2025年11月13日

ドジャース日本人三人衆に「あっぱれ!」(3)佐々木朗希

ドジャース日本人三人衆賞賛の記。トリを飾るのは、今季からメジャーデビューし、レギュラーシーズンはケガによる戦線離脱もありイマイチだったが、ポストシーズンマッチ(PSM)でセットアッパーやクローザーとして大きな存在感を示した佐々木朗希である。この人のPSMでの戦線復帰と救世主的な活躍は、期待を大きく超えるサプライズだった。

【 佐々木朗希の「あっぱれ!」 】

@ 先発として初勝利:潜在能力の高さを見せる

正直、佐々木のメジャー挑戦は「まだちょっと早いんじゃないか」と思っていた。
ロッテ時代に史上最年少で完全試合を達成するなど、先発投手としての能力の非凡さは示していた。だが規定投球回数に達したことが一度もなく、シーズン通しての安定したプレーをした実績がなかった。体つきも華奢で、「試合数が多く移動距離も長く、パワーとスタミナが求められるメジャーリーガーを務めるには、まだちょっと線が細いな…」と懸念していたのだ。

しかし160qをコンスタントに超える快速球と鋭く多彩な変化球を持ち、投手としての高い能力は有していたので、デビュー当初からそれなりに結果は出した。早くも5月3日にはブレーブス戦で初勝利を挙げ、10試合(うち先発は8試合)に登板して36回1/3を投げ、1勝1敗、防御率4.46、奪三振28という成績を残した。

だが初勝利から2週間も経たない5月15日に右肩の故障で故障者リストに入り、長期離脱を余儀なくされる。やはりMLBでは、長いイニングを投げるスターターはまだ荷が重かったのか…?

A PSMでリリーフで大活躍:不安定だったドジャース救援陣を救う

今季のドジャースは、ナショナルリーグ西地区の優勝は「例年通り」果たしたものの、その道のりは昨季以上のいばらの道だった。同地区のライバル・パドレスと最後までデッドヒートを繰り広げ、辛うじて優勝はしたが、勝率はナ・リーグ地区優勝3チーム中最低だった。そのため今季のPSMは、一番下のワイルドカードシリーズ(WCS)からの長丁場になってしまった(昨季はその一つ上のディビジョナルシリーズ(DS)からだった)。

その大きな要因は、リリーフ陣の不安定さにあった。先発陣が5回以上を安定した投球で投げ切り、勝利投手の権利を得て降板しても、救援陣が打ち込まれて逆転負けを喫してしまう。私見ではその最大の被害者が山本由伸で、このパターンで勝ち星を逃したことが何度もあった(これがなければ今季の山本は15〜6勝はできていたはずで、ナ・リーグの最多勝を争っていただろう)PSMに入ってもこの不安定さは解消できず、勝ちはするものの終盤に失点するという試合がいくつもあった。

そこに現れたのが、故障者リストから復帰した佐々木である。レッズとのWCS第2戦で、9回に登板してしっかりと最後を締めた。これを皮切りに、「救世主&新守護神」ロウキ・ササキの快投が始まる。

フィリーズとのDS第1戦で9回を抑えて初セーブを挙げると、続く第2戦でも、9回の1点差に詰め寄られた窮地で見事に火消しを果たす。さらに第4戦では、8〜10回に打者9人をパーフェクトに抑える快投を演じ、11回のサヨナラ勝ちにつなげた。このあたりから、佐々木がブルペンからマウンドに向かうと、場内から「ロウキ!」コールがさかんに沸き起こるようになった。

ブリュワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第1戦では、PSMで初めて打ち込まれて抑えに失敗したが、再びリリーフした第3戦では9回を三者凡退に仕留め、リベンジを果たす。

そして迎えたブルージェイズとのWS、史上に残る延長18回の死闘となった第3戦。同点の8回表、1死1・2塁のピンチで登板し、内野ゴロ2つに討ち取る。9回も無失点に抑えてしっかりと役目を果たした。さらに第6戦でも、2点リードの8回から登板し、無失点で切り抜ける。9回、死球と2塁打で無死2・3塁となったところでグラスノーのリリーフを仰いだが、グラスノーが後続を断って事なきを得た。

このPSMでは打たれることもあったが、レギュラーシーズンのほとんどを棒に振った佐々木がリリーフとしてPSMから復帰し、期待以上の大活躍を見せたのはサプライズ、うれしい誤算だった。新守護神・佐々木が、不安定だった「後ろ」に安定をもたらしたのだ。


B 来季への期待:スターターかクローザーか

今季のファイナルではリリーフとして存在感を示したくれたが、来季はどうなるのか。もともとは先発志望のはずなので、「これを機にクローザーに転向」にはたぶん抵抗があるはずだ。これは本人の意思とロバーツ監督らの方針との兼ね合いだが、まだ若く、才能にあふれる前途有望な選手なので、その能力を最大限に生かす道を進んでほしい。これがMLBファン、ドジャースファンのピュアな願いである。


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2025年11月12日

ドジャース日本人三人衆に「あっぱれ!」(2)山本由伸

ドジャース日本人三人衆賞賛の記・第二弾は山本由伸この人の大活躍は、ついこの間まで行われていたポストシーズンマッチを振り返れば言うに及ばずだが、レギュラーシーズンを通しても山本のチームへの貢献は絶大だった。

【 山本由伸の「あっぱれ!」 】

@ レギュラーシーズンを通して先発ローテーションを守った

先発投手(スターター)に求められることは、ローテーションを守ることと、5〜6回ぐらいまで投げて「試合を作る」ことだ。
昨季の山本は前半戦まではコンスタントに白星を挙げたが、6月に故障して戦線を離脱し、ポストシーズンマッチでようやく復帰した。ここではルーキーながら安定した投球でドジャースのワールドシリーズ(WS)制覇に貢献したが、本人にとっては満足できる一年ではなかっただろう。

今季はシーズンを通して先発ローテーションを守り続け、勝利(12勝)、防御率(2.49)、奪三振(201)でチームNo. 1の成績を挙げた。スターターの三部門でチームトップの成績を残したことにより、山本は今やドジャースのエースと呼ぶにふさわしい存在になった。本人にとっても、昨季にできなかった「シーズンを通して(離脱せずに)プレーする」を達成できたことは大きな喜びだっただろう。

A ポストシーズンマッチでの獅子奮迅の活躍

そして迎えたポストシーズンマッチ。
初登板の地区シリーズ(対フィリーズ)こそ打ち込まれたが(これも今から振り返ると「山本にもそんなことあったんだな」という感じだ)、続くリーグ優勝決定シリーズ(対ブリュワーズ)第2戦とWS(対ブルージェイズ)第2戦で連続完投勝利。さらにWS第6戦でも6回を1失点に抑えて勝利投手となった。

特筆すべきはWSでの2つの勝利。第2戦は初戦を落としたあと、第6戦は2勝3敗の「カド番」という、ともに「絶対に負けられない」状況だった。しかもともに敵地でのアウェーの戦いで、よりプレッシャーのかかる登板だったのだ。

しかしこの窮地をものともせず、第2戦は完投、第6戦も6回をリードを保ったまま投げ切り、ともに戦績をタイに戻した。こういう「苦しくなるかもしれない」ローテーションに山本を持ってくるということは、ロバーツ監督の山本への信頼がいかに大きいかを示している。


B WS第7戦でのサプライズ救援・そしてMVP

そして迎えたクライマックス・WS第7戦。
ドジャースは先発・大谷翔平が3ランを浴びて降板したが、打線がしぶとく得点を重ね、9回表にロハスの起死回生のホームランでついに同点に追いつく。しかしその裏、8回から登板していたスネルが1死1・2塁のサヨナラのピンチを招く。

ここでロバーツ監督が驚きの決断を下す。前日6回・96球を投げていた山本をリリーフに起用したのだ。その前にベンチを出てブルペンに向かう山本を見て、佐々木朗希が「マジ?」と驚いていた。まさかのWS連投。だがこれは「ここは一番信頼できるピッチャーに託すしかない」という監督の究極の選択だったのだろう。

いきなりの死球で1死満塁とピンチを広げたが、セカンドゴロとセンターフライに仕留めてピンチを脱する。すると11回表、女房役のスミスが千金の勝ち越しアーチをレフトスタンドに架ける。その裏、ゲレーロJrの2塁打から1死1・3塁のピンチを招くが、続くカークの打球はバットを折りながらショートへ。名手ベッツが2塁寄りのゴロをさばいてベースを踏み、1塁のフリーマンへ。最後は華麗なるゲッツーで、ドジャースの球団史上初のWS連覇が達成された。

この勝利で、9回途中からリリーフしていた山本が勝利投手となった。2回2/3、34球の熱投。WSでのドジャースの4勝のうち3勝を山本が挙げた。MVPに選ばれたのも当然だった。

2025年シーズンは山本にとって大きな輝かしい1年になった。ドジャースファンはこの年の山本の力投、特にWSでの連投を含む大活躍を、長く深く記憶に留めるだろう。


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2025年11月11日

ドジャース日本人三人衆に「あっぱれ!」(1)大谷翔平

2025年のMLBは、ロサンゼルス・ドジャースの球団史上初のワールドシリーズ(WS)連覇で幕を閉じた。観る側のコーフンもようやく落ち着いてきたところで、今季のMLBをドジャース、特に期待以上の大活躍を見せてくれた日本人三人衆(大谷翔平・山本由伸・佐々木朗希)に焦点を絞って振り返りたい。今日はまず、大谷翔平編。

(本当は他のチームや選手たちについても言及すべきだろうが、今季はこの三人衆だけでも話題が盛りだくさんなので、今回はここに絞らせてもらう)

【 大谷翔平の「あっぱれ!」 】

@ 2年ぶりの二刀流復活

歴史的な快挙「50−50:50本塁打・50盗塁」(最終的には54−59まで達した)、2年連続・しかも両リーグにまたがるMVP、そして悲願だったWS制覇。大谷にとって昨季はまさに「すべてを手に入れた」輝ける1年だった。

しかし1つだけ満ち足りないものがあった。それは「投げなかった」こと。
プロ入り以来二刀流を標榜してきた大谷だが、一昨年秋の右ひじの手術ののち、昨季は当初から「2024年は投手は封印・打者だけで行く」と決めていた。それだけに昨季は、すばらしい成績を収めながらも、完全に満足はできなかったに違いない。そういう経緯があっただけに、今季の大谷の最大の目標は「二刀流復活」だった。

当初の計画は、指名打者として試合に出場しながら、試合前に実戦形式の投球練習を行うことでの復活を目指していた。しかし大谷本人から「本当に体がきつい」との訴えがあった。試合前の実戦形式の投球練習で一度ピークを作り、その後の試合で打者としてもう一度ピークを作らねばならないことが大きな負担になっていたのだ(ゼネラルマネージャーのブランドン・ゴームスは「週に2〜3回ダブルヘッダーをこなすようなものだった」と述懐している)。

そこで大谷がこう提案した。「試合前の実戦形式の投球練習は体がきついので、もしチームが合意してくれるなら、試合で1イニングを投げたい」。チームの医療スタッフを交えて相談した結果、大谷の提案を受け入れ、公式戦でピッチングの調整を行うことになった。「メジャーの公式戦をリハビリ登板に充てる」これは前代未聞かつ画期的な調整方法だった。

当初チームは、大谷の二刀流解禁を7月中旬のオールスター明けとし、シーズン終盤のポストシーズンマッチに万全の状態で臨む方針だった。しかしこの新方針によってこれを1か月前倒しにし、6月16日が解禁日になった。そしてこの日の「1イニングのみの先発登板」を皮切りに、少しずつ投球数とイニングを増やしていった。

A 投手としても先発陣の柱に定着

こうして先発投手としての存在感を徐々に増していったが、増したのは投球数やイニングの長さだけではなかった。
パワーピッチャーを自負する大谷にとってストレートはこだわりの球種だが、2度の手術を経た投手の球速はそれ以前よりも落ちるのが通例だ。ところが大谷は二刀流解禁後の6月、3度目の登板で自己最高の163.6キロをマークした。さらに回転スピードも増したため、打者にとってはより手元で伸びるように見える。加えて縦に大きく落ちるカーブやスプリット、スライダーなどの変化球にも磨きをかけ、投手としての総合力を上げていった。

やがてレギュラーシーズン終盤には5〜6イニングを投げれるようになり、待望の勝利投手にもなり(749日ぶり)、先発投手に求められる「試合を作る」役割をしっかりと担えるようになった。ポストシーズンマッチ後半のリーグ優勝決定シリーズやワールドシリーズでは、先発四本柱(スネル・山本由伸・グラスノー・大谷)に名を連ねるまでになった。来季は開幕からの「フル二刀流」が期待できる。

B キャリアハイの55ホームラン・MLBトップの146得点

今季の「打者・大谷」は、タイトルは逃したものの、自己最高の55ホームランを達成した。さらに特筆すべきは、両リーグ併せても最多となった146得点。ホームランはイコール1得点につながるが、それ以外でも91得点を挙げている。これはヒットや四球での出塁も多かった=出塁率が高かったことの表れであり、トップバッターとしての役割を十二分に果たしたといえるだろう。

(ドジャース打線は大谷の後ろにベッツ・フリーマンら好打者・強打者が控えており、うかつに大谷を歩かせることもできないのだ。この得点の高さがそれを示している)

来季(2026年)は、メジャーリーガーになってからの待望であったはずの「優勝が狙えるチームでの、フルシーズンでの二刀流」がついに実現する。フルに実力を発揮した大谷翔平がどんなすごい活躍をするのか。またもや観る者の想像を絶することをやってくれることを期待しよう。


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2025年11月03日

今度は「横浜パターン」での決着/山本由伸サプライズ連投/ドラマ満載の延長11回の激闘:WS第7戦

こんなすさまじい試合展開はめったに見られるものではない。しかもそれがワールドシリーズ最終戦という、これ以上ない最高峰の舞台で繰り広げられるとは…! 観る側にとってはファン冥利に尽きる、両軍が死力を尽くした激闘だった。

先発投手は、ブルージェイズは通算221勝、サイ・ヤング賞3度受賞のM・シャーザー。対するドジャースは、初の二刀流でのWS制覇に挑む、MVP3度受賞の大谷翔平まさに震えが来るようなすごい顔合わせだ。

大谷は第4戦以来、中3日での登板となる。レギュラーシーズンならありえないローテーションだが、第6戦で最終戦で先発予定だったはずのグラスノーが9回にリリーフ登板した時、大谷の第7戦での先発も大いにありうると思った(ルール上、リリーフでは指名打者はできない)。これが短期決戦の最終戦のスペシャルローテだ。

【 投手・大谷は痛恨の一発を浴びたが 】

立ち上がりは両投手とも先頭打者(大谷・スプリンガー)にヒットを許すが、後続を抑える。2回、大谷は2死満塁のピンチを招くが、159キロのフォーシームで空振り三振に討ち取る。

しかし3回裏、痛恨の一撃を浴びる。1死1・3塁から4番ビシェットに初球の甘く入ったスライダーを捕らえられ、先制の3ラン。マウンド上で両手で膝をつき、うなだれる大谷。ここで無念の降板となった。

一発での3失点はあまりに痛い。正直「これは今日はやられたかな…」と観念しかかった。


【 1点ずつしぶとく返す、粘りのドジャース打線 】

だが、この日のドジャース打線はしぶとい。4回表、1死満塁からT・ヘルナンデスのセンターへの犠牲フライで1点を返す。さらに6回表、3番手バシットを攻め、1死1・3塁でエドマンのセンターへの犠牲フライで1点差に詰め寄る。やや浅いフライだったが、3走の俊足ベッツがホームを陥れた。ともに3走を犠牲フライで返す、粘り強い打撃が光った。

【 終盤、「奇跡の一発攻勢」で同点に 】

しかし6回裏、4回から登板していたグラスノーが、無死2塁からヒメネスに右中間を破るタイムリー2塁打を喫する。後続は抑えたものの、この突き放す追加点はかなり重く感じられた。

8回表、マウンドには、このシリーズで快投を続けているルーキー・イェサベージ。ドジャース打線にとっては高く厚い壁になっていたが、1死無走者からマンシーが、高めのスプリットをライトスタンドに運ぶ。これで再び1点差。難敵・イェサベージから点をもぎ取ったのは大きかった。

そして大詰めの9回表、1死無走者で打席に入るのは9番ロハス。マウンドには8回から登板しているクローザーのホフマン。

「もしロハスが凡退したら、一発を避けてまた大谷は申告敬遠されるんじゃないか」

こんなことを思い描いていたら、奇跡の一打が生まれた。3−2からの7球目、スライダーをうまく払ったロハスの打球は、レフトスタンドに飛び込む起死回生の同点ホームラン! ロハスにとって今年のWS初安打が、ドジャースの息を吹き返させる千金の一撃となった。


【 山本由伸のサプライズ救援・好守でサヨナラのピンチを凌ぐ 】

しかしドラマ満載のこの試合、簡単には終わらない。その裏、8回からリリーフしていたスネルが1死1・2塁のサヨナラのピンチを招いてしまう。ここでロバーツ監督は、前日6回・96球を投げている山本由伸を火消しに起用する。

「ローテーションや球数を重視するMLBで、こんな使い方するか?」と我が目を疑ったが、この最終決戦のあとがない土壇場、「もっとも信頼できるピッチャーをつぎ込むしかない」という決断だったのだろう。

シビれすぎるこの場面。しかもカークに死球を与え、1死満塁とピンチを広げてしまう。自ら招いた絶体絶命の窮地。普通なら重圧に負けてしまうところだが…。


バーショが放ったセカンドゴロを、前進守備のロハスが好捕して本塁フォースアウト。続くこの日3安打のクレメントが、初球のカーブを捕らえて左中間に大飛球を放つ。代わったばかりのセンター・パヘスが、K・ヘルナンデスと交錯しながらこれを好捕。連続のファインプレーで、ドジャースはサヨナラのピンチを凌いだ。

【 そしてまたもや奇跡の一発・裏のピンチも山本がしぶとく切り抜ける 】

そして迎えた延長11回表。マウンドにはこの回から登板の7番手・ビーバー。大谷がセカンドゴロに倒れて2死無走者。

「まだまだ延長戦は続くのか。山本にあまり長く投げさせたくないな…」

こう思っていたら、またもや奇跡の一発が飛び出す。ウィル・スミスが、2−0からのスライダーをレフトスタンドに勝ち越しホームラン! 先行されては追いつくの展開だったこの試合で、ドジャースが初めてリードを奪った。


しかし波乱万丈のこの試合、勝利の女神様は簡単には勝たせてくれない。この裏、先頭のゲレーロJrがインハイのフォーシームを捕らえてレフト線にツーベースを放つ。ブルージェイズが勝てばMVP間違いなしのチームリーダーが、窮地でさすがの一打を見せた。

2塁ベース上で両手を挙げ、味方を鼓舞するゲレーロJr。これを見て私は、2023年のWBCの準決勝・メキシコ戦で、1点リードされた9回裏、先頭の大谷が2塁打を放ち、塁上で両手を振り上げて、ベンチに向かって「あとに続け!」とばかりに叫んでいたシーンを思い出した(このあと村上の逆転サヨナラツーベースで、サムライジャパンは決勝進出を決めた)。まさに敵ながらあっぱれ、MLB屈指の名選手だ。

カイナーファレファの送りバントが決まって1死3塁。ここでドジャース内野陣は前進守備のバックホーム態勢。続くバージャーはストレートの四球で1死1・3塁。内野陣はゲッツー狙いの中間守備に戻す。打席には強打者のカークが入る。同点か、抑えて連覇か。

0−2と追い込んだ3球目、外角のスプリットを捕らえたカークのバットが折れる。打球は2塁ベース寄りにショート・ベッツの前に飛ぶ。これをつかんだベッツは機敏に2塁ベースを踏み、ファースト・フリーマンに送球。ドラマ満載だったこの大激戦は、俊足好守のベッツの華麗なるダブルプレーで幕を閉じた。ドジャース、球団史上初のWS連覇達成である。

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第3戦の大延長戦は18回裏のフリーマンのサヨナラホーマーで決着する「箕島パターン」だった。この試合は大延長戦にはならなかったが、先攻がホームランで勝ち越して勝負を決する「横浜パターン」になった。


【 気迫の連投・山本の、敵地でも動じない平静さ 】

MVPは、2度の先発とこの日のリリーフで3勝を挙げた山本。これは文句なしだろう。

インタビューで「無心で、野球少年に戻ったような気持ちでした」と語った山本。体は疲れていたはずだが、精神的には最高の状態でマウンドに上がったということだろう。

振り返れば、このシリーズで山本が挙げた3勝はすべてアウェーだ。初戦の敗戦を受けての第2戦の先発完投、2勝3敗の「カド番」に追い込まれての第6戦の先発勝利、そしてこの最終戦のリリーフ。WSは全試合・全シーンが修羅場だが、特に山本が相対したこの3試合は、すべてが絶対に負けられない窮地だった。

それをすべて跳ね返し、チーム初のWS連覇に導いた大活躍。この精神力、敵地の大ブーイングにも動じない平静さ。試合後に大谷が「山本が世界一のピッチャーであることがみんなわかったと思う」と最大級の賛辞を贈っていたが、その最高のパフォーマンスを支えているのは、この「不動心」だろう。スポーツは肉体のみならず精神でやるものだということが、山本を見ているとよくわかる。

ロサンゼルス・ドジャース、初のワールドシリーズ連覇。山本由伸、日本人選手では松井秀喜(ヤンキース)以来2人目のMVP。今年のMLBポストシーズンマッチは、最初から最後までドラマティック、メモリアルシーン満載だった。
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2025年11月02日

山本由伸がまたも好投、6回5安打1失点の粘りの投球/ドジャース敵地で逆王手、勝負は最終決戦へ:WS第6戦

人間は窮地に追い込まれた時にその真価が問われるという。昨日の山本由伸はまさにそんな状況だった。

ホームでまさかの連敗を喫し、王手をかけられて敵地に臨んだワールドシリーズ(WS)第6戦。1992・1993年の連覇以来のWS制覇まであと1勝と迫ったブルージェイズ、ロジャース・センタースタジアムにはカナダ国民の切なる願いが充満していた。そんな針のむしろのような空気の中、山本はWS2度目の先発マウンドに立った。

前回(第2戦)と同じアウェーでの登板となったが、今回山本は、特に立ち上がりに気をつけていたという。前々回は初球をいきなり先頭打者ホームラン、前回は無死1・3塁のピンチを招いたことが念頭にあったのだろう。初回、エラーで出塁を許したが、ゲレーロJrを併殺打に討ち取り、立ち上がりを無難に切り抜けた。

対するブルージェイズの先発ガーズマンは、初回を三者三振の完璧な立ち上がり。2回も2三振とドジャース打線を封じ込む。低めにコントロールされたスプリットに、ドジャースの強打者たちのバットは次々と空を切った。

しかし3回、試合が動く。1死からエドマンがライト線に2塁打を放つ。続くロハスは三振に倒れたが、大谷が「例によって」申告敬遠で1・2塁。ここでこの日2番に入ったスミスが、スプリットを捕らえてレフト線にタイムリーツーベース。ここまで5試合中4試合で先取点を挙げていたドジャースが、この試合でも先制した。

さらに大きかったのがこの後。フリーマンが四球で歩いて2死満塁、バッターボックスにはこの日4番のベッツが入る。俊足好打のベッツだが、このシリーズでは打棒がやや湿り気味。しかしそれだけに、このチャンスで中心打者のベッツに一打が出れば、チームは大きく盛り上がる。ベッツの「技ありプレー」が大好きな私は、固唾を飲んで見つめていた。

すると1−2からの5球目、フォーシームをはっしと捕らえたベッツの打球は、三遊間を鮮やかに破る。2者が生還して3−0。ロバーツ監督はベンチで大きく手を挙げた。これは2点という点数以上に重みのある追加点だった。

だが重要なのはこの裏。「得点した後に相手の反撃をしっかり抑える」のが野球での勝利の鉄則だ。しかし山本は先頭のバーガーに2塁打を許し、三進した2死後にスプリンガーにタイムリーを浴びる。

先制したすぐ後の失点。第2戦とは違う展開に、「これはマズいな…」と思った。この日の山本は、スプリットを中心に、フォーシーム・カーブ・シンカー・カットボール・スライダーをバランスよく配し、低目を丁寧に突いていた(「調子は前回の登板よりよかった」と本人も試合後にコメントしている)。

しかし前回と違ったのは、第2戦ではカーブを空振りすることが多かったブルージェイズ打線が、この試合ではバットに当てていたことだ。決め球のスプリットやカーブをファウルで粘られることが多く、第2戦を105球でスイスイ完投した山本の球数が、この試合ではじわじわと増えていった。「この球数では、この試合は完投は無理っぽいな…」ブルージェイズ打線のしぶとさを、私は「敵ながらあっぱれ」の思いで見つめていた。

しぶといブルージェイズ打線。だがそれに負けない粘り強さ・大崩れしない安定感が山本の真骨頂だ。ヒットは打たれるが散発で、要所をきっちりと抑える。6回裏、2死からゲレーロJrにほぼ左手一本で巧妙な2塁打をレフト線に打たれ、ビシェットを歩かせて1・2塁のピンチを招くが、バーショをスプリットで空振り三振に討ち取り、2点のリードを守り抜いた。前回ほどの快投ではなかったが、先発投手の役目を果たし、しっかりと試合を作ったのは高く評価できる。これぞ「エースの貫禄」だ。

この後両軍ともリリーフ陣が得点を許さず、迎えた8回裏、ドジャースは佐々木朗希がマウンドへ。「2点リードで回のアタマからの登板」はポストシーズンマッチ3度目だが、過去2回は9回、今回は2イニングを残している。プレッシャーはこれまで以上に大きい場面だ。ヒットと四球で1死1・2塁のピンチを招いたが後続を抑え、2点リードを保ったまま最終回を迎える。

9回裏、先頭のカークを0−2と追い込んだが、スプリットが抜けて死球を与えてしまう。これはよくないランナーの出し方だった。佐々木の表情にやや悲壮感が漂っているのが気になった。続くバーガーの打球は左中間を破ったが、ボールがフェンスの下に挟まってしまう。センターのディーンがボールデッドを主張するが、その間に2塁走者に続きバッターランナーまでホームに戻ってくる。しかし主審の判定はボールデッドでエンタイトルツーベース、無死2・3塁での再開となった。これはドジャースにとっては不幸中の幸いだった。

ここでロバーツ監督は投手をグラスノーに替える。勝てば最終戦の先発と思われていたグラスノーを、ここで持ってきた。負ければ終わりの、まさに「明日なき戦い」だ。

一打同点のシビれる場面だったが、クレメントが初球をファーストポップフライ。NHK解説の田口壮さんがおっしゃっていたが、この緊迫した場面で、初球の難しい球に簡単に手を出したのは、ブルージェイズにはもったいなかった。

しかしなおも1死2・3塁。ここでヒメネスがレフトへライナー。ヒット性の当たりだったので、2塁走者のバーガーが2・3塁間の真ん中まで飛び出して打球を見ている。これを見たK・ヘルナンデスが、捕球するやすばやく2塁にランニングスロー。2塁ベースについたロハスが、難しいハーフバウンドの送球をバランスを崩しながら好捕。一瞬にしてダブルプレー、ゲームセットとなった。


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ベンチで喜び、抱き合う山本由伸と佐々木朗希。佐々木にとってはNLCS第1戦と同様のつらいリリーフ失敗となったが、これもいい経験だ。まずは勝ったからいい。これで第7戦・最終戦へともつれ込むことになり、リベンジのチャンスが残されたのだ。

こうして最終決戦を迎える今年のWS。ドジャースの先発は、中3日で大谷翔平。リリーフでは指名打者として出場できないルールで、恐らくはあまり長くは投げず、スターターのスネルやこの日急遽登板したグラスノーも投入する総力戦になるだろう。双方が死力を尽くすであろうこのファイナルマッチ、「ドジャースWS連覇!」の瞬間をひたすら祈りながら、しかと刮目しよう!
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