2025年11月03日

今度は「横浜パターン」での決着/山本由伸サプライズ連投/ドラマ満載の延長11回の激闘:WS第7戦

こんなすさまじい試合展開はめったに見られるものではない。しかもそれがワールドシリーズ最終戦という、これ以上ない最高峰の舞台で繰り広げられるとは…! 観る側にとってはファン冥利に尽きる、両軍が死力を尽くした激闘だった。

先発投手は、ブルージェイズは通算221勝、サイ・ヤング賞3度受賞のM・シャーザー。対するドジャースは、初の二刀流でのWS制覇に挑む、MVP3度受賞の大谷翔平まさに震えが来るようなすごい顔合わせだ。

大谷は第4戦以来、中3日での登板となる。レギュラーシーズンならありえないローテーションだが、第6戦で最終戦で先発予定だったはずのグラスノーが9回にリリーフ登板した時、大谷の第7戦での先発も大いにありうると思った(ルール上、リリーフでは指名打者はできない)。これが短期決戦の最終戦のスペシャルローテだ。

【 投手・大谷は痛恨の一発を浴びたが 】

立ち上がりは両投手とも先頭打者(大谷・スプリンガー)にヒットを許すが、後続を抑える。2回、大谷は2死満塁のピンチを招くが、159キロのフォーシームで空振り三振に討ち取る。

しかし3回裏、痛恨の一撃を浴びる。1死1・3塁から4番ビシェットに初球の甘く入ったスライダーを捕らえられ、先制の3ラン。マウンド上で両手で膝をつき、うなだれる大谷。ここで無念の降板となった。

一発での3失点はあまりに痛い。正直「これは今日はやられたかな…」と観念しかかった。


【 1点ずつしぶとく返す、粘りのドジャース打線 】

だが、この日のドジャース打線はしぶとい。4回表、1死満塁からT・ヘルナンデスのセンターへの犠牲フライで1点を返す。さらに6回表、3番手バシットを攻め、1死1・3塁でエドマンのセンターへの犠牲フライで1点差に詰め寄る。やや浅いフライだったが、3走の俊足ベッツがホームを陥れた。ともに3走を犠牲フライで返す、粘り強い打撃が光った。

【 終盤、「奇跡の一発攻勢」で同点に 】

しかし6回裏、4回から登板していたグラスノーが、無死2塁からヒメネスに右中間を破るタイムリー2塁打を喫する。後続は抑えたものの、この突き放す追加点はかなり重く感じられた。

8回表、マウンドには、このシリーズで快投を続けているルーキー・イェサベージ。ドジャース打線にとっては高く厚い壁になっていたが、1死無走者からマンシーが、高めのスプリットをライトスタンドに運ぶ。これで再び1点差。難敵・イェサベージから点をもぎ取ったのは大きかった。

そして大詰めの9回表、1死無走者で打席に入るのは9番ロハス。マウンドには8回から登板しているクローザーのホフマン。

「もしロハスが凡退したら、一発を避けてまた大谷は申告敬遠されるんじゃないか」

こんなことを思い描いていたら、奇跡の一打が生まれた。3−2からの7球目、スライダーをうまく払ったロハスの打球は、レフトスタンドに飛び込む起死回生の同点ホームラン! ロハスにとって今年のWS初安打が、ドジャースの息を吹き返させる千金の一撃となった。


【 山本由伸のサプライズ救援・好守でサヨナラのピンチを凌ぐ 】

しかしドラマ満載のこの試合、簡単には終わらない。その裏、8回からリリーフしていたスネルが1死1・2塁のサヨナラのピンチを招いてしまう。ここでロバーツ監督は、前日6回・96球を投げている山本由伸を火消しに起用する。

「ローテーションや球数を重視するMLBで、こんな使い方するか?」と我が目を疑ったが、この最終決戦のあとがない土壇場、「もっとも信頼できるピッチャーをつぎ込むしかない」という決断だったのだろう。

シビれすぎるこの場面。しかもカークに死球を与え、1死満塁とピンチを広げてしまう。自ら招いた絶体絶命の窮地。普通なら重圧に負けてしまうところだが…。


バーショが放ったセカンドゴロを、前進守備のロハスが好捕して本塁フォースアウト。続くこの日3安打のクレメントが、初球のカーブを捕らえて左中間に大飛球を放つ。代わったばかりのセンター・パヘスが、K・ヘルナンデスと交錯しながらこれを好捕。連続のファインプレーで、ドジャースはサヨナラのピンチを凌いだ。

【 そしてまたもや奇跡の一発・裏のピンチも山本がしぶとく切り抜ける 】

そして迎えた延長11回表。マウンドにはこの回から登板の7番手・ビーバー。大谷がセカンドゴロに倒れて2死無走者。

「まだまだ延長戦は続くのか。山本にあまり長く投げさせたくないな…」

こう思っていたら、またもや奇跡の一発が飛び出す。ウィル・スミスが、2−0からのスライダーをレフトスタンドに勝ち越しホームラン! 先行されては追いつくの展開だったこの試合で、ドジャースが初めてリードを奪った。


しかし波乱万丈のこの試合、勝利の女神様は簡単には勝たせてくれない。この裏、先頭のゲレーロJrがインハイのフォーシームを捕らえてレフト線にツーベースを放つ。ブルージェイズが勝てばMVP間違いなしのチームリーダーが、窮地でさすがの一打を見せた。

2塁ベース上で両手を挙げ、味方を鼓舞するゲレーロJr。これを見て私は、2023年のWBCの準決勝・メキシコ戦で、1点リードされた9回裏、先頭の大谷が2塁打を放ち、塁上で両手を振り上げて、ベンチに向かって「あとに続け!」とばかりに叫んでいたシーンを思い出した(このあと村上の逆転サヨナラツーベースで、サムライジャパンは決勝進出を決めた)。まさに敵ながらあっぱれ、MLB屈指の名選手だ。

カイナーファレファの送りバントが決まって1死3塁。ここでドジャース内野陣は前進守備のバックホーム態勢。続くバージャーはストレートの四球で1死1・3塁。内野陣はゲッツー狙いの中間守備に戻す。打席には強打者のカークが入る。同点か、抑えて連覇か。

0−2と追い込んだ3球目、外角のスプリットを捕らえたカークのバットが折れる。打球は2塁ベース寄りにショート・ベッツの前に飛ぶ。これをつかんだベッツは機敏に2塁ベースを踏み、ファースト・フリーマンに送球。ドラマ満載だったこの大激戦は、俊足好守のベッツの華麗なるダブルプレーで幕を閉じた。ドジャース、球団史上初のWS連覇達成である。

WS第7戦・ドジャース優勝の瞬間.jpg

第3戦の大延長戦は18回裏のフリーマンのサヨナラホーマーで決着する「箕島パターン」だった。この試合は大延長戦にはならなかったが、先攻がホームランで勝ち越して勝負を決する「横浜パターン」になった。


【 気迫の連投・山本の、敵地でも動じない平静さ 】

MVPは、2度の先発とこの日のリリーフで3勝を挙げた山本。これは文句なしだろう。

インタビューで「無心で、野球少年に戻ったような気持ちでした」と語った山本。体は疲れていたはずだが、精神的には最高の状態でマウンドに上がったということだろう。

振り返れば、このシリーズで山本が挙げた3勝はすべてアウェーだ。初戦の敗戦を受けての第2戦の先発完投、2勝3敗の「カド番」に追い込まれての第6戦の先発勝利、そしてこの最終戦のリリーフ。WSは全試合・全シーンが修羅場だが、特に山本が相対したこの3試合は、すべてが絶対に負けられない窮地だった。

それをすべて跳ね返し、チーム初のWS連覇に導いた大活躍。この精神力、敵地の大ブーイングにも動じない平静さ。試合後に大谷が「山本が世界一のピッチャーであることがみんなわかったと思う」と最大級の賛辞を贈っていたが、その最高のパフォーマンスを支えているのは、この「不動心」だろう。スポーツは肉体のみならず精神でやるものだということが、山本を見ているとよくわかる。

ロサンゼルス・ドジャース、初のワールドシリーズ連覇。山本由伸、日本人選手では松井秀喜(ヤンキース)以来2人目のMVP。今年のMLBポストシーズンマッチは、最初から最後までドラマティック、メモリアルシーン満載だった。
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2025年11月02日

山本由伸がまたも好投、6回5安打1失点の粘りの投球/ドジャース敵地で逆王手、勝負は最終決戦へ:WS第6戦

人間は窮地に追い込まれた時にその真価が問われるという。昨日の山本由伸はまさにそんな状況だった。

ホームでまさかの連敗を喫し、王手をかけられて敵地に臨んだワールドシリーズ(WS)第6戦。1992・1993年の連覇以来のWS制覇まであと1勝と迫ったブルージェイズ、ロジャース・センタースタジアムにはカナダ国民の切なる願いが充満していた。そんな針のむしろのような空気の中、山本はWS2度目の先発マウンドに立った。

前回(第2戦)と同じアウェーでの登板となったが、今回山本は、特に立ち上がりに気をつけていたという。前々回は初球をいきなり先頭打者ホームラン、前回は無死1・3塁のピンチを招いたことが念頭にあったのだろう。初回、エラーで出塁を許したが、ゲレーロJrを併殺打に討ち取り、立ち上がりを無難に切り抜けた。

対するブルージェイズの先発ガーズマンは、初回を三者三振の完璧な立ち上がり。2回も2三振とドジャース打線を封じ込む。低めにコントロールされたスプリットに、ドジャースの強打者たちのバットは次々と空を切った。

しかし3回、試合が動く。1死からエドマンがライト線に2塁打を放つ。続くロハスは三振に倒れたが、大谷が「例によって」申告敬遠で1・2塁。ここでこの日2番に入ったスミスが、スプリットを捕らえてレフト線にタイムリーツーベース。ここまで5試合中4試合で先取点を挙げていたドジャースが、この試合でも先制した。

さらに大きかったのがこの後。フリーマンが四球で歩いて2死満塁、バッターボックスにはこの日4番のベッツが入る。俊足好打のベッツだが、このシリーズでは打棒がやや湿り気味。しかしそれだけに、このチャンスで中心打者のベッツに一打が出れば、チームは大きく盛り上がる。ベッツの「技ありプレー」が大好きな私は、固唾を飲んで見つめていた。

すると1−2からの5球目、フォーシームをはっしと捕らえたベッツの打球は、三遊間を鮮やかに破る。2者が生還して3−0。ロバーツ監督はベンチで大きく手を挙げた。これは2点という点数以上に重みのある追加点だった。

だが重要なのはこの裏。「得点した後に相手の反撃をしっかり抑える」のが野球での勝利の鉄則だ。しかし山本は先頭のバーガーに2塁打を許し、三進した2死後にスプリンガーにタイムリーを浴びる。

先制したすぐ後の失点。第2戦とは違う展開に、「これはマズいな…」と思った。この日の山本は、スプリットを中心に、フォーシーム・カーブ・シンカー・カットボール・スライダーをバランスよく配し、低目を丁寧に突いていた(「調子は前回の登板よりよかった」と本人も試合後にコメントしている)。

しかし前回と違ったのは、第2戦ではカーブを空振りすることが多かったブルージェイズ打線が、この試合ではバットに当てていたことだ。決め球のスプリットやカーブをファウルで粘られることが多く、第2戦を105球でスイスイ完投した山本の球数が、この試合ではじわじわと増えていった。「この球数では、この試合は完投は無理っぽいな…」ブルージェイズ打線のしぶとさを、私は「敵ながらあっぱれ」の思いで見つめていた。

しぶといブルージェイズ打線。だがそれに負けない粘り強さ・大崩れしない安定感が山本の真骨頂だ。ヒットは打たれるが散発で、要所をきっちりと抑える。6回裏、2死からゲレーロJrにほぼ左手一本で巧妙な2塁打をレフト線に打たれ、ビシェットを歩かせて1・2塁のピンチを招くが、バーショをスプリットで空振り三振に討ち取り、2点のリードを守り抜いた。前回ほどの快投ではなかったが、先発投手の役目を果たし、しっかりと試合を作ったのは高く評価できる。これぞ「エースの貫禄」だ。

この後両軍ともリリーフ陣が得点を許さず、迎えた8回裏、ドジャースは佐々木朗希がマウンドへ。「2点リードで回のアタマからの登板」はポストシーズンマッチ3度目だが、過去2回は9回、今回は2イニングを残している。プレッシャーはこれまで以上に大きい場面だ。ヒットと四球で1死1・2塁のピンチを招いたが後続を抑え、2点リードを保ったまま最終回を迎える。

9回裏、先頭のカークを0−2と追い込んだが、スプリットが抜けて死球を与えてしまう。これはよくないランナーの出し方だった。佐々木の表情にやや悲壮感が漂っているのが気になった。続くバーガーの打球は左中間を破ったが、ボールがフェンスの下に挟まってしまう。センターのディーンがボールデッドを主張するが、その間に2塁走者に続きバッターランナーまでホームに戻ってくる。しかし主審の判定はボールデッドでエンタイトルツーベース、無死2・3塁での再開となった。これはドジャースにとっては不幸中の幸いだった。

ここでロバーツ監督は投手をグラスノーに替える。勝てば最終戦の先発と思われていたグラスノーを、ここで持ってきた。負ければ終わりの、まさに「明日なき戦い」だ。

一打同点のシビれる場面だったが、クレメントが初球をファーストポップフライ。NHK解説の田口壮さんがおっしゃっていたが、この緊迫した場面で、初球の難しい球に簡単に手を出したのは、ブルージェイズにはもったいなかった。

しかしなおも1死2・3塁。ここでヒメネスがレフトへライナー。ヒット性の当たりだったので、2塁走者のバーガーが2・3塁間の真ん中まで飛び出して打球を見ている。これを見たK・ヘルナンデスが、捕球するやすばやく2塁にランニングスロー。2塁ベースについたロハスが、難しいハーフバウンドの送球をバランスを崩しながら好捕。一瞬にしてダブルプレー、ゲームセットとなった。


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ベンチで喜び、抱き合う山本由伸と佐々木朗希。佐々木にとってはNLCS第1戦と同様のつらいリリーフ失敗となったが、これもいい経験だ。まずは勝ったからいい。これで第7戦・最終戦へともつれ込むことになり、リベンジのチャンスが残されたのだ。

こうして最終決戦を迎える今年のWS。ドジャースの先発は、中3日で大谷翔平。リリーフでは指名打者として出場できないルールで、恐らくはあまり長くは投げず、スターターのスネルやこの日急遽登板したグラスノーも投入する総力戦になるだろう。双方が死力を尽くすであろうこのファイナルマッチ、「ドジャースWS連覇!」の瞬間をひたすら祈りながら、しかと刮目しよう!
posted by デュークNave at 08:46| Comment(0) | スポーツ-野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年11月01日

のたり気まま川柳 Vol. 21「MLBポストシーズンマッチの熱戦・モンスター大谷」

のたり気まま川柳、今回のメインテーマは、いよいよクライマックスを迎えようとしているMLBのポストシーズンマッチだ。1つだけ政治ネタがあるが、これは「しばしお別れのメッセージ」。

PSMの熱戦・モンスター大谷.jpg

1句目:「麻生早苗」兼「安倍早苗」が首相になり、政治はますます見たくなくなった。トランプが来日し、2人が握手してのツーショット写真なんぞ、目が潰れる思いだった。あの高慢ちき女が総理でいる間は、めったなことでは政治ネタは作らないだろう(楽しくないから)

2句目以降は、MLBのポストシーズンマッチ&大谷翔平ネタ(こっちの方が作っていてはるかに楽しい)

2句目から4句目は、ほぼ大谷のワンマンショーとなったNLCS第4戦がネタ。投げては先発して6回無失点、打っては3打数3安打3ホームラン3打点。特に2本目の143m弾は、不動の主軸・フリーマンやブルペン投手も頭を抱えて呆然とする、超特大アーチだった。まさにモンスター!

6回あたりからは肩で息をして投げている感じだったが、にもかかわらず、降板したあとの7回裏に3本目のアーチを中越えに叩き込む。これまでもそうだったが、本当にこの人のやることは我々の想像を絶する。

5句目と6句目はワールドシリーズ(WS)第3戦、史上に残る延長18回の死闘がネタ。「延長18回」というフレーズから連想するのは何といっても私の大好きな甲子園の高校野球だが、高校野球にはかつて延長戦は18回まで、今は15回までというリミットがある。そして数年前からは、延長戦に入ると無死1・2塁から始めるタイブレーク制が、春のセンバツ・夏の選手権ともに導入された。

しかしWSには、延長戦の長さにリミットもなければタイブレークもない。9回までとまったく同じ形で延々と戦いが続くのだ。私はこの大延長戦を「先攻が延長17回表に勝ち越して勝った『横浜パターン』か、後攻が延長18回裏にサヨナラ勝ちした『箕島パターン』のどちらで決着するのか」と思いながら刮目していた。

そしてこのWS史上に残る大熱戦は、奇しくも「箕島パターン」と同じ18回裏、フリーマンのバックスクリーン越えの一発によって決着がついた。エンディングまで高校野球とリンクする、劇的な幕切れだった。

しかしその後の2試合でドジャースは連敗を喫し、王手をかけられた状況で今日、敵地での第6戦を迎える。先発はポストシーズンマッチで連続完投勝利を挙げた、今やエースと呼んでいい山本由伸だ。「快投再び」で自軍の窮地を救うことができるか。この2試合打棒が沈黙している大谷の「爆発再び」は成るか。そしてポストシーズンマッチに舞い降りた守護神・佐々木朗希の出番は、「火消再び」のシーンは見られるか。今日は他のすべてを遮断して、この第6戦の観戦に全精力を集中しよう!

(我が希望:第6戦で山本が再び快投を見せて3勝3敗のタイに持ち込み、最終戦でグラスノー、スネル、大谷、カーショー、佐々木ら投手陣を総動員して粘り勝ちし、ドジャースがブルージェイズをうっちゃり、WS連覇を果たす。"I hope my scenario comes true!")
posted by デュークNave at 05:41| Comment(0) | のたり気まま川柳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月29日

高校野球のような大延長戦/「横浜パターン」か「箕島パターン」かと刮目していたら:WS第3戦

延長18回。

まるで甲子園の高校野球、史上に残る大延長戦を思い起させるような、いつ果てるとも知れぬ総力戦の死闘だった。

1勝1敗のタイで迎えたMLBワールドシリーズ(WS)第3戦。ホームでの3連戦となるドジャースにとっては、願わくば3タテで一気にWS連覇を決めたいところ。そのためにも落とせないこの一戦、先発投手はグラスノー。ブリュワーズとのNLCS同様、第3戦のスターターに起用された。

まず試合開始前、いきなり「うお〜!」とうならされた。始球式を務めたのは、伝説のトルネード投法で多くの「ノモマニア」を生み、日米通算201勝、野球殿堂入りも果たした、日本人メジャーリーガーのパイオニア・野茂英雄さん。ちょうど30年前の1995年、彼がMLB挑戦を表明し、海を渡ってドジャースに入団し、快速球と鋭いフォークボールで三振の山を築き、日本のみならず全米を熱狂させたのは今でも強烈に記憶に残っている。私は「ヒデオ・ノモ」の大活躍のおかげでMLBのすばらしさ・魅力を知ったのだ。我が大恩人・野茂英雄の偉業は永久に不滅です!

(彼が著した「僕のトルネード戦記」「ドジャー・ブルーの風」は、彼の活躍の足跡とMLBのすばらしさを知ることができる最高のバイブルだ)


試合は点の取り合い・シーソーゲームになった。2回と3回にT・フェルナンデスと大谷翔平のソロホームランでドジャースがリードすると、4回にブルージェイズがカークの逆転3ランと犠牲フライで試合をひっくり返す。5回、ドジャースは大谷のタイムリーツーベースとフリーマンの同点打で試合を振り出しに戻す。7回、ブルージェイズがゲレーロJrとビシェットの短長打で勝ち越すと、その裏、大谷が初球を捕らえて左中間に同点アーチ。これで大谷は4打数4安打、ホームラン2本・二塁打2本・打点3。NLCS第4戦での3ホーマーの再来のような大爆発である。

7回終了で5−5の同点。しかし試合はここから一転、両チームのきわどいせめぎ合いになった。8回表、1死1・2塁で佐々木朗希がWS初登板、ピンチをしのぐ。続けて登板した9回1死1塁、バーショの放った痛烈なライナーを一塁手フリーマンが大きくはじいたが、二塁手エドマンが機敏にカバーし、3塁を狙った1塁走者を好送球で刺した。4回、逆転につながるエラーをしてしまったエドマンの、失地回復のスーパープレーだった。

9回1死無走者、大谷の第5打席。ドジャースファンの誰もが「劇的サヨナラホーマー」を期待していただろうが、ブルージェイズベンチは申告敬遠を選択。しかしこれはやむを得ない、また当然の決断だろう。

ここで大谷は果敢に盗塁を試みる。タイミングはセーフだったが、スライディング後に足がベースから離れてタッチアウト。ロバーツ監督はチャレンジしたが判定は覆らなかった。試合はこのまま延長戦にもつれ込む。

12回表、2死満塁のピンチ。ここで登場したのが、今季限りでの引退を表明している、通算221勝のレジェンド・カーショー。ボテボテの2ゴロに打ち取り、キャリア5試合目のリリーフを切り抜けた。

このあとも延長戦が、いつ果てるともなく続く。大谷は11回2死無走者、13回2死3塁、15回1死無走者で打席が回ったが、すべて申告敬遠。17回2死1塁では敬遠ではなかったが、ストレートの四球。4打数4安打5四球、1試合9出塁は、WSのみならずMLBの新記録だった。

私はこの大延長戦を眺めながら(正確には、スマホのテキスト速報を見つめながら)思っていた。

「こんな大延長戦、甲子園の高校野球みたいだな。思い出すのは、箕島ー星稜戦の延長18回と、横浜ーPL学園戦の延長17回だ。前者は18回裏に箕島がサヨナラ勝ち、後者は17回表に横浜が決勝の2点を挙げた。さてこの試合は、『横浜パターン=先攻の勝ち越し』と『箕島パターン=後攻のサヨナラ勝ち』のどちらで決着するんだ?」

私は言うまでもなく、箕島パターンでの劇的な決着を願っていたが…。

延長18回裏。この回のドジャースの攻撃の先頭バッターは、3番フリーマン。ブルペンでは、19回の登板に向けて、第2戦で完投勝利した山本由伸が投球練習をしている。リリーフ陣を使いつくした総力戦、ついにスターターまで送り込まねばならなくなってしまうのか?

しかしその懸念を、ドジャース不動の主軸の一撃が吹き飛ばす。3−2からの6球目、ブルージェイズ9人目・リトルのシンカーをフリーマンのバットが一閃。バックスクリーンに向けて高々と上がった飛球は、フェンスをわずかに越えてスタンドに飛び込んだ。

去年のWS第1戦、延長10回裏の逆転サヨナラ満塁ホームランを思い起こさせる、またもやフリーマンの劇的アーチ。監督・コーチも選手も観衆も、狂喜乱舞の大歓声。ブルペンから山本が満面の笑顔で引き上げてきて、大谷と佐々木が大きく手を広げてこれを迎え、3人でハグ。これは感動的なシーンだった。


試合時間6時間39分、WS史上2番目の長さ。MLB史上に残る大延長戦は、奇しくも18回裏サヨナラまで同じ形で、「箕島パターン」で決着した。この凄まじい試合をくまなく語るには、時間が足りなすぎる。取り急ぎ、速報ダイジェストとしてここに載せる。

さあ、今日はまた大谷の先発だ。楽しみはまだまだ続く…!
posted by デュークNave at 07:27| Comment(0) | スポーツ-野球 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月28日

山本由伸、ポストシーズンマッチでは24年ぶりの2試合連続完投勝利/冴えわたる「打たせて取る」投球術:WS第2戦

MLBワールドシリーズ(WS)第2戦。初戦の大敗を受け、敵地とはいえ連敗は絶対にしたくないドジャースは、NLCSと同様、第2戦の先発投手に山本由伸を起用した。初戦で自慢の強力打線を爆発させたブルージェイズの勢いを止められるか、その任務は極めて重大だった。

初回、ドジャースは2死からフリーマンとスミスの長短打で先制する。しかしその裏、山本は1・2番に長短打を浴び、無死1・3塁のピンチを迎える。相対するはブルージェイズの強力クリーンアップ。試合の趨勢を動かすかもしれない修羅場が、いきなりやってきた。

しかし、山本は冷静だった。3番ゲレーロJrをカーブで空振り三振。4番カークはスプリットで一直。5番バーショはフルカウントからカーブで見逃し三振。後に振り返って要所で威力を発揮したカーブが、この立ち上がりの大ピンチを防いでくれた。

だが3回裏、死球とゲレーロJrのレフトフェンス直撃のヒットで1死1・3塁のピンチを招き、カークの中犠飛で同点に追いつかれる。山本は試合後「死球からピンチを招いたのはよくなかった」と反省の言を述べたが、ここからが圧巻だった。

4回以降、ヒットはおろか、四死球も与えないパーフェクトピッチング。とりわけ注目すべきは、球数の少なさだ。4回6球、5回8球、6回11球、7回8球、8回14球、そして9回が12球(1イニング平均10球未満)。いかに早いカウントで討ち取っているかがわかる。また18のアウトのうち三振は4つだけで、ゴロが9つ、フライが5つ。ゴロが多いのは低目にコントロールされている証で、長打が出にくい、観ていて安心感がある投球といえる。

完投を許さないためには球数を多く投げさせるのが攻撃側の作戦だが、山本の場合、追い込まれるとスプリットやカーブなどの「三振を取れる決め球」があるので、打者はどうしても2ストライクを取られる前に打ちにいくことになる。しかしカウントを整えるまでの球にも甘いボールはほとんどないため、凡打の山を築くことになってしまうのだ。

特に見ていて目を見張ったのが、カーブの威力だ。山本の持ち球の球速は、フォーシームが155キロ前後、シンカーが150キロ前半、スプリットとカッターが140キロ後半、スライダーが140キロ前半と速球系が多いが(変化球が140〜150キロ台というのもすさまじい)、カーブだけが120キロ後半と緩めで、これがストライクゾーンに切れよく決まるので、ブルージェイズ打線は完全に翻弄されていた。まさに「打たせて取る」究極のハイテク投法、かつ完投を可能にする省エネ投法なのだ。

(実はこれはブリュワーズとのNLCS第2戦で披露した快投も同じで、5回以降は投球数64(1イニング平均13球未満)、無安打1四球、三振3、ゴロ8、フライ4。やはりゴロの多い、安定した省エネ投球をしている。そして速球系の変化球と緩めのカーブでブリュワーズ打線を手玉に取っていたのも同じだ)

こうして山本がブルージェイズ打線を沈黙させている間に、ドジャース打線が火を噴く。2回から6回まで15人連続で凡退し、先発ガウスマンに完璧に抑えられていたのだが、7回表、4番スミスと6番マンシーがソロホームランを放ち、貴重な勝ち越し点を挙げる。さらに8回には、パヘスと大谷の連打のあとベッツが四球を選んで塁を埋め、暴投と内野ゴロで2点を追加。勝利を盤石にした。

山本、2試合連続完投勝利。ポストシーズンマッチでの連続完投勝利は、2001年、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのカート・シリング以来24年ぶりの快挙だ。

山本由伸、PSM24年ぶりの連続完投勝利!.jpg

この年のダイヤモンドバックスは、シリングとランディ・ジョンソンの「ダブルエース」の大活躍でワールドシリーズを初制覇した。今季のドジャースも、スネル・山本・グラスノー・大谷の「先発4本柱」の安定した投球で、ポストシーズンマッチを勝ち上ってきている。特に初戦で、安定感抜群だったスネルがコントロールに苦しんで打たれ大敗を喫した後に、山本がピシャリと抑えた功績は絶大だ。これで1勝1敗のタイに持ち込んで本拠地での3連戦に臨めるが、流れはドジャースに傾きつつあると言っていいのではないか。

第3戦はグラスノー、第4戦は大谷の先発と発表されている。そしておそらく第5戦は、スネルがリベンジを期して中4日で先発してくるだろう。ドジャー・スタジアムでの今日からの3連戦、まばたきするヒマも惜しんで刮目しよう!
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