第54回グランプリ・有馬記念は、2番人気のドリームジャーニーが、早めに抜け出したブエナビスタを外から差し切って優勝、宝塚記念に続いてグランプリ連覇を果たしました。3歳牝馬として49年ぶりの制覇を目指した1番人気・ブエナビスタは、惜しくも半馬身差の2着に敗れました。
ゲートが開くと、ドリームジャーニーは1頭後方に出遅れます。一瞬「えっ」と思いましたが、追い込み得意のこの馬にとってはこれが普通。道中もいつも通り後方を進みますが、中山の短い直線を意識してか、4コーナー手前あたりで徐々に外から進出し始めます。そして最後の直線、得意の大外からの強襲。先に仕掛けてトップに立つブエナビスタとの追い比べになりましたが、脚色が違います。一気にかわすと、そのまま押し切ってゴール。これが有馬記念初制覇の池添謙一騎手は、感激のあまり鞍上で号泣しました。
ドリームジャーニーの父はステイゴールド。現役時代は「GTで好走するがなかなか勝てないイマイチ馬」としてファンの人気が高く(GTは2着4回・3着2回)、現役最終年の7歳でドバイシーマクラシック(GU)を勝ち、ラストランの香港ヴァーズ(GT)を勝って一気に国際GTホースに昇りつめたという、ドラマチックな戦歴を持つ馬です。その息子が2歳チャンピオン(朝日杯FS)になり、5歳でグランプリ連覇。父譲りのドラマチックな勝ち鞍ですね。
今年もすばらしいレースを見せてくれたグランプリ・有馬記念。これまで53回の歴史がありますが、その中からメモリアルなレースを私なりに選んでみました。
< 私が選ぶ有馬記念・Best 5 >
【第5位】ダイワスカーレット、12頭の牡馬を蹴散らす逃げ切り勝ち(2008年・第53回)
この年の天皇賞・秋で、ウオッカとの史上に残る「女傑対決」を演じたダイワスカーレットは、堂々の1番人気に支持されてこのレースに臨みました。スタートから終始レースをリードし、これまた堂々の逃げ切り勝ち。「2008年は牝馬の年」を印象づける快勝でした。
【第4位】トウカイテイオー、1年ぶりのレースで奇跡の復活V(1993年・第38回)
前年の有馬記念で1番人気に推されながら惨敗したトウカイテイオー。翌年のこのレースが実に1年ぶりのレースになりました。「2冠・JC馬といえども、このブランクは長すぎる」といぶかるファンの目をよそに、この年の菊花賞馬・ビワハヤヒデらを差し切って奇跡的な復活Vを遂げました。レース後の田原成貴騎手の男泣きが忘れられません。
【第3位】オグリキャップ、ラストランで感動の有終V(1990年・第35回)
超アイドルホース・オグリキャップ。しかし前2走(天皇賞(秋)・JC)は6着・11着と敗れ、「オグリはこのまま終わってしまうのか」と多くのファンが思ったこのラストラン、天才・武豊に導かれて直線鋭く伸び、鮮やかに有終の美を飾りました。中山競馬場を埋め尽くした17万のファンは、満場の「オグリコール」でスーパーホースのラストランを讃えました。
【第2位】グラスワンダー・スペシャルウィークの「クビの上げ下げ」決着(1999年・第44回)
1番人気はグラスワンダー、差のない2番人気にスペシャルウィーク。道中はグラスワンダーが中団に構え、スペシャルウィークは最後方からこれをマークします。直線、内から伸びるグラスワンダーを外からスペシャルウィークが強襲。ほぼ並んでゴール板を通過しますが、体勢的には追い込んできたスペシャルウィークが優勢に見えました(事実、武豊騎手はガッツポーズし、的場騎手は愛馬を2着のレーンに入れました)。写真判定の結果、わずか4センチ差でグラスワンダーが優勝。1・2番人気馬のハナ差決着、これぞまさしく「競馬の醍醐味」ですね。
【第1位】TT(テンポイント・トウショウボーイ)の、史上最高のマッチレース(1977年・第22回)
トウショウボーイがハナを切り、テンポイントが2番手を追走。他の馬は眼中にないかのようなこの2頭のマッチレースが、スタートからずっと続きます。そして最後の直線、初めてテンポイントが先頭に立ちます。差し返しにかかるトウショウボーイ。そこに後ろから、「TTG」のもう1頭・グリーングラスが鋭く迫ります。これを見た「競馬の神様」大川慶次郎さんは、「武士の情けだ、グリーングラス!」と叫びました。(「2頭のマッチレースのまま終えてほしい」多くのファンが同じ思いだったでしょうね)レースはそのまま、1着・テンポイント、2着・トウショウボーイ、3着・グリーングラス。当時18歳の高校生で、まだ競馬にさほど関心のなかった私でさえ、このレースには目が釘付けになりましたね。
有馬記念ではこれからも幾多の名勝負が繰り広げられるでしょうが、この「TTマッチレース」以上のレースは絶対に現れない、と私は確信しています。
2009年12月28日
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