2017年11月12日

ボロノフ、30歳の初戴冠・女王メドベージェワとロシア勢のダブル優勝/宮原知子は「まずまず」の復活 〜フィギュアGPシリーズ第4戦・NHK杯〜

大会直前、優勝候補筆頭の羽生結弦が、練習中にジャンプで転倒して右足を負傷、欠場するという衝撃のニュースが飛び込んできた。これでGPファイナルへの出場も不可能になり、ファイナル5連覇も潰えた。大事な五輪シーズンに世界No.1選手にこんなアクシデントが起こるとは、「スケートの世界には神も仏もないのか」と毒づきたくなる。暮れの全日本選手権には出場できる見込みとのことでホッとしたが、とにかく早くケガを回復してほしい。

【 女子 】

昨年の全日本以来、11か月ぶりの試合への復帰となった宮原知子。「体は100%回復したが、演技はまだ70%の出来」という不安を抱えたまま、ぶっつけ本番でGPシリーズの初戦を迎えた。確かにSP・FSともジャンプにらしからぬミスが出たが(特にFS後半の3サルコウは、彼女にはありえないような体勢の乱れ方だった)、70%にしてはかなりまとまった演技だったと思う。練習の虫で鳴る彼女が、長いブランクの後ようやく試合に復帰できた喜びが伝わってくるような、観る者に訴える演技だった。総合5位、今の時点ではこんなものだろう。次戦はスケートアメリカ、そして目指すは暮れの全日本選手権。あと1か月余り、あの抜群の安定感を取り戻すことができるか、刮目しよう。

本郷理華は初戦のスケートカナダで取られた回転不足をかなり改善し、持ち前のダイナミックな演技を見せてくれた。ジャンプにまだいくつか乱れがあり、総合は7位に後退したが、演技の内容は上向いていると思う。暮れの大一番までにどこまで仕上げてくるか。

シニアデビューとなった白岩優奈。そのキレのいいジャンプに私はジュニア時代から注目していたが、さすがにNHK杯という大舞台で緊張したのか、SP・FSともジャンプが本来の出来ではなかった。しかしジャンプのキレのよさとスピード感のある演技はやはり魅力的だ(タイプとしては樋口新葉に似ていると思う)。総合8位、まだまだ伸びしろたっぷりの彼女、次戦のフランス大会では本来のジャンプが見たいものだ。


またもや驚異の新星が現れた。これがシニアデビュー戦となるポリーナ・ツルスカヤ(ロシア)。SP・FSともほとんどミスがなく、高いレベルでの安定した演技を披露した。171cmの長身と長い手足を生かした優雅な動き。「ロシアにはまだこんな選手もいたのか」と驚かされた。聞けば、彼女もメドベージェワと同じコーチとのこと。中国杯でのザギトワと同様、この選手もシニアデビュー戦から驚かせてくれた(ただツルスカヤは、ジャンプの構成は「後半に固め跳び」ではなく、オーソドックスに前後半バランスよく跳ぶ)。総合3位で表彰台をキープ。次戦はスケートアメリカ、優勝できればファイナルも射程内だ。

カロリーナ・コストナーは、持ち味の優雅で柔らかな演技を今回も存分に見せてくれた。ジャンプのレベルがさほど高くはないため技術点は高くないが、演技構成点で稼げるのが彼女の強みだ。総合2位を確保し、ファイナルへの進出も決定。こういう「味のある演技」を見せてくれる選手が世界の舞台に復活してくれるのは、ファンの一人としてとてもうれしい。

優勝は、当然のようにエフゲニア・メドベージェワしかしFSでは冒頭のコンビネーションでまさかの転倒、続く3ルッツも着氷が乱れた。しかしここから持ち直し、大崩れしないのが女王たるゆえんだ。両足にテーピングして臨んでいる今大会、コンディションは万全ではないのだろう。それでも優勝してしまう地力の強さがこの人にはある。シリーズ連勝で貫禄のファイナル進出。絶対女王の3連覇なるか。…しかし現時点で、彼女の女王の座を大きく揺るがすような選手は見当たらないが…。


【 男子 】

羽生結弦の欠場で一気に混戦模様となった今年のNHK杯男子シングル。表彰台を占めたのはベテラン勢だった。優勝したセルゲイ・ボロノフは30歳、これがシリーズ初優勝となった。特にすばらしかったのはFSで、ジャンプはすべて着氷に乱れのないほぼ完璧な出来。スピンやステップもダイナミックに演じ、大きな盛り上がりの中でフィニッシュ。場内は満場のスタンディングオベーションに包まれた。恐らくはスケート人生最高の演技だっただろう。終了後のインタビューで、日本語で「ツカレター」とつぶやいて場内を沸かせ、観客にわかりやすいように、ロシア語ではなくやや苦手な英語で話すなど、ファンへの配慮も見せてくれた。ロシアは男子もまだまだ健在である。

2位はこの日28歳の誕生日を迎えたアダム・リッポン。FSでは冒頭で4ルッツを見事に決めた。もともと4ジャンプにはさほど執着せず、演技構成でアピールする選手だが、この4ルッツの成功で技術点を押し上げ、見事に表彰台をつかんだ。その独特の表現力にファンも多いリッポン、次戦のスケートアメリカで、また地元の熱狂的な声援を受けるか。3位には29歳のアレクセイ・ビチェンコ(イスラエル)が入り、表彰台は歴戦の強豪が若手を退ける結果となった。


私の大好きなジェイソン・ブラウンは残念な結果となった。SPで僅差の3位に入り、優勝ならファイナル決定という好位置につけた。キスアンドクライで「ゆずるさんへ、 はやく よくなってください!! ジェーソン」という日本語の手書きのメッセージを掲げ、もともと多い日本のファンにさらに強くアピールした。しかしFSでは2本の3アクセルでともに転倒したため技術点が伸びず、惜しくも表彰台を逃した。しかしその芸術的でエンターテイメント性に富む演技は魅力たっぷりだ。来年の五輪や世界選手権で、また彼の「芸術品」に会えることを願いたい。


日本勢は、体調不良で欠場した村上大介に代わり急きょ出場した友野一希が7位入賞と健闘した。GPシリーズデビュー戦が急に回ってきて準備不足だったと思うが、SPでPBを大幅に更新する会心の演技を見せた。FSでも4ジャンプは決められなかったものの、最後までスピードの落ちない躍動感のある演技を披露した。19歳、今後の伸びしろを考えれば、大変貴重な経験になっただろう。


posted by デュークNave at 11:31| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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