2022年12月21日

メッシの悲願、ラストチャンスでついに成就! 〜ひどく私的な”サッカーW杯Qatar2022”観戦記(9)

アルゼンチンVSフランスの決勝戦。1つの試合としてもまれに見るスリリングでドラマチックな展開だったが、それがワールドカップの決勝という、これ以上ない世界最高峰の舞台で観ることができるとは…! NHKの現地解説やスタジオでの解説の方々も口々に「いいものを見せてもらった」と感慨していたが、確かに言葉にするとそれしか言いようがない。多言を要しない「すばらしい試合」だった。

試合はアルゼンチンペースで始まった。特に目を引いたのが、今大会初スタメンとなったFWディマリアの動きだ。メッシとともにアルゼンチンの攻撃陣を永年担ってきたベテランが、W杯決勝の大舞台で縦横無尽の活躍を見せた。アルゼンチンが中盤でボールを持つと、左サイドに大きく展開しているディマリアの姿が目に入る。「あ、あそこにパスを出せばチャンスになるな」と素人目にもわかる。そしてパスを受けると、ドリブルやステップで内に切れ込んだり、敵陣深く侵入してクロスを上げたりと、変幻自在にフランスのDF陣を翻弄した。

そうして迎えた前半23分、左サイド深くでこぼれ球を拾ったディマリアがDFデンベレをかわしてPA内に侵入すると、デンベレがたまらず足を引っかけて倒す。主審は即座にPKの判定。これをメッシが冷静に決めてアルゼンチンが先制した。これでメッシは大会通算6得点目、エムバペを抜いて単独トップに立った。ディマリアが作った絶好の得点機をメッシがしっかりとものにする。2人のホットラインが決勝の大舞台でよみがえった。

さらに前半36分、個人的にはこの試合のベストゴールと呼びたい華麗なるゴールが生まれる。アルゼンチンが自陣最終ラインからワンタッチ・ツータッチのパスをつなげ、左サイドを駆け上がってラストパスを受けたディマリアが、得意の左足でゴールネット右隅を揺らした。


このシュート、体を横に倒してセーブしようとするGKロリスをかわすため、ボールをわずかに浮かせて蹴っている。このスロー再生映像を見た時、私はあるシーンを思い出した。日本がW杯初出場を果たした1998年フランス大会の初戦・アルゼンチン戦。前半、ゴール前で日本DFのクリアがこぼれたところにFWバティストゥータが詰め、GK川口がこれを体を倒してセーブしようとしたが、バティはフッとボールを浮かし、ボールはゆったりとゴールネットを揺らした。ディマリアとバティストゥータがとっさに見せたこの「柔らかさ」。レーザービームのような強烈なシュートばかりが点を取れるわけじゃないことを示した、ストライカーの面目躍如だった

私はこの鮮やかな展開からのファインゴールを見た瞬間、「これがこの試合の決勝ゴールになってほしい」と思った。メッシの悲願、アルゼンチンの「マラドーナ以来」36年ぶりの優勝を飾るにふさわしいゴールじゃないか。事実、前半はこのままのペースで終了。後半に入っても、フランスはいい攻撃の形をほとんど作れないままでいた。

しかしサッカーの神様は、もう一人のストライカー・エムバペをそのままにはしておかなかった。ややフランスが押し返し始めたかと思われた後半33分、エムバペが相手DFの裏に出したパスをFWコロムアニが追い、PA内に入ったところでDFオタメンディが倒してしまう。PKになり、キッカーはもちろんエムバペ。これを左隅に強烈に蹴り込んで1点差。

さらにその直後、中盤でドリブルを仕掛けたメッシからMFコマンが体を入れてボールを奪い、右サイドをドリブルで駆け上がる。中央のFWチュラムにパスを送り、さらにPA手前のエムバペへ。これを頭で中央のチュラムに返してPA内にダッシュするエムバペに、チュラムがワンタッチでループパス。これをエムバペがダイレクトで合わせ、ゴール右隅に叩き込んだ。2分足らずでエムバペが2ゴールを決め、フランスが一気に同点に追いついた。こんな大転換、後半30分までにはまったく想像できなかった。


(それにしても、ディマリアのシュートもすばらしかったが、このエムバペのシュートもものすごい。ゆるいループパスを、ボレーであれほど強烈なレーザービームで打てる。天賦のストライカーなんだな、この23歳は

「とんでもない決勝になりました。」TV実況のアナウンサーのが声が上ずる。確かにとんでもない、思いもしない展開になった。後半19分にベンチに退いたディマリアは、どんな思いでこのシーンを見つめていたのだろうか。

だが一気にフランスが逆転かと思われた試合の流れをアルゼンチンが押しとどめ、試合は延長戦に入る。前半15分は一進一退で推移し、迎えた後半3分。ゴール前へのループパスからチャンスを作り、GKロリスがセーブしたこぼれ球をメッシが押し込んだ。メッシは場内のアルゼンチンサポーターの熱狂とともに喜びを爆発させる。

「今度こそこれで決まりだな」と思ったが、サッカーの神様は最後にもう一つ「ひねり」を用意していた。延長後半11分、フランスの右CKのこぼれ球を拾ったシュートがDFモンティエルの肘に当たる。主審の判定は当然PK。場内が一瞬凍りついた。キッカーはまたもエムバペ。すさまじいプレッシャーがかかる場面だったが、豪快に左隅に蹴り込み、フランスがまたもや同点に追いついた。エムバペはこれでハットトリック、今大会通算8得点となり、メッシを抜いて単独トップに立った。…それにしても、信じられないような場面の展開が、1度ならず2度も起こる。何という試合だろう。

こうして迎えたPK戦。これについては、もはや多くは語りたくない。ファーストキッカーはともにエース、エムバペとメッシがきれいに決める。しかしその後フランスは2人が連続して失敗し、アルゼンチンは2人とも決める。アルゼンチンの4人目・モンティエルが左隅に決め、ついにこの大激戦に決着がついた。…それにしても、これだけの劇的な大熱戦を、PK戦という、運も多分に作用しそうな方法であっけなく勝者と敗者に分けてしまう。他にやり方はないんだろうが、いつもむなしさを感じる。だからこの試合はPK戦にもつれこまないことを願っていたんだが…。

(記録上は引き分け扱いだが、PK戦で敗れた方はやはり敗者になってしまう。得点王に輝いたエムバペの、表彰式での悔しさをじっとこらえる表情が、それを如実に物語っていた

優勝、アルゼンチン。1986年メキシコ大会、あの「マラドーナの大会」と呼ばれたメモリアルな優勝以来、36年ぶり3回目の栄冠だ。そして35歳のリオネル・メッシは、最後と思われるW杯5回目の挑戦で、ついに悲願を達成した。しかも史上初の2度目のMVPという大きなご褒美つきで!8年前のブラジル大会でもMVPに選ばれたが、この時は決勝でドイツに敗れたため、表彰式の時に笑顔はなかった。しかし今回は、チームメイトたちの万雷の拍手の中、満面の笑顔での表彰になった。波乱万丈だった彼のサッカー人生の、これ以上ない大団円だ。

最後に大きな盛り上がりを見せて閉幕したW杯2022カタール大会。終わった後にいつも味わう、「祭りのあと」のような喪失感。サッカーW杯はいつも巨大で華麗なる祭典だが、今大会はとりわけ劇的なシーンが多かった気がする。やはり「メッシの悲願がラストチャンスでついに成就!」というフィナーレが強烈な残像を残しているんだろうな。最後は、この言葉で締めくくろう。

Bravo, Argentina! Bravo, Messi!




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2022年12月15日

この3ゴールを見て、決勝はアルゼンチンを応援すると決めた 〜ひどく私的な”サッカーW杯Qatar2022”観戦記(8)〜

【準決勝1】< アルゼンチン VS クロアチア >

なんかこの試合を語るのには多言を要しない、というかあまりベラベラ語っちゃいけない気がする。とにかく「アルゼンチンの3ゴールがすばらしかった!」、この一語に尽きる。

前半32分、ハーフウェイライン付近からのMFフェルナンデスのロングフィードに抜け出したFWアルバレスがクロアチアGKリバコヴィッチと1対1になり、接触してPKをもらう。キッカーはメッシ。ゴール右上の隅に豪快に蹴り込み、アルゼンチンが待望の先制点を挙げる。メッシはこれでW杯通算11得点となり、バティストゥータを抜いてアルゼンチン選手の単独トップになった。

(このPK、日本戦・ブラジル戦と2試合連続でPK戦でファインセーブを連発していたリバコヴィッチでも及ばない、GKにとってはノーチャンスのキック。メッシの気迫がこもったすばらしいゴールだった

さらに前半39分、カウンターからのこぼれ球を拾ったアルバレスがドリブル突進。PA内で相手DFを2人かわし、GKもかわしてゴールにねじ込んだ。50m独走の技ありゴール。22歳の若さと勢いが爆発した千金の追加点だった。

そして後半24分、この試合のクライマックスゴールが生まれる。スローインからのこぼれ球をメッシがタッチライン沿いで拾ってドリブルで猛然と駆け上がる。PA右外で一度スピードダウンするが、そこから切り返してさらに敵陣深く攻め入り、内に鋭く切り込んだところでラストパス。ゴール前に詰めていたアルバレスが右足で流し込み、ダメ押しの3点目。

このメッシの一連のプレー、スゴ技。35歳にしてあの突進力、周りの上りを待って一度スローダウンし、ターンして敵陣深く侵入、そして内に切れ込んでのラストキラーパス。神業と言うか、すごすぎて言葉が尽くせない。「ウ〜ン!」と腕を組んでうなるだけだった。

何とか一矢報いたいクロアチアだったが、後半36分、この試合でも攻撃に守備に縦横無尽の動きを見せていた司令塔・モドリッチが交代。スタンドのクロアチアサポーターから惜しみない大きな拍手が贈られた。

思えば試合前のコイントスで、メッシとモドリッチの両キャプテンが相対した。ともにバロンドール受賞経験のあるスーパースター、「すごいツーショットだな」とジーンときた。メッシのすごさは言うまでもないが、モドリッチもクロアチアを2大会連続のベスト4に導いた最大の功労者だ。日本を負かしたにっくき奴でもあるが、「敵ながら大あっぱれ!」だろう。

試合は3−0のまま終了。アルゼンチンが2大会ぶりの決勝進出を決めた。「最後のW杯」と公言しているメッシの悲願達成なるか。でもあんなすごいプレーを見せられると、決勝の相手がどっちでも、「これはアルゼンチンを応援するしかない」と思ってしまった。「メッシに優勝させてあげたい!」素直にこう思っている。

そしてクロアチア。モドリッチの言「負けて大会を終わりたくないので、3位決定戦は全力で勝ちに行く」。毎回3位決定戦は「優勝の可能性のない試合」ということで注目度が低く、2014年のブラジル大会ではオランダのファン・ハール監督が「やる意味があるのか」と揶揄したように、監督も選手たちもあまり重視しない傾向があった。

でも考えてみれば「世界第3位を決める試合」だ。その価値はやはり大きい。それに過去の記録を見ると、3位決定戦は点の取り合いになるスリリングな試合が多い。ともにベスト4まで勝ち上がってきたチームの対戦、優勝のモチベーションはないがプレッシャーもないので、選手たちも「失うものはない」と思い切りプレーできるのかもしれない。モドリッチの「最後の輝き」をぜひ見せてほしいものだ。


posted by デュークNave at 04:36| Comment(0) | スポーツ-サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月11日

決勝Tは延長戦・PK戦がやたら多い:ここまで来ると本当に「紙一重」なんだな 〜ひどく私的な”サッカーW杯Qatar2022”観戦記(7)

準々決勝4試合が終わり、ベスト4が出揃った。

クロアチア 1−1(PK4−2)ブラジル

アルゼンチン 2−2(PK4−3)オランダ

モロッコ 1−0 ポルトガル

フランス 2−1 イングランド


4試合とも激戦、PK戦が2試合と1点差が2試合。でも1点差で決着した2試合も、もし同点になっていたらPK戦にもつれ込んでいた可能性が高い。どの試合もまさに「鍔迫り合い」だった。

< クロアチア VS ブラジル >

延長前半アディショナルタイムにネイマールが「うなる」ゴールを決めた時、私のみならず、観ていたほとんどの人は「これで決まり」と思ったはずだ。これでネイマールは代表通算77ゴール、かのペレと並んだ。「病気療養中のレジェンドに捧げる決勝ゴール」ドラマは出来上がっていた。ところが延長後半12分、クロアチアは中盤でボールを奪ってカウンター、左からのクロスにペトコヴィッチがワンタッチで左足を振り抜くと、シュートはブラジルDFに当たってコースが変わり、ゴール左隅に叩き込まれた。タイムアップ寸前のまさかの同点ゴール!

これで流れが変わったのか、前回大会からクロアチアが「得意としている」PK戦にもつれ込むと、ブラジルは1人目と4人目が失敗。対するクロアチアは4人全員が成功し、4−2で決着。ブラジルのW杯は前回同様ベスト8で終幕となった。

それにしてもクロアチア、PK戦を含めた延長戦は前回から通算してこれで5連勝だ。この無類の粘り強さはどこから来るのか。


< オランダ VS アルゼンチン >

後半28分にメッシのPKで2−0となった時、これも多くの人たちは「勝負あった」と思っただろう。しかしオランダは38分にベホルストのヘディングで1点を返し、さらにアディショナルタイム11分、恐らくはラストワンプレーと思われたPA外ほぼ中央からのFKで、壁の真ん中にいる味方に縦パスを送るサインプレー。これを受けたべホルストがターンして冷静に決め、土壇場で同点に追いついた。

これで流れはオランダかと思われたが、延長戦はともにスコアレス。迎えたPK戦では、オランダが最初の2人が相次いでアルゼンチンGKマルティネスに阻まれ、アルゼンチンは5人目が冷静に決めて4−3で勝利。2大会ぶりのベスト4を決めた。

惜しくも2大会ぶりの4強を逃したオランダ。しかしタイムアップ寸前に見せたトリックプレーからの同点ゴール。あんなゴールシーンは、けっこう長くサッカーを見ている私も初めて目撃した。大会後のハイライト番組で必ず取り上げられそうなファインゴールだな。


< モロッコ VS ポルトガル >

アフリカ勢初のベスト4を狙うモロッコと、恐らくは最後のW杯になるクリスティアーノ・ロナウドを擁し、悲願の初優勝を目指すポルトガル。
これまで4試合でわずか1失点のモロッコの堅守を、4試合通算12得点のポルトガルがどう崩すかが焦点だった。

「しっかり守って蜂の一刺しを見舞う」のが身上のモロッコはこの試合でもその持ち味を十分に発揮し、0−0で迎えた前半42分、左サイドからのハイクロスに長身のFWエン ネシリが頭で合わせ、待望の先制点を挙げる。この得点シーン、もともと長身の彼がとんでもなく高く跳び上がり、GKのパンチングより高い位置でヘディングしている。アフリカ選手のバネを生かした目にも鮮やかなゴールだった。

後半、ベンチスタートだったロナウドがピッチに入り、ポルトガルが怒涛の反撃に出る。しかしモロッコはゴール前を5人のDFで固め、決定機を作らせない。結局モロッコがこのまま逃げ切り、アフリカ勢初の4強進出を決めた。一方ポルトガルはまたも悲願ならず、ロナウドとともにベスト8で終幕した。

< フランス VS イングランド >

ともに若手の活躍が目立つ世界ランク4位のフランスと同5位のイングランド。優勝候補同士の激突は予想通りのスリリングな戦いになった。


前半17分、フランスは敵陣PA外でパスを回し、受けたMFチュアメニが右足を一閃。地を這うようなドライブシュートは、GKピックフォードの伸ばす手をかわして左サイドネットに叩き込まれた。まさにワールドクラスの豪快なゴールだった。

後半9分、イングランドはMFハカがPA内でワンツーを仕掛け、ファウルをもらう。得たPKをケインが決めて同点に追いつく。しかし33分、フランスは左サイドからのグリーズマンのニアへのクロスにジルーが頭を合わせ、勝ち越しに成功。サイドラインぎりぎりからピンポイントのクロスを上げるグリーズマンもすごいが、DF3人に囲まれながら難しいニアのヘディングを決めたジルーも「点取り屋」の面目躍如だ。

ところがこの試合、このままおとなしくは終わらなかった。フランス勝ち越しゴールのわずか2分後、またもPA内でフランスDFがファウルを犯し、PKに。キッカーはやはりケイン。同点必至かと思われたが、キックは大きくクロスバーを越えてしまう。絶好の同点機を逃したイングランドはそのまま追いつけず、フランスが準決勝進出となった。


準決勝の組み合わせは、アルゼンチンVSクロアチア、フランスVSモロッコ。スーパースター・メッシの悲願達成なるか。前回シルバーのクロアチアのリベンジか。ディフェンディングチャンピオン・フランスの連覇か。それともアフリカの一番星・モロッコのサプライズ優勝か。いずれの展開になっても非常に興味深い。連日エキサイティングな戦いを繰り広げてきたカタールW杯も、残るはあと4試合。最後まで全く目が離せない、スリリングなエンディングになりそうだ。
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2022年12月07日

”新しい景色”に、またもあと一歩届かず 〜ひどく私的な”サッカーW杯Qatar2022"観戦記(6)

決勝トーナメントRound16・クロアチア戦。1−1のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦へ。日本の最初のキッカー・南野がボールを置き、テレビ画面に彼の背後からの映像が映し出された時、私の目にはゴールマウスがやけに小さく見えた。「あれっ、ゴールってこんなに小さかったっけ?」これは敗北の予兆だったのか。日本は3人がPKを外し、1−3で敗れた。サムライブルーたちが4年間抱き続けてきた「新しい景色」には、今回もあと一歩届かなかった。

この試合のことを詳しく書くことは1日過ぎた今でもとてもできないが、とにかく前半はいい終わり方をした。終了間際の43分、右ショートコーナーからMF堂安がクロス。DF吉田の折り返しをFW前田が押し込み、待望の先制点を挙げる。1次リーグでは逆転勝利を2試合演じてきた日本が、今大会初めて決めた先制点だった。毎試合精力的にハイプレスを続けてきた前田が初ゴールを決めたのは嬉しかった。

しかし後半10分、自陣中盤からのクロスに頭を合わされて同点にされる。この同点ゴール、さほどプレスがかからないペナルティエリアのかなり手前からピンポイントのクロスを上げられ、高さを生かしてあっさり決められてしまったことに私はあっけにとられた。「あんな手前からこんなにあっさり決められるなんて…」時間帯も早かったので、まさかのタイミングでまさかの場所から喫した失点に、私は唖然としていた。

今思えば、この時点でクロアチアは「これで最悪でもPK戦に持ち込める」と考えていたのではないか。前回もPK戦や延長戦をしぶとく勝ちあがっての準優勝、決勝Tの戦い方は熟知している。逆に言えば日本は、そこまで持ち込まれないように90分または120分で決着をつけたいところだった。

この後の経過については書く気力がない。今回も日本はベスト16で歩みが止まった。その厳然たる事実を見つめるだけだ。今大会の4試合を振り返る気力も今はまだ沸かない。「ひどく私的な」観戦記だから許してほしい。…しかし自分には直接関係のないことなのに、そんなにディープなサッカーファンでもないのに、こんなにガッカリするものなんだな。これがワールドカップの魔力か…!
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2022年12月04日

日韓、歴史に残るジャイアントキリング/アフリカ勢も奮闘 〜ひどく私的な”サッカーW杯Qatar2022”観戦記(5)1次リーグ総括(2)Group E - H

[ Group E ](カッコ内は勝ち点)


@日本(6)Aスペイン(4)Bドイツ(4)Cコスタリカ(3)


控え目に見ても、1次リーグ最大の番狂わせはこのグループだろう。その大波乱の中心核にいたのが、誰あろう我らがサムライブルーたちだ。初戦のドイツ戦、前半にPKで先制されるが、後半からシステムを攻撃的な3バックに変え、スピードのあるMF堂安・MF三苫・FW浅野・FW南野を相次いで投入。これが功を奏して30分に堂安が同点ゴール、38分には浅野が勝ち越しのシュートを決めて逆転勝ちした。続くコスタリカ戦は攻めあぐねた果てに痛恨の失点をして敗れたが、勝つしかないスペイン戦では、またも前半に失点するが、後半開始早々の連続得点でまたも逆転。終盤のスペインの猛攻にも耐え抜き、勝ち点6で堂々のトップ通過を果たした。


恐らくはW杯史上初の「ダブル・ジャイアントキリング」、そして日本のみならずアジア勢初の2大会連続の決勝T進出。この時点ですでに歴史を塗り替えているが、彼らのかねてからの目標はまだ上にある。「ベスト8以上」を目指して、まずは初の決勝T1回戦突破に挑む。


スペインは最終戦で日本に苦杯を喫したが、初戦のコスタリカ戦での大量7得点の「貯金」がものを言って2位通過。ドイツは最終コスタリカ戦でのシーソーゲームを制したが、得失点差で3位にとどまった。前々回までは4大会連続ベスト4以上という盤石の強さを誇ったドイツが、2大会連続で1次リーグ敗退という衝撃の結果になった(敗退の主因は、前回は韓国、今回は日本と、ともにアジア勢に敗れたことにある)コスタリカは初戦でスペインに大敗したが日本にしぶとく勝ち、ドイツ戦でも一時はリードし、そのままいけば2位通過だったが、「不屈のゲルマン魂」の逆襲に屈した。


このグループEの戦いは最後の最後までスリリングだった。もし日本がスペインに追いつかれていたら(と言うより、勝ち越しゴールにつながった三苫の折り返しがあと2o遅かったら)、コスタリカが勝ったら日本は敗退だったし、最終的にドイツが2点差で勝ったため、得失点差でドイツが2位になり、日本はやはり敗退していた。W杯のすさまじさが凝縮された熾烈な戦いだった。



[ Group F ]


@モロッコ(7)Aクロアチア(5)Bベルギー(4)Cカナダ(0)


このグループも波乱と言っていいだろう。台風の目となったのはモロッコだ。初戦で前回準優勝のクロアチアと引き分け、次戦で前回3位・世界ランク2位の「赤い悪魔」ベルギーを破る。最終カナダ戦の接戦も制し、見事に無敗で首位通過、36年ぶりの決勝T進出を決めた。クロアチアは1勝1引き分け・勝ち点4で迎えた最終ベルギー戦をしぶとくスコアレスドローに持ち込み、2位を確保した。優勝候補の一角と目されたベルギーは、第2戦でモロッコに不覚を取り、最終戦でクロアチアを攻めきれずに敗退。司令塔デブルイネが「我々は歳を取りすぎた」とつぶやいたように、前回から世代交代が進まなかったのが敗因か。カナダは全敗に終わったが、2試合は1点差の敗戦、あと一歩だった。



[ Group G ]


@ブラジル(6)Aスイス(6)Bカメルーン(4)Cセルビア(1)


このグループは順当か。ネイマールを擁するサッカー王国ブラジルは順調に2連勝、早々に1次リーグ突破を決めた。スイスは第2戦でブラジルに敗れたが、最終戦でセルビアとの接戦を制して2位通過。カメルーンは最終戦でブラジルを破り、2002年日韓大会以来のW杯での勝利を挙げた。「ピクシー」ことストイコビッチ監督率いるセルビアは、最終スイス戦で勝てば2位の可能性があったが競り負け、未勝利で大会を後にした。



[ Group H ]


@ポルトガル(6)A韓国(4)Bウルグアイ(4)Cガーナ(3)


このグループは最終戦で波乱が待っていた。クリスティアーノ・ロナウド率いるポルトガルは実力通りに2連勝、最終戦を待たずして決勝T進出を決めた。2位争いは熾烈だった。最終戦を残してガーナが勝ち点3、韓国とウルグアイが勝ち点1。最終戦、まずウルグアイがガーナを2−0でリード。同時進行のポルトガル・韓国戦は1−1、このまま行けばウルグアイが2位だったが、後半アディショナルタイム、ポルトガルのCKからのこぼれ球を拾った「バットマン」ソン・フンミンがドリブル突進。ゴール前で相手DF3人に囲まれながら、股間を抜いてスルーパス。走り込んでいたファン・ヒチャンがワンタッチで勝ち越しゴールを決めた。まさに電光石火、目にも鮮やかな逆襲だった。ポルトガルを逆転で破った韓国は勝ち点4となってウルグアイと並んだが、総得点で上回る韓国が2位となり、決勝T進出を決めた。ウルグアイは最終戦でガーナを破ったが、総得点で2点足らず3位。ガーナは第2戦で韓国を破り、最終ウルグアイ戦で勝てば自力で1次リーグ突破だったが、前半のPKを止められたのが響いてその後2失点を喫し、敗退した。



このグループE〜Hの戦いでも、アジア勢の活躍が光る。何といっても「ダブル・ジャイアントキリング」でグループEトップ通過を果たした日本が出色だが、最終戦の後半アディショナルタイムでポルトガルに勝ち越し、グループHの2位に滑り込んだ韓国もまた見事!このアジア2チームの劇的な戦いぶりは、世界を大いに驚かせたに違いない。来たる決勝T、韓国はブラジルと対戦する。もし韓国が再びアップセットを演じ、日本がクロアチアに勝てば、準々決勝は日本ー韓国戦になる。これはすごいことだが、これを語るのはまだ早い。


グループFを席巻したモロッコもすばらしかった。セネガルに続いてアフリカ勢2チーム目の決勝T進出。アフリカンパワーが決勝Tでも波乱を巻き起こすか。


決勝トーナメントの顔ぶれを見ると、ヨーロッパ8、南北アメリカ3、アジア3、アフリカ2となっている。このうちトップ通過はヨーロッパ4(オランダ・イングランド・フランス・ポルトガル)、南北アメリカ2(アルゼンチン・ブラジル)、アジア1(日本)、アフリカ1(モロッコ)だ。アジア勢とアフリカ勢の健闘で、勢力図はかなり変化しているようだ。


さてこの勢力図、決勝Tが進むにつれさらに変化していくのか、それとも歴戦の強豪が順当に強さを発揮するのか。しかと見据えよう。
posted by デュークNave at 05:48| Comment(0) | スポーツ-サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする