2017年05月21日

三権分立/機能しているアメリカ、機能していない日本

トランプ政権とロシアの不透明な関係を調査するため、アメリカ司法省はモラー元FBI(連邦調査局)長官を特別検察官に任命した。

この疑惑は、昨年の大統領選挙期間中から取り沙汰されていた(ロシアがクリントン陣営にサイバー攻撃を仕掛け、これにトランプ陣営の関係者が関わっていたとの疑い)。この捜査にあたっていたFBIに対し、トランプ大統領は突如コミー長官を解任した。これは捜査への政治的圧力との見方が強く、露骨な捜査妨害ではないかとトランプ政権への批判が高まっている。

この特別検察官任命のニュースを聞いた時、私のみならず多くの日本人はこう思っただろう。「アメリカは三権分立が、そして民主主義がちゃんと機能している国なんだな。」これ以前にも、トランプ大統領が出したかの悪名高い大統領令「中東など7か国出身者の入国を禁止する」を連邦地裁が差し止め、これを控訴裁が支持するという「慶事」があった。アメリカでは、行政のトップの決定に司法がこうして正しいブレーキをかける。そして行政府の1つである司法省でさえ、「大統領の暴挙許すまじ」と、継続捜査のために特別検察官を任命する。立法府である連邦議会でも、野党の民主党のみならず与党の共和党内からも、トランプ政権に対する批判が噴出しているようだ(もっとも、共和党からの批判は昨年の選挙中からあったが)。このバランスのすばらしさは、さすが「民主主義の総本山」である。この事件は、かつてのウォーターゲート事件をもじって「ロシアゲート事件」と呼ばれており、トランプ大統領の弾劾やら辞任やらが早くもささやかれているようだ。


三権のバランスがすばらしく取れているアメリカ。翻って、我が日本はどうか。「安倍一強時代」の今、安倍首相のやることに対して行政府からブレーキがかかることなど、全く期待できない状況だ。森友問題も昭恵夫人への喚問は実現せず、8億円減額処理の担当者たちは「適正な処置だった」と繰り返すのみ。新たに浮上した、加計学園(理事長は総理の友人)の学部新設について「総理の意向」が働いたという疑惑についても、総理本人はこれを全面否定。文科省の担当職員へのヒアリングもわずか半日で終了、「文書の存在は確認できなかった」とし、早々に調査を打ち切っての幕引きを図っている。ここにも、早くも今年の流行語大賞の本命と目される「忖度(そんたく)」が働いたのか(間違いなくそうだろうが)。

司法も、沖縄の米軍基地の移設問題で政府の意向通りの決定を下し、すでに工事が始まっている。下級審の決定によって稼働が差し止められていた原発も、上級審で覆されて稼働を再開している。下級審が下した画期的な判決や決定が上級審で政府寄りに覆されることは今に始まったことではないが、最近はその傾向がさらに顕著だ。

立法府である国会でも、安倍首相はじめ閣僚の全く誠意に欠ける答弁が目立つ。金田法相はほとんど自分の言葉で答弁ができず、ついには法務省の専門家を国会に呼んで代わりに答弁させる始末。最悪は安倍首相で、憲法改正についての答弁を求められ、「自民党総裁としての考えは読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひ熟読してほしい」と言い放った。憲法63条には、「閣僚は答弁のために出席を求められた時は出席しなければならない」と定められている。そして「出席したからには、答弁には誠実に対応せよ」というのがこの条文の趣旨だろう。しかるに国会での答弁において「新聞を読め」というのは、答弁への誠に不誠実な対応であり、憲法63条の趣旨に反している。つまり憲法を改正する前に、その憲法に違反することを首相はやってしまっているのだ。しかしこの傍若無人に対し、野党は有効な反撃ができていない。結局は数で押し切られ、ほとんどすべてが政権のなすがままに事が運んでしまうのだ。

そして本来は政府から独立した機関である日本銀行も、今や有名無実化したアベノミクスを後押しする、ただの「政府御用銀行」に成り下がっている。毎年発行される膨大な赤字国債を大量に買い取り、一向に改善されない財政赤字を下支えしている。


こう見てくると、「立法」「司法」「行政」の三権のうち、行政がやたらに膨張し、他の2つの「権」はこれに追随しているだけという状況になっている。行政の膨張は今に始まったことではないが、それが今の安倍政権では顕著になっている。「三権分立」が今の日本政治では機能せず、行政の膨張、いや暴走が続いているのだ。

第二次安倍政権の発足以来、つまり「安倍独裁政治」が始まって以来、安倍首相の暴走はとどまるところを知らない。特定秘密保護法、安保関連法、カジノ法、そして今度の共謀罪法案。国民の知る権利を奪い、自衛隊を危険な任務に就かせ、国民を公営ギャンブルに引き込み、そして国民を裏で監視する。この国を国民主権から国家主権へと造り変えようとしているのがはっきりわかる。そして国家主権にすることは、これすなわち行政府のトップである総理大臣自身の権力が極大になることを意味する。つまり安倍首相という人は、日本をよい国にするためではなく、国民の生活をよりよくするためではなく、己の権力を際限なく大きくするために一連の政策を進めているのだ。安倍晋三というただ一人の男の野望のために、日本国と日本国民が非常に危険な状況にどんどん流れて行っているのだ。これまでの安倍政権の歩みは、こう考えるとすべてのことがつながり、腑に落ちてくる。

そしてこの仕上げが、祖父の岸信介の念願であった憲法改正である。これによって「安倍晋三の野望」はほぼ完成し、我が愛すべき母国は「ポイント・オブ・ノーリターン」に行きついてしまう。ポスト安倍は誰になるのか知らないが、権力者というものは、手にした権力は維持したがり、振り回したがるものなのだ。だから後任が誰になっても、一度極大になった首相と政府の権力は、そのあとも猛威を振るい続けることになるだろう。まさに識者が言う「戦前回帰」、国家権力が暴走して戦争へ突き進んだ、あの時代への「時計の針の逆回し」である。これはちょっと極端な想像かもしれないが、そういうきな臭さがじわじわと広がっている恐怖感は確かに感じられる。


この「安倍の暴走」を招いた一番の原因は何か。安倍首相本人の、政治家としてそして人間としての資質の問題もあるだろう。周囲を固める閣僚らが「勝ち馬に乗れ」とばかりに乗っかってしまい、この傍若無人な首相への批判が党内から出ないという異常な状況のせいでもあるだろう。しかし私が思う最大の原因は、国民がこんな安倍政権をいまだに支持し、選挙で勝たせてしまったからだ。「3分の2」をいとも簡単に許し、数を与えてしまったがために、これまでにも増して暴走するようになってしまったのだ(共謀罪の審議はたったの30時間。安保関連法では100時間かけていたのだが)。

いくら痛烈に批判しても、選挙で勝たせてしまったら全く無意味なのだ。それはこれまでの幾度の選挙が物語っている。次の選挙はいつになるのかわからないが、日本国民の皆さん、また次の選挙でも与党に勝たせますか? そして「安倍一強」、いや「安倍一狂」状態をさらに加速させるんですか? あなたのお子さんやお孫さんの世代に、簡単には消えない禍根を残すことになりますが、それでいいんですか? 「仕事が忙しくて政治のことなんか見てるヒマない」とおっしゃるかもしれませんが、あなたの愛するご子孫が、とても危険で息苦しい状況に置かれるかもしないんですよ? それでいいんですか?


1億2千万の日本国民の皆さん、お忙しいでしょうけど、ここで一度足を止めてじっくり考えて下さい。今日本は、どんどん危ない道を進みつつあります。このすばらしい歴史ある国を、あの戦前の息苦しい時代に戻したいですか? その息苦しさ、すでにあちこちで始まっていることに気がついていますか? 


昭和戦前なんて、私にとっては「歴史」でしかなかった。あんな時代、司馬遼太郎さんが「鬼胎の時代」と呼んだ異常な時代が、またやってくるかもしれないなどとは夢にも思わなかった。ただ正直、いくら安倍首相が強権を振るったとしても、あそこまでひどいことにはならないだろうと思う。しかし、「あの時代」を思い起こさせるようなことがじわじわと進んでいるということ自体が大問題なのだ。

これだけははっきり言える。安倍晋三首相は、戦後の歴代首相の中でダントツで最悪の総理大臣だ。こんな強権、いや狂犬政治を許しては、日本国と日本国民はどんなとんでもないところへ連れて行かれるか知れたものではない。日本国民の皆さん、このこと、本気で考えて下さいね! 本気で肝に銘じて下さいね!

posted by デュークNave at 11:56| Comment(0) | 政治・時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月08日

浅田真央引退 〜繋げた伊藤みどりからの「トリプルアクセルの系譜」〜

浅田真央が自身のブログで現役引退を表明した4月10日、私は前の週から「あること」に取り組み始めたばかりだった。フィギュア大ファンで、このブログにも多くのフィギュア関連の記事を載せている私が、浅田の引退についてのブログ記事をまとめようと思ったら優に数日はかかる。「根性なし・根気なし」のノーコン人間を自認するこの私が、始めたばかりのことを横に置いてこんなことをしたらまた挫折するのは目に見えている。なので、書きたい気持ちをずっと抑えていた。また、浅田真央の引退についての記事は安易に書けるものではないので、じっくり頭の中でまとめてから書きたいという思いもあった。

その後2週間にわたり、この「あること」もしんどくなるような仕事が続いたのだが、何とか乗り切ってGWを迎えた。GWも「あること」でスケジュールはみっちりだったのだが、この最終盤にきてようやく少し余裕が出てきたので(というより、そればっかりで連休を過ごすのが嫌だったので)、1か月近く経ってようやく、「我が思いのたけ」をギュッと凝縮して、ここに記すことにする(まともに書いたら、どんどん長くなって収拾がつかなくなるだろうから)。


【 出場すれば書かずにはいられない、それが浅田真央 】

彼女の引退表明のあと、私は購読している毎日新聞の彼女に関する記事をすべてスクラップした。朝刊・夕刊・日曜版あわせ、実に19。スポーツ面はもちろん、1面・社会面・社説、「記者の目」、さらには日曜版の、普段は芸能関係の記事が多いコラムでも扱っていた。浅田真央という選手が、単なるアスリートを超えた「国民的アイドル」だったことを示す、この記事の多さと幅の広さである。

世間的にはこうだが、自分自身の彼女への関心度はどうだったのか。それを確かめるべく、このブログ内で「浅田真央」で検索してみた。その数、実に46。カテゴリー「フィギュアスケート」の記事が総数61、2度のオリンピック(2010バンクーバー・2014ソチ)の記事はカテゴリー「五輪・世界大会」に入っているので、これを加えて65。フィギュア関連の記事の70%超で彼女を取り上げていることになるのだ。というか、浅田真央が出場した試合で彼女についてコメントしないことなどありえないので、残り30%は彼女が不出場だったGPシリーズなどなのだろう。つまり出場すれば、記事にした確率100%。いつどんな大会に出場しても、常にセンターに置かれ、注目を一身に浴び、書き手は書かずにはいられない。浅田真央とはそういう選手だったのだ。


【 つないだ伊藤みどりからの「バトン」:応援せずにはいられない 】

GPファイナル4回優勝、世界選手権3回優勝、バンクーバー五輪銀メダル。しかしこれは、彼女の戦績の「上澄み」を記したにすぎない。浅田真央という選手の大きな功績の1つは、フィギュアスケートという魅力あふれる世界を、日本全土に広げ、浸透させたことにある。老若男女を問わず愛され、誰もが「真央ちゃん」と呼んで応援したくなる、その愛くるしいルックスと、スケートへの純粋で真摯な姿勢。彼女の出現によって、フィギュアスケートの日本における認知度は飛躍的に高まった。

しかし私個人としては、「自分をフィギュアスケートの世界にいざなってくれた大恩人」伊藤みどりから始まる「トリプルアクセルの系譜」を、浅田真央が引き継いでくれたことに最大の功績と意義を見る。伊藤みどり本人が、毎日新聞紙上で「トリプルアクセルに挑戦し続けてくれてありがとう」とコメントし、Number誌上でも「真央ちゃん、引退おめでとう」の特別メッセージを贈っているように、浅田真央は伊藤みどりからの「トリプルアクセルのバトン」を受け取り、最後までそのバトンを持って走り続けた。1988年のカルガリー五輪での伊藤みどりの演技に魅了されて以来のフィギュアファンである私にとって、その伊藤みどりの系譜を継ぐ浅田真央は、応援せずにはいられない選手だったのだ。


デビューが早かったので、この世界で21年過ごしてもまだ26歳。これからの人生の方がはるかに長い。「人間・浅田真央」がどんな生き様を見せてくれるのか、これからどんなことに挑戦してくれるのか。長年のファンとして、じっくり温かく見守ろう。

(とりあえずはフィギュアの試合で「解説者・浅田真央」のコメントが聞きたい。橋大輔、織田信成、鈴木明子といった同時代を戦った選手たちは、みなすばらしい解説をしてくれている。世界のヒロイン・浅田真央の解説は、さぞ聞く者の心に染みるものになるに違いない。楽しみだ


P.S. 浅田真央の引退と被ってしまって目立たなかったが、村上佳菜子も引退を表明した。羽生結弦と同世代で、同じ2010-11シーズンにシニアデビュー。いきなりGPシリーズ優勝・GPファイナル表彰台を遂げたシンデレラガールだった。その後も着実に成長し、その弾ける笑顔でファンにアピールしてきた。しかしここ数年はジャンプに苦しんで伸び悩み、若手の追い上げを受けていた。昨年末の全日本選手権のFSで渾身の演技を見せ、演技終了後、感極まってリンクに伏してしまった。今思えばあの時、「これが現役最後の演技」と覚悟していたのだろう。

同期の羽生結弦が世界王者になったのと比べると、その才能を十分には発揮できずに終わった感があり、ファンの一人としては残念だ。しかしその情感あふれるしっとりとした演技は、観る者に訴えた。非常にファンの多い選手であり(リンクに現れた時の歓声の大きさがそれを物語る)、記録よりも記憶に残る選手だ。浅田真央と同様、彼女の人生もこれからまだまだ長い。何より、その「弾ける笑顔」をいつまでも失わずにいてほしいものだ。

(個人的には、2014-15シーズンのSP「『オペラ座の怪人』から“Think of me”」が、彼女の明るくまぶしい雰囲気にマッチしていてすばらしかった。あれが我が「村上佳菜子・ベスト演技」だな)

posted by デュークNave at 12:08| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする