2016年12月29日

「新版 日中戦争  和平か戦線拡大か」 (臼井勝美・著)

日中戦争については、以前からもっと知りたいと思っていた。1941年の真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争については子供のころから興味があり、学校でも習ったが、自分でも何冊か本を読んで知識を蓄えた。しかし日中戦争は、1937年の盧溝橋事件に端を発し、対米英戦争開戦時にはすでに4年を経ており、言うまでもなくその後は太平洋戦争と同時進行で行われたにもかかわらず、ほとんど知識がなかった。学校の歴史教科書にも、1941〜1945年については、太平洋戦争の記述はあるが日中戦争についてはほとんど記述がないため、自ら乗り出さねば知識が身につく機会がなかったのだ。


そこで意を決して標記の本を購入し、読んでみたのだが・・・、かなり疲れた(苦笑)。まず活字が小さいし、文体もかなり堅い。またこれは仕方のないことなのだが、引用する当時の資料が、文語体でかなり読みづらい。この「三重苦」で内容がなかなか頭に入らず、読書スピードがものすごく遅くなってしまい、わずか200ページ余りの新書本を読破するのに1か月近くもかかってしまった。通勤時間と仕事の昼休みを利用してのことなので1日の読書時間は短いのだが、それにしても時間を費やした。

「根性なし・根気なし」の「自称・ノーコン人間」である私、普通なら途中で投げ出してしまうところなのだが、なぜかこの本は最後まで食らいついた。冒頭に書いた「日中戦争についてもっと知りたい」という思いと、どうにかこうにか読み進めていくうちに、だんだん面白くなってきたからだ。この本は日中戦争を、@前史:1933〜1937年 A盧溝橋事件から太平洋戦争勃発まで:1937〜1941年 B太平洋戦争から敗戦まで:1941〜1945年 の3期に区分している。@はほとんど前提知識がなかったのでかなり読むのに時間がかかったが、Aになると少しずつ知っていることが増え始め、Bに至ってかなり興味津々に読み進んだ。とりわけBは、「太平洋戦争の最中に日中戦争はどう推移していたのか」という、この本を読もうとした自分の動機にマッチしていたので、依然として時間はかかりながらも、かなり身を入れて読んだ。


読了し、「日中戦争とはどういう戦争だったのか」と改めて考えてみると・・・、「まったく大義のない泥沼の戦い」と言っていいだろう。1931年の満州事変〜翌年の満州国建国で、日本は中国東北部に大きな拠点を築き上げる。しかしそれにとどまらず、さらに南下して時の蒋介石国民党政権に圧迫を加え続け、ついに1937年、盧溝橋事件で「難くせ」をつけて全面戦争に突入する。この後日本は「大東亜共栄圏」だの「東亜新秩序」だののお題目を唱えて中国本土での勢力圏を拡大していくが、これは「帝国主義国家の侵略」以外の何物でもなかった。

1938年12月28日、蒋介石はこう語って日本の「東亜新秩序」を批判した。

≪東亜新秩序の目的は赤禍(共産党の伸長)を防止することにあるとの名目で中国を軍事的に管理し、東洋文明を擁護するという名目で中国の民族文化を消滅させ、経済防壁を撤廃するという名目で欧米勢力を排除して太平洋を独占しようとするもので、簡単にいえば日本は東亜の国際秩序を覆し、中国を奴隷化して太平洋を独覇し世界の分割支配を意図している。≫

見事に的を射た指摘であり、核心を突かれた当時の日本陸海軍首脳たちは、内心ぐうの音も出なかったのではないか。


この後も日本は戦いを優勢に進めるが、国民党政府は広大な国土を西へ西へと退避し、中西部の重慶に拠点を構えて抗戦する。加えてアメリカを主とする連合国からの援助(いわゆる「援蒋ルート」)が蒋介石を支え、戦争は長期化・泥沼化していく。


この膠着状態を打開するため、日本は対米英戦争に打って出る。開戦当初に連戦連勝を重ねて有利な状況を作り、早期に講和に持っていく目論見だった。確かに1942年5月までは、太平洋戦線では日本は版図を拡大し続け、中国戦線では最大のネックであった「援蒋ルート」最大のビルマルートの遮断に成功する。ここまでは日本の目論見通りの展開だった。

しかし6月、ご存じミッドウェー海戦で日本は主力空母4隻を撃沈されるという大敗を喫し、太平洋戦線は大きなターニングポイントを迎える。物量に勝るアメリカの大反攻が始まり、これに対するために日本は中国戦線より太平洋戦線に兵力を注力せざるを得なくなる。しかも米英の協力でインド経由でアメリカ航空部隊の中国本土への配備が進み、1944年になると、成都飛行場から飛び立ったB29による日本本土爆撃が本格化する。さらに翌1945年には途絶えていたビルマルートが再開され、日本は太平洋戦線のみならず、優勢だった中国戦線でも苦境に陥る。5月、日本は大幅な戦線縮小を決定、各部隊は粛々と撤退を開始したが、その作戦中に8月15日の終戦を迎えることになるのである。


明治維新以来、「富国強兵・殖産興業」をスローガンに近代化を進めてきた日本は、その78年後、国家の崩壊を迎えてしまった。「欧米に追いつけ・追い越せ」とまさに「坂の上の雲」を見つめながら突き進んできた新興国が、「鹿鳴館時代」に象徴される欧米文化の取り込みのみならず、国際政治や軍事面でも欧米帝国主義のマネをして、日清・日露両戦争を勝利したあと、朝鮮を併合し、中国を圧迫して、東アジアに覇を唱えようとした。しかしその膨張が欧米連合国との衝突を招き、ついには破滅へとつながる戦争に突入していった。


この流れの中で、日中戦争はどういう意味合いを持つのか。中国大陸への飽くなき欲望が米英との軋轢を生み、中国戦線と太平洋戦線の同時進行という、当時の日本の国力を考えるとまったく無謀な大戦争へと発展してしまった、つまり日中戦争の泥沼化は、日本帝国主義終焉へのカウントダウンの始まりだった、ということができる。対米戦争は「絶対にやってはいけない戦争」だったが、その前の日中戦争も、「絶対に踏み込んではいけない領域」に踏み込んでしまった戦争だったと言えるだろう。


「いったん始めてしまうと、途中でブレーキがかけられずに突っ走ってしまう。」満州事変に始まり敗戦に終わる、1931年からの15年間は「十五年戦争」とも呼ばれるが、この15年間の日本軍=日本国家の暴走(その前にも「助走期間」があるが)は、決して過去の遺物ではなく、現代の日本社会でも起こっていることではないだろうか。今の安倍政権が行ってきた、特定秘密保護法や安保関連法、最近では「カジノ法」の強引かつ性急な成立、さほど現地で求められているとは思えない、自衛隊の南スーダンへの派兵。大企業でも、組織ぐるみで不正を続け、世間にバレるまでそれを隠蔽し続ける。まさに「赤信号 みんなで渡れば怖くない」を、政府も大企業もやってしまっている。


こんな恐るべき大潮流に、無力な一個人がどう抵抗しようともしょせんは蟷螂の斧。ではどうすればいいか。世間の常識や時代の流れにとらわれずに、自分の好きなこと、好きな道を、好きなように追求していくしかないな。

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2016年12月28日

「あばよ、商業主義!」CMがあまりにウザいので、民放の番組はリアルタイムで観ない

何週間前だったか、毎日新聞にテレビ番組の視聴率についての興味深い記事が載った。大まかにいうと、「視聴率を正確に測定するには、実際に観ていた場合(視聴率)に録画して後で観た場合(録画率)を加えなければならないが、録画して観る人はCMをほとんど飛ばすので、番組スポンサーにとっては録画率は意味がないという内容だった。

なるほどと思った。私は、テレビはNHK以外ほとんど観ない。そのNHKでも、観る番組は厳選している(その代わり、観る番組は「毎週録画」してトコトン観ている)民放の番組は、毎週日曜朝の「サンデーモーニング」はコンスタントに観ているが、他はスポーツ番組と、時たま「笑点」を観るぐらいだ。

しかも唯一コンスタントに観ている「サンデーモーニング」も、半年前あたりからは録画して後で観ている。「日曜日の午前中という一番頭が冴えている時間を、ただテレビを観て過ごすのはもったいない」と思ったのが理由の1つ。もう1つの理由は、間に入るCMがあまりにウザかったからだ。CMのないNHKを見慣れている身には実に邪魔な存在で、せっかくの休日の朝からイラつきたくないので、「録画&CMスキップ視聴法」を採用しているのだ。この方法なら、いつでも好きな時間に観れるし、ウザいCMもシャットアウトできる。

(ただすべてのCMがウザいわけではなく、ソフトバンクの犬のお父さんが出る携帯のCMや、auの桃太郎・金太郎・浦島太郎シリーズ、BOSSの宇宙人ジョーンズシリーズの3つは面白がって観ている)


先日3日にわたって放送されたフィギュアスケート・全日本選手権は、選手たちの絢爛豪華な演技を満喫するとともに、この「CMのウザさ」をもトコトン味あわされた。もっともほとんどリアルタイムでは観ずに録画して翌早朝に観たので、CMはすべてブッ飛ばしたのだが、この「ブッ飛ばし」を3日間で頻繁に強いられたため、それだけでけっこう疲れてしまったのだ。

ただ逆に思ったのは、「こんなにCMが頻繁に入ったんじゃ、観る方はせっかくの熱戦にいちいち水を差されることになる。こりゃリアルタイムで観なくて正解だったな」ということ。「CMスキップ視聴法」のおかげで、名演技の数々をほぼ連続して観戦できたのだ。


民放の番組はスポンサーによって成り立っているので、CMはいわば必要悪だ。しかし観る側にとってはどうでもいいことなので、いらんもんは捨て去るのみ。スポーツを心ゆくまで楽しむために、「あばよ、商業主義!」だ。

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2016年12月27日

宮原知子も「世界の地力」で3連覇/世界選手権の男女3選手が決定 〜フィギュア全日本選手権:女子シングルFS〜

今年も目移りしっぱなしだった女子シングル。特に最終グループは、実に「濃かった」。


SPでスピンの際に手袋がブレードに引っかかって外れるというアクシデントに見舞われ、17位に沈んだ白岩優奈。しかしこのFSでは本来の実力をいかんなく発揮した。冒頭、高難度の3ルッツ−3トウをきれいに決める。ステップも流れよくこなし、スピンも軸がぶれず美しい。中盤から後半にかけてのコンビネーションジャンプも着氷に乱れがなく、演技の流れがとてもいい。最後まで表情豊かにスピードに乗ったまま演技が続き、圧巻のフィニッシュ。得点はSBを大幅に更新し、FSでは3位、総合6位にジャンプアップ。昨年の全日本でキレのいいジャンプを次々と決めて5位に入り、鮮烈な印象を残した白岩。今年もFSで本領を発揮、観る者に強いインパクトを残した。


ここ数年、なかなか本来の演技ができずに苦しんでいる村上佳菜子。しかしこの今季の集大成の舞台で、気迫のこもった演技を見せた。ミスの多かったジャンプを着実に決め、苦手の2アクセルもきれいに着氷。そしてステップシークエンスでは、魂の叫びのような動きで観る者に訴える。演技終了後、万雷の拍手の中でなかなか起き上がれない村上。今の自分のすべてを注ぎ込んだ渾身の演技だった。キスアンドクライで山田コーチと樋口コーチに囲まれ、満面の笑みを見せる村上。「演技後の彼女の弾ける笑顔が見たい」というファンは大勢いると思うが(私もその一人)、ようやくそれを見ることができた。


「今の自分のすべてを注ぎ込んだ」これは浅田真央も同じだった。冒頭、SP同様「挑戦の3アクセル」。しかし両足着氷になり惜しくも転倒。しかしその後のコンビネーションなど、ジャンプは着実に決める。後半、3サルコウでまたも転倒、3フリップもシングルに抜ける。それでも心を折らず、最後のステップをダイナミックに演じる。フィニッシュ後、「まあ、しょうがないか」という表情を浮かべた。

解説の荒川静香さんは「まだ本調子には戻り切っていない中で、3アクセルを失敗した直後に3フリップ−3ループのコンビネーションに果敢に挑んだように、意欲を持って滑れることがすごく大事なことで、他の選手たちにも伝わったのではないかとコメントした。どんな状況でもその時々のベストを尽くす、これが浅田真央であり、若い選手たちが「真央ちゃん」と慕ってやまないのも、こういう彼女の姿勢がすばらしいお手本になっているからなのだ。


今季からGPシリーズに本格参戦した松田悠良冒頭、2アクセル−3トウ−3ループの驚異の高難度コンビネーションを鮮やかに決める(サードジャンプに3回転を持ってくるのがすごい。ループの得意な彼女の真骨頂だ)この後のジャンプもすべてGOE加点を得る安定感を見せ、伸びのあるスケーティングで最後までスピードが落ちない。トータルでSBを更新したが、総合では10位にとどまった。しかし彼女のキレのいい、目に鮮やかなジャンプは魅力たっぷりだ。


最終グループの前まででコメントがこんなに長くなってしまう。「百花繚乱・目移りクラクラ」の全日本の女子シングルは、毎年こんな感じだ。最終グループの6人:(演技順に)本田真凜、三原舞依、坂本花織、宮原知子、樋口新葉、本郷理華なんと「濃い」メンバーか。ここまではコメントする選手を厳選してきたが、この6人ではとてもコメントをカットすることなどできない。時間はかかるしスペースは取るが、ここはじっくり取り組むとしよう。


SP4位の本田真凜。冒頭の3ルッツはきれいに決めたが、続くコンビネーションの3フリップがシングルに抜ける。しかしそのあとのステップシークエンスはしなやかに、軽やかに滑る。2アクセル−3トウ−2ループの3連続で大きな加点を得、続く3サルコウ−3トウも柔らかな着氷。前半のミスのリカバリーのために、後半に3−3を持ってくるというタフな構成をしっかり決めた。コレオシークエンスでも1点以上の加点を得、その後のジャンプもすべて加点を得るきれいな着氷。フィニッシュのあと、微笑みながら軽く首をひねった。前半のフリップのミスを悔やんでのことだろうが、それを後半の連続ジャンプで見事にリカバリーした。2週間前に体調を崩し、コンディションも練習も不十分なままで臨んだであろう今大会だったが、それを感じさせない気持ちのこもった演技だった。総合でSBを更新して4位を保ち、初の全日本選手権入賞を果たした。来季はいよいよシニアデビューになるのだろうか。解説の荒川静香さんが「雰囲気のある選手」と評した彼女、その「きらめき」が今後どう成長していくのか、じっくりと見守りたい。


SP5位の三原舞依。シニアデビューの今季、GPシリーズ初戦のスケートアメリカで見事に3位に入ったが、次戦で惜しくも表彰台を逃してファイナル進出はならなかった。次なる世界の舞台・世界選手権を目指しての挑戦のFSだ。冒頭、3ルッツ−3トウを鮮やかに決める。ランディングが非常に柔らかで、流れがいい。ステップも軽やかに踏み、後半の2アクセル−3トウ、3ルッツからの3連続もきれいに着氷。最終盤の3ループ、3サルコウもしっかりと降りる。すべての要素でGOE加点を得る完璧な演技で、スケートアメリカでの「シンデレラの輝き」を見事に再現して見せた。昨年の全日本は、難病と闘いながら病院のベッドで観ていた三原。その時自分を励ましたのは、最終グループの選手たちの演技だった。今年、その最終グループに自らが入り、最高の演技で締めくくった。まさに夢のような時間だったに違いない。荒川静香さんが「一度大変な経験をした選手は、滑れることが当たり前ではないということを知っていますから、滑れる喜びを力に変えることができるんです」と語ったが、その喜びを全身でスパークさせた、今季のベストパフォーマンスだった。トータルでSBを更新し、見事初の全日本の表彰台に立つとともに、世界選手権への出場も決めた。すばらしいジャンプアップである。


SP6位、今季のジュニア女王・坂本花織このFSは、ジャンプのミスに泣いた。冒頭の3フリップ−3トウで、セカンドジャンプの着氷が乱れる。続く3ルッツ、3サルコウはきれいに決め、後半の2アクセル−3トウも軽やかに降りる。さらに3フリップからの3連続も着実に決め、「これはリカバリーしてきたな」と思った矢先、3ループで転倒。ステップシークエンスでは持ち前の伸びやかなスケーティングを見せたが、転倒の減点が響いて総合では7位に後退した。しかし橋大輔さんが言う「男子も顔負けのすばらしいジャンプ」をはじめ、伸びのあるスケーティングなど、彼女も魅力たっぷりだ。来年の世界ジュニアでは、その魅力を世界に見せつけてもらいたいものだ。


3連覇がかかる女王・宮原知子。SPでは貫禄の首位発進。しかしこのFSは、やや苦笑いの結果になった。冒頭の3ループは流れるように決めたが、続く3ルッツ−3トウでセカンドジャンプが、本人曰く「勢い余って」回転不足&ステップアウト。続く3フリップは着実に決め、ステップシークエンスでは、戦いをイメージしたホルスト・惑星の「火星」の荒々しい響きをバックにダイナミックに演じる。後半、3ルッツからの3連続、2アクセル−3トウを鮮やかに決め、スピードに乗ったコレオシークエンスで大きなGOE加点を得る。最後はトレードマークの左右両回転のコンビネーションスピン。完璧ではなかったが、しっかりまとめて試合を作った。この安定感、乱れの少なさが宮原の強さだ。トータルでは唯一200点台に乗せる214.87。圧勝で全日本3連覇を決めた。

それでも、宮原は大きな喜びは見せなかった。完璧ではなかったことと、「これでは世界選手権では勝てない」という思いがあるからだろう。あの盤石の女王・メドベージェワを破るためには、SP・FSともノーミスの「至高の演技」をしてようやく勝負の舞台に立てる。それを一番かみしめているのは宮原本人だろう。3か月後、今季のクライマックスの舞台で、その「至高の演技」を世界に披露することができるか。


SP3位の樋口新葉。満を持してシニアデビューを果たした今季、GPシリーズでの表彰台はつかんだものの、ファイナルへの進出は逃した。残る世界の舞台はヘルシンキでの世界選手権のみ。その出場権をつかむための、勝負のFSだ。「シェヘラザード」の妖艶な調べに乗り、冒頭の3ルッツ−3トウを高々と決める。続く3ループも大きな加点。中盤の3サルコウでまさかの転倒があったが、ステップシークエンスで気持ちを持ち直し、後半の3ルッツ−3トウを鮮やかに降りる。この後半の得点源をしっかりと決めたのが大きかった。この後のジャンプも着実に決めてフィニッシュ。トータルでSBを更新し、199.49。本人が得点を見て「あー、もう1点もない!」と叫んだように、200点にわずかに届かなかったが、今季のベストパフォーマンス。昨季に続く2位に入り、目標としていた世界選手権の切符も手にした。

ついに日本の誇る大器・樋口新葉がシニア世界の大舞台に乗り出す。メドベージェワとは頻繁にメールのやり取りをするほどの親友とのこと、この結果もすぐにメールしたに違いない。親友同士が相まみえる世界の大舞台で、その大物ぶりを発揮できるか。


SP2位、最終滑走となった本郷理華。今季はGPシリーズで表彰台に上がれず、ファイナルを逃した。世界選手権出場のためには表彰台、しかも2位以上が必須。だがそれがプレッシャーになったのか、ジャンプにミスが出た。冒頭、コンビネーションの予定だったが、3フリップの着氷がスムーズでなく単独に。続く3ループも2回転に抜ける。しかしリズミカルな音楽に乗って少しずつリズムを取り戻し、後半の2アクセル−3トウ−2トウをきれいに決める。そして見せ場のステップを軽快に踏み、最終盤で3サルコウ−3トウを見事に決めた。最後は大きな盛り上がりの中でフィニッシュしたが、前半のジャンプのミスが響いて総合5位に後退。世界選手権は惜しくも逃した。

シニアデビューの2014年、いきなりGPシリーズ優勝とファイナル出場。暮れの全日本では宮原と僅差の2位に入り、一躍シンデレラガールとなった本郷。このシーズンの安定感、精神的な強さはすばらしかった。しかし昨季から、ジャンプに回転不足などわずかな乱れが見られるようになり、成績が不安定になった。今季もこれを克服できず、ジュニア勢の追い上げもあって世界の舞台を逃してしまった。この不安定さの原因はわからないが、これを克服してかつての安定感を取り戻さねば、今後の彼女のスケート人生は厳しいものになるだろう。日本人選手にはまれな長身と長い手足を持つ彼女、そのスケールの大きいダイナミックな演技はやはり魅力的だ。この他の選手にはない強みを生かし、リカバリーしてほしい。多くのファンがそう願っているはずだ。


この結果を受け、来年3〜4月の世界選手権の出場選手は、男子は宇野昌磨、羽生結弦、田中刑事。女子は宮原、樋口、三原と決まった。現時点でのベストメンバーと言っていいだろう。


全日本を終えた現時点での状況を総括すると、女子は才能あふれるティーネージャーたちが互いに競い合い、刺激し合いながら着実に世界と戦える力を身に着けており、非常に層が厚い。対して男子は、羽生結弦・宇野昌磨の「2トップ」は十分世界と伍する力を持っているが、後に続く選手たちがケガなどで伸び悩み(その筆頭が昨年のユース五輪覇者の山本草太)、水をあけられている状況で、やや層が薄い。2018年の平昌五輪の3枠を世界で戦える選手で占めるためにも、「第三の男」の出現が切に待たれる。


さて、今季も残る大一番は来年3〜4月の世界選手権。この結果で平昌五輪の出場枠も決まる。男女とも「例年通り」3枠を確保できるか。そして羽生結弦の3年ぶりの王者奪還はなるか、日本の強力ティーネージャートリオは女王メドベージェワの牙城を崩せるか。見どころは尽きない。


P.S. ネットでロシア選手権の結果を見たら、エフゲニア・メドベージェワがSP・FSともトップの完全優勝を決めた。これは順当で驚きはしなかったが、驚いたのはその演技内容。何とFSの後半に、3サルコウ−3トウ−3トウの3連続3回転を決めたのだ(サードジャンプが3回目の3トウになってカウントされなかったが)。女子の連続ジャンプのレベルはどんどん上がっており、「いつか3連続3回転を跳ぶ選手が出てくるんじゃないか」と思っていたのだが、こんなに早く現れるとは思わなかった。しかしそれに挑んだのが女王・メドベージェワというのはうれしいことだ。今のままでも十分女王の座は守れると思うが、そこに安住せずにさらなる高みを目指す。これは男子の羽生結弦とも通じる向上心の高さ、チャレンジングスピリットだ。男女とも進化と発展を止めないフィギュア界。これだからフィギュアスケート観戦はやめられない。

posted by デュークNave at 12:08| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月25日

宇野昌磨、「世界の地力」で全日本初制覇/宮原知子、「戻ってきた盤石」でダントツ首位発進 〜フィギュア全日本選手権:女子シングルSP・男子シングルFS〜

【 女子シングル・SP 】

「毎年暮れの百花繚乱」全日本の女子シングルが始まった。今年も例年同様、成長したシニア、伸び盛りのジュニアと、「目移り&クラクラ」の大会になってきた。


全日本ジュニア優勝の坂本花織。世界ジュニアへの出場を確定させて臨む、4度目の全日本である。冒頭の3ループでステップアウトしたが、3フリップ−3トウのコンビネーションはGOEで大きな加点を得るすばらしい出来。ステップシークエンスも躍動感のある動きで観衆を魅了した。得点は63.36、表彰台圏内の6位につけた。


今大会で初めて見た選手で目を引いたのは滝野莉子。今回が全日本デビューの14歳である。曲はストラヴィンスキー「火の鳥」(この曲を聴くと町田樹のソチ五輪での熱演を思い出す)。まず「おっ」と思わせたのが、冒頭の3フリップ−3トウのコンビネーション。回転の速いキレのあるジャンプで、まさに「目にも鮮やかに」決めた。後半の3ルッツ、2アクセルも安定した着氷で、ステップも体を大きく使ったダイナミックな動き。演技構成点が低いため上位には入れなかったが、技術レベルはすでにかなり高い。これからの成長が楽しみだ。


GPシリーズではジャンプの回転不足判定に苦しんだ本郷理華。しかし今回はそこをしっかり修正し、ジャンプはすべてGOE加点を得、本来の安定感を取り戻してきた。長い手足を生かした持ち前の大きな演技も健在。定評のあるスピンとステップも流れよくこなし、今季のベスト演技でフィニッシュ。得点は69.20、SBを大きく更新して2位につけた。


しかし、続く全日本2連覇中の女王・宮原知子はもっとすごかった。GPシリーズ2戦ではジャンプにやや乱れがあって苦しんだが、それをファイナルで取り戻した。そして今回で、「どうしてあんなに完璧な演技ができるんだろう」と観る者を感嘆させる、盤石な安定感を完全に復活させた。「ただ見とれるだけ」という感じの完璧な演技で、SBをさらに更新する76.49。ダントツの首位に立った。


全日本で2年連続表彰台、今季満を持してシニアデビューした樋口新葉。解説の荒川静香さんも指摘していたが、今季の彼女の演技を観て思うのは、緩急をうまく使っているということだ。昨季までは持ち前のスピードを生かしてビュンビュン飛ばすイメージだったが、今季はゆったりとした柔らかな動きが加わり、演技に深みが増した。後半の2つのジャンプも切れ味よく決め、ステップでも大きなGOE加点を得る。フィニッシュの瞬間、感極まった笑顔を見せた。ジャンプでエッジエラーがあったため70点には届かなかったが、68.74で3位。3年連続のメダルに向けて好発進だ。


村上佳菜子はGPシリーズ同様ジャンプのミスに泣いた。冒頭のコンビネーションジャンプはよかったが、3フリップがシングルに抜けてしまった。表現力と表情の豊かさでは本来の持ち味を見せてくれただけに、このミスが惜しかった。


最終グループ第1滑走の三原舞依。スケートアメリカで3位表彰台に上がり、鮮烈なシニアデビューを飾った今季のクライマックス・全日本で、またすばらしい演技を披露してくれた。冒頭の3ルッツ−3トウは完璧、ステップも流麗にこなす。最終盤に入れた3フリップもきれいに決め、満面の笑みでフィニッシュ。得点は65.91、上位と僅差の5位につけた。


2週間前のジュニアGPファイナルを、インフルエンザで無念の欠場となった本田真凜。まだ体調は十分には回復していなかっただろうが、今できる最高の演技はできたのではないか。フィニッシュのあとは感極まり、涙を流した。

彼女を見ていて思うのは、「本当に華のある選手だな」ということ。こういう雰囲気は作れるものではなく、生来彼女に備わっているものだ。その「生来の輝き」を十二分に生かし、表情豊かに演じ切った。ゲストの橋大輔さんのコメント「ただただ、素敵でしたね」がすべてを物語る、彼女の魅力が氷上でスパークした演技だった。67.52で4位、メダルは十分射程内だ。


そして、最終滑走は浅田真央こういう「大トリ」が回ってくるのは、やはり彼女の持つ運命か。しかしあまりよくなかった今季の流れを、ここでも回復することはできなかった。冒頭、3アクセルを狙っていたがシングルに抜ける。残る2つのジャンプはしっかりと決め、最後のステップはさすがに圧巻。フィニッシュ後、「まあ、こんなもんかな」という表情を見せた(終了後のインタビューでも「3アクセルに挑戦できる状態まで来た喜びがあった」と語った)。着実に上向いている調子を、FSでどこまで発揮できるか。今の彼女にできる最高の演技を見せてほしい。


SPの結果:宮原知子が唯一の70点台で貫禄の首位、7点差で本郷理華、以下樋口新葉、本田真凜、三原舞依、坂本花織と続く。実力と実績ある選手が順当に上位を占めた。2位本郷と6位坂本の差はわずか6点足らずの大混戦。世界選手権の3つの椅子をめぐるFSは、わずかなミスが勝敗を分ける厳しい戦いになりそうだ。


【 男子シングル・FS 】

絶対王者不在の男子。初の全日本の王座をめぐって熾烈な戦いが繰り広げられた。

全日本ジュニア2位の島田高志郎・15歳。まだあどけなさが残る中学3年生だが、演技は実にしっかりしていた。まだ4回転や3アクセルはないが、すべてのジャンプを大きなミスなく決め、勢いのあるステップで最後まで流れが途切れなかった。トータルで自身初の200点越え。大舞台で会心の演技、これは大きな自信、経験になっただろう。


SP4位の日野龍樹。このFSでは、4回転こそないものの、冒頭の3連続や3アクセルなど、GOE加点を得るジャンプを次々に決めた。ステップにも躍動感があり、この大舞台で自分のスケートを存分に見せてくれた。解説の本田武史さんがおっしゃっていたように、NHK杯と比べるとよく体が動いており、あの経験が彼には大きな財産になったようだ。「一皮むけた」とはこのことか。トータル230.31はもちろんPB、自己最高の4位に入賞した。すばらしいジャンプアップである。


全日本ジュニア優勝の友野一希。SPで6位につけ、初の最終グループでの演技。しかしそのプレッシャーをものともせず、冒頭の4サルコウを見事に決める。この後もほとんどのジャンプでGOE加点を得、軽快な音楽に乗って軽やかにステップを踏む。大きな盛り上がりの中でフィニッシュ、観衆はスタンディングオベーションで称えた。FS、そしてトータルでもSBを更新。世界ジュニアに向けて勢いのつく好演だった。


SP3位、世界選手権への切符も視界に入る田中刑事。冒頭の4サルコウはきれいに決めたが、続く4サルコウが3回転になり、3アクセルも両足着氷。しかし後半のジャンプはよどみなく決め、ダイナミックなステップでプログラムを盛り上げる。前半のミスを後半でリカバリーし、トータルでSBを更新。この時点でトップに立った。


この全日本のFSを初めて首位で迎えた無良崇人。冒頭の4トウループは何とかこらえ、続く4トウ−2トウ、得意の3アクセルもきれいに決める。いい滑り出しだった。しかし後半に入ってジャンプに乱れが出る。4サルコウが3回転に、3アクセルがダブルになり、それを取り戻すべく再び3アクセルを跳んだが、リピートで基礎点が70%に。最終盤のコンビネーションも単発になった。これらが響いてトータルで田中を下回った。後半にもうひと踏ん張りできれば、と惜しまれる。


最終滑走の宇野昌磨正直、すばらしい演技とは言い難かった。しかし、よくこらえ、しっかりと試合を作った。これが率直な感想だ。非常にハイレベルなジャンプの演技構成を、着氷は乱れてもしっかり回転し、基礎点を落とさない。ポイントのコンビネーションジャンプもしっかり決め、スピンやステップでも確実にレベルを取り、GOE加点を得る。この「世界の地力」で技術点は100点を超えた。これが「世界を狙う」宇野昌磨の強みだ。フィニッシュ後、しばらく顔を上げられなかった宇野。かかったプレッシャーは、これまで経験のないものだったに違いない。トータル280.41、2位田中に30点以上の差をつける圧勝で、全日本選手権初優勝を決めた。SP・FSとも少なからぬミスがありながらのこの大差勝ち。現時点では、羽生結弦と宇野昌磨が、日本男子ではダントツの2トップと言っていいだろう。いや、強くなったものだ。

(試合後のインタビューで、「SPのジャンプのミスが、どうしてミスをしたのかがわからないままにFSを迎えてしまった」と語った。大きな不安を抱えたままで臨んだFSだったわけだが、それでも致命的なミスはせずに試合を作る、ここにも彼の強くなった姿を見て取れる。これは世界選手権がいよいよ楽しみになってきた)


もうこれでお腹いっぱいという感じだが(今日のこの記事を書くのもかなり疲れた 苦笑)、まだ今夜、女子シングルのFSが残っている。またえらくエナジーを消費しそうだなあ。でも、すごく楽しみだ。宮原知子、樋口新葉、そして本田真凜。どんな「作品」を見せてくれるのか。

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2016年12月24日

無良崇人、ほぼ完璧の首位発進/宇野昌磨、不本意ながら僅差の2位 〜フィギュア全日本選手権・男子シングルSP〜

フィギュアスケート暮れの風物詩・全日本選手権が開幕した。しかし今年は、開幕前に激震が発生! GPファイナルで前人未到の4連覇を果たし、この全日本も4連覇中の大本命・羽生結弦が、インフルエンザを発症して欠場。男子シングルはにわかに混戦模様となった。優勝候補は、GPファイナル3位の宇野昌磨、歴戦の猛者・無良崇人、NHK杯でGPシリーズ初の表彰台に昇った田中刑事誰が勝っても初優勝である。


第4グループ第3滑走となった宇野昌磨。冒頭、コンビネーションを予定していた4フリップでステップアウト。代わりにコンビネーションにしようとした4トウループで転倒。GPファイナルに続いて、SP最大の得点源であるコンビネーションジャンプにミスが出てしまった。しかし後半の3アクセルはきれいに決め、スピンとステップも音楽とマッチした流れるような動きでプログラムを盛り上げる。得点は88.05、コンビネーションジャンプが抜けるという大きなミスがあったにしては高い得点である。これはつまり地力の向上、大きなミスがなければ世界のトップを争える基盤能力が身に着いたことを示している。「世界の地力」を身に着けた宇野昌磨、FSでその力を見せつけることができるか。


宇野の直後に滑った無良崇人。今季はGPシリーズでは今一つで、この全日本に世界選手権への切符がかかっている。冒頭の4トウループをこらえ、続く無良の代名詞・3アクセルを豪快に決める。後半の3ルッツ−3トウも流れよく決め(セカンドジャンプの3トウがすばらしい高さだった)、タンゴのタップ音だけをバックに滑るステップシークエンスもダイナミックにこなす。得点は90.34、シーズンベスト(SB)でトップに立った。GPシリーズの不振を振り払う、今季のベスト演技だった。


最終グループでは、先のNHK杯での経験を生かした2人が強く印象に残った。山本草太の欠場で急遽GPシリーズ(NHK杯)に初出場した日野龍樹。この大舞台での経験が大きな糧になったのか、全日本の最終グループでの第1滑走というプレッシャーがかかる場面で、実にのびのびした演技を見せてくれた。まず冒頭の3ルッツ−3トウを鮮やかに決め、続く3アクセルもきれいに降りる。後半の3ループも着実に決める。場内の手拍子に乗りながら流麗にステップを踏み、大きな盛り上がりの中でフィニッシュ。最後のポーズを決めると破顔一笑、渾身のガッツポーズを見せた。得点はSB更新の78.65、優勝候補3人に続く4位につけた。NHK杯の時は緊張感がありありだったが、この全日本ではしなやかで流麗な演技。これがこの人本来の演技なのだろう。

(振付師の名を見て驚いた。ナタリア・ベステミアノワ1988年カルガリー五輪アイスダンスの金メダリストである。彼女とアンドレイ・ブーキンの、大人の香り漂う妖艶な演技は絶品だった


NHK杯でGPシリーズ初メダルと、大きく飛躍した田中刑事。演技冒頭の4サルコウはステップアウトしたが、続く3アクセルはきれいに着氷。後半のコンビネーション・3フリップ−3トウも流れの中で決め、ステップシークエンスも体全体が実にダイナミックな動きで、観衆から自然に手拍子が沸く。盛り上がり最高潮の中フィニッシュ、得点は85.68のSB。トップ無良に5点差未満の射程圏内につけた。


羽生の欠場で盛り上がりに欠けるかと思われた男子シングルだったが、上位4選手がハイレベルな演技を見せてくれたおかげで予想以上にエキサイティングになってきた。世界選手権への出場権のかかる今夜のFSでも、SP同様のすばらしい演技の競演を観たいものだ。

posted by デュークNave at 10:22| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月18日

久方ぶりの映画館での鑑賞:最後にようやく「ホッ」

昨日、何年ぶりかで映画館で映画を観た。場所はシネマサンシャイン池袋、観た映画は「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」、主演は天下の名女優メリル・ストリープ。数か月前、彼女が主演したミュージカル「マンマ・ミーア!」を遅ればせながらDVDを購入して観て、あまりの楽しさに何度も繰り返して観てしまった。だから「マダム・フローレンス!」の紹介記事を新聞で読んだ時、これは観に行こうと思っていた。加えて私が購読している週刊英字新聞”Mainichi Weekly”のトップにこの映画に関するストリープのインタビュー記事が載り、おまけにこの時の号に「マンマ・ミーア!」でストリープの娘役を演じた女優の記事まで掲載され、ますます背中を押された。池袋だから早い時間に観ないと混むだろうと、一番早い9:05に合わせて部屋を出た。休日の朝早くに出かけることなどめったにない私だが、冬晴れの心地よい陽光の中、私は勇躍映画館に向かった。

ところが、館内はあきれるほどガラガラだった。地下2階の200席ほどのコンパクトなスペースなのだが、座っているのは10名足らず。「一番早い9:05」と書いたが、実はこの日はこの時間だけの上映で、22日には打ち切られるという。1週間前に調べた時は4回ほどあった上演回数が、もうここまで減っている。「あれ、あまり評判はよくないのかな」といぶかりながら、私は席に着いた。


あらすじはこうだ。時は1944年、音楽家たちのパトロンをしていた資産家のマダム・フローレンスが、趣味が高じて自ら歌を歌い始める。ところが、これがとんでもなくヘタ。ヒュー・グラント演じる夫が献身的に彼女を支援し、伴奏を務める若手ピアニストも懸命に彼女のド外れた歌に合わせるが、どんなにレッスンを重ねてもどうにもならない。しかし富豪という社会的地位と夫のフォローにより、彼女はコンサートで高い評価を受け続け、ついにはカーネギー・ホールでコンサートを開くことになる。軍人たちを大勢招いたコンサートは、初めはこの夫婦と何のつながりもない彼らの「素直な嘲笑」を浴びるが、心の中で酷評しながらも彼女の歌を聴き続けてきた女性が「こんなに懸命に歌っているのに、笑うなんて失礼よ!」と聴衆を一喝し、その後は拍手喝采の中でコンサートは終わる。だが彼女の歌を「素直に酷評」した新聞記事を目にした彼女はショックで倒れ、そのまま息を引き取る。しかし彼女の懸命な歌声は戦時中の人々の心に響き、レコードはベストセラーとなった。


・・・と、こう書くと最後はハッピーエンドの感動の物語のようだが、私にはどうにも解せなかった。とにかく、マダム・フローレンスの歌がヘタすぎるのだ。どんなに懸命に歌っていようと、あんな突拍子もなく外れたキンキン声を聞かされるのはたまらない。正直、観ていて不快になった。

それ以上に観ていて思ったのが、本当は歌がとても上手なメリル・ストリープが、ドへたくそに歌っているのが気の毒でしょうがなかった。そういう役だから仕方がないのだが、それを割り引いて見ても「お気の毒に」という思いを消せなかった。だから臨終の際に夢で歌っているシーンが現れ、持ち前の美声そのままに高らかに歌い上げる彼女を見て、ようやくホッとすることができた。ずっと味あわされていたフラストレーションを、最後の最後でやっと解消できた、そんな感じだった。この作品の評判があまりよくないらしいのは、私と同じようなフラストレーションを味わった人がたくさんいたからではないだろうか。これも日本人の生真面目さの表れなのかもしれない(本国のアメリカではけっこうヒットしたのかもしれないな)。


作品はイマイチだったが、久々の映画館での鑑賞そのものはよかった。やはりたまにはこういう臨場感を味わいながら映画を観るのもいい。次は「聖の青春」でも観に行こうかな。

posted by デュークNave at 05:52| Comment(0) | 映画・TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月17日

「言わせろ!ナンバー」に我がコメントがトップ掲載!(ただの自慢)

スポーツ専門誌・Numberの最新号(917・918合併号)の読者投稿コーナー「言わせろ!ナンバー」に、私のコメントがトップ掲載された。しかもこれまで掲載された我がコメントの中でも最大のスペースを取っている。あまりうれしかったので、ここに掲載させていただく。(ごめんね〜、例によってただの自慢です)


お題:ハリルジャパンの2016年を採点する。(選択肢:優・良・可・不可)

採点:可「ホームのUAE戦を落とした時はとんでもないことになったと思ったし、イラク戦を後半ロスタイムで辛うじて勝つのを見て「これではアカン」と思っていた。流れが変わったのはアウェーの豪州戦で引き分けたところからで、サウジアラビア戦で「今パフォーマンスがいい選手」に大きく舵を切り、勝ち切ったのは評価できる。」


ちなみにこの元原稿はこれだ。


《スポーツは結果がすべて。だから評価も結果を見て決める。ホームのUAE戦を落とした時はとんでもないことになったと思ったし、これもホームのイラク戦を後半ロスタイムで辛うじて勝つのを見て「これではアカン」と思っていた。

流れが変わったのはアウェーの豪州戦で引き分けたところからで、サウジ戦でハリル監督が「今パフォーマンスがいい選手」に大きく舵を切り、勝ち切ったのは評価できる。ただ得失点差がモノを言いそうな今後の熾烈な戦いを考えると、1点取られたのはかなり痛かった。後半戦はアウェーでの中東勢との戦いが続くことを考えると、高い評価はできない。

これらの結果を総合して考えると、まあぎりぎり及第点かな、と思う。》



長いのでかなりカットされているが、それでも今までと比べると掲載スペースは格段に大きい。我ながらこのコメントはよくポイントが突けているなと自賛していたんだが、「いいね!」がゼロだったので、まさか本誌に掲載されるとは思わなかった。


ただ実は、3か月ほど前にも同じことがあったのだ。9月9日号「特別増刊号・リオ五輪総力特集」に掲載された「言わせろ!ナンバー」での「名横綱・千代の富士、思い出に残るライバルは?」のお題に投稿した私のコメントが、ここでもトップに掲載されたのだが、この時も「いいね!」はゼロだった。どうやら本誌に掲載されるかどうかは、「いいね!」の数の多さよりもコメントそのものの内容によるようだ。

ちなみにこの時の掲載コメントはこれだ。


北の湖:速攻相撲を身につけた千代の富士が番付を駆け上がっていたころ、立ちはだかったのが大横綱・北の湖だった。初優勝時の優勝決定戦も、横綱昇進を決めた一番も、ともに相手は北の湖。ふたりの「パワー対スピードの勝負」は、見どころ満載だった。》


思い入れたっぷりに書いたので、掲載されたのはうれしかった。(ごめんね、またまたただの自慢です〜)


今回もまたNumber編集部の策略に乗って本誌を買ってしまった(コメントが本誌に掲載される旨のメールが編集部から届くのだ)。でも今回は「有馬記念特集」。目次を見ただけで読みたくなったので、必ずしも策略に引っかかったわけじゃない。さて、有馬記念名勝負ヒストリーを堪能致すとするか。

posted by デュークNave at 07:15| Comment(0) | スポーツ-全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする