2017年12月26日

宇野昌磨、不本意ながら貫禄の連覇/「第三の男」は田中刑事 〜フィギュア全日本選手権・男子シングル〜

大混戦だった女子と比べ、男子は「宇野昌磨はこの全日本で4位以下にならない限り確定、今大会欠場の羽生結弦はこれまでの実績で確定的、『第三の男』が誰になるか」という、実質残り1枠を争う戦いだった。


【 SP 】

ケガなどでここ数年不本意な成績に終わっていた村上大介。一発逆転を狙って臨んだ全日本だった。冒頭の4サルコウをきれいに降り、続く3アクセルも流れよく決める。後半のコンビネーション、3ルッツ−3ループの予定を無理せず3−2に抑え、減点を防いだのも冷静な判断。得点は80.99、4位とまずまずの発進となった。

今季の成績から、「第三の男」に最も近い田中刑事。それが逆にプレッシャーになる状況だったが、それを跳ね返す気迫の演技を見せた。冒頭の4サルコウを鮮やかに決め、続く3フリップ−3トウループもきれいに降りる。スピンもレベルを落とさず、3アクセルはGOEを2点近く稼ぐ完璧な出来。まさに鬼気迫る演技だった。得点は91.34のPB、宇野に次ぐ2位につけた。

国内外で実績を残してきながら、今季はまったく力を発揮できていない無良崇人。村上と同様、この全日本に逆転を狙って臨んできた。冒頭の4トウループを何とかこらえ、続く無良の代名詞3アクセルは、GOEで+2.00と完璧に決める。レベル4のスピンを次々にこなし、後半の3ルッツ−3トウループも、やや着氷で詰まったが大きな減点はない。最後のステップシークエンスは、無良らしいダイナミックな動きで観客の大きな拍手を受けた。得点は85.53、田中とは6点弱の差の3位。FSに望みをつないだ。

NHK杯で7位と健闘し、五輪争いに割って入ってきた昨季の全日本ジュニア王者・友野一希。最後の1枠をつかむには、2位以内が必須条件だ。冒頭、4サルコウでステップアウトするが、続く3フリップ−3トウループは流れよく決める。ステップシークエンスを切れ味よくこなし、最後の3アクセルもきれいに決める。しかし4サルコウの減点が響いて得点は78.16、5位発進となった。

大本命・ディフェンディングチャンピオン・宇野昌磨。羽生結弦が欠場し、ライバル不在の中、よほどのアクシデントがない限り、連覇と五輪出場は濃厚という状況で、モチベーションを高めるのは容易ではなかったはず。その微妙な心理が演技に影響したのか。冒頭の4フリップはきれいに決め、スピンは当然のレベル4。しかし後半、4トウループからのセカンドジャンプがシングルになり、規定によりコンビネーションにならない。最後の3アクセルは貫禄で決めたが、最大の得点源で大きな減点となってしまった。それでも得点は96.83、技術点の基礎点が他を圧倒して高く、5コンポーネンツも高得点が取れるため、ミスがあっても得点のレベルは高くなる。まさに別次元である。

@ 宇野 A田中 B無良 C村上 D友野。得点差から言って、FSでは田中と無良が「第三の男」を争う一騎打ちとなる公算が高い。さて、どんな決着になるのか。


【 FS 】

友野一希(総合4位):冒頭の4サルコウ−2トウループはきれいに決めたが、続く4サルコウが2回転に抜ける。しかしこの後のジャンプは3連続も含め減点なくこなし、ステップもダイナミックに魅せる。力は十分に出し切った演技だった。ただ五輪代表となるには線が細く、全体的にまだ力不足の感が否めない。これからシニアで経験を積んで、どこまで大きくなれるか注目したい。

村上大介(総合5位):1つ目の4サルコウは高さがあるすばらしいジャンプ。しかし続く4サルコウがシングルに抜ける。このあとコンビネーションを含む3ジャンプを堅実に決めるが、後半の3アクセルが両足着氷になる。3連続のコンビネーションで盛り返したが、代表権をつかむにはやはり足りなかった。今季は体調を崩してNHK杯を欠場し、この全日本も十分な練習を積めたとは言えない状態で臨んだ。それを鑑みれば、よくここまで持ち直したと言っていいだろう。

無良崇人(総合3位):年齢的にラストチャンスとなる平昌五輪。スケート人生をかけたこのFSに、3シーズン前の「勝負曲」オペラ座の怪人で挑む(2014スケートカナダで優勝した時の無良のFSは、間違いなく彼の最高傑作だ)。冒頭の4トウループはすばらしく高いジャンプだったが、着氷が滑らかさを欠いた。しかし続く3アクセル−3トウループはともに高さ抜群、流れよく決める。後半にも代名詞の3アクセルをコンビネーションを含め2度組み込み、大きなGOE加点を得る。そして持ち前のダイナミックなステップ。まさに執念を感じさせる演技だった。観衆は満場のスタンディングオベーション。フィニッシュ後の無良の表情はすがすがしかった。「今の自分にできる精一杯はやった」という思いが表れていた。残念ながら田中を逆転するには至らなかったが、本人曰く「一番思い出に残る全日本」になった。3アクセルをはじめとするダイナミックで豪快な演技は、ファンの記憶に深く刻まれるだろう。

田中刑事(総合2位):羽生結弦と同年代、念願の五輪出場のかかったFS。SPと同様、すばらしい気迫の演技を見せた。冒頭の4サルコウは、あまりにきれいに決まったので「本当に4回転していたのか」といぶかるほどの出来(GOEは+2.14)。続く4サルコウでステップアウトしてコンビネーションにならず、リピートでの減点となる。アップテンポな音楽に乗って軽快なステップを踏んで場内を沸かせ、勝負の後半へ。決め手となる4トウループを鮮やかに決める(GOE+2.00)。続く3アクセルがまたもステップアウトでリピート減点となるが、その後の3ジャンプは堅実にこなし、コレオシークエンスでは2点近いGOE加点を得る。そして大きな盛り上がりの中フィニッシュ。場内はまたも大歓声に包まれた。2つのリピート減点があったが、4ジャンプを複数決めたことが効いてFSでも無良を上回り、総合2位を死守した。昨季のNHK杯3位が自信になったのか、この大一番でも見事に力を発揮した。堂々五輪切符を手にし、未踏の地を踏む。

宇野昌磨(総合1位):実績・実力的には当然の、順当な優勝・連覇だった。しかし演技後の彼のコメントは、とても勝者・優勝者のそれではなかった。「悔しいし、皆さんの期待に応えられなくて申し訳ない気持ちでいっぱいです」。演技冒頭、4ループをきれいに決め、続くイーグルからの3アクセルは、何とGOEでフルマークの+3.00。この後もスピンとステップで当然のようにレベル4を取る。…ここまではよかったのだが、後半から乱れが出た。まず4フリップで転倒、続く4トウループは降りたが、「世界初」に挑んだ2アクセル−4トウループは、セカンドが2回転&両足着氷になる(本人曰く「跳ぶ前から失敗するのはわかっていたが、逃げたくないと思って挑んだ」)。宇野オリジナルの3アクセル−1ループ−3フリップも、サードがシングルになる。恐らくこの辺りは気力で滑っていたのだろう。激戦のGPファイナルから2週間、疲労が残っていたのかもしれない。まったく不本意な出来ながら、演技構成そのもののレベルの高さと5コンポーネンツの安定した高さで他を圧倒し、余裕の全日本連覇、そして平昌五輪初出場決定となった。

五輪本番では、羽生と並んで金メダルの有力候補に目されるであろう宇野。あと1か月半、羽生同様、本番までどうコンディションを上げてくるか、期待し、かつ祈ろう。


平昌五輪への出場権を得たのは、

男子シングル:宇野昌磨、田中刑事、羽生結弦

女子シングル:宮原知子、坂本花織

となった。現時点でのベストメンバーと言っていいだろう(個人的には、「イチオシ」していた坂本が選ばれてうれしい)


今年はオリンピックシーズンということもあり、いつも以上の緊張感の中で激戦を繰り広げた全日本選手権。五輪代表も決まり、あとは1か月半後の本番を静かに待つのみである。果たしてどんなドラマが待っているのだろうか。

posted by デュークNave at 00:18| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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