2018年12月09日

「ロストフの14秒」:我がベスト3に入る、濃密なスポーツドキュメントの絶品

こんなすごい、見ごたえのあるスポーツドキュメントは久しぶりに観た。観終わった瞬間、「これは『江夏の21球』・『延長17回』と並ぶ、オレにとってのスポーツドキュメント・ベスト3だな」と確信した。


「ロストフの14秒」これは、日本のサッカーファンにとっては忘れられない、今年のワールドカップロシア大会・決勝トーナメント1回戦、日本VSベルギー戦の後半アディショナルタイムで起こった、ベルギーの高速カウンターによる決勝ゴールのことだ。MF本田が左コーナーキックを蹴ってからMFシャドリが決勝ゴールを決めるまで、わずか14秒。このわずかな時間を、多角的な映像と、このプレーに関わった選手たちや関係者の証言・コメントで綴った、すさまじく濃密なドキュメンタリーである。

冒頭、「この14秒を28台のカメラの映像であらゆる角度から分析し、あのプレーの真相を描き出す」という番組の設定を聞かされた時、「これはものすごいドキュメンタリーになるな」と、私はすでにこの時点で心臓ドキドキの興奮状態にあった。そしてその内容は、この興奮と期待を裏切らない、いやそれをはるかに上回るものだった。

本田のCKを、GKクルトワはパンチングではなくキャッチを選ぶ〜これを読んでいたMFデブルイネはキャッチする前から前方へのダッシュを始める〜クルトワがデブルイネにパスを送り、デブルイネはトップスピードでドリブル突進〜ピッチの中央でボールを奪おうと対峙したMF山口蛍を、デブルイネはドリブルのスピードとリズムを変えていなし、DF長友がマークする中央のFWルカクではなく、右サイドを駆け上がるDFムニエにスルーパスを送る〜GKとDFの間へのキラーパスを防ごうとムニエへのマークに入った長友を見て、ムニエはダイレクトの横パスを出す〜MF長谷部がルカクをマークしてシュートコースを消していたが、ルカクは4秒前に左にシャドリがいるのを確認しており、迷いなくスルーを選ぶ〜ルカクがスルーした瞬間、シャドリは周囲がスローモーションに見えた。まさに「ZONE」:これがこの14秒の概略だが、番組では各シーンをさらに多角的に詳細に描いている。これを文章にすると膨大になってしまうので、これ以上はやめる。というより、ヘタに文章にすると稚拙になってしまう気がするので、あえてやめる。とにかく、すさまじく濃密なドキュメンタリーだった。


日本が喫したこの「サヨナラゴール」には、賛否両論がある。番組の中でも、元イングランド代表監督のファビオ・カペッロ氏は「日本は過信した。試合終了まで14秒しかなかったのに、ありえないCKを蹴った」と非難する。一方元日本代表監督のイビチャ・オシム氏は、ファウルでベルギーのプレーを止めなかったことについて「故意の反則は日本らしくない。フェアプレーを重視することで日本人は損をすることが多いが、それが日本人なのだ」と、日本人の民族特性を評価する。長友は、この試合の前のポーランド戦で、決勝トーナメント進出のために後半最後の10分間をボール回しで時間稼ぎをしたことに選手がみなもどかしさを感じ、「次の試合はどんなことがあっても真っ向勝負でぶつかっていく」という気持ちがみんなあった、と語る。

良くも悪くも、これが日本人気質、サムライスピリッツなのだ。ラグビーワールドカップ2015で、南アフリカ戦の最終盤、PGで同点にできる場面であえてスクラムを選択し、見事に「サヨナラトライ」を決めたエディジャパン。こういう劇的で華々しい勝利もあれば、西野ジャパンのように劇的に散ることもある。勝利にも敗北にも「美学」を求める、これが日本人なのだ。


「ロストフの14秒」。冒頭に書いた通り、これはスポーツドキュメントでは双璧と思っていた、1979年日本シリーズ・広島VS近鉄の第7戦の9回裏の攻防を描いた「江夏の21球」、1998年夏の甲子園準々決勝・横浜VSPL学園の死闘を描いた「延長17回」に並ぶ傑作だと思う。今こうして書いていても、まだ興奮が収まらない。素晴らしいものを観せてくれた。さすが天下のNHK、我がスポーツドキュメント・ベスト3に入る絶品に、「大あっぱれ」!



posted by デュークNave at 08:06| Comment(0) | 映画・TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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