふれている。私は来年もまた、新たに刻まれるドラマを求めて、春と夏に阪神甲子園球場に舞い降りる「甲子園」という名の聖地を見つめるだろう。

posted by デュークNave at 10:48| Comment(0) | スポーツ-高校野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

投打に強すぎた日大三/東北の悲願はまたしても成らず 〜夏の甲子園・決勝〜

またしても東北の悲願「優勝旗の白河の関越え」は成らず−。夏の甲子園・決勝は、日大三(西東京)が投打に本領を発揮して光星学院(青森)に11-0で快勝、10年ぶり2度目の全国制覇を達成した。

もともと打線の迫力で上回っている日大三の優位は動かないと思っていたが、それにしても強すぎた。光星学院・秋田の調子は決して悪くなく、むしろ序盤はストレートも伸び、変化球もコントロールよく内外に配して、日大三の破壊力ある打線を抑えていた。しかし3回裏、2死からランナーをため、わずかに甘く入ったところを5番・高山の一発を浴び、一振りで3点を先制される。このどこからでもヒットが、しかも長打が飛び出すのが日大三打線のすごさだ。

その後も秋田は丹念に投げたが、さすがに疲れがたまっていたか、徐々にコントロールが甘くなり、それを逃さない日大三打線の痛打を浴びる。7回には、クリーンアップの3連続タイムリーと鈴木のホームランで一挙5点、試合を決めた。

(この主軸の3連打にはうなった。特に3番・畔上の、アウトローに落ちる変化球を泳ぎながらバットに乗せ、それが右中間を破った一打には、「何であの打ち方であそこまで飛ぶんだ?」と、驚きを越えて呆れる思いだった

わずかなコントロールミスを逃さず長打を浴びせる、破壊力抜群の打線。2死から四死球を出しても、下位打線でも長打一発で失点してしまうため、投手は気の休まる暇がない。この決勝での秋田投手もそうだったが、序盤は何とか抑えていても、疲れが出る終盤にはつかまってしまう。しかも長打の連発で一気にビッグイニングを作られてしまう。もう「どうにも止まらない」恐るべき打線だ。

投げてはエース吉永が、今大会のベストピッチといっていい完璧なピッチングを披露。前日の準決勝で小倉監督が「今日も先発させたら吉永が壊れてしまう」とリリーフに回したほど疲労がたまっていたはずなのに、やはり決勝の晴れ舞台で気合が入っていたのか、立ち上がりから球威・コントロールとも抜群。特に左打者にしか投げないという、外に逃げながら落ちるシンカーが冴えていた。最大のピンチだった5回表の2死1・2塁からの秋田のライト前への快打には、先制3ランを放った高山が見事なワンバウンド返球を見せてホームインを阻止。流れを渡さなかった。この鉄壁のディフェンスに守られながら、疲労がピークだったはずの決勝戦でベストピッチを見せたエースの気迫の快投には、ただ「あっぱれ!」だ。

この決勝戦で見せた日大三の完璧な投打には、恐らく全国のどんな強豪校が挑んでも勝てないだろう。光星学院を応援していた私も、あまりの強さに、試合の記述はこの通り日大三一色に染まってしまった(苦笑)。それほど完璧な、ちょっと感動してしまうほどの強さだった。

かたや光星学院。42年前の三沢高校以来の青森県勢の決勝進出を果たしたが、日大三のパワーに粉砕されてしまった。しかし初めて決勝進出を果たし、東日本大震災の被災地である地元は盛り上がっただろう。

「東北の悲願」はまた来年に持ち越しだ。まあ、「また楽しみがつながった」と思うことにしよう。


posted by デュークNave at 06:55| Comment(0) | スポーツ-高校野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月01日

大接戦とワンサイドゲーム:試合展開を分けたもの 〜センバツ2011・ショートレポート Vol.7〜

< 大会第9日 >

準々決勝最初の2試合。1試合目は1点を争う大接戦、2試合目は意外なワンサイドゲーム。対照的な展開になったこの日の2試合の分岐点はどこにあったのでしょうか。

【 九州国際大付 5-4 北海 】

  九州国際大付  100 110 020  5

  北      海  001 100 101  4

ともに好投手を擁していますが、打線の迫力はここまで4ホーマーを放っている九州国際大付が上。北海が勝機を見出すとすれば、平川監督が試合前に語ったように「これまでの2試合同様、粘ってついて行くしかない」と思われました。

ところがいきなり初回、玉熊投手が4番・高城にタイムリーを浴びます。過去2試合で1失点の玉熊にとっては早すぎる失点であり、ロースコアの接戦に持ち込みたい北海にとっても痛い失点でした。

しかしこの日の北海打線は、これまで以上にしぶとさを見せました。3回裏、2塁打と内野ゴロで2死3塁とし、暴投で同点に追いつきます。幸運ではありましたが、3塁まで走者を進めていたからこその同点劇でした。

さらにつばぜり合いは続きます。九国大付が4回に高城・花田の長短打で勝ち越すと、北海はその裏、2死2塁から氏家が同点タイムリー。しかし九国大付は5回2死1・2塁から、高城がファールで粘った末にライト前に勝ち越しタイムリー。イニングごとにめまぐるしく試合が動きます。

この5回の玉熊−高城の対決が重要でした。カウント1ボール2ストライクから、外へのボールになるスライダーを高城が続けてファールで粘ります。玉熊にとってはまだ絶対有利なカウントであり、続けてボール球で誘うべきでした。しかし次のスライダーが少し中に入ってライトへ運ばれ、再び勝ち越しを許してしまいました。

しかし粘る北海は7回、6番・玉木が3塁線を破って今大会初安打を放つと、続く代打・石川が初球を叩いてまたも3塁線を破り、再び同点に追いつきます。この日の北海打線は、過去2戦を上回るしぶとさでした。

8回、九国大付がまたも突き放します。先頭の6番・花田がライトにホームランを放って3度目の勝ち越し。さらにヒットと送りバントで2死2塁とし、1番・平原がレフト前に貴重なタイムリー。九国大付がこの試合で初めて2点のリードを奪います。

この終盤での2点差は大きく、「さすがにこれは勝負あったか」と思いましたが、最終回に最後のドラマが待っていました。4番・川越がショート後方に放ったフライを巡ってショートとレフトが交錯して落球し、2塁打となります。内野ゴロと四球で1死1・3塁とし、7回に快打を放った石川がここでも積極的なバッティングを見せ、三遊間を破ります。これで5-4、なおも1死1・2塁の同点のチャンスです。

しかしここで三好は最後の踏んばりを見せ、三振とピッチャーゴロでゲームセット。1点を争う大接戦をきわどく凌ぎ切った九国大付が、福岡県勢としては42年ぶりの準決勝進出を果たしました。

この試合のポイントは、九国大付が最後までリードを許さなかったことにあると思います。試合後北海の平川監督は「4・5回をきっちり抑えたかった」と語っていました。確かに同点に追いついた次の回(4・5・8回)をゼロで切り抜けていれば、その後の試合展開は変わっていたでしょう。追いつきはするが勝ち越せなかったことで、北海は最後まで主導権を握ることができませんでした。

取って取られてまた取り返す。選手たちにとっては精神的にきつい試合展開だったと思います。しかし大崩れすることなく粘り強く投げた三好・玉熊の両投手、そしてこの好投手にしぶとく食らいついた両校の打線。最後の最後までどう転ぶかわからない、双方が死力を尽くした好試合でした。

(この試合も大会後、ベストゲームの1つに数えられるでしょうね)


【 日大三 13-2 加古川北 】

思わぬ大差がついたこの試合。2試合連続完封の加古川北・井上投手が日大三の猛打を浴びましたが、私が思うに、これは過去2試合の相手打線と日大三打線の絶対能力の違いだと思います。

井上投手の持ち味である「軟投」。130キロ前後のストレートを速く見せる多彩な変化球のコントロールとコンビネーションが、この投手の生命線です。

しかし日大三のようなパワフルかつシュアな打線に相対すると、これまで以上に精密なコントロールと、打者のタイミングを外す巧みな配球が求められます。そして結果的には、過去2試合通用した軟投が日大三打線には通じませんでした。

初回、2安打と四球でいきなり1死満塁のピンチ。併殺崩れで先制点を許します(これが井上投手の今大会初失点です)。続く2回、2死2塁から死球をはさんで3連打を浴び、4点を失います。これまでの井上投手からは考えられない大量失点です。

井上投手の調子は決して悪くはなかったと思います。しかしわずかなコントロールの甘さを逃さない勝負強さ、そして狙ったコースに投げても、それをバットを振り切って力で運んでしまうパワー。日大三打線は、過去2試合の相手打線をはるかに上回る、ハイレベルで迫力のある、投手にとっては非常に神経を使わされる打線なのです。井上投手は打者一人一人に神経をすり減らし、少しずつ投げる球が甘く入り始め、日大三打線の痛打を浴びてしまいました。

加古川北も最終回、4安打を集中して意地の2点を返しましたが、反撃もここまで。結局日大三は先発全員・毎回安打の22安打・13得点で圧勝。特に3番・畔上は、大会タイ記録となる6安打と打ちまくりました。優勝候補の筆頭と目される日大三が、準優勝した昨年に続くベスト4進出を果たしました。

準決勝第1試合は、この日の勝者・九州国際大付−日大三と決まりました。総合力では日大三が一枚上かと思いますが、カギとなるのはやはり九国大付・三好投手と日大三打線の対決でしょう。三好投手が日大三打線の爆発を粘り強くしのぐことができるか。これが最大の注目点でしょう。

posted by デュークNave at 07:30| Comment(0) | スポーツ-高校野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月31日

やはり「春は投手力」:安定した投手力が勝ち上がる第一のカギ 〜センバツ2011・ショートレポート Vol.6〜

< 大会第8日 >

この日の3試合はともに大差がついてしまいましたが、勝敗を分けたのは投手力、つまり「ピンチで投手が踏んばることができたか否か」でした。

【 履正社 8-2 九州学院 】

初戦の総合技術戦では背番号18の渡邊投手が2安打完封の快投を演じた履正社でしたが、この試合はエース・飯塚が先発。対する九州学院は、この試合も左腕・大塚が先発です。

初戦の国学院久我山戦では6点リードを追いつかれ、「逃げのピッチングになってしまった」と反省する大塚。この試合ではその反省を生かし、初回を3者三振に討ち取るなど、思いきりのいいピッチングで上々の立ち上がりを見せます。一方今大会初登板の飯塚も、ピンチは招きながらも要所を抑えて得点を与えません。

初戦よりははるかにいい立ち上がりを見せた大塚でしたが、少しでも甘く入るとジャストミートしてくる履正社打線を見て、「これは相当にコントロールに気をつけないと危ないぞ」と思いました。そして3回裏、早くもその懸念が現実になります。ヒットと送りバントで1死2塁、ここで1番・海部が左中間に2塁打を放ってすばやく先制します。

大塚は続く1死満塁のピンチは踏んばりますが、4回には1死1・3塁からスクイズと海部のタイムリーで2点、5回にも2本のタイムリーで2点を失います。甘い球を逃さない履正社打線の圧力に、大塚は徐々に押されていきます。

一方の履正社・飯塚は初回から毎回走者を許しますが、丁寧なピッチングで決定打を許しません。九州学院は6回、その飯塚からようやく坂井のタイムリーと大塚の犠牲フライで2点を返します。

しかし飯塚はこのあともペースを乱さずに淡々と投げ続け、九州学院にチャンスを作らせません。8回裏、履正社は1死2塁から短長打とパスボールでダメ押しの3点を挙げます。エース飯塚が安定した投球を見せ、打線も先制、中押し、ダメ押しと着実に得点を重ねていった履正社の快勝でした。

【 鹿児島実 7-2 城南 】

結果的には総合力に勝る鹿児島実の順当勝ちですが、試合の流れを決めたのは正念場での集中力でした。

初回のチャンスを逃した鹿実は2回裏、簡単に2死となりますが、ここから下位打線が爆発します。丸山・宮永の連打で1・3塁とし、9番・佐々木のセンター前タイムリーでまず1点。さらに1番・豊住もレフト前に運んで2点目。2死からの4連打で鹿実が試合の主導権を握ります。城南・竹内は下位打線の連打で動揺したのでしょうか。ここは粘ってほしかったですね。

鹿実はさらに5回、2死2塁から揚村・黒木の連続長打と暴投で3点を追加します。ここも2死からの得点でした。この集中打で試合は鹿実に大きく傾きます。

5回まで野田に2安打に抑えられていた城南は6回、盗塁とエラーなどでようやく1点を返します。7回には3連打で1死満塁とし、暴投で1点を追加。しかし竹内の痛烈なライナーは野田にさばかれ、反撃もここまで。15安打の猛攻と13三振を奪った野田の好投で、鹿実が初優勝した第69回大会以来15年ぶりのベスト8進出を決めました。

【 東海大相模 13-5 大垣日大 】

東海大相模が20安打13得点の猛攻で圧勝しましたが、これほどの大量得点、そしてこれほどの大差がつくとは意外でした。

原因の第一は、大垣日大のエース・葛西の不調にありました。阪口監督が試合前のブルペンでの投球を見て、「あまりコンディションがよくないな」と不安だったそうですが、それがはっきりと試合に出てしまいました。初戦の東北戦で見せた低目へのキレのいい変化球がほとんど見られず、いずれも高目に浮いて東海大相模打線の痛打を浴びます。1回裏、1死1・2塁から佐藤に同点タイムリーを打たれ、2死後森下・磯網の長短打でこの回4点を失います。続き2回にも佐藤の2点タイムリー、4回には4連打でさらに2点と、4回までに8点の大量リードを許します。

一方の東海大相模の先発は、公式戦初登板の左腕・長田。初戦の関西戦では、同じく公式戦初登板の背番号17・庄司が先発し、庄司は緊張しながらも、打線の援護に守られて6安打1失点で完投勝利を挙げました。当然長田はこの庄司の好投に刺激を受けたでしょう。初回こそ先制点を許しましたが、初戦と同様打線の援護を受け、5回まで1失点で乗り切ります。

大垣日大はようやく6回、3連打で1点を返し、なお無死1・3塁。ここで投手が初戦好投の庄司に代わりますが、四球と暴投でさらに1点追加。2死後、エース・近藤が今大会初めて登板しますが、暴投とタイムリーでさらに2点を失います。4安打2四球2暴投で4点。打者一巡の猛反撃でした。

大垣日大は7回にも1死満塁のチャンスを作ります。5点差に追い上げてのこのチャンス、ここで追加点を挙げていれば一気に勝敗の行方は混沌となったでしょうが、ここで東海大相模のエース・近藤が踏んばってピンチを切り抜けます。この正念場でのエースの粘りのピッチングが、チームを勝利に導きます。

東海大相模はその裏、1死満塁から連続タイムリーで2点を追加。さらに8回には2死1・2塁から、リリーフした近藤が自らタイムリー2塁打を放ち、ダメ押しの2点を挙げます。

両チーム合わせて33安打が飛び交う壮絶な打撃戦でしたが、要所を抑えた東海大相模が11年ぶりの準々決勝進出を決めました。


いずれの試合も、投手が点を取られながらも大崩れせず、ピンチで粘り強い投球を続けたチームが勝っています。「野球は70%が投手で決まる」と言われ、特にセンバツは「春は投手力」と言われますが、これはどんな試合にもあてはまる真理です。

どんなに守備力がいいチームでも、ピッチャーが甘い球を投げて外野に大飛球を次々に打たれたり、ピンチで弱気になって四死球を連発していてはカバーのしようがありません。逆にいかなる強力打線でも、投手が丹念にコーナーを突く投球を続ければ、そう連打はされないでしょうし、大量失点にもなりません。「野球はピッチャーがボールを投げないと始まらない」とはよく言われることですが、まず投手がしっかりと安定した投球ができてこそ、勝利への道が開けるのです。

今日からはいよいよ準々決勝。ここまで勝ち進んできた8チームは、いずれも安定した投手力を持っています。その安定感をいかに保てるか、逆に相手打線はその投手の乱れやスキにいかにつけ込めるかが、勝敗を分けるカギになるでしょう。4試合とも、ハイレベルなしのぎ合いが見れそうですね。

posted by デュークNave at 07:49| Comment(0) | スポーツ-高校野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする