2017年11月05日

樋口新葉、初のファイナルへ大きく前進/ロシアからまた驚異の新星・ザギトワ 〜フィギュアGPシリーズ第3戦・中国杯〜

女子は、これがシリーズ初戦となる三原舞依、2戦目の樋口新葉、本田真凜の日本勢。強豪ひしめくロシアからは、エレーナ・ラジオノワ、エリザベータ・トゥクタミシェワに、昨季ジュニア2冠のアリーナ・ザギトワ。さらに昨季世界選手権銅のガブリエル・デールマンが加わり、ファイナルに向けた激しい戦いが繰り広げられた。男子は2015・2016世界選手権連覇のハビエル・フェルナンデスに、2016・2017世界選手権連続銅のボーヤン・ジン、ロシア杯3位のミハイル・コリヤダ、2015スケートアメリカ優勝のマックス・アーロン。日本からは昨季全日本選手権2位の田中刑事が参戦した。



【 女子 】

SPを終えた時点で、首位デールマンと7位三原の差はわずか3.75。些細なミスで順位が大きく変わる、非常に厳しい戦いになった。このプレッシャーのかかる状況で、日本の3選手が持ち味を発揮した。本田(総合5位)は前戦・スケートカナダと同様ののびのびとした演技を披露した。前半のコンビネーションのファーストジャンプが2回転になったのが唯一のミスだが、これを最後のジャンプを2アクセルから3フリップに変えることで取り返す冷静さ。また一つ成長した姿を見せてくれた。三原はいつもながらの安定した演技。青と白のグラデュエーションのコスチュームがとてもよく似合う。ほとんどのジャンプをきれいなランディングで降り、スピンやステップも流麗にこなした。PBには届かなかったが、総合4位。次戦のフランス大会に希望を残した。


ロシア大会で3位表彰台をつかんだが、目標のファイナル進出のためには最低2位が必要となる樋口。SP2位から迎えたFS、上位選手が次々と高得点をマークする中でかなりのプレッシャーがかかったはずだ。しかし、そんな状況はどこ吹く風といった見事な演技を見せてくれた。高くキレのあるジャンプ(特に前半・後半の両方に入れた3ルッツ−3トウループの高難度のコンビネーションは完璧だった)、「007・スカイフォール」のテーマに合わせたパフォーマンスで観る者を惹きつける。「絶対にファイナルに出る!」という気迫がありありと伝わってくる、すばらしい演技。見事に2位表彰台をゲットした。

シニアデビューの昨季は、フランス杯で3位に入ったが、次戦のNHK杯で表彰台を逃し、ファイナル進出はならなかった。その後の四大陸選手権や世界選手権ではジャンプに精彩を欠き、下位に沈んだ。「あのジュニア時代の大物感はどこに行ったんだ」といぶかっていた私だったが、この中国杯で面目を一新した。「強くなったな、樋口新葉・・・!」これでファイナルへ大きく前進するとともに、平昌五輪の出場枠も視界に入ってきた。


SP上位の2人はジャンプのミスが響いた。1位のデールマンは序盤に豪快なコンビネーションを披露したが、後半のいくつかのジャンプで着氷が乱れ、技術点が伸びなかった(総合6位)。2位のラジオノワは、情感あふれる演技を見せてくれたが、後半のジャンプの着氷にややスムーズさを欠き、GOEが伸びなかった。表彰台は確保したものの、5年連続のファイナル進出はかなり厳しくなった。


この大激戦を制したのは、これがシニアデビュー戦となったザギトワ。私にとっては初お目見えだったのだが、「これが本当にシニアデビューの15歳か」と思わせる落ち着きと大人びた雰囲気がある。まずSP、いきなりステップシークエンスから始まった。「あれ、ということは3つのジャンプは後半に持ってくるのか。女王・メドベージェワと同じ構成だな」と思っていたらその通りで、その後半の最初のジャンプが3ルッツ−3ループの最高難度のコンビネーション。惜しくもループで転倒してしまったが、その他のジャンプはきれいに決め、ステップやスピンも完成度が高い。また振付も細かなところに工夫が行き届いていて、この点でもメドベージェワのシニアデビューの時と似ている。聞けばメドベージェワとコーチが同じとのことで、ここで納得。転倒という大きなミスがあったにもかかわらず、SPは僅差の4位発進(転倒がなかったら余裕の首位だった)。

そしてFSも、7つのジャンプをすべて後半に跳ぶという驚異のタフネスプラン。シニアデビューの年にこんな冒険的な構成を組めるのも、同窓の先輩の世界2連覇という「大成功例」があるからだろう。しかしそれをこなせる実力が伴わなければ、この意欲的なプログラムは絵に描いた餅になってしまうのだが・・・、これを15歳の少女がものの見事にやってのけた。前半、コレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスをあでやかにこなす。そして後半、まず3ルッツ−3ループを鮮やかに決め、SPのリベンジを果たす。この後のジャンプも、メドベージェワ顔負けの手を挙げたジャンプを次々と決め、着氷の乱れもほとんどない。大きな盛り上がりの中でフィニッシュ、堂々の逆転優勝。まさに圧巻のシニアデビューだった。

ザギトワのこの圧巻の演技を目の当たりにして思うこと:「平昌五輪の金はメドベージェワで決まりと思っていたが、強力な対抗馬が現れたな」。シニアデビュー年にしてこの完成度・熟成度の高さは、まさに先輩メドベージェワを彷彿とさせるのだ。次戦・フランス杯が待ち遠しい。現時点では、平昌五輪のロシア女子代表は、メドベージェワ、ザギトワ、そしてソツコワの3人・・・かな?


【 男子 】

すばらしくハイレベルな戦いとなった女子と比べ、男子は、はっきり言ってしょぼかった(笑)。上位選手で完璧な演技を見せたのは、SPでのコリヤダと田中、FSでのアーロンぐらいで、他はジャンプのミスが多く、他よりミスの少ない選手が上位に残ったという結果になった。

田中刑事は、SPはTV解説の佐野稔さんが絶賛していたように、ノーミスのすばらしい演技だった。しかしFSでは、冒頭の4サルコウは決めたものの、演技後半、3ループを跳びに行こうとして転倒する(これはあとでわかったことで、演技中はなぜ転倒したのかわからなかった)など、ジャンプに抜けや着氷の乱れがあり、不本意な出来だった。故障明けだったこの大会、シリーズはこの試合のみ。五輪切符は暮れの全日本選手権にかかっている。あと1か月余り、コンディションをどこまで上げてこれるか。


前世界王者・フェルナンデスは、「どうしたんだ?」と思うほどFSでジャンプが乱れた。ほとんどクリーンなジャンプがなく、技術点が伸びない。総合6位に沈み、4年連続のファイナル進出は絶望的になった。パトリック・チャンと同様、かつての世界チャンピオンがジャンプの乱れに苦しんでいる。


「元祖・驚異の4回転ジャンパー」ボーヤン・ジンも本来の出来ではなかった。FS冒頭、トレードマークの4ルッツで手をつき、続く4サルコウもステップアウト。結局4つの4ジャンプはいずれもクリーンに跳べなかった。技術点の基礎点の高さで2位を確保したが、ファイナルや五輪を考えると多くの課題が残った。


SPでベスト演技を決めて100点越えを果たし、PBを更新してトップに立ったコリヤダ。しかしFSでは、シリーズ初優勝のプレッシャーからか、ジャンプに転倒や抜けが出た。しかし後半に4トウループをきれいに決めたのが効いて、SPのリードを守ってシリーズ初優勝。初めてのファイナル進出を決めた。層の厚い女子に圧倒されているロシア男子、新星が大舞台で羽ばたけるか。


上位選手が不出来な中で、会心の演技を見せたのがアーロンだった。パワフルでダイナミックなジャンプを次々に決め、PBを更新して見事に表彰台をつかんだ。2015年のスケートアメリカで「大当たり」し、宇野昌磨の「日本選手初のシニアデビュー戦でのGPシリーズ優勝」を阻んだ。私にとっては「憎き男」だったアーロンだが(笑)、この演技には素直に「あっぱれ!」を差し上げよう。


これでシリーズは早くも前半戦が終了。次戦は日本開催のNHK杯である。羽生結弦の第2戦、そしてケガで戦線を離れていた宮原知子の復帰戦でもある。日本女子の第一人者・宮原がどこまで回復しているのか。まさに「刮目して」見つめよう。


posted by デュークNave at 11:07| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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