ソチ五輪が開幕した。お勉強に忙しい私はあまり見ることはできないが、ジャンプ、スピードスケート、複合やフィギュアスケートなど、個人的に注目している種目はやはり見ようと思う。
今日の休日はお勉強は午前中だけにして、午後からはオリンピックがらみの番組をハシゴした。今大会からの新種目であるスノーボードのスロープスタイルも面白かったが、NHKアーカイブスで観たカーリングが興味津々だった(2008年放送)。
もともとカーリングは私の好きな競技で、このブログでも何度か書いているが、この番組でまた新しい知識をインプットできたのだ。
カーリングのリンクの氷の表面には、「ペブル」と呼ばれる細かい粒状のデコボコが人為的に作られている。試合前にリンクにシャワーのような水をまくのだ。このペブルを作ることで、ストーンと氷との接触面が少なくなり、ストーンのスピードがつくのだ。
番組では、今回のソチ大会に出場している小笠原歩選手(当時は小野寺姓)に同じスピードでストーンをリリースしてもらい、ペブルがある氷と削り取った氷ではどのくらいストーンの進む距離が違うかを実験した。すると、何と17mもの違いが出た。この違いにも驚いたが、実際の試合ではこのペブルが溶けることでストーンのスピードが微妙に変わる。これを読んでストーンをリリースするわけだ。
もう1つ実験したのは、ストーンの前を2人がブラシで掃くスウィーピング。これをやる・やらないでどれほどストーンの進む距離が違うかを見た。これも小笠原選手にストーンをリリースしてもらって行ったが、こちらは5mの違いが出た。掃くことでペブルを溶かし(掃いた箇所は氷温が1度上がる)、その水の層にストーンを乗せて前に進めるのだ。
カーリングを見るたびいつも思っていたのが、「あのブラシで掃くことでどのぐらいストーンの進む距離が違うんだろう」ということだったのだが、思った以上に違うことがわかった。そしてどのくらいの距離をどのくらいの強さでスウィープするかによって、ストーンの進む距離も違ってくるのだ。
さらにリンクの氷上にあるのはペブルだけではない。時には髪の毛などのゴミも落ちていることがある。そしてこの髪の毛わずか1本が、ストーンのラインを狂わすのだ。
これも実験を行った。氷上に髪の毛1本を置き、その上を小笠原選手にストーンをリリースしてもらう。すると髪の毛を踏んだ瞬間に、ストーンが右にラインを変えたのだ。実際、前回のバンクーバー大会の女子決勝では、カナダチームの投じたストーンが髪の毛を踏んでラインが変わり、ミスショットになってしまった。これが敗因となってカナダは敗れたのだ。
ペブル、スウィーピング、髪の毛。さらに試合が朝か昼か夜か、観客の人数が多いか少ないかでも競技場の気温が変わるので、氷の状態も左右される。カーリングとは何と緻密で繊細なスポーツであることか。でもこういう緻密で繊細なものは、日本人好みだ。「氷上のチェス」と呼ばれる作戦そのものも非常に緻密で、観ていてすごく面白い。カーリングの日本の試合は何試合かは観たいものだ。
2014年02月09日
2013年02月17日
「梶原一騎的スポーツ観」は消えず 〜体罰を否定しきれない日本社会〜
大阪市立桜宮高校で、バスケット部の顧問の教師による体罰を苦にキャプテンが自らの命を絶った。また女子柔道の選手15人が、その暴力とパワハラについて園田隆二代表監督と元コーチをJOC(日本オリンピック委員会)に告発した。この衝撃的な2つの事件により、スポーツ指導における指導者の体罰が改めてクローズアップされている。
そもそも、なぜ日本のスポーツ指導には体罰がつきまとうのか。これには大きく2つの原因があると思う。1つは、この国の伝統的な社会構造によるものだ。日本人はほんの子供のころから、目上の人に従うことを当たり前に受け入れ、時に強いられてきた。子は親に従い、生徒は先生に従い、後輩は先輩に従い、選手は監督やコーチに従い、部下は上司に従う。この儒教的かつ封建的な社会構造が21世紀の現代でも根強く残っていることを、冒頭の2つの事件が図らずも証明してしまったわけだ。
もう1つは、スポーツを「精神修養・鍛錬の場」と考え、「スポーツは苦しいものだ。しかしこの苦しみに耐えなければ栄冠をつかむことはできないのだ」とするこの国のスポーツ観だ。これは「スポーツは何よりまず楽しむべきだ」と考える欧米とはまったく隔絶している。これが「指導」の名の下に暴力まがいの体罰やパワハラが横行する土壌を作ってしまっているのだ。
さらに問題なのは、桜宮高校の場合も女子柔道の場合も、この問題についての報告や告発が以前から行われていたにもかかわらず、学校や全日本柔道連盟(全柔連)はこの問題を軽視し、学校側は顧問の教師に何の処分も下さず、全柔連は園田監督の留任を決めたことだ(監督本人は辞任を表明したが)。
なぜこんなことになるのか。これは、「臭い物にフタ」という体質もあるが、一番大きいのは、彼らの生徒たちや選手たちへの「この程度のことで泣き言を言いやがって、根性なしめ」という目があるからじゃないかと思う。
彼ら指導者は、自分の選手時代も同じような厳しさの中でやってきたのだろう。そして学校の上層部の面々も、スポーツをやっていたかはともかく、今よりも厳格な学校社会や組織社会の中を生きてきたのだろう。「そんな俺たちと比べて、この程度で音を上げるコイツらの情けなさは何だ」と思っているに違いない(彼らの間では、「今どきの若い奴らは」という決まり文句が氾濫しているのかもしれない)。
しかし体罰などの厳しさに耐えることと、試合で実力を発揮して勝つこととはまったく別次元のことだ(と私は思う)。むしろ体罰で脅しつけるような指導をしていては、かえって選手たちは委縮して力を発揮できなくなるのではないか。
甲子園通算勝利数第1位を誇る高校野球の名将・高嶋仁監督(智弁和歌山)は、選手との対話を重視し、「この練習は何のためにやるのか」を選手に説明し、納得させることを常に心がけているという。
ここで以前紹介した、日本を代表するスポーツライターの金子達仁氏のスペシャルエッセイの一部を再掲する。なでしこジャパンのロンドン五輪での準優勝を称えるこのエッセイは、日本のスポーツ観についても一石を投じている。
「長く日本人は、梶原一騎的スポーツ観と“東洋の魔女”の伝説から逃れられずにきた。曰く、勝つためにはすべてを犠牲にしなければならない。曰く、指導者と選手の関係は、師と弟子、あるいは上官と部下のようでなければならない−。
それが間違いだったと言うつもりはない。何も犠牲にせずに勝利をつかむことなどありえないし、いまだ儒教精神の残る日本において、師と弟子、上官と部下のような関係が有効な場合もあることは事実だからである。
だが、上から強制される犠牲と、上官と部下の関係しか選べない状況は、やはり異常だった。
なでしこたちは、サッカーに没頭しつつ、女性としての楽しみも忘れなかった。佐々木監督との関係は、断じて師と弟子、上官と部下ではなかった。それでも彼女たちは世界の2位となり、そして、そのことを多くの日本人が目の当たりにした。
今後、日本のスポーツは変わる。なでしこをきっかけに、変わる。
ロンドンでなでしこがなし遂げたのは、だから、日本のサッカー史上、スポーツ史上、いや、歴史上においても特筆すべき快挙だった。政治家たちが100年かかってもできなかったことを、彼女たちはやってのけた。その瞬間を目撃できたことを、心から感謝したい。」
世界に開けているサッカーは、このようにどんどんいい意味で「欧米化」している。一方我が国発祥の柔道や、古い体質を残したままの「部活動」や「体育会」は、まだまだ「梶原一騎的スポーツ観」が根強いようだ。しかしいつまでもこんなことをやっていると、そのスポーツはどんどん「世界」から置いて行かれるだろう。
スポーツの世界は、私がたびたび指摘してきた「日本社会の後進性」を、時にもっともわかりやすい形で示してくれる。スポーツフリークとしてはとても悲しいことだが。
そもそも、なぜ日本のスポーツ指導には体罰がつきまとうのか。これには大きく2つの原因があると思う。1つは、この国の伝統的な社会構造によるものだ。日本人はほんの子供のころから、目上の人に従うことを当たり前に受け入れ、時に強いられてきた。子は親に従い、生徒は先生に従い、後輩は先輩に従い、選手は監督やコーチに従い、部下は上司に従う。この儒教的かつ封建的な社会構造が21世紀の現代でも根強く残っていることを、冒頭の2つの事件が図らずも証明してしまったわけだ。
もう1つは、スポーツを「精神修養・鍛錬の場」と考え、「スポーツは苦しいものだ。しかしこの苦しみに耐えなければ栄冠をつかむことはできないのだ」とするこの国のスポーツ観だ。これは「スポーツは何よりまず楽しむべきだ」と考える欧米とはまったく隔絶している。これが「指導」の名の下に暴力まがいの体罰やパワハラが横行する土壌を作ってしまっているのだ。
さらに問題なのは、桜宮高校の場合も女子柔道の場合も、この問題についての報告や告発が以前から行われていたにもかかわらず、学校や全日本柔道連盟(全柔連)はこの問題を軽視し、学校側は顧問の教師に何の処分も下さず、全柔連は園田監督の留任を決めたことだ(監督本人は辞任を表明したが)。
なぜこんなことになるのか。これは、「臭い物にフタ」という体質もあるが、一番大きいのは、彼らの生徒たちや選手たちへの「この程度のことで泣き言を言いやがって、根性なしめ」という目があるからじゃないかと思う。
彼ら指導者は、自分の選手時代も同じような厳しさの中でやってきたのだろう。そして学校の上層部の面々も、スポーツをやっていたかはともかく、今よりも厳格な学校社会や組織社会の中を生きてきたのだろう。「そんな俺たちと比べて、この程度で音を上げるコイツらの情けなさは何だ」と思っているに違いない(彼らの間では、「今どきの若い奴らは」という決まり文句が氾濫しているのかもしれない)。
しかし体罰などの厳しさに耐えることと、試合で実力を発揮して勝つこととはまったく別次元のことだ(と私は思う)。むしろ体罰で脅しつけるような指導をしていては、かえって選手たちは委縮して力を発揮できなくなるのではないか。
甲子園通算勝利数第1位を誇る高校野球の名将・高嶋仁監督(智弁和歌山)は、選手との対話を重視し、「この練習は何のためにやるのか」を選手に説明し、納得させることを常に心がけているという。
ここで以前紹介した、日本を代表するスポーツライターの金子達仁氏のスペシャルエッセイの一部を再掲する。なでしこジャパンのロンドン五輪での準優勝を称えるこのエッセイは、日本のスポーツ観についても一石を投じている。
「長く日本人は、梶原一騎的スポーツ観と“東洋の魔女”の伝説から逃れられずにきた。曰く、勝つためにはすべてを犠牲にしなければならない。曰く、指導者と選手の関係は、師と弟子、あるいは上官と部下のようでなければならない−。
それが間違いだったと言うつもりはない。何も犠牲にせずに勝利をつかむことなどありえないし、いまだ儒教精神の残る日本において、師と弟子、上官と部下のような関係が有効な場合もあることは事実だからである。
だが、上から強制される犠牲と、上官と部下の関係しか選べない状況は、やはり異常だった。
なでしこたちは、サッカーに没頭しつつ、女性としての楽しみも忘れなかった。佐々木監督との関係は、断じて師と弟子、上官と部下ではなかった。それでも彼女たちは世界の2位となり、そして、そのことを多くの日本人が目の当たりにした。
今後、日本のスポーツは変わる。なでしこをきっかけに、変わる。
ロンドンでなでしこがなし遂げたのは、だから、日本のサッカー史上、スポーツ史上、いや、歴史上においても特筆すべき快挙だった。政治家たちが100年かかってもできなかったことを、彼女たちはやってのけた。その瞬間を目撃できたことを、心から感謝したい。」
世界に開けているサッカーは、このようにどんどんいい意味で「欧米化」している。一方我が国発祥の柔道や、古い体質を残したままの「部活動」や「体育会」は、まだまだ「梶原一騎的スポーツ観」が根強いようだ。しかしいつまでもこんなことをやっていると、そのスポーツはどんどん「世界」から置いて行かれるだろう。
スポーツの世界は、私がたびたび指摘してきた「日本社会の後進性」を、時にもっともわかりやすい形で示してくれる。スポーツフリークとしてはとても悲しいことだが。
2013年01月05日
正月恒例のスポーツ観戦三昧 〜箱根駅伝、ラグビー大学選手権+α〜
正月三が日の我が恒例行事「おでんに焼き餅を入れる『力おでん』を食べながら、スポーツ観戦三昧を楽しむ」を、今年は3年ぶりに復活させることができた。やっぱり正月はこれでないとな。
(ただ今年はNHKオンデマンドやネットでの観戦なので、一部リアルタイムでないのが今までとは違うが)
【 ラグビー大学選手権・準決勝 】
< 帝京VS早稲田 >
帝京の史上初の4連覇がかかった今大会。このブログでも何度か書いているが、FW戦偏重で3連覇を達成した帝京のこれまでの戦いぶりが私は不満で、「今年もあんな戦いで『史上初』を成し遂げたりしたらマズいな」と思っていた。
ところが帝京はこの早稲田との準決勝では、予想外にボールを回してきた。強い風下の前半はキックが使いにくかったから仕方なくやったんだろうと思っていたが、後半に風上になってからも、自陣からでもボールを回すプレーが目立ったのだ。これは恐らく、FW・BKのバランスのいい攻撃を目指したのと、マイボールを確実にキープし、攻撃の時間を長くすることで試合の流れをつかみたいという狙いがあったのではないかと思う(キックを多用すると、陣地は稼げるがボールの支配を敵に渡すことが多い)。実際、立ち上がりは早稲田が上回っていたボール支配率が、時間が進むにつれて帝京に傾いていき、後半には6割以上を占めるに至った。そしてそれに伴い、帝京のFWの圧力とBKの展開力に早稲田は疲弊していき、連続トライで突き放された。
帝京が思った以上にボールを回してきたことが私は意外だったが、同時にいいことだと思った。縦と横の攻撃をバランスよく組み入れてこそ攻撃の選択肢が増えるし、相手の守備も対応しにくい。それに何より、2019年に自国でのW杯開催を控え、世界を真剣に目指そうとしている日本にとって、大学日本一のチームがバランスの悪いFW偏重の戦いに終始していては困る。ジャパンの将来のためにも、どのカテゴリーでもトップレベルは、世界の潮流である「パワーとスピードのラグビー」「縦と横、FWの突進とBKの展開のバランスのいいラグビー」を目指してほしいのだ。今年の帝京の「変身」は、私にとっては大歓迎だ。
< 東海VS筑波 >
ともに上に書いた「縦と横、FWの突進とBKの展開のバランスのいいラグビー」で、見ごたえのある試合になった。二転三転したこの試合、最後は筑波に軍配が上がったが、敗れた東海にもまた「あっぱれ!」をあげたい。
筑波の勝因は「出足」にあったと思う。攻撃では、タックルを受けてダウンボールすると、そのポイントへの2人目、3人目のサポートが速く、確実にマイボールをキープするだけでなく、球出しが速い。そのため攻撃がリズムよくスピーディーに継続し、観ていて小気味よかった。また守備でも、特に後半は出足のいいタックルで東海にゲインを許さず、敵陣でのプレー時間が長くなった。そして後半35分の決勝の逆転トライも、相手SOのキックをチャージし、そのこぼれ球を拾って奪ったものだった。この試合で再三見せていた出足の鋭さが、試合を決めるキープレーとなったのだ。
さてこれで、決勝の組み合わせは帝京−筑波となった。筑波は初の決勝進出である。個人的にはスピーディーなつなぎのラグビーの筑波に勝ってほしいが、帝京も早稲田戦のようなバランスのいい攻撃をしてくれれば「史上初」にふさわしい。13日の頂上決戦が楽しみだ。
【 箱根駅伝 】
去年の大会で学校史上最低の総合19位に沈み、予選会からの出場だった日体大が、見事な「下剋上」優勝。往路の5区・山登りで、3年生キャプテン・服部翔大が区間1位の快走で東洋を逆転して往路優勝。復路でも7区から10区がすべて区間2位という好走でつなぎ、30年ぶり10回目の総合優勝を遂げた。予選会からの出場校の優勝は史上2度目の快挙だった。
・・・しかし今年の箱根駅伝は、多くを語る気になれない。84年連続87回目の出場・総合優勝は最多の14回・去年まで28年連続シードという大会随一の戦績を誇る母校・中央が、5区で途中棄権となり、来年は予選会からの出場となってしまったからだ。
出だしの1区は9位とまずまずだったが、2区がブレーキになって19位と大幅に順位を下げた。その後も順位をなかなか上げられず、総合18位で5区へ。ところがこの過酷な山登りで強い向かい風に襲われ、体温低下と脱水症状を招く。そしてついにゴールまで1.7キロと迫ったところで、リタイアを余儀なくされた。同校史上初の途中棄権、そして28年続いたシード権を失った瞬間だった。
棄権した選手を責めることはできない。しかし無念!の一言だ。選手たちはもとより、伝統を支えてきたOB・関係者の落胆は察するに余りある。しかし、悲しみに打ちひしがれてばかりはいられない。
優勝した日体大は昨年の同校最悪の19位のどん底から立ち上がり、予選会を勝ち抜き、本番で見事名門復活の優勝を遂げた。中央もこの日体大のリベンジ優勝をしかと目に刻み、このどん底を復活の糧にして、今年の予選会、そして本戦を目指してほしい。甦れ、名門中央!
【 フィギュアスケート・全日本選手権 】
正月ではないが、昨年末のビッグイベントについて最後に一言。男子は羽生結弦が初優勝、女子は浅田真央が6度目の優勝。今シーズンの好調をそのままに維持しての栄冠だった。ともにベストの演技ではなかったが、大きく崩れることなく高いレベルで安定した演技を見せた。特に羽生の今シーズンでのブレイクは括目に値する。
2位にとどまったものの、橋大輔のFSの演技はすばらしかった。2度の4回転トゥループを今シーズン初めて決め、このいい流れに乗って今シーズン最高の演技。得意のステップシークエンス、後半のコレオシークエンスもすばらしい盛り上がりで、観衆は沸きに沸く。「今シーズンで一番気合が入っていた」という言葉通り、「魅惑の大輔ワールド」を存分に魅せてくれた。
女子では村上佳菜子がすばらしかった。今シーズンはGPシリーズでカナダ大会3位・ロシア大会4位とやや不調で、GPファイナルの出場権を逃した。それだけに、世界選手権への出場権のかかったこの全日本に賭ける思いは強かっただろう。SPではジャンプにミスが出て5位と出遅れたが、FSでは今シーズンの不振を一気に払拭するすばらしい演技を見せた。
漆黒のコスチューム、背も少し伸びただろうか。体つきも少し丸みを帯びて、ぐっと大人っぽくなった。そして演技は、この妖艶な雰囲気に情熱を加味し、さらに力強さと気迫も加わって、観る者をグイグイ引きつける。そして終わった瞬間の会心のガッツポーズと満面の笑顔。こんな弾けるような彼女の笑顔を見たのは久しぶりだった。シニアデビュー以来の彼女のファンとしては、久々に観た彼女の会心の演技と会心の笑顔に「満足」!
3月のカナダでの世界選手権には、男子が羽生・橋・無良崇人、女子が浅田・村上・鈴木明子の出場が決まった。小塚崇彦がケガによる不調で出場を逃したのが残念だが、無良もGPシリーズのフランス大会でシリーズ初優勝するなど成長著しく、現時点でのベストスケーターが揃ったといっていいだろう。
世界選手権では、男子はGPファイナルで3位にとどまったパトリック・チャンが地元で待ち構える。そして女子は、昨シーズンを休養していたキム・ヨナ(韓国)が満を持して出場。浅田真央との同世代ライバル対決がまた見られる。今年も見どころ満載だ。
一言と言いながら、けっこう長くなってしまった(苦笑)。やっぱりフィギュアスケートは語り出すと止まらない。
(ただ今年はNHKオンデマンドやネットでの観戦なので、一部リアルタイムでないのが今までとは違うが)
【 ラグビー大学選手権・準決勝 】
< 帝京VS早稲田 >
帝京の史上初の4連覇がかかった今大会。このブログでも何度か書いているが、FW戦偏重で3連覇を達成した帝京のこれまでの戦いぶりが私は不満で、「今年もあんな戦いで『史上初』を成し遂げたりしたらマズいな」と思っていた。
ところが帝京はこの早稲田との準決勝では、予想外にボールを回してきた。強い風下の前半はキックが使いにくかったから仕方なくやったんだろうと思っていたが、後半に風上になってからも、自陣からでもボールを回すプレーが目立ったのだ。これは恐らく、FW・BKのバランスのいい攻撃を目指したのと、マイボールを確実にキープし、攻撃の時間を長くすることで試合の流れをつかみたいという狙いがあったのではないかと思う(キックを多用すると、陣地は稼げるがボールの支配を敵に渡すことが多い)。実際、立ち上がりは早稲田が上回っていたボール支配率が、時間が進むにつれて帝京に傾いていき、後半には6割以上を占めるに至った。そしてそれに伴い、帝京のFWの圧力とBKの展開力に早稲田は疲弊していき、連続トライで突き放された。
帝京が思った以上にボールを回してきたことが私は意外だったが、同時にいいことだと思った。縦と横の攻撃をバランスよく組み入れてこそ攻撃の選択肢が増えるし、相手の守備も対応しにくい。それに何より、2019年に自国でのW杯開催を控え、世界を真剣に目指そうとしている日本にとって、大学日本一のチームがバランスの悪いFW偏重の戦いに終始していては困る。ジャパンの将来のためにも、どのカテゴリーでもトップレベルは、世界の潮流である「パワーとスピードのラグビー」「縦と横、FWの突進とBKの展開のバランスのいいラグビー」を目指してほしいのだ。今年の帝京の「変身」は、私にとっては大歓迎だ。
< 東海VS筑波 >
ともに上に書いた「縦と横、FWの突進とBKの展開のバランスのいいラグビー」で、見ごたえのある試合になった。二転三転したこの試合、最後は筑波に軍配が上がったが、敗れた東海にもまた「あっぱれ!」をあげたい。
筑波の勝因は「出足」にあったと思う。攻撃では、タックルを受けてダウンボールすると、そのポイントへの2人目、3人目のサポートが速く、確実にマイボールをキープするだけでなく、球出しが速い。そのため攻撃がリズムよくスピーディーに継続し、観ていて小気味よかった。また守備でも、特に後半は出足のいいタックルで東海にゲインを許さず、敵陣でのプレー時間が長くなった。そして後半35分の決勝の逆転トライも、相手SOのキックをチャージし、そのこぼれ球を拾って奪ったものだった。この試合で再三見せていた出足の鋭さが、試合を決めるキープレーとなったのだ。
さてこれで、決勝の組み合わせは帝京−筑波となった。筑波は初の決勝進出である。個人的にはスピーディーなつなぎのラグビーの筑波に勝ってほしいが、帝京も早稲田戦のようなバランスのいい攻撃をしてくれれば「史上初」にふさわしい。13日の頂上決戦が楽しみだ。
【 箱根駅伝 】
去年の大会で学校史上最低の総合19位に沈み、予選会からの出場だった日体大が、見事な「下剋上」優勝。往路の5区・山登りで、3年生キャプテン・服部翔大が区間1位の快走で東洋を逆転して往路優勝。復路でも7区から10区がすべて区間2位という好走でつなぎ、30年ぶり10回目の総合優勝を遂げた。予選会からの出場校の優勝は史上2度目の快挙だった。
・・・しかし今年の箱根駅伝は、多くを語る気になれない。84年連続87回目の出場・総合優勝は最多の14回・去年まで28年連続シードという大会随一の戦績を誇る母校・中央が、5区で途中棄権となり、来年は予選会からの出場となってしまったからだ。
出だしの1区は9位とまずまずだったが、2区がブレーキになって19位と大幅に順位を下げた。その後も順位をなかなか上げられず、総合18位で5区へ。ところがこの過酷な山登りで強い向かい風に襲われ、体温低下と脱水症状を招く。そしてついにゴールまで1.7キロと迫ったところで、リタイアを余儀なくされた。同校史上初の途中棄権、そして28年続いたシード権を失った瞬間だった。
棄権した選手を責めることはできない。しかし無念!の一言だ。選手たちはもとより、伝統を支えてきたOB・関係者の落胆は察するに余りある。しかし、悲しみに打ちひしがれてばかりはいられない。
優勝した日体大は昨年の同校最悪の19位のどん底から立ち上がり、予選会を勝ち抜き、本番で見事名門復活の優勝を遂げた。中央もこの日体大のリベンジ優勝をしかと目に刻み、このどん底を復活の糧にして、今年の予選会、そして本戦を目指してほしい。甦れ、名門中央!
【 フィギュアスケート・全日本選手権 】
正月ではないが、昨年末のビッグイベントについて最後に一言。男子は羽生結弦が初優勝、女子は浅田真央が6度目の優勝。今シーズンの好調をそのままに維持しての栄冠だった。ともにベストの演技ではなかったが、大きく崩れることなく高いレベルで安定した演技を見せた。特に羽生の今シーズンでのブレイクは括目に値する。
2位にとどまったものの、橋大輔のFSの演技はすばらしかった。2度の4回転トゥループを今シーズン初めて決め、このいい流れに乗って今シーズン最高の演技。得意のステップシークエンス、後半のコレオシークエンスもすばらしい盛り上がりで、観衆は沸きに沸く。「今シーズンで一番気合が入っていた」という言葉通り、「魅惑の大輔ワールド」を存分に魅せてくれた。
女子では村上佳菜子がすばらしかった。今シーズンはGPシリーズでカナダ大会3位・ロシア大会4位とやや不調で、GPファイナルの出場権を逃した。それだけに、世界選手権への出場権のかかったこの全日本に賭ける思いは強かっただろう。SPではジャンプにミスが出て5位と出遅れたが、FSでは今シーズンの不振を一気に払拭するすばらしい演技を見せた。
漆黒のコスチューム、背も少し伸びただろうか。体つきも少し丸みを帯びて、ぐっと大人っぽくなった。そして演技は、この妖艶な雰囲気に情熱を加味し、さらに力強さと気迫も加わって、観る者をグイグイ引きつける。そして終わった瞬間の会心のガッツポーズと満面の笑顔。こんな弾けるような彼女の笑顔を見たのは久しぶりだった。シニアデビュー以来の彼女のファンとしては、久々に観た彼女の会心の演技と会心の笑顔に「満足」!
3月のカナダでの世界選手権には、男子が羽生・橋・無良崇人、女子が浅田・村上・鈴木明子の出場が決まった。小塚崇彦がケガによる不調で出場を逃したのが残念だが、無良もGPシリーズのフランス大会でシリーズ初優勝するなど成長著しく、現時点でのベストスケーターが揃ったといっていいだろう。
世界選手権では、男子はGPファイナルで3位にとどまったパトリック・チャンが地元で待ち構える。そして女子は、昨シーズンを休養していたキム・ヨナ(韓国)が満を持して出場。浅田真央との同世代ライバル対決がまた見られる。今年も見どころ満載だ。
一言と言いながら、けっこう長くなってしまった(苦笑)。やっぱりフィギュアスケートは語り出すと止まらない。
2012年06月08日
東洋大、史上に残る驚異的な新記録で完全優勝 〜箱根駅伝・復路〜 <2012.1.3(火)>
箱根駅伝は復路も東洋大が圧倒的な強さを見せ、9区以外はすべて区間賞(7区は区間新!)を取る快走で後続をさらに突き放し、従来の記録を1分56秒更新する復路新記録(5時間26分51秒)で優勝。総合では2位・駒大に史上最大の9分2秒の大差をつけて圧勝した。総合記録(10時間51分36秒)も、去年早大がマークしたばかりの新記録をさらに8分15秒も上回る、驚異的な新記録。完全優勝に往路・復路とも新記録のおまけつき。東洋のこの3つの新記録は、恐らくしばらくは破られない歴史的な快記録になるだろう。
2位は駒澤、復路ではさすがに追い上げてきた。3位は明治。故障で出場が危ぶまれていたエース・鎧坂が10区で早稲田を逆転し、1963年の2位以来の上位入賞を果たした。昨シーズン「駅伝3冠」の早稲田は復路後半が伸びず、4位に終わった。5位は大学史上最高順位で青学。6位は城西、去年わずか3秒差でシードを逃したリベンジを見事に果たし、大学最高タイの順位をマーク。7位は5年ぶり出場の名門・順天堂がシード復活。予選会はギリギリ9位での通過だったが、復路で5位に入り、名門の底力を見せた。以下8位・中央、9位・山梨学院、10位・国学院。「目に見えないタイム差」との戦いになった今年のシード権争いは、最終盤で粘った国学院が国士舘を3分弱突き放し、昨年に次いでシードを確保した。
(我が中央は伝統の意地で、苦しみながらも28年連続でシードを獲得した。6区で代田が区間3位の快走、7・8区も堅実にまとめて8位に上がる。9区では10位に後退したが、最終10区で塩谷が気迫の激走を見せて区間3位に入り、総合8位に食い込んだ。ハラハラしたが、最後は伝統の力を見せてくれた)
去年までの東洋は、「5区で柏原に大逆転してもらい、復路でそのリードを守って勝つ」という、かなり柏原への依存度が高いチームだった。しかし今年は、柏原にタスキを渡す時点ですでにトップに立ち(2位に2分弱の差)、柏原でそのリードを大きく広げ(5分以上)、復路でも相次ぐ快走で区間ごとにリードを広げる(一時は9分半以上)という、「もともとすごく強い+柏原=ダントツに強い」、高いレベルでの総合力を持ったチームに変貌した。
これは競馬で言えば、逃げ馬が最後の直線で二の足を使って後続を突き放し、リードを広げて勝つようなもの。まるでサイレンススズカのような快走だった。今年の東洋には、「箱根のサイレンススズカ」の称号を与えよう(こんな称号をもらってもうれしくないかもしれないが、あらゆるサラブレッドの中でサイレンススズカが一番好きな私にとって、これは最高のほめ言葉なのだ)。
東洋の区間賞6人は20校出場となった2003年以降最多で、柏原以外はすべて3年以下。これは東洋は、来年柏原が抜けても強そうだ。しかし駒澤・早稲田ら強豪・名門も黙ってはいないだろう。来年もドラマチックなレースを期待したい。
2位は駒澤、復路ではさすがに追い上げてきた。3位は明治。故障で出場が危ぶまれていたエース・鎧坂が10区で早稲田を逆転し、1963年の2位以来の上位入賞を果たした。昨シーズン「駅伝3冠」の早稲田は復路後半が伸びず、4位に終わった。5位は大学史上最高順位で青学。6位は城西、去年わずか3秒差でシードを逃したリベンジを見事に果たし、大学最高タイの順位をマーク。7位は5年ぶり出場の名門・順天堂がシード復活。予選会はギリギリ9位での通過だったが、復路で5位に入り、名門の底力を見せた。以下8位・中央、9位・山梨学院、10位・国学院。「目に見えないタイム差」との戦いになった今年のシード権争いは、最終盤で粘った国学院が国士舘を3分弱突き放し、昨年に次いでシードを確保した。
(我が中央は伝統の意地で、苦しみながらも28年連続でシードを獲得した。6区で代田が区間3位の快走、7・8区も堅実にまとめて8位に上がる。9区では10位に後退したが、最終10区で塩谷が気迫の激走を見せて区間3位に入り、総合8位に食い込んだ。ハラハラしたが、最後は伝統の力を見せてくれた)
去年までの東洋は、「5区で柏原に大逆転してもらい、復路でそのリードを守って勝つ」という、かなり柏原への依存度が高いチームだった。しかし今年は、柏原にタスキを渡す時点ですでにトップに立ち(2位に2分弱の差)、柏原でそのリードを大きく広げ(5分以上)、復路でも相次ぐ快走で区間ごとにリードを広げる(一時は9分半以上)という、「もともとすごく強い+柏原=ダントツに強い」、高いレベルでの総合力を持ったチームに変貌した。
これは競馬で言えば、逃げ馬が最後の直線で二の足を使って後続を突き放し、リードを広げて勝つようなもの。まるでサイレンススズカのような快走だった。今年の東洋には、「箱根のサイレンススズカ」の称号を与えよう(こんな称号をもらってもうれしくないかもしれないが、あらゆるサラブレッドの中でサイレンススズカが一番好きな私にとって、これは最高のほめ言葉なのだ)。
東洋の区間賞6人は20校出場となった2003年以降最多で、柏原以外はすべて3年以下。これは東洋は、来年柏原が抜けても強そうだ。しかし駒澤・早稲田ら強豪・名門も黙ってはいないだろう。来年もドラマチックなレースを期待したい。
「新・山の神」だけじゃない総合力で他を圧倒 〜箱根駅伝・往路〜 <2012.1.2(月)>
箱根駅伝は往路、東洋大が従来の記録を5分以上も更新する驚異的な往路新記録で優勝。5区では「新・山の神」柏原竜二がまたもや快走、自らが持つ2年前の区間記録を29秒更新し、初の1時間6分台をマーク。2位・早稲田に5分以上の大差をつけた。東洋は史上4度目の往路4連覇を達成。また柏原の区間賞は、史上2度目の4年連続同一区間での区間賞という快挙だ。東洋が圧倒的なタイムを出したため、復路の繰上げ一斉スタート(トップがスタートした10分後)が8位以下の13校に及ぶという異例の事態になった。
「1区で早稲田の大迫が飛び出して後続を引き離す」というパターンは去年と同じだったが、このあとが違った展開になった。続く2区で東洋・設楽(啓)が早稲田をかわし、早くも東洋がトップに立つ。この後3・4区でも東洋はトップを譲らず、2位・早稲田に2分近い差をつけて5区・柏原へ。過去3年間はすべて追いかける展開だったが、最終年にして初めて首位でタスキを受けたのだ。この展開は、恐らく東洋にとっても柏原にとっても想定以上だったのではないだろうか(柏原は「うれしくて、タスキを受ける時涙が出そうになった」と語った)。そしてこの歓喜と余裕を胸に柏原は最高の走りを見せ、これ以上ない形で有終の美を飾った。
明日の復路、5分のリードは大きい。順当に行けば東洋の王座奪還は固いだろう。2位以下はタイム差が大きくないので、順位争いが激しくなりそうだ。
そして恒例のシード権争いもまた熾烈だ。8位以下が一斉スタートとなるため、見た目の順位と実際の順位が異なり、選手たちは見えないタイム差と戦いながら走ることになる。並走する監督がこのタイム差を伝えながらの戦いになるだろうが、これも過酷ながら見ごたえのある争いになりそうだ。(我が中央は12位。一時4位まで浮上したが、5区で区間18位に沈んで失速した。シード権争いに巻き込まれる危険性も十分ある。久しぶりに心臓に悪い復路になりそうだ)
「1区で早稲田の大迫が飛び出して後続を引き離す」というパターンは去年と同じだったが、このあとが違った展開になった。続く2区で東洋・設楽(啓)が早稲田をかわし、早くも東洋がトップに立つ。この後3・4区でも東洋はトップを譲らず、2位・早稲田に2分近い差をつけて5区・柏原へ。過去3年間はすべて追いかける展開だったが、最終年にして初めて首位でタスキを受けたのだ。この展開は、恐らく東洋にとっても柏原にとっても想定以上だったのではないだろうか(柏原は「うれしくて、タスキを受ける時涙が出そうになった」と語った)。そしてこの歓喜と余裕を胸に柏原は最高の走りを見せ、これ以上ない形で有終の美を飾った。
明日の復路、5分のリードは大きい。順当に行けば東洋の王座奪還は固いだろう。2位以下はタイム差が大きくないので、順位争いが激しくなりそうだ。
そして恒例のシード権争いもまた熾烈だ。8位以下が一斉スタートとなるため、見た目の順位と実際の順位が異なり、選手たちは見えないタイム差と戦いながら走ることになる。並走する監督がこのタイム差を伝えながらの戦いになるだろうが、これも過酷ながら見ごたえのある争いになりそうだ。(我が中央は12位。一時4位まで浮上したが、5区で区間18位に沈んで失速した。シード権争いに巻き込まれる危険性も十分ある。久しぶりに心臓に悪い復路になりそうだ)

