2018年07月06日

史上もっとも劇的で感動的だったサムライブルーたち 〜 2018 FIFA World Cup Russia 決勝トーナメント1回戦〜

まさに「激闘」だった。決勝トーナメント1回戦、日本の相手はFIFAランク3位、1次リーグで9得点を挙げた「赤い悪魔」ベルギー。2002年日韓大会の1次リーグ初戦でも対戦し、この時は2−2で引き分けているが、今大会でのベルギーの「悪魔ぶり」は、その時の比ではない。2002年トルコ、2010年パラグアイ。過去日本が決勝トーナメントの1回戦で戦った相手だが、今回のベルギーはこの中で間違いなく最強だ。この「掛け値なしの世界の強豪」に、西野ジャパンのサムライブルーたちは真っ向勝負を挑んだ。


【 耐えに耐えた前半、そして後半開始早々の、目にも鮮やかな連撃 】

試合開始早々は日本がいいリズムで相手陣に攻め込み、香川がファーストシュートを放った。しかし徐々にベルギーの圧力が強まり、日本は自陣での防御を強いられる。ベルギーの左右からの波状攻撃は迫力があったが、日本は相手との間合いを的確に取り、シュートコースをきっちりとブロックしていた。攻め込まれながらも決定的なチャンスはほとんど与えないまま、スコアレスで前半を終了した。

そして後半開始早々、押され気味だった日本に、目の覚めるような鮮やかな先制点が生まれる。自陣ペナルティエリア外で相手ボールを奪った乾が柴崎にパス。それを見た原口が、猛然と敵陣に向かって走り出す。柴崎はそれに呼応し、ベルギーDFの裏にロングスルーパスを送る。このパスに追いついた原口はPA内でわずかにフェイントを入れ、右足を振り抜く。ボールはGKクルトワの右手をかわし、左サイドネットを揺らした。セネガル戦での柴崎〜長友〜乾のカウンターを再現したような、まさに電光石火の先制ゴールだった。コロンビア戦の香川と大迫、セネガル戦の乾と本田、そしてこの原口。日本の主力攻撃陣のゴールがこれで揃い踏みした。

しかし、驚きと歓喜はこれで終わらない。その4分後、最終ラインのDF吉田が左サイドの乾にパス。乾はサイドをドリブルで駆け上がり、ゴール前の大迫にクロスを送る。これは相手DFに跳ね返されたが、これを香川が拾い、背後の乾に返す。ここで乾が、小さくトラップして右足を一閃。無回転で伸びたボールは、ベルギーゴールの右隅に叩き込まれた。

この瞬間の衝撃は、言葉では言い尽くせない。まさかあのタイミングでシュートを放つとは思わなかった(恐らくベルギーのDFやGKもそうだっただろう)。シュートそのものも見事すぎるほど見事。リプレイで見た、無回転で飛んでいくボールの美しい軌道にも驚かされた。そして何より、世界3位の強豪を2点リードしたということ。これはにわかには信じられない、期待をはるかに上回る事実だったのだ。


【 本気になった赤い悪魔たち、そして… 】

この後も日本は攻勢を続け、3点目も生まれるかと思うようないいリズムで試合をリードした。しかし後半20分、ベルギーは長身のFWフェライニとMFシャドリを相次いで投入。ここから試合の流れが微妙に変わり始めた。そして24分、右CKからのこぼれ球をDFフェルトンゲンが頭でふわりと放った、シュートというよりクロスのつもりだったのだろうが、これがGK川島の頭上を越えてゴールに吸い込まれてしまった。思わぬ形で喫したこの失点が、試合の空気を一変させる。この5分後、E・アザールのクロスにフェライニが頭を合わせ、日本ゴールに叩き込む。選手交代からわずか10分での同点劇。本気になった世界の強豪の怖さをまざまざと見せつけられた。

しかしこの後は、日本も粘り強いディフェンスを見せて腰を割らない。36分には柴崎に代えて山口蛍、原口に代えて本田を投入。これで攻撃のリズムが再び活性化し、敵陣中央で得たFKで本田が、2010年大会・デンマーク戦でのFKを彷彿とさせる無回転シュートを放ったが、名手クルトワにセーブされた。

そして後半アディショナルタイム4分、日本の左CK。「このラストチャンスにサヨナラゴールを決められるか」と注目していた。しかし本田のクロスをGKクルトワがキャッチし、すかさずMFデブルイネにボールを送る。デブルイネはピッチ中央を猛然とドリブルで突進、右サイドのムニエにスルーパスを送る。ムニエはワンタッチでグラウンダーのクロスを日本ゴール前へ。中央のルカクがこれをスルー、後ろから走り込んでいたシャドリが左足を合わせ、ゴールネットを揺らした。この間、わずか10秒。サヨナラゴールを決めるつもりが、逆に電撃カウンターでサヨナラゴールを喫してしまった。あまりにも衝撃的なエンディングだった。


【 W杯史上もっともインパクトのあった今回の日本代表:間違いなく未来への財産に 】

この強烈なカウンターのショックがまだ醒めていないが、ここは心を静めて、今大会の西野ジャパンの戦いを総括してみたい。直前の監督交代で衝撃と動揺が走った中、わずか30日の準備期間で迎えたW杯本番。しかもその前の国際マッチを無得点で連敗し、世界ランクは61位にまで落ち込んだ。期待度はかなり薄い中で始まったロシア大会だった。

ただ私は、直前のパラグアイ戦で4得点して勝利したことと、西野監督がまったくネガティブな言葉を発しなかったことに光明を見出していた。これは監督が選手たちを信頼している表れであり、監督のこういう姿勢に選手たちが発奮しないはずがないと思ったのだ。すると初戦のコロンビア戦、開始早々に相手が退場者を出し、PKで先制するという幸運もあったが、前評判を覆して2−1で勝利。61位が16位を破るという「下剋上」をやってのけた。続くセネガル戦も、2度先行されながらそのたび追いつくという粘り腰を見せ、2−2でドロー。この時点で勝ち点4、グループHのトップに立った。

最終戦のポーランド戦。0−1で敗れたが、勝ち点4で並ぶセネガルがコロンビアに敗れ、フェアプレーポイントの差でグループ2位に残り、決勝トーナメント進出を決める。この時の日本のラスト15分間のボール回しにはかなり厳しい批判が出たが、決勝トーナメント進出という大目標を達成するための、西野監督のリスク覚悟での勇気ある決断だった。

そしてベルギー戦。ポーランド戦でのフラストレーションを解き放つような、正々堂々たる見事な戦いぶりだった。耐えに耐えた前半、後半開始早々の鮮やかな2ゴール、同点に追いつかれた後の粘りのディフェンス、そして最後まで失わなかった攻めの姿勢。「これが自分たちのサッカーだ!」と全世界にアピールしているような、まさに全身全霊を込めた戦いだった。私的には、過去3回決勝トーナメントに進出した日本の代表の中では、今回の西野ジャパンがもっとも劇的で、かつもっとも感動的な戦いを見せてくれたと思う。この4試合での経験は、間違いなく日本サッカーにとっての貴重な未来への財産として、これからの選手たちに受け継がれていくだろう。


【 ビューティフルゴールを目にしての素直な感銘:これには敵も味方もない 】

それにしても、ベルギー戦で最後の最後に喫した決勝ゴール。観返すたびに悔しいが、お手本になるような見事な電撃カウンターだったとも言える。この「悔しいがお見事」という感情は、前回ブラジル大会のコロンビア戦で、特に後半に喫した3失点を目にした時にも抱いた。「悔しいけど、すごく鮮やかできれいなゴールだな」。この「ビューティフルゴールへの感銘」は、敵味方関係なしに浮かぶもののようだ。そして、これが世界のすごさなのである。

しかし今大会では、サムライブルーたちのゴールにも、「ビューティフルゴールへの感銘」を何度も抱いた。コロンビア戦、大迫の相手DFに競り勝った決勝ゴール。セネガル戦、柴崎のロングパス〜長友の正確なトラップとパス〜乾のシュートコースをピンポイントで突いた同点ゴール。そして岡崎がつぶれ役になって本田が決めた、再度の同点ゴール。

そして特に感銘が大きかったのが、ベルギー戦での2ゴールだ。原口と乾のゴールは、ともに目にした瞬間ジーンと涙が目ににじむような、鮮やかで美しいゴールだった。この2ゴールは、これまでのW杯で目にしてきた、そして今大会でもたくさん見てきたビューティフルゴールに勝るとも劣らない、世界レベルのゴールだと思う。こういうストレートな感動を味わえるから、サッカー観戦、スポーツ観戦はやめられないのだ。


西野ジャパンの皆さん、すばらしい戦いを見せてくれてありがとう。今はただ、この言葉を贈るのみである。


posted by デュークNave at 05:00| Comment(0) | スポーツ-サッカー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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