2017年11月28日

男子は上位が順当にファイナル進出/女子は期待と想像をはるかに超える好結果に 〜フィギュアGPシリーズ最終戦・スケートアメリカ〜

ついに迎えたGPシリーズ最終戦。男子は4つ、女子はわずか1つの残されたファイナルへの椅子をめぐって、厳しい戦いが繰り広げられた。


【 男子 】

ロシア大会優勝のネイサン・チェン、NHK杯優勝のセルゲイ・ボロノフは4位以上、NHK杯2位のアダム・リッポンと中国杯2位のボーヤン・ジンは表彰台でファイナル決定、というのが大会前の状況だった。

結果的には、このポイント上位4人が順当にファイナルの椅子を占めた。ボーヤン・ジンは、故障明けなのかコンディションの影響なのか、SP・FSともトレードマークの4ルッツを跳ばず、その得意のジャンプにも乱れが見えた。総合4位にとどまったが、シリーズ2戦の総得点できわどくファイナル進出を決めた。「元祖・驚異の4ジャンパー」の切れ味鋭いジャンプが影をひそめてしまったこの試合だが、ファイナルの大舞台までの2週間、どう立て直してくるか。

SP3位のセルゲイ・ボロノフはFS、NHK杯ほど完璧ではなかったものの、堅実な演技で表彰台を確保した。冒頭、4トウループ・3トウループのコンビネーションをきれいに決める。その後のジャンプに若干の乱れは出たが、最後までスピードの落ちない気迫のこもった演技だった。3位表彰台を確保し、3年ぶり2度目のファイナル進出を手にした。30歳、2006-7シーズンからGPシリーズに参戦しているベテラン。ファイナルでまたその円熟の技を見せてほしい。

アダム・リッポンは地元アメリカの大声援を受け、またも「魅せた」。FS、NHK杯で鮮やかに決めた冒頭の4ルッツで着氷が乱れ、右肩を痛めたようなしぐさを見せた。しかしかまわず演技を続け、続く3フリップ−3ループの高難度コンビネーションを流麗に決める。この後も、4ジャンプはないもののその完成度の高さ、流れるような華麗な演技で観る者を惹きつける。解説の佐野稔さんが絶賛したポジションのきれいなレイバックスピンで演技を締め、場内は再び大歓声。SPの順位を守って2位をゲット、見事に2年連続のファイナル進出を決めた。

ネイサン・チェンは、SPで世界歴代4位の高得点(PB)を叩き出し、2位以下に15点以上の大差をつけた。それで油断したわけではないだろうが、得意の4ジャンプに乱れが出た。冒頭の4ルッツ−3トウループの超高難度コンビネーションは目にも鮮やかに決めたが、4フリップで手をつき、4サルコウは2回転に抜ける。しかし演技後半、4ルッツをまたもやきれいに決めて大きな得点を得る。しかしこの後の4ジャンプでまた着氷の乱れや転倒があり、演技終了後は顔をしかめた。だが実況のアナウンサーが語っていたように「きわめて挑戦的なプログラム」で、技術点の基礎点が他を圧して高く、加えて演技構成点でも高い評価を得るため、多少のミスが出ても他の選手を下回ることはない。貫禄の優勝で堂々のファイナル進出。昨季からさらに大きく成長した感があるネイサン・チェン、これはファイナルや来る平昌五輪では、羽生結弦や宇野昌磨の強力なライバルになりそうだ。


【 女子 】

最終戦を控えて、残る1枠を争うのは3人。樋口新葉が3位・2位で24ポイント。スケートカナダ3位のアシュリー・ワグナー、NHK杯3位のポリーナ・ツルスカヤは、ともに優勝すればファイナル確定。2位なら樋口との総得点の争いになる。…しかし結果は、思いもよらぬものになった。


SPでジャンプにミスが連発し、8位と出遅れたツルスカヤ。FSでは全体的にまとまった演技だったが、ジャンプの回転不足などで思ったほど得点が伸びなかった。この時点ではトップに立ったが、優勝するにはどうだ?というレベルだった。すると次走、ブラディー・テネル(アメリカ)が、GPシリーズデビュー戦で会心の演技を見せてツルスカヤを上回った。これによりツルスカヤは最高でも2位となり、2戦の総合得点で樋口を下回るため、ファイナル争いから脱落した。

残るアシュリー・ワグナーは、思わぬアクシデントに見舞われた。前半の3つのジャンプを無難にこなした時は順調に見えたのだが、突然演技を中断してしまう。実は1週間前から右足首の感染症にかかっており、それが完治しないままの出場になっていたのだ。歴戦の強豪がこんな形でリタイアするのはとても残念だ。彼女のダイナミックな演技、ぜひ五輪の舞台で見たい。回復と復活を祈るばかりだ。

しかし、これで樋口新葉のファイナル初出場が決まった。あとはこの大会の優勝、表彰台の行方を見つめるだけになったのだが…、ここからが我が期待と想像をはるかに超える展開になった。


もともとSPを宮原知子坂本花織がワンツーで終えたこと自体、うれしい驚きだった。宮原は長いブランク明け2戦目、坂本はシニアデビュー2戦目。まだ上位を占めるのは難しいかなと思っていたのだ。そしてFSでは、この我が驚きをさらに大きく膨らませるサプライズが待っていた。

坂本は、間違いなくキャリア最高の演技。冒頭からジャンプをことごとく決め、着氷も非常に滑らか。映画「アメリ」を独特の振付で表現し、自分の世界を創り上げていた。後半最大の得点源、2アクセル−3トウループ−2トウループのコンビネーションも完璧に決め、ノーミスでフィニッシュ。両手を挙げて大きく飛び跳ね、喜びを爆発させた。得点は141.19、PBを10点以上更新した。トータルでは公式戦で初めて200点を突破、さらに大きく超える210.59。この時点で文句なしのトップになった。続くデールマンが不本意な演技に終わったため、最終滑走の宮原を残し、日本勢2年ぶりのGPシリーズ優勝が決まった。


そして宮原。2週間前のNHK杯ではFSでジャンプにミスがいくつか出て、「ミス・パーフェクト」復活への道はまだまだ遠いな、と思わせた。それからわずか2週間、どこまで持ち直してきたか注目していたのだが、…驚いた。

演技冒頭から、安定したジャンプを次々に決める。実況のアナウンサーが「2週間前はうまくいかなかったジャンプを、ことごとく成功させています!」と驚いていたが、観る側も驚きの連続だった。「NHK杯であれだけ乱れていたジャンプを、どうしてわずか2週間後にこんなにきれいに決められるんだ?」1つジャンプを決めるたびに驚きが増幅されていく。そしてほぼノーミスでフィニッシュ!「ミス・パーフェクト」復活の瞬間だった。日本勢、そして自身2年ぶりのGPシリーズ優勝。これは平昌五輪出場への強烈なアピール、そして足掛かりになった。

このサプライズな好結果もさることながら、ケガによる大きなブランクが、彼女をより強く大きくした感がある。リハビリ中に他の競技の選手たちと交流し、視野が広まったとのこと(卓球の石川佳純と食事に行くほどの仲になった)。確かに彼女の演技からも、その雰囲気からも、今まで以上の落ち着きや精神的なゆとりが感じられる(キスアンドクライで手でハートマークを作るなど、「まじめ一徹」だった彼女にはなかった柔らかさだ)「大きくなったな、宮原知子!」日本女子の第一人者が還ってきた、これは素直にうれしい。


大会前、ファイナルへの残り1枠をめぐる状況を目にした時、私はこう思っていた。

「ツルスカヤかワグナーが優勝したら樋口のファイナルはなしか。となると宮原と坂本に頑張ってもらうしかないな。この二人がワンツーフィニッシュして樋口がファイナル出場、なんてことになれば最高なんだけどな。でもちょっと無理だろうな。坂本はまだシリーズ2戦目だし、宮原はまだ完全には復活できないだろうし。どっちかが表彰台に上がるかどうか、ってところだろうな」

ところが結果は、「最高なんだけどちょっと無理だろう」と思っていたことが実現してしまったのだ! 驚きとともに、深い感銘を味わった私でありました。

来るGPファイナル、そして暮れの全日本選手権が本当に楽しみになってきた。それにしても、この宮原・坂本の躍進を目にすると、日本女子の五輪出場枠が2つしかないのが、今さらながら恨めしい。何とかならんのか! …ならんよなあ。

posted by デュークNave at 07:49| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。