2018年02月20日

羽生結弦・宇野昌磨でワンツーフィニッシュ!:望みうる最高の結果だが、まさか本当に実現するとは…! 〜平昌五輪・フィギュアスケート男子シングル〜

平昌冬季オリンピック、日本勢に最初の金メダルをもたらしたのは、フィギュアスケート男子シングル・羽生結弦だった。宇野昌磨も銀メダルを獲得し、日本勢が見事なワンツーフィニッシュを決めた。羽生はソチ五輪に続き、男子シングル66年ぶりの五輪連覇を達成。これは日本選手の個人種目では五輪史上初の快挙である(団体では、1992年アルベールビル・1994年リレハンメルでノルディック複合の日本チームが連覇している)。また、日本選手の同一種目での金・銀は、1972年の札幌大会、70m級純ジャンプでの笠谷幸生・金野昭次・青地清二の表彰台独占以来の快挙だった。


「羽生・宇野でワンツー」。「そうなれば最高なんだけどな」とは思っていたが、本当に実現できるかは、個人的にはかなり懐疑的だった。まず宇野昌磨。今季はGPシリーズ・GPファイナル・全日本選手権・四大陸選手権と大舞台を転戦したが、SP・FSを通して納得の演技ができたことは一度もなかった。コンディションの問題なのか、精神面なのか、観る側ももどかしい試合が続いていた。その不安を抱いたまま平昌に入り、前哨戦ともいえる団体のSPに臨んだ。しかしここで、4フリップは乱れたもののそれ以外はまとめ、103点台に乗せてトップに立った。ミスがありながら100点を超えてきたことは、本番に向けてかなりの光明といえたが、不安が完全に解消したわけではなかった。

そして羽生結弦。昨年11月に負ったケガ以来、NHK杯・GPファイナル・全日本選手権を欠場。年明けの五輪前哨戦もすべてパスし、団体戦も欠場。五輪本番がまさに「ぶっつけ本番」になった。「羽生自身がよく口にする『絶対王者の演技』は難しいだろう。果たしてどこまでできるのか」が、この時点での正直な思いだった。


【 羽生結弦・金:「どうしてこんなことができるのか」 】

SPは最終グループのいきなりの1番滑走。他の有力選手の演技を見ずに済むこの滑走順、ブランク明けの彼にとってはラッキーだったのではないか。そしてその演技は…、全世界の観戦者を驚愕させた。冒頭の4サルコウをきれいに降り、後半の3アクセルはGOEでフルマークの+3.00を獲得。さらに4トウループ−3トウループの高難度コンビネーションも流れよく決める。この瞬間、場内は熱狂の渦と化した。この3つのジャンプのGOEの合計は8.28。ステップシークエンスでも2点以上の加点を得て、圧巻のフィニッシュ。場内は再び熱狂に包まれた。2か月以上のブランクがあったとはとても信じられない、「すごい!」としか言いようのない圧巻の演技だった。PBに近い111.68、堂々の首位発進。本人が口にした通り、”I’m back!”、まさに王者の復活だった。


そして迎えたFS。ここでも勝利をもたらしたのは、演技の精度の高さ、熟成度だった。冒頭の4サルコウ、続く4トウループをきれいに決める(GOEはともにフルマークの+3.00!)。演技後半、4サルコウ−3トウループを流れよく降り、ここでも大きな加点を得る。これを決めたのが大きかった。続く4トウループでステップアウトしてコンビネーションにできず、リピートによる基礎点の減点になったが、そのあとの3連続ジャンプで取り返し、最後のジャンプ・3ルッツをどうにかこらえる(羽生にとってこの最後の3ルッツが常に「鬼門」になっていたが、痛めていた右足で必死に踏んばり、転倒はしなかった。まさに執念の着氷だった)。最後のコレオシークエンスは観衆の手拍子に乗って最高に盛り上がり、両手を広げる「SEIMEI」の決めポーズでフィニッシュ。場内はSP以上の大歓声に包まれた。

まさに「王者復活」の演技だったが、彼本来の実力をいかんなく発揮したわけではない。今季は4ルッツや4ループを含め、4ジャンプを4種類入れるプログラムを組んでいたが、11月のアクシデントによって方針の変更を余儀なくされた。4ジャンプはサルコウとトウループに絞り、その完成度・熟成度(=GOE加点)で勝負するプログラムを組んだのだ。これは決して安全策ではなく、右足の状態を鑑みて、今の自分にできる最高のパフォーマンスを出すにはどうしたらいいかを熟慮しての決断だった。常に高みを目指す彼としてはかなりの苦渋の決断だったと思うが、「五輪連覇」という大目標のために、応援してくれる世界中の人たちのために、結果を出すことに意識を集中したのだと思う。

(そもそも、ほとんど練習していない(できていない)4ルッツや4ループを試合で使うなどありえないことで、サルコウとトウループに絞ったのは、現時点での最高の演技を行うための極めて賢明な判断だったと思う)



SPでのほぼパーフェクトな演技に「どうしてこんなことができるんだ」と驚かされ、「この調子ならFSもかなり期待できるな」とは思っていたが、見事にやってのけてくれた。「ぶっつけ本番での五輪連覇達成」これは間違いなくフィギュアスケート史上に永遠に残る快挙であり、忘れがたいドラマになった。


【 宇野昌磨・銀:シニアデビューから注目し続けてきた「少年」が、ついに五輪メダリストに 】

私が宇野昌磨を初めて観たのは、2014年の全日本選手権だった。当時16歳、この年のジュニアGPファイナルを制し、「ジュニア世界一」として臨んだシニアの舞台。ジュニアより30秒長いFSの演技を、最後までスピードを落とすことなく演じ切った。終了後にリンク脇でへたり込んでしまったが、そのきつさを演技中には見せることがなかった。その精神力の強さに感心したことに加え、羽生に続く2位に入ったのに、「納得のいく演技ができなかった」と、全くうれしそうな表情を見せなかったことにもいたく感銘した。「自分に高いハードルを課すこの向上心の強さは、羽生結弦にも負けていない。これは絶対にデカくなるな」と、ここから宇野昌磨にずっと注目してきた。

その後の彼の活躍、成長ぶりは周知の通り。翌2015年からシニアに参戦し、GPシリーズで3度優勝、GPファイナル3年連続表彰台、全日本選手権連覇、2017世界選手権銀と、着実に結果を出し続けた。シニアデビュー当時はまだあどけなかった少年が、年を追うごとに表情に精悍さが増していき、「戦う男」に変貌を遂げていった。国内にライバルがいなかった羽生結弦をして「やっと出てきてくれたか」と言わしめ、2017世界選手権では羽生に僅差の2位。羽生に並ぶ平昌五輪の有力な金メダル候補と目されるようになった。


そして迎えた五輪本番。団体戦のSPで100点を超え、いい感触で臨んだ個人戦のSP。3つのジャンプ(4フリップ、4トウループ−3トウループ、3アクセル)は、ともにGOEで加点されたが、ともに彼本来のジャンプではなかった(特に3アクセルは、好調時には+3.00のフルマークを得るほど得意としているジャンプなのだ)。それでも100点を超えてメダル圏内の3位につけたのは、地力がある証拠。羽生結弦もそうだが、プログラムのレベルがもともと高く、演技構成点でも高い評価を受けるので、ジャンプに多少のミスがあっても総合的には高得点を得ることができるのだ。

そしてFSでは、その地力の高さに加え、彼の持つ精神力の強さがこの大舞台でもいかんなく発揮された。抽選により、この大舞台で何と最終滑走に。最終グループの5人の演技をしっかり見ていた彼は、勝つためにはパーフェクトな演技をしなければいけないことを認識する。しかし冒頭、4ループでいきなり転倒。この時点で金はなくなったことを覚悟した彼は(試合後のインタビューで「笑ってしまった」とコメント)、ここからは自分のベストの演技をしようと頭を切り替える。続く4フリップをきれいに決め、スピンとステップも着実にこなす。後半、4−2のコンビネーションで着氷が乱れたが、直後の4トウループを決めて取り戻し、最終盤の3アクセル−1ループ−3フリップ(3つ目がフリップなのがミソ! 羽生でさえここはサルコウなのだが、より難度の高い構成にする宇野オリジナルだ)、最後のジャンプ・3サルコウ−3トウループをしっかり決め(最後のジャンプを3−3のコンビネーションにするのもすごい!)、コレオシークエンスでは得意のクリムキンイーグルを披露して観衆を沸かせ、大きな盛り上がりの中でフィニッシュ。大会のエンディングを飾る、とてつもないプレッシャーがかかったであろう最終滑走を、最後まで気持ちを切らさずに演じ切った。実況のアナウンサーが叫んだ通り、「間違いなく自分に勝った」渾身の演技だった。


シニアデビュー以来、羽生同様、いやそれ以上に注目し続けてきた宇野昌磨が、ついにオリンピックメダリストになってくれた。心から嬉しいし、今は「おめでとう!」の言葉しか浮かばない。


「羽生−宇野のワンツーフィニッシュ」。望んではいたものの、まさか本当に実現するとは…! 今はただ、この歴史的快挙の余韻に浸るのみである。


P.S. 日本人なのでどうしてもこの2人のワンツーに酔いしれてしまうが、他の選手たちもすばらしかった。ハビエル・フェルナンデスは、SPで持ち前のエンターテインメントさをいかんなく発揮して2位発進。FSで後半の4サルコウが2回転に抜けたのが響いて宇野に逆転されたが、最後の五輪と意識して臨んだこの大舞台で、念願の初メダルを手にした。ボーヤン・ジンもSP・FSと高いレベルの演技をそろえ、得意の4ルッツも鮮やかに決めた。惜しくも表彰台は逃したが、宇野と同世代の彼、これからのさらなる成長が楽しみだ。

そしてネイサン・チェン。SPでは3つのジャンプでことごとく失敗し、まさかの17位。しかしFSでは、得意の4ジャンプが猛威を振るった。何と4ジャンプに6度挑み、4フリップで手をついた以外はすべて成功、GOEでも加点を得る。五輪史上初の、4ジャンプ5回成功を成し遂げた。FSの得点は215.08、羽生をも抑えて最高点をマークした(技術点は圧巻の115.11!)。「もし彼がSPで実力通りの演技を見せていたら」と思ってしまうが、もしそうならFSであれほどチャレンジングな構成にはしなかっただろう。失うものが何もないから思い切り4ジャンプに挑めたのだ。しかしそれを割り引いても、6回チャレンジして5回成功はすごい。まだ18歳の伸び盛り、来季以降もわが日本の誇るツートップの強力なライバルであり続けるだろう。


posted by デュークNave at 06:23| Comment(0) | スポーツ-五輪・世界大会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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