2018年02月20日

羽生結弦・宇野昌磨でワンツーフィニッシュ!:望みうる最高の結果だが、まさか本当に実現するとは…! 〜平昌五輪・フィギュアスケート男子シングル〜

平昌冬季オリンピック、日本勢に最初の金メダルをもたらしたのは、フィギュアスケート男子シングル・羽生結弦だった。宇野昌磨も銀メダルを獲得し、日本勢が見事なワンツーフィニッシュを決めた。羽生はソチ五輪に続き、男子シングル66年ぶりの五輪連覇を達成。これは日本選手の個人種目では五輪史上初の快挙である(団体では、1992年アルベールビル・1994年リレハンメルでノルディック複合の日本チームが連覇している)。また、日本選手の同一種目での金・銀は、1972年の札幌大会、70m級純ジャンプでの笠谷幸生・金野昭次・青地清二の表彰台独占以来の快挙だった。


「羽生・宇野でワンツー」。「そうなれば最高なんだけどな」とは思っていたが、本当に実現できるかは、個人的にはかなり懐疑的だった。まず宇野昌磨。今季はGPシリーズ・GPファイナル・全日本選手権・四大陸選手権と大舞台を転戦したが、SP・FSを通して納得の演技ができたことは一度もなかった。コンディションの問題なのか、精神面なのか、観る側ももどかしい試合が続いていた。その不安を抱いたまま平昌に入り、前哨戦ともいえる団体のSPに臨んだ。しかしここで、4フリップは乱れたもののそれ以外はまとめ、103点台に乗せてトップに立った。ミスがありながら100点を超えてきたことは、本番に向けてかなりの光明といえたが、不安が完全に解消したわけではなかった。

そして羽生結弦。昨年11月に負ったケガ以来、NHK杯・GPファイナル・全日本選手権を欠場。年明けの五輪前哨戦もすべてパスし、団体戦も欠場。五輪本番がまさに「ぶっつけ本番」になった。「羽生自身がよく口にする『絶対王者の演技』は難しいだろう。果たしてどこまでできるのか」が、この時点での正直な思いだった。


【 羽生結弦・金:「どうしてこんなことができるのか」 】

SPは最終グループのいきなりの1番滑走。他の有力選手の演技を見ずに済むこの滑走順、ブランク明けの彼にとってはラッキーだったのではないか。そしてその演技は…、全世界の観戦者を驚愕させた。冒頭の4サルコウをきれいに降り、後半の3アクセルはGOEでフルマークの+3.00を獲得。さらに4トウループ−3トウループの高難度コンビネーションも流れよく決める。この瞬間、場内は熱狂の渦と化した。この3つのジャンプのGOEの合計は8.28。ステップシークエンスでも2点以上の加点を得て、圧巻のフィニッシュ。場内は再び熱狂に包まれた。2か月以上のブランクがあったとはとても信じられない、「すごい!」としか言いようのない圧巻の演技だった。PBに近い111.68、堂々の首位発進。本人が口にした通り、”I’m back!”、まさに王者の復活だった。


そして迎えたFS。ここでも勝利をもたらしたのは、演技の精度の高さ、熟成度だった。冒頭の4サルコウ、続く4トウループをきれいに決める(GOEはともにフルマークの+3.00!)。演技後半、4サルコウ−3トウループを流れよく降り、ここでも大きな加点を得る。これを決めたのが大きかった。続く4トウループでステップアウトしてコンビネーションにできず、リピートによる基礎点の減点になったが、そのあとの3連続ジャンプで取り返し、最後のジャンプ・3ルッツをどうにかこらえる(羽生にとってこの最後の3ルッツが常に「鬼門」になっていたが、痛めていた右足で必死に踏んばり、転倒はしなかった。まさに執念の着氷だった)。最後のコレオシークエンスは観衆の手拍子に乗って最高に盛り上がり、両手を広げる「SEIMEI」の決めポーズでフィニッシュ。場内はSP以上の大歓声に包まれた。

まさに「王者復活」の演技だったが、彼本来の実力をいかんなく発揮したわけではない。今季は4ルッツや4ループを含め、4ジャンプを4種類入れるプログラムを組んでいたが、11月のアクシデントによって方針の変更を余儀なくされた。4ジャンプはサルコウとトウループに絞り、その完成度・熟成度(=GOE加点)で勝負するプログラムを組んだのだ。これは決して安全策ではなく、右足の状態を鑑みて、今の自分にできる最高のパフォーマンスを出すにはどうしたらいいかを熟慮しての決断だった。常に高みを目指す彼としてはかなりの苦渋の決断だったと思うが、「五輪連覇」という大目標のために、応援してくれる世界中の人たちのために、結果を出すことに意識を集中したのだと思う。

(そもそも、ほとんど練習していない(できていない)4ルッツや4ループを試合で使うなどありえないことで、サルコウとトウループに絞ったのは、現時点での最高の演技を行うための極めて賢明な判断だったと思う)



SPでのほぼパーフェクトな演技に「どうしてこんなことができるんだ」と驚かされ、「この調子ならFSもかなり期待できるな」とは思っていたが、見事にやってのけてくれた。「ぶっつけ本番での五輪連覇達成」これは間違いなくフィギュアスケート史上に永遠に残る快挙であり、忘れがたいドラマになった。


【 宇野昌磨・銀:シニアデビューから注目し続けてきた「少年」が、ついに五輪メダリストに 】

私が宇野昌磨を初めて観たのは、2014年の全日本選手権だった。当時16歳、この年のジュニアGPファイナルを制し、「ジュニア世界一」として臨んだシニアの舞台。ジュニアより30秒長いFSの演技を、最後までスピードを落とすことなく演じ切った。終了後にリンク脇でへたり込んでしまったが、そのきつさを演技中には見せることがなかった。その精神力の強さに感心したことに加え、羽生に続く2位に入ったのに、「納得のいく演技ができなかった」と、全くうれしそうな表情を見せなかったことにもいたく感銘した。「自分に高いハードルを課すこの向上心の強さは、羽生結弦にも負けていない。これは絶対にデカくなるな」と、ここから宇野昌磨にずっと注目してきた。

その後の彼の活躍、成長ぶりは周知の通り。翌2015年からシニアに参戦し、GPシリーズで3度優勝、GPファイナル3年連続表彰台、全日本選手権連覇、2017世界選手権銀と、着実に結果を出し続けた。シニアデビュー当時はまだあどけなかった少年が、年を追うごとに表情に精悍さが増していき、「戦う男」に変貌を遂げていった。国内にライバルがいなかった羽生結弦をして「やっと出てきてくれたか」と言わしめ、2017世界選手権では羽生に僅差の2位。羽生に並ぶ平昌五輪の有力な金メダル候補と目されるようになった。


そして迎えた五輪本番。団体戦のSPで100点を超え、いい感触で臨んだ個人戦のSP。3つのジャンプ(4フリップ、4トウループ−3トウループ、3アクセル)は、ともにGOEで加点されたが、ともに彼本来のジャンプではなかった(特に3アクセルは、好調時には+3.00のフルマークを得るほど得意としているジャンプなのだ)。それでも100点を超えてメダル圏内の3位につけたのは、地力がある証拠。羽生結弦もそうだが、プログラムのレベルがもともと高く、演技構成点でも高い評価を受けるので、ジャンプに多少のミスがあっても総合的には高得点を得ることができるのだ。

そしてFSでは、その地力の高さに加え、彼の持つ精神力の強さがこの大舞台でもいかんなく発揮された。抽選により、この大舞台で何と最終滑走に。最終グループの5人の演技をしっかり見ていた彼は、勝つためにはパーフェクトな演技をしなければいけないことを認識する。しかし冒頭、4ループでいきなり転倒。この時点で金はなくなったことを覚悟した彼は(試合後のインタビューで「笑ってしまった」とコメント)、ここからは自分のベストの演技をしようと頭を切り替える。続く4フリップをきれいに決め、スピンとステップも着実にこなす。後半、4−2のコンビネーションで着氷が乱れたが、直後の4トウループを決めて取り戻し、最終盤の3アクセル−1ループ−3フリップ(3つ目がフリップなのがミソ! 羽生でさえここはサルコウなのだが、より難度の高い構成にする宇野オリジナルだ)、最後のジャンプ・3サルコウ−3トウループをしっかり決め(最後のジャンプを3−3のコンビネーションにするのもすごい!)、コレオシークエンスでは得意のクリムキンイーグルを披露して観衆を沸かせ、大きな盛り上がりの中でフィニッシュ。大会のエンディングを飾る、とてつもないプレッシャーがかかったであろう最終滑走を、最後まで気持ちを切らさずに演じ切った。実況のアナウンサーが叫んだ通り、「間違いなく自分に勝った」渾身の演技だった。


シニアデビュー以来、羽生同様、いやそれ以上に注目し続けてきた宇野昌磨が、ついにオリンピックメダリストになってくれた。心から嬉しいし、今は「おめでとう!」の言葉しか浮かばない。


「羽生−宇野のワンツーフィニッシュ」。望んではいたものの、まさか本当に実現するとは…! 今はただ、この歴史的快挙の余韻に浸るのみである。


P.S. 日本人なのでどうしてもこの2人のワンツーに酔いしれてしまうが、他の選手たちもすばらしかった。ハビエル・フェルナンデスは、SPで持ち前のエンターテインメントさをいかんなく発揮して2位発進。FSで後半の4サルコウが2回転に抜けたのが響いて宇野に逆転されたが、最後の五輪と意識して臨んだこの大舞台で、念願の初メダルを手にした。ボーヤン・ジンもSP・FSと高いレベルの演技をそろえ、得意の4ルッツも鮮やかに決めた。惜しくも表彰台は逃したが、宇野と同世代の彼、これからのさらなる成長が楽しみだ。

そしてネイサン・チェン。SPでは3つのジャンプでことごとく失敗し、まさかの17位。しかしFSでは、得意の4ジャンプが猛威を振るった。何と4ジャンプに6度挑み、4フリップで手をついた以外はすべて成功、GOEでも加点を得る。五輪史上初の、4ジャンプ5回成功を成し遂げた。FSの得点は215.08、羽生をも抑えて最高点をマークした(技術点は圧巻の115.11!)。「もし彼がSPで実力通りの演技を見せていたら」と思ってしまうが、もしそうならFSであれほどチャレンジングな構成にはしなかっただろう。失うものが何もないから思い切り4ジャンプに挑めたのだ。しかしそれを割り引いても、6回チャレンジして5回成功はすごい。まだ18歳の伸び盛り、来季以降もわが日本の誇るツートップの強力なライバルであり続けるだろう。


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2016年09月22日

not「障がい者のスポーツ」but「こういう形のスポーツ」 〜リオ・パラリンピックから受けたピュアで新鮮な感銘〜

リオデジャネイロ・パラリンピックが閉幕した。スポーツフリークを自認する私だが、これまでパラリンピックについてはほとんど知らず(車いすテニス男子の国枝慎吾選手や競泳女子の成田真由美選手は知っていたが)、その競技をじっくり見たことはなかった。しかし今回はまだまだ浅いながらも、さまざまな競技を観戦することができた。


【 人々への認知度を高めたメディアへの大きな露出 】

その大きな要因は、かなり本格的なテレビ中継が初めて行われたことだ。NHKがかなりの時間を割いてライブ中継や録画中継を行い、「パラリンピックタイム」というダイジェスト番組を、その日の日本人選手の活躍を中心に毎日放送した。私はオリンピックと同様このダイジェスト番組をすべて録画し、早朝のライブ中継もできる限り観戦し、一部は録画もした(これも五輪同様、「リオパラ・スペシャルディスク」ができ上がった)。また新聞も、普段はテレビ欄になっている最終面にパラ選手の特集記事を載せ(これも五輪と同じ)、試合結果もスポーツ面に大きなスペースを割いていた。このメディアへの露出の大きさが、観る者に強いインパクトと新鮮な感動をもたらし、パラへの認知度を格段に高めた。これはおそらく、4年後の東京大会に向けての布石の意味もあったのだろう。


【 パラ独特の競技に感じた新鮮な面白さと感動 】

とにかく観ていて面白かったのが、パラ独特の競技が多かったことだ。車いすバスケット車いすテニスは今回初めてフルに試合を観たし、ゴールボールボッチャといったパラにしかない種目は興味津々に観た。特に面白かったのが車いすラグビーで、健常者の15人制・7人制ラグビーとはかなりルールが違うのだが、その独特のルールがゲームを非常に魅力的にし、「こんな面白いスポーツがあったのか」と新鮮な驚きだった。特に日本の予選リーグ最終戦、世界ランク1位・アメリカとの一戦は今大会随一といっていい大熱戦で、このスポーツの醍醐味を堪能させてもらった。


【 これは「障がい者スポーツ」ではなく「こういう形のスポーツ」だ 】 

それと観ていてハッと思ったことは、こういう数々のパラ競技を観ていると、彼ら彼女らが障がい者であることを忘れてしまうのだ。たとえば車いすを使う競技では、選手たちはすべて下半身が不自由だし、腕や上半身にも障がいがある選手もいる。しかし選手たちのプレーを見ているうちにそんなことは頭から飛んでしまい、そのスリリングな試合展開に引き込まれてしまう。そして、健常者のスポーツと全く同じ感覚でその競技に見入っている自分に気がつくのだ。

(たとえば、車いすバスケは車いすを使ってやるバスケットボールであり、車いすラグビーは、選手が車いすに乗って、楕円形ではなく円形のボールを使い、前方にパスを投げてもいいというルールのラグビーなのだ)

つまり、これは「障がい者スポーツ」ではなく「こういう形のスポーツ」なのであり、それを自分がまったく自然に受け入れているということなのだ。というよりもその競技の魅力が、障がい者スポーツという区分を飛び越えて、ストレートに自分に迫ってくるのだ。これまでたくさんのスポーツを観てきたが、これは久々に味わったピュアで新鮮な感動だった。


【 五輪よりも高いパラの“超人率”と“超人度” 】

五輪にもウサイン・ボルトやマイケル・フェルプスのような“超人”が何人かいたが、はっきり言って彼らは「スゴすぎて」、あまり感情移入ができない。しかしこのリオ・パラには、我々健常者にもできないような「超人技」を見せてくれる選手が次から次へと現れ、そのたび観る者を驚嘆させ、仰天させた。

大会前から、五輪の優勝記録を上回る自己記録8m40を持つ陸上・男子走り幅跳びのマルクス・レーム選手(ドイツ)や、片脚で1m74を跳ぶ男子走り高跳びの選手など、まさに“超人”を何人も見ていたが、大会が始まると、その競技のトップアスリートたちが演じる“超人技の競演”に、観る側はただ驚嘆し、時に呆然とした。

両腕を失いながら、うつ伏せでドルフィンキックだけでバタフライを泳ぎ、仰向けでやはりキックだけで背泳ぎを泳ぎ、バタフライで銀、背泳ぎでは世界新記録で金メダルを獲得したテイ・トウ選手(中国)。パワーリフティングで305キロの世界新をマークしたシアマンド・ラフマン選手(インド)。1位から4位までがオリンピックの優勝タイムを上回った陸上男子1500m(視覚障害)。事故で両腕を失い、足でピンポン玉を上げ、口にラケットをくわえてプレーするイブラヒーム・ハマドトゥ選手(エジプト)。

日本にも“超人”はいる。68歳にして世界ランク7位の「バタフライ・マダム」別所キミヱ選手(卓球)。パラ通算15個の金メダルを獲得、46歳で8年ぶりに復帰し、ここでも日本新記録をマークした「パラ競泳界のレジェンド」成田真由美選手。知的障害や身体障がいを抱えながら、精度の高いスーパーショットを連発して初の銀メダルを獲得したボッチャ団体。私が大注目していた車いすラグビーも、3位決定戦でカナダを破って銅メダルを獲得した。池崎大輔・池透暢の「イケ・イケ」コンピを中心に、鋭い攻撃と戦略的な守備で念願のパラ初メダルを手にした。


【 健常者の心にも響く「パラリンピックの父」の金言 】

パラの選手たちのプレーやパフォーマンスを見ていると、「我々健常者が同じ条件でプレーさせられたら、ほとんどまともに動けないだろうな」と容易に想像でき、それをやってのけている選手たちがすべて“超人”に見えてくる。しかもその“超人度”がハンパじゃないのだ。パラの選手たちは、五輪の選手たち以上に「人間の可能性のすごさ」をまざまざと見せてくれる。そして我々健常者たちに、「五体満足な自分は何をやってるんだ。つまらない小さなことで悩んでいる場合じゃないぞ」と大きな励ましを与えてくれるのだ。


「パラリンピックの父」と呼ばれるルートヴィッヒ・グットマン博士の言葉:


「失われたものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」


この言葉は、障がい者だけではなく、健常者にも当てはまるのではないだろうか。「失われたもの」とは、視力や身体能力だけではなく、時間、資産、人間関係など、すべての人の過去に関わるものといえる。犯した失敗、失ったお金や財産、途絶えた人間関係。しかしいくら振り返り、未練を残しても、失ったものは返ってこないし、「あのころ」には戻れない。ならば今とその先を見つめて、「残されたもの」を大切にして生きていくしかない。この言葉は、苦境にある人たちに勇気を与える言葉ではないかと思うのだ。


「失われた20年」と呼ばれ、いまだ経済的な苦境から脱却できず、大きな閉塞感に覆われている現代日本と日本人。しかしパラリンピックを観て、この世界をもっと日本中に知らしめ、アピールすることで、縮んでしまっている日本の人たちを元気づけ、活力を取り戻させる原動力になるかもしれないと思った(事実、私自身がかなりの刺激を受けている)。こういう意味でも、これからはもっと障がい者スポーツに注目したいし、さらにいい刺激を受けたいと思う。自分のこれからの人生に「活」を入れるためにも!


posted by デュークNave at 06:37| Comment(0) | スポーツ-五輪・世界大会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月04日

リオ五輪・山口香さん名語録 〜NHK・デイリーハイライトより〜

リオ五輪ではライブで観れるものはなるべく観て、真夜中の競技は留守録をして仕事前の早朝に観た。これに加え、毎日欠かさず観ていたのがNHKのデイリーハイライト(以下DH)だ。

これは主に18:10〜18:45と19:30〜20:50の2部構成で、その日の注目競技を日本人選手を中心にダイジェストでまとめたものだ。大会が終わった今は、このDHすべてが1枚のディスクに収まり、「リオ五輪スペシャルディスク」として我がDVDラックに座っている。

この番組は2人のNHKアナウンサーが司会を務め、毎回元アスリートをゲストに迎えて、その日の競技についてコメントしていただくという形で進む。さすがNHK、迎えたゲストは錚々たる方々だ。


藤本隆宏さん(俳優、ソウル・バルセロナ五輪競泳男子個人メドレー出場)
岩崎恭子さん(バルセロナ五輪競泳女子200m平泳ぎ金メダリスト)
塚原直也さん(アテネ五輪体操男子団体金メダリスト)
山本博さん(アテネ五輪アーチェリー男子個人銀メダリスト)
朝原宣治さん(北京五輪陸上男子400mリレー銅メダリスト)
有森裕子さん(バルセロナ・アトランタ五輪陸上女子マラソンメダリスト)
潮田玲子さん(北京・ロンドン五輪バドミントン女子ダブルス出場)
青木愛さん(北京五輪シンクロナイズドスイミング出場)



このすばらしいゲストたちの的確かつ熱いコメントは、番組に彩りを添えてくれた。

※ 岩崎恭子さんは30代になってもあの可愛らしさを失わず、潮田玲子さんは「オグ・シオ」のころの輝きを保ったまま。そして青木愛さん、こんなそのへんのタレントそっちのけの美しき人が、シンクロチームにいたとは知らなかった。こういう”Athlete Beauty”の存在は、スポーツ観戦の大いなる楽しみの1つだ。

(あの正統派スポーツ専門誌・Numberも、「美女アスリート特集」をけっこうマジにやるからな)



とりわけ、この錚々たるゲストの中でも抜群の存在感を示し、的を射たコメントと軽妙なジョークで観る者をうならせたのが山口香さんだった。山口さんは現役時代、「女三四郎」の異名で呼ばれた日本女子柔道のパイオニア、偉大なる先達であり、まだ公開競技だったころのソウル五輪柔道女子52キロ級銅メダリストでもある。当時は女子柔道といえば真っ先に「山口香」の名が思い浮かぶ、唯一無二の存在だった。

山口さんはこの番組中さまざまな名言を語ってくれたが、これを単に録画して聞くだけではもったいないと思い、特に私が感銘を受け、面白いと思ったコメントをここにまとめた。


◎「いつも競泳チームを見てて思うのは、異常に仲がいいんですよ。同じ種目なのにどうしてこんなに仲良くできるのかなって。やっぱりロープがあるからですかね」

(大会初日のDHにて:これに岩崎恭子さんや藤本隆宏さんが笑いながら「そういう面もあると思います」「一緒に戦わなくて済みますからね」と答えた)


◎「(準決勝の敗退から3位決定戦まで間がなく)涙が乾かぬうちに出てきたという状態で、よく切り替えたと思います

(大会2日目のDHにて:柔道女子48キロ級で銅メダルを獲得した近藤亜美選手について)


◎「何より私がうれしいのは、チームのために頑張ろうと思った、次の日につなげたいと(いう言葉です)。柔道は個人戦なんですけど、7日間の団体戦なんですよね。1人が気を抜いて負けてしまうと、それはチームとして負けてしまうので」

(同:柔道男子60キロ級で銅メダルを獲得した高藤直寿選手の、試合後のインタビューでのコメントについて)


◎「彼にとっては、相手と戦っているというよりも、自分の完成された技をどうパフォーマンスするかということに注力していたような気がします。こんな柔道ができるのなら、こんなに気持ちよく投げれるんだったら、自分ももう一回やってみたいと思わせる試合でした

(大会3日目のDHにて:柔道男子73キロ級で2大会ぶりの日本男子金メダルを獲得した大野将平選手について)


◎「一口に10年って言いますけど、本当に長くて、孤独で、苦しい戦いだったと思うんですよ。でもそれが実を結んだ時、あの涙に、日本中の人がもらい泣きしたと思います

(大会5日目のDHにて:カヌースラローム・男子カナディアンシングルで、日本初の銅メダルを獲得した羽根田卓也選手について。羽根田選手は高校卒業後、カヌーの強豪国であるスロバキアで武者修行。その10年余の努力が実ってのメダルだった)


「サッカーの『マイアミの奇跡』、ブラジルに勝った時以来の興奮でした」

(同:7人制ラグビー男子、初戦でニュージーランドを破り、15人制に続く「ジャイアントキリング」を成し遂げた試合について)


「柔道競技最後のこの試合が、男女14階級を通じて一番最低の試合でした」

(大会8日目のDHにて:柔道男子100キロ超級決勝、ほとんど組むことのなかったリネール・原沢戦について)


◎「毎日メダルラッシュで、もうお腹いっぱいで、感動の余地が残ってないと思ってたんですけど、まだまだありましたね

(大会15日目のDHにて:番組冒頭のコメント。この日は陸上男子400mリレーで銀、シンクロナイズドスイミング・チームで銅メダルを獲得)


「私は心の底から、柔道でよかったと思いました」

(同:シンクロナイズドスイミング・チームが銅メダルを獲得/練習が1日12時間にも及ぶという話を聞いて)


◎「田知本選手はジュニアの時代から期待されていたんですが、ここまでは期待に沿えない試合が続いていた。でも今回は厳しい組み合わせの中を、技を出し続けて期待に応えてくれた。私、人は変われないと思っていたんですが、田知本選手を見て変われると思いました。やる気になればできるんだと

(同:今回の五輪で印象に残っているシーンに、柔道女子70キロ級で金メダルを獲得した田知本遙選手を挙げて)


「運動会でも、リレーって花形じゃないですか。この会場の盛り上がりの中で日本人が銀メダルって、本当に誇らしいですね」

(同:陸上男子400mリレーで銀メダルを獲得した日本チームについて)


◎「開いてくれた道がだんだん広くなっていくんですよ。狭いと少ししか通れませんけど、広くなるとたくさんの人が通れるようになりますから、(若い人が)どんどん出てきます。『私もいける』って、先が見えるようになってくるんですよ

(同:ダブルスで金、シングルスで銅を獲得したバドミントン女子について)


含蓄があり、かつウィットに富む。山口さんの名コメントの数々は、私の心に深く響き、染み入った。しかもそのコメントの1つ1つには、柔道、ひいてはスポーツ全体への熱き想いと深い愛情がひしひしと感じられ、それが観る者の感銘をさらに深めるのだ。


日本女子柔道の偉大なるパイオニア、そして今なお輝きを放ち続ける「女三四郎」に、大あっぱれ!!



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2016年08月28日

My Best 5 Scenes of Japanese Players in Rio 2016

リオ五輪が閉幕した。あまりメダルのことばかり言いたくはないが、日本選手団は金12・銀8・銅21、合計41個という五輪史上最多のメダルを獲得し、4年後の東京五輪に向けて力強いバトンタッチを果たした。

大会を通じて多くの感動のドラマ、衝撃のシーンに遭遇した。オリンピックとはいつも多くの感動と衝撃を味わわせてくれるものだが、今回は特に日本選手が大活躍してくれたため、いつにもまして印象に残る名シーンが多かった。この数多の名シーンの中から、我が独断と偏見で”My Best 5 Scenes”を選んだ。


No.5:卓球男女団体/ちょっぴりほろ苦い、しかし胸張るアベックメダル

卓球の団体戦は、男女ともスリリングかつ感動の嵐だった。女子は準決勝で、ドイツとの4時間にわたる死闘の末惜敗。何とか気持ちを持ち直して臨んだ3位決定戦、初戦で福原愛が競り負けたが、その後シングルスで石川佳純、ダブルスで福原・伊藤美誠ペアが連勝。最後は15歳の伊藤が世界ランク4位のシンガポールのエースに堂々のストレート勝ちを収め、2大会連続のメダルを獲得した。

それにしても返す返すも惜しかったのは、ドイツとの準決勝だ。第1試合で伊藤が、最終ゲーム9−3と大きくリードしながら、痛恨の逆転負け。ここでそのまま勝てていれば、続く石川も当然勝利。さらにダブルスでも、初戦の勝利で気を良くしていたであろう伊藤が、さらに力を発揮して勝てていたのではないか。ここを勝ち上がって福原と石川に、ロンドン五輪決勝のリベンジマッチをやらせてあげたかった。そして勢いのある伊藤という新戦力を加え、絶対女王・中国ともかなりいい勝負ができていたのではないか。こう思うと、つくづく残念な準決勝での競り負けだった。


男子は、個人戦で史上初の銅メダルを獲得したエース・水谷隼が絶好調。準決勝のドイツ戦で、それまで対戦成績で1勝15敗と圧倒されていたボルにストレート勝ち。続くダブルスで丹羽孝希・吉村真晴が競り勝ち、メダル確定に王手をかける。そして第4戦、またも水谷がストレート勝ちを決め、ついに悲願の決勝進出を決めた。

決勝の中国戦でも、第2戦で水谷が、最終ゲームで3マッチポイントを握られながら逆転勝ち。結局続く2戦で敗れて中国の牙城を崩すことはできなかったが、あの絶対王者・中国から1勝を挙げ、続く丹羽・吉村のダブルスも第1ゲームを奪い、「これはもしや」と思わせた。中国相手にこんな手ごたえは久しく味わえなかったものであり、これは日本に大きな自信をもたらしたに違いない。


No.4:レスリング女子/怒涛のゴールドラッシュを呼んだ「逆転の日本女子」

初日に48キロ級・登坂絵莉、58キロ級・伊調馨、69キロ級・土性沙羅と立て続けに優勝。しかもいずれも、第2ピリオドの残り時間わずかなところからの逆転勝ちだった。まさに「逆転の連鎖反応」。この勢いを受け、翌日には63キロ級で川井梨紗子が、こちらは圧勝の金。今大会から階級が6に増え、「日本の新たなお家芸:レスリング女子」は勢いを増すばかりだ。


No.3:陸上男子400mリレー/アメリカを破り、ボルトに迫った銀メダル

金ではないのでNO.3にしたが、受けたインパクトの大きさは、私的にはNo.1だった。私はこの衝撃のニュースを仕事中に携帯電話で知ったのだが、この時は「金はボルトのいるジャマイカだろうけど、銀ってことはアメリカに勝ったってことか? アメリカがバトンパスでミスして失格になったのかな」と思っていた。

ところがこの日の夜にNHKのデイリーハイライトを観ると、日本の銀はアメリカの失格による繰り上げではなく、しっかりと2着でゴールしてのものだったのだ! 確かにアメリカはバトンパスでもたついたし、実際に失格にもなっているが、それを割り引いても、短距離王国・アメリカに先着したというのはものすごいことだ。

日本の4選手(山縣亮太・飯塚翔太・桐生祥秀・ケンブリッジ飛鳥)は、100mでいずれもまだ9秒台を出していないし、いずれもこの大会の決勝には残れていない(山縣とケンブリッジは準決勝、桐生は予選で敗退。飯塚は200mの予選で敗退)。その4人がリレーで世界2位になった。これは熟成を重ねたバトンパスの成果ともいえるが、何より4人の実力が、(個人では決勝に残れなかったものの)これまでになく世界トップに近づいていることの証明だろう。つまり日本短距離陣の層の厚さがもたらした、五輪史上最高の銀メダルなのだ。


※ それにしてもこの決勝のレースで、日本がジャマイカの隣のレーンになったことが最高の名シーンを生んだ。最終走者はジャマイカがウサイン・ボルト、日本がケンブリッジ飛鳥。第3走者の桐生が快走し、日本はジャマイカとほぼ並んでバトンをパスした。ボルトとケンブリッジが最後の直線を並走。世界最速の男・ボルトがケンブリッジを、やや戸惑いの表情で横目で見る。これは夢のような名シーンだった。この並走シーンは新聞にも大きく掲載されたし、Numberの特別増刊・五輪総特集の表紙もこの写真が飾っている。やはりこのレースは、インパクトの大きさではダントツのNo.1だ。


No.2:バドミントン女子ダブルス/「タカ・マツ」ペア、抜群のコンビネーションが生んだ史上初の金

大会前から大きな期待が寄せられていた、世界ランク1位の橋礼華・松友美佐紀の「タカ・マツ」ペア。準々決勝で初めて1ゲームを落としたものの、順当に決勝進出。この時点で日本女子ダブルスの2大会連続のメダルは確定した。

残るは「史上初の金なるか」だった。デンマークペアとの決勝戦、第1ゲームは接戦の末落としたが、続く第2ゲームは圧倒して奪い返した。流れはこちらに来たかと思いきや、最終ゲームは中盤までは互角だったが終盤に突き放され、ついに16−19と、あと2点で敗れるという窮地に立たされた。

しかしここから、前衛の松友が多彩なショットを放って3ポイントを連取し、同点に追いつく。これに気押されたのか、デンマークペアは続く2ポイントで、それまでは返せていた橋の強打を返球できず、ついにゲームセット。追い詰められてからの5連続ポイントで、「タカ・マツ」ペアが初の五輪金メダルを日本バドミントン界にもたらした。

強打と軟打、左右への打ち分け、そして2人の前後左右に動くコンビネーション。「バドミントンってすごく面白いスポーツだな」と改めて思った。そしてその魅力を堪能させてくれた彼女らに心から感謝し、そして心からの祝福を捧げたい。


No.1:体操男子団体/王者・内村がついに手にした、悲願のオリンピック団体金

やはりNo.1はこれしかない。個人総合のディフェンディングチャンピオンであり、世界選手権では前人未到の6連覇を続けている「至高の王者」内村航平その内村が、何としても手にしたかった団体での金メダルが、ついに彼の手に、そして12年ぶりに日本にもたらされた。

しかしそれまでの道のりは、まさにいばらの道だった。初日の予選で、4年前と同じ、いやそれ以上のミスが相次ぎ、まさかの4位。これによってチーム戦略は大きな変更を余儀なくされた。2位までなら、決勝の演技ローテーションは「ゆか〜あん馬〜つり輪〜跳馬〜平行棒〜鉄棒」の順だった。着地が多く、もっとも体力を要するゆかを最初に演技し(日本の得意種目なので勢いにも乗れる)、苦手のあん馬とつり輪は堅実につなぎ、これも得意の跳馬〜平行棒〜鉄棒でフィニッシュ」これが日本チームの描いていたシナリオだった。

ところが予選が4位となったため、ローテーションは「あん馬〜つり輪〜跳馬〜平行棒〜鉄棒〜ゆか」となってしまった。苦手のあん馬とつり輪から始まり、疲れている最後にもっとも体力を使うゆかという、ほぼ最悪の演技順になってしまったのだ。


内村は大会前、「12年前の冨田さんの映像は、そろそろ塗り替えなければいけない」と語っていた。「12年前の冨田さんの映像」とは、2004年のアテネ五輪・団体決勝での、最終種目・鉄棒の最終演技者、エース・冨田洋之の、ピタリと決めた着地のシーンだ。NHKの刈屋富士雄アナの「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」の名実況とともに、強烈に記憶に残るシーンである。

内村は今大会で、自らがこのシーンを演じることを念願していたに違いない。しかし演技ローテーションが変わってしまったことで、「最後の鉄棒で着地をきれいに決め、金を取る」という念願が夢と消えてしまったのだ。

水鳥寿思監督は、当初はすべての種目で最終演技者と考えていた内村の演技順を、大きく変更した。特に鉄棒のあとの最後のゆかに疲れが残らないように、鉄棒は2番手、そしてゆかを最終演技に変えたのだ。


しかしこの思わぬ展開の中でも、王者・内村は揺るがなかった。最初のあん馬でいきなり15点台の高得点。続く山室光史が落下して暗雲が垂れ込めたが、その後のつり輪では堅実にこなし、致命傷には至らない。3種目目の跳馬で最年少の白井健三が高得点を挙げ、この時点で2位に浮上。続く平行棒と鉄棒で内村にわずかなミスが出たが、加藤凌平田中佑典が高得点をそろえ、最終ローテーションのゆかを残してついに日本がトップに立った。

ここで日本に大きく流れを持ってきたのが、跳馬で高得点を出して日本を上向けた白井だった。もっとも得意とするゆかで、「ひねり王子」の面目躍如のすばらしい演技。唯一の16点台を叩き出し、金を大きく手繰り寄せた。続く加藤も、持ち前の抜群の安定感でしっかりと演技をまとめる。

残るは内村。大きなミスがない限り、日本の12年ぶりの金は手の中にあった。この日6種目目、すでに体力は限界に来ていたが、内村は4年越しの悲願達成のために気力を振り絞った。それぞれのシリーズで微妙に着地が乱れる。しかし何とか持ちこたえ、そしてフィニッシュ。ここでもきれいな着地はできなかったが、足はマットの中に収めた。日本が、そして内村が念願していた団体での金が決まった瞬間だった。

終わってみれば、2位のロシアに2.5点以上の差をつけての圧勝。絶対王者・内村のふんばりと、致命的なミスをしなかった4人の高いレベルでの安定感がもたらした、12年ぶりの五輪王座だった。


posted by デュークNave at 07:56| Comment(0) | スポーツ-五輪・世界大会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月20日

「逆転の日本女子」 〜リオ五輪終盤戦・ドラマチックなゴールドラッシュ〜

レスリング女子は48キロ級・登坂、58キロ級・伊調、69キロ級・土性と、たて続けに金メダルを獲得。1日に3個の金と、まさに「ゴールドラッシュ」に沸いた。


【 逆転のトリプルゴールド 】

これも我が疫病神のますますのご繁栄の賜かと気をよくした私だったが(ライブで観られるのを、疫病神を遠ざけるためあえて観ず、試合後に結果のみを知った)、その試合内容は、その日の夜のNHK「デイリーハイライト」で初めて知った。何と決勝の3試合とも、相手に終盤までリードを許しながらの逆転勝ちだったのだ。

登坂はスコア1−2の残り12秒からの片足タックル〜バックを取る攻撃で2点を奪う。伊調は同じく1−2の残り30秒で相手のタックルをこらえ、残り3秒でついに脚を抜いてバックを取り、土壇場で逆転。土性は0−2の残り40数秒で片足タックルに行き、逆にバックを取られそうになったが、うまく身をひるがえして相手を仰向けに倒し、同点に追いつく。レスリングでは同点の場合、大きなポイントを取った方が勝ちになるため、実質これで逆転。このまま逃げ切り、初の五輪で見事頂点に立った。


【 極めつけの「逆転の金」 】

この「逆転のトリプルゴールド」もすごかったが、その翌日、「極めつけの逆転の金」を目の当たりにすることになる。バドミントン・女子ダブルス決勝。世界ランキング1位で大会に臨んだ高橋礼華・松友美佐紀の「タカ・マツ」ペアは、第1ゲームを接戦の末落とし、第2ゲームは圧倒して奪い返した。最終ゲームは中盤までは一進一退だったが、終盤に突き放され、ついに16−19と、あと2ポイントで敗れるという窮地に立たされた。

しかしここから、タカ・マツペアは世界ランク1位の底力を見せる。松友が絶妙のドロップショットをネット際に落として17−19。続いて松友が、右サイドに角度のあるショットを決めて18−19。続くポイントは長いラリーになったが、前衛同士のテンポの速いショットの応酬に松友が的確に対応し、やや浮いた返球を叩いて左サイドにスマッシュを決め、ついに同点。この勢いに押されたのか、デンマークペアは続く2ポイントとも、それまでは返せていた高橋の強打を返球できず、ゲームセット。追い詰められてからの奇跡の5ポイント連取で、タカ・マツペアが日本にバドミントンで初の五輪金メダルをもたらした。


【 日本女子のたくましさに「あっぱれ!」:精神力では男子の上をいくか? 】

この日本女子選手たちの勝負強さ、土壇場での底力はどこから来るのだろうか。練習の賜というのは簡単だが、ああいう修羅場で自分の力を発揮できる精神力は、一朝一夕で身につくものではない。彼女らのこのたくましさ、精神的なタフネスさは、男子選手を凌駕しているかもしれない。たくましき、かつ頼もしき日本女子選手たちに、心からの「あっぱれ!」を差し上げたい。

高校野球では「逆転の報徳」「逆転のPL」というように、史上に残る逆転劇を演じたチームに称号が与えられている。今回の日本女子選手たちのドラマチックな勝利は、まさに「逆転の日本女子」と呼ぶにふさわしい。

(本来なら「逆転のなでしこ」と呼びたいのだが、「なでしこ=サッカーの『なでしこジャパン』」のイメージが強いので、今のところは「逆転の日本女子」という、やや抽象的な呼び名にさせていただく。そのうちどこかのメディアがしゃれたネーミングを考えてくれるかもしれない)


P.S. レスリング女子が「ゴールドラッシュ」に沸く中、53キロ級の吉田沙保里が決勝で敗れ、伊調馨に続く五輪4連覇はならなかった。試合後吉田は悔し涙に暮れ、「選手団主将として役目を果たせず、悔しい」と絞り出すように語った。

しかし、1億2千万の日本国民の誰一人として、彼女を非難する人はいまい。女子レスリングがこれほどまでに注目されるようになったのは、「霊長類最強」と呼ばれた彼女の大活躍があってのことだ。4個目の金が銀になっても、その絶大なる功績が色あせることは全くないだろう。

それと意外なことだったが、選手団主将がメダルを取ったのは、1992年のバルセロナ大会での古賀稔彦(柔道男子71キロ級で金)以来、6大会ぶりだそうだ。谷口浩美(マラソン男子)、井上康生(柔道男子)、鈴木桂治(同)といった錚々たる面々でも逃したメダルを、その重責に負けずに手にしたのだから、こういう意味でも十分に価値のある銀メダルだと思う。


胸を張れ、吉田沙保里! あなたは今でも「霊長類最強」だ!


posted by デュークNave at 06:10| Comment(0) | スポーツ-五輪・世界大会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする