2017年12月24日

宮原知子4連覇、そして悲願の五輪出場:「2枠目」は坂本がイチオシだが 〜フィギュア全日本選手権・女子シングル〜

毎年末恒例の「目移りクラクラ大会」、全日本選手権。しかし今回は平昌五輪へのわずか2つの出場権を賭けた大一番、とても全員をくまなく見る暇も精神力もなかった。なので今回は、五輪出場を争った選手たちに絞ってコメントさせていただく。


【 SP 】

年齢制限で平昌五輪への出場権がない15歳の全日本ジュニア女王・紀平梨花。先の世界ジュニアでは、シニアも含めて世界で初めて3アクセル−3トウループのコンビネーションを決め、一躍世界の注目を集める存在になった。この全日本のSPでも、冒頭で3アクセルを鮮やかに決める。3−3のコンビネーションもきれいに決まったが、3つ目の3ルッツが2回転に抜けたため得点がゼロになったのが惜しかった。それでも66.74の高得点をマークし、シニア勢に混ざって堂々の5位発進となった。


<惜しくもミスが出た選手たち>

今季のGPシリーズでは、SPにミスが出て表彰台を逃してきた三原舞依。この全日本こそ完璧なSPをと期して臨んだが、2アクセルでまさかの転倒。冒頭の3ルッツ−3トウループと最後の3フリップをきれいに決めただけに、痛恨のミスだった(個人的にずっと応援していた選手だけに、2アクセルの転倒は我が目を疑った)。SPは7位、得意のFSでの巻き返しなるか。

GPシリーズで連続の表彰台に昇り、念願のファイナル出場を果たした樋口新葉。当初から五輪を意識して臨んだ今季の集大成を見せる舞台だったが、冒頭の2アクセルがシングルに抜けてしまう。しかしここで気持ちを切らさず、後半の3ルッツ−3トウループ、3フリップを流れよく決め、ステップもダイナミックに踏んで見せたのはさすがだった。得点は68.93で4位、FSに望みをつないだ。

今季シニアデビューの白岩優奈。GPシリーズ2戦で着実に経験を積んできた。冒頭、3ルッツ−3トウループを目にも鮮やかに決める。このキレのいいジャンプが彼女の大きな魅力だ。しかしその後の2アクセルで転倒。最後の3フリップはきれいに決めたが、このジャンプのミスに加え、スピンでのレベルの取りこぼしもあり、8位にとどまった。

この3選手は、コンビネーションと3ジャンプは完璧に決めながら、2アクセルにミスが出た。思わぬ落とし穴にはまった感がある。

最終滑走となった本田真凜。シニアデビューの今季、GPシリーズではわずかなミスで表彰台を逃してきた。念願の五輪出場のためには、SP・FSともノーミスが求められる。3フリップ−3トウループはきれいに流れよく決めた。しかし後半、3ループでステップアウト。2アクセルは決めたものの、基礎点が高くはないループを確実に決められなかったことが響き、66.65の6位に甘んじた。


<見事ノーミスで演じ切った選手たち>

スケートアメリカで宮原に次ぐ2位に入り、大きく飛躍した坂本花織。3つのジャンプをすべて後半に組み込むチャレンジングな構成にしてきた。その意欲そのままに、躍動感のある演技を披露した。前半をステップとスピンで流れよくこなし、勝負の後半。3フリップ−3トウループを鮮やかに決め、続く3ループ、2アクセルもきれいに降りる。最後までプログラムを流麗に演じ切った。得点はPBを大きく超える73.59。本人も驚く高得点で首位発進となった。

ケガで昨シーズン後半を棒に振り、本格的なジャンプ練習を始めたのは10月からと、今季も出遅れていた宮原知子。しかしNHK杯5位・スケートアメリカ優勝・GPファイナル5位と予想以上の結果を出し続け、迎えたこの大舞台。「ポスト浅田真央」の一番手、ソチ五輪後の女子シングルを背負ってきた第一人者にとって、何としても手にしたい五輪の切符だ。3つのジャンプを安定した着氷でこなし、スピン・ステップはすべてレベル4。1つアンダーローテーションがあったのが響いて2位となったが、それでも73.23の高得点。さすがの貫禄である。

かつては宮原と女王の座を争っていた本郷理華。しかしここ数シーズンはジャンプの不安定、特に回転不足に苦しんできた。今季のGPシリーズでも、ジャンプが不調で結果を出せなかった。念願の五輪出場のためには、この全日本に賭けるしかない。まさに背水の陣で臨んだ今大会だった。演技冒頭から、その気迫がみなぎっていた。3フリップ−3トウループを余裕で決め、3ルッツも流れよく決める。2アクセルも安定して降り、そのあとのステップがまた圧巻。長い手足を生かした大きくダイナミックな動きで、観る者を惹きつけた。場内は総立ちのスタンディングオベーション、本郷も感涙にむせんだ。得点は70.48、SBで3位につけた。

@坂本 A宮原 B本郷 C樋口 D紀平 E本田 F三原 G白岩。しかしトップ坂本と7位三原の得点差は10点未満、逆転不可能な点差ではない。勝負のFS、どんな結末が待っているのか。


【 FS 】

白岩優奈(総合9位):得意のキレのいいジャンプを次々に決め、観客を沸かせた。前半・後半ともに最高難度の3ルッツ−3トウループを鮮やかに決める。ジャンプの質の高さはシニアでも屈指だろう。しかし終盤、2アクセル−3サルコウで転倒し、気落ちしたのかそのあとのレイバックスピンがレベル1にとどまる。最後は残念だったが、シニアデビューの今季、大きな経験を得ただろう。

三原舞依(総合5位):GPシリーズでもSPでの出遅れをFSで取り返してきた。この全日本でも、得意のFSで存分に魅せてくれた。冒頭の3ルッツ−3トウループ。高さがあり、着氷が安定している。ここから彼女の持ち味である柔らかく流れる演技が観衆を魅了する。後半の5本のジャンプを危なげなく決め、ステップシークエンスでは手拍子に乗ってダイナミックかつ軽快にステップを踏む。フィニッシュすると、場内は大歓声のスタンディングオベーション。三原も涙があふれた。惜しくも表彰台は逃したが、この日のFSは彼女のスケート人生の宝物になるだろう。

樋口新葉(総合4位):007「ワカバボンド」で挑むFS。冒頭、SPで抜けた2アクセルをきれいに決め、続く3ルッツ−3トウループも鮮やかに決める。しかし中盤、3サルコウが2回転に抜ける。後半、再度の3ルッツ−3トウループを完璧に降り、この後のジャンプは乱れなく決める。五輪への思いが伝わってくる気迫の演技だった。フィニッシュ後、感慨深げに氷に手を触れた。「やれることは精一杯やった」との思いの表れか。

紀平梨花(総合3位):ジュニア勢唯一の最終グループ入り。SPで炸裂した武器が、このFSではさらにパワーアップした。冒頭、「ギネス(になるだろう)」3アクセル−3トウループを全日本の舞台で鮮やかに決める。続く再度の3アクセルも、全く危なげなくきれいに降りる。回転がすばらしく速かった。SPと併せて3アクセル3本成功、これは2010年バンクーバー五輪での浅田真央以来の大快挙だった。観る者はこの冒頭の2本で圧倒されてしまうが、その後のジャンプも、中盤の3ループで着氷が乱れた以外はすべて流れよく決め、圧巻のフィニッシュ。総得点は200点を大きく超え、初の全日本表彰台をつかんだ。「年齢制限で五輪出場権なし・3アクセルが武器」というこの状況は、まさに2006年トリノ五輪時の浅田真央を彷彿とさせる。今後どこまで大きくなってくれるのか、彼女のシニアデビューが待ち遠しい。

本田真凜(総合7位):2006年トリノ五輪の荒川静香に憧れてスケートにのめり込んだという本田。その伝説の「トゥーランドット」で五輪イヤーに挑んでいる。冒頭からジャンプは流れよく決め、得意の柔らかな表現力もふんだんに披露する。しかし後半、2つの3ジャンプが2回転に抜けてしまい、技術点の基礎点が伸びない。フィニッシュ後、ぐっと涙をこらえているようだった。恐らくあの瞬間、五輪への夢が破れたことを観念したのだろう。しかし最後まであきらめずに夢にチャレンジした、実りあるシニアデビューの1年だった。

宮原知子(総合1位):彼女の演技が始まる時、私は姿勢を正し、テレビ画面に向けて刮目した。「何としても彼女を五輪に行かせてやりたい」そんな祈りにも近い思いで、彼女の演技を見つめていた。全日本3連覇、ソチ以降はずっと日本女子フィギュアをリードしてきた宮原。練習の虫、スケートへの真摯な姿勢。スケートの神様のご加護を一身に受けていたはずの彼女に、ケガという思わぬアクシデント。そのせいで悲願の五輪出場を逃したりしたら、「神も仏もないのか」と天に向かって叫びたくなる。そんなシーンは絶対に見たくなかったのだ(恐らく、全国のフィギュアファンの多くが同じ思いだっただろう)。

しかし、それは全くの杞憂だった。1つ1つのジャンプ、スピンを確実に流れよく決めていく。観ていて印象的だったのは表情の豊かさだ。ケガでのリハビリ中に他の競技のアスリートたちと交流し、「まじめ一徹だった彼女がずいぶん感情豊かになったな」と思っていたが、それが演技にも反映され、とても軽やかに楽し気に演技していた。減点要素の全くない、「ミス・パーフェクトふたたび」のフィニッシュ。その瞬間、濱田美栄コーチは両手で顔を抑え、感涙にむせんだ。そして宮原も、大きなガッツポーズと涙。苦しい時期を克服してのこの会心の演技、師弟にはさまざまなこみ上げる思いがあったに違いない。総合得点は220.39、PBを大きく更新する空前の高得点である。リハビリで前半戦をほぼ棒に振った今季、後半の追い上げが見事に決まって全日本4連覇、そして五輪出場も決定した。夢の舞台での「ミス・パーフェクト」の完璧な舞、ぜひ見たい。

本郷理華(総合6位):SPではすばらしい気迫の演技で3位に食い込んだ本郷。このFSでも気迫のこもった演技を見せた。冒頭からダイナミックなジャンプを次々に決める。続く3ルッツで転倒、中盤の3ループでも転倒したが、気持ちを落とさずに演技を続け、情熱的な音楽をバックに華麗にステップを踏む。SP同様、最後まで気迫のこもった演技だった。ジャンプのミスが響いて五輪切符は逃したが、不調にあえいだ今季を払拭する演技だったと言っていいのではないか。日本選手にはまれな長身と長い手足を持ち、スケールの大きい演技が魅力の本郷、自分にしかないこの魅力を今後も磨いていってほしい。

坂本花織(総合2位):SPで本人も驚く首位発進、そして抽選のいたずらで最終滑走。とてつもなくプレッシャーがかかる状況であり、正直私は「たぶんノーミスの会心の演技をするのは難しいだろうな」と思っていた。どこまで頑張れるかな、程度の思いで見つめていた彼女の演技だったのだが・・・、驚いた。

映画「アメリ」の世界を描いた独特の振付の中、ジャンプを危なげなく決めていく。冒頭のコンビネーションこそセカンドジャンプが回転不足になったが、それ以外はクリーンに降りる。スピンもステップもレベルの取りこぼしがなく、自分の作品世界をしっかり作っている。観る者をぐいぐい惹きつけながら、あっという間のフィニッシュ。その瞬間、満面の笑みとガッツポーズ。この大舞台で、大きな重圧がかかるこの場面で、どうしてこんな完璧に近い演技ができるのか。さまざまな経験を積んだベテラン選手ならわかるが、今季シニアデビューの選手がやってのけるとは・・・度胸がいいというか、その精神力の強さに驚いた。得点が出た瞬間、「あー」と残念そうな声を上げた。トータル213.51、PBは大きく更新したものの、宮原に及ばず2位。しかしこの大舞台でSP・FSともほぼノーミスで演じ切ったことは、大絶賛に値する。


優勝・宮原知子、2位・坂本花織、3位・紀平梨花(ジュニア)。以下樋口、三原、本郷。平昌五輪への出場権は、優勝の宮原が自動的に獲得。残る1枠は、@全日本の2位、3位 A今季のGPファイナルでの上位2人 B全日本終了時の世界ランキングの上位3人 C今季の世界ランキングの上位3人 DISU公認大会での今季最高得点の上位3人 を考慮して総合的に判断される。これでいくと候補は実質、坂本と樋口の2人に絞られる。

私見だが、私は坂本を推したい。上記5項目のうち、樋口は4項目、坂本は3項目を満たしている。しかしシーズン後半の坂本の充実ぶり、特にこの全日本でSP・FSともほぼノーミスで滑った「強さ」を評価したい。こういう選手こそ、五輪の大舞台でも力を発揮できるのではないかと思うのだ。

(伊東秀仁日本スケート連盟フィギュア委員長は「(条件を満たす項目が)多いから勝ちではなく、五輪でいい成績を取れるか。当然、全日本の成績は重視されるだろう」と話している。この「五輪でいい成績を取れるか」が最も重視されるべきことではないだろうか


坂本か樋口か。平昌五輪代表選手の発表は、男子シングルのFSののちに行われる。


posted by デュークNave at 13:35| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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