2017年02月01日

フェデラー、18度目のグランドスラムタイトル:その「美しきテニス」の復活に、ただ感嘆 〜全豪オープン2017・男子シングルス〜

【 「神が創造した芸術品」の完全復活:その美しさに触れた心地よさ 】

全豪オープンの試合を連日観戦していて、私は不思議な心地よさに包まれていた。最初はその原因がよくわからなかったのだが、男子シングルスの準々決勝を観終わった時に気がついた。ほぼ半年のブランクを経て戦線に復帰したロジャー・フェデラー(スイス)の、柔らかい芸術的なプレーに魅せられるとともに、全盛期を彷彿とさせる美しきテニスの復活を目の当たりにした喜びの入り混じった、至高の心地よさだったのだ。「神が創造した芸術品」とまで称賛されるフェデラーの美しいプレースタイルが、この全豪で完全復活した。


【 第17シードからの快進撃:我らが錦織も飲み込まれる 】

膝の手術のために昨シーズンの後半を棒に振り、今大会は第17シード。しかしフェデラーは大会前、「低いシードからの復帰は楽しみ。心配すべきは早い段階で僕と戦う他の選手たちの方じゃないかな?」と余裕のコメントを残していた。その言葉通り、3回戦で第10シードのベルディヒ(チェコ)をストレートで破り、続く4回戦では、我らが錦織圭(第5シード)をフルセットの激闘の末に下す。第2シードのノバク・ジョコビッチが2回戦、第1シードのアンディ・マリーが4回戦でまさかの敗退を喫しており、グランドスラム初制覇を狙う錦織にとっては絶好のチャンスだった。それだけにベスト16での敗退は残念だが、「相手がフェデラーなら仕方がないか」とも思ったし、フェデラーのプレーにかつての輝きが戻ってきたことに、私は喜びを感じていた。


【 決勝の相手はナダル:復活したレジェンド同士のドリームマッチ 】

続く準々決勝ではマリーを下したM・ズベレフ(ドイツ)をストレートで破り、準決勝ではスタン・バブリンカ(第4シード)とのスイス勢対決をフルセットの末に制する。期待し注目はしていたものの、故障明けでほぼぶっつけ本番だったフェデラーがまさか決勝まで勝ち上がるとは、ファンはもとより本人も驚きだっただろう。

しかし、今大会のサプライズはこれにとどまらない。
もう一方のブロックから決勝に勝ち上がってきたのは、第9シードのラファエル・ナダル(スペイン)。
かつてはフェデラーとともに「ビッグ4」の一角に君臨してきたナダルだが、ここ数年は故障に悩まされ、グランドスラム大会でも不振が続いていた。しかし今大会ではそのスピンの利いたパワフルなショットが復活し、準々決勝では第3シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を何とストレートで屠り、準決勝ではグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)を約5時間の大激戦の末に退けた(この試合はすごかった!)。

フェデラーVSナダル。この長きにわたってテニス界の頂点に君臨してきたレジェンド同士の対決が、グランドスラム大会の決勝で再現するとは何とすばらしいことか。この顔合わせだけで、私を含めた長年のテニスファンは感涙にむせんでいたに違いない。そして試合も、全豪のみならずテニス史に永遠に刻まれる、観る者にテニスの醍醐味を堪能させてくれる、「これぞテニス!」と呼ぶにふさわしいすばらしい戦いになった。


【 第4セットから最終セット序盤、ナダルに流れが行きかけたが 】

フェデラーの2−1リードで迎えた第4セット。それまで正確だったフェデラーのストロークが乱れ始める。フォア・バックともにアンフォーストエラーが増え始め、特に長いストローク戦になると先にフェデラーがミスをするケースが増えてくる。フェデラーのラケット面を揺さぶり続けてきたナダルの強烈なスピンショットが、ここにきてボディーブローのように効いてきたのか。第4ゲームでフェデラーのサービスを破ったナダルが、そのまま押し切って6−3で第4セットを奪う。両雄の頂上決戦は、ついにファイナルセットにもつれこんだ。

その最終セットの第1ゲーム、ナダルはここでも強烈なショットを連発し、いきなりフェデラーのサービスを破る。この試合、先に相手のサービスをブレークした方がそのセットを取るという流れになっている。第4セットから目立ち始めたフェデラーのミスとナダルのストロークの伸び、そして最終セット出だしでのサービスブレーク。フェデラーファンの私は「これはナダルに流れが来ているな。ヤバいな」と思ったのだが・・・。


【 よみがえったフェデラーの「芸術品」 】

その後はサービスキープが続き、ナダルが3−2とリードを保つ。なかなか追いつけないフェデラーだったが、私は一筋の光明を見ていた。ナダルはブレークは許していないものの、第2ゲームで3つ、第4ゲームでも1つのブレークポイントを迎えており、かなりサービスキープに苦しんでいた。私は「この流れならブレークチャンスは十分にある。とにかく早くブレークすることだ」と念じていた。

そして迎えた第6ゲーム、ナダルのサービス。すばらしくスリリングなストロークの応酬の末、フェデラーがつかんだ2つ目のブレークポイント。ナダルの深いショットをフェデラーがライジングで返し続け、その速いテンポにナダルが押されてフォアがサイドアウト。ついにフェデラーがブレークに成功し、3−3のタイに持ち込む。続くサービスゲームをラブゲームでキープし、フェデラーが初めてこのセットでリードする。テンポの速いプレーが再び決まり始め、流れはフェデラーに傾きつつあった。

そして勝負の第8ゲーム。ナダルのダブルフォルトなどで、0−40とフェデラーが3ブレークポイントをつかむ。しかしこの絶体絶命のピンチを、ナダルはスピンの利いたサービスとパワフルなストロークで3ポイントを連取、デュースに持ち込む。だがここからもフェデラーはプレッシャーをかけ続け、連続でブレークポイントをつかむ(特にこのゲーム4つ目のブレークポイントをつかんだ時のラリーは、この試合最長の26。エース級のショットの応酬の末、フェデラーのフォアのダウンザラインが決まった。テニスのストローク戦の、まさに最高峰だった)。そしてこのゲーム5つ目のブレークポイント、フェデラーの角度のあるバックのリターンをナダルが返し切れずにネット。フェデラーがナダルのサービスを連続で破り、4ゲーム連取で5−3とリードする。

第9ゲーム、フェデラーの”Serving for the Championship”。ネットに詰めるフェデラーの脇をナダルの鋭いパスが抜ける。次のポイントもストローク戦をナダルが制し、0−30。ノータッチエースでフェデラーがポイントを返すが、またもナダルのパワフルなショットがフェデラーを圧迫し、浅くなったロブをナダルがボレーで仕留めて15−40。ナダルが逆にブレークバックのチャンスをつかむ。しかしここでまたフェデラーのノータッチエースがセンターに決まり、次のポイントも速いストロークでウイナーを奪ってデュースに。そして迎えた2度目のChampionship point、フェデラーのフォアのクロスがサイドラインに決まる。ナダルはチャレンジを要求するが、しっかりラインに乗っていた。フェデラーが3時間38分の激闘を制し、全豪5度目の優勝、そして前人未到の18度目のグランドスラムタイトルをつかんだ。


【 多言を要しない、2人のレジェンドの「至高のテニス」 】

興奮のあまりずいぶん長々と書いてしまったが、こういう「絶品」はあまり言葉を要しない、いや多言してはいけないのだろう。「とにかく観ろ!」の一言だ。互いの技術と経験、そして精神力のすべてを注ぎ込んだ至高のテニス。「フェデラーはすばらしかった、しかしナダルもすばらしかった。」もうこれしか言えない。テニスのすばらしさの神髄を見せてもらった。2人のレジェンドが紡ぎ出したこの芸術品は、全豪史上、そしてテニス史上永遠に語り継がれるであろう、世紀の名勝負になった。今はただ、この両雄に「すばらしいものを見せてくれて、本当にありがとう」の言葉を贈るのみである。

posted by デュークNave at 05:50| Comment(0) | スポーツ-テニス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする