2017年11月12日

ボロノフ、30歳の初戴冠・女王メドベージェワとロシア勢のダブル優勝/宮原知子は「まずまず」の復活 〜フィギュアGPシリーズ第4戦・NHK杯〜

大会直前、優勝候補筆頭の羽生結弦が、練習中にジャンプで転倒して右足を負傷、欠場するという衝撃のニュースが飛び込んできた。これでGPファイナルへの出場も不可能になり、ファイナル5連覇も潰えた。大事な五輪シーズンに世界No.1選手にこんなアクシデントが起こるとは、「スケートの世界には神も仏もないのか」と毒づきたくなる。暮れの全日本選手権には出場できる見込みとのことでホッとしたが、とにかく早くケガを回復してほしい。

【 女子 】

昨年の全日本以来、11か月ぶりの試合への復帰となった宮原知子。「体は100%回復したが、演技はまだ70%の出来」という不安を抱えたまま、ぶっつけ本番でGPシリーズの初戦を迎えた。確かにSP・FSともジャンプにらしからぬミスが出たが(特にFS後半の3サルコウは、彼女にはありえないような体勢の乱れ方だった)、70%にしてはかなりまとまった演技だったと思う。練習の虫で鳴る彼女が、長いブランクの後ようやく試合に復帰できた喜びが伝わってくるような、観る者に訴える演技だった。総合5位、今の時点ではこんなものだろう。次戦はスケートアメリカ、そして目指すは暮れの全日本選手権。あと1か月余り、あの抜群の安定感を取り戻すことができるか、刮目しよう。

本郷理華は初戦のスケートカナダで取られた回転不足をかなり改善し、持ち前のダイナミックな演技を見せてくれた。ジャンプにまだいくつか乱れがあり、総合は7位に後退したが、演技の内容は上向いていると思う。暮れの大一番までにどこまで仕上げてくるか。

シニアデビューとなった白岩優奈。そのキレのいいジャンプに私はジュニア時代から注目していたが、さすがにNHK杯という大舞台で緊張したのか、SP・FSともジャンプが本来の出来ではなかった。しかしジャンプのキレのよさとスピード感のある演技はやはり魅力的だ(タイプとしては樋口新葉に似ていると思う)。総合8位、まだまだ伸びしろたっぷりの彼女、次戦のフランス大会では本来のジャンプが見たいものだ。


またもや驚異の新星が現れた。これがシニアデビュー戦となるポリーナ・ツルスカヤ(ロシア)。SP・FSともほとんどミスがなく、高いレベルでの安定した演技を披露した。171cmの長身と長い手足を生かした優雅な動き。「ロシアにはまだこんな選手もいたのか」と驚かされた。聞けば、彼女もメドベージェワと同じコーチとのこと。中国杯でのザギトワと同様、この選手もシニアデビュー戦から驚かせてくれた(ただツルスカヤは、ジャンプの構成は「後半に固め跳び」ではなく、オーソドックスに前後半バランスよく跳ぶ)。総合3位で表彰台をキープ。次戦はスケートアメリカ、優勝できればファイナルも射程内だ。

カロリーナ・コストナーは、持ち味の優雅で柔らかな演技を今回も存分に見せてくれた。ジャンプのレベルがさほど高くはないため技術点は高くないが、演技構成点で稼げるのが彼女の強みだ。総合2位を確保し、ファイナルへの進出も決定。こういう「味のある演技」を見せてくれる選手が世界の舞台に復活してくれるのは、ファンの一人としてとてもうれしい。

優勝は、当然のようにエフゲニア・メドベージェワしかしFSでは冒頭のコンビネーションでまさかの転倒、続く3ルッツも着氷が乱れた。しかしここから持ち直し、大崩れしないのが女王たるゆえんだ。両足にテーピングして臨んでいる今大会、コンディションは万全ではないのだろう。それでも優勝してしまう地力の強さがこの人にはある。シリーズ連勝で貫禄のファイナル進出。絶対女王の3連覇なるか。…しかし現時点で、彼女の女王の座を大きく揺るがすような選手は見当たらないが…。


【 男子 】

羽生結弦の欠場で一気に混戦模様となった今年のNHK杯男子シングル。表彰台を占めたのはベテラン勢だった。優勝したセルゲイ・ボロノフは30歳、これがシリーズ初優勝となった。特にすばらしかったのはFSで、ジャンプはすべて着氷に乱れのないほぼ完璧な出来。スピンやステップもダイナミックに演じ、大きな盛り上がりの中でフィニッシュ。場内は満場のスタンディングオベーションに包まれた。恐らくはスケート人生最高の演技だっただろう。終了後のインタビューで、日本語で「ツカレター」とつぶやいて場内を沸かせ、観客にわかりやすいように、ロシア語ではなくやや苦手な英語で話すなど、ファンへの配慮も見せてくれた。ロシアは男子もまだまだ健在である。

2位はこの日28歳の誕生日を迎えたアダム・リッポン。FSでは冒頭で4ルッツを見事に決めた。もともと4ジャンプにはさほど執着せず、演技構成でアピールする選手だが、この4ルッツの成功で技術点を押し上げ、見事に表彰台をつかんだ。その独特の表現力にファンも多いリッポン、次戦のスケートアメリカで、また地元の熱狂的な声援を受けるか。3位には29歳のアレクセイ・ビチェンコ(イスラエル)が入り、表彰台は歴戦の強豪が若手を退ける結果となった。


私の大好きなジェイソン・ブラウンは残念な結果となった。SPで僅差の3位に入り、優勝ならファイナル決定という好位置につけた。キスアンドクライで「ゆずるさんへ、 はやく よくなってください!! ジェーソン」という日本語の手書きのメッセージを掲げ、もともと多い日本のファンにさらに強くアピールした。しかしFSでは2本の3アクセルでともに転倒したため技術点が伸びず、惜しくも表彰台を逃した。しかしその芸術的でエンターテイメント性に富む演技は魅力たっぷりだ。来年の五輪や世界選手権で、また彼の「芸術品」に会えることを願いたい。


日本勢は、体調不良で欠場した村上大介に代わり急きょ出場した友野一希が7位入賞と健闘した。GPシリーズデビュー戦が急に回ってきて準備不足だったと思うが、SPでPBを大幅に更新する会心の演技を見せた。FSでも4ジャンプは決められなかったものの、最後までスピードの落ちない躍動感のある演技を披露した。19歳、今後の伸びしろを考えれば、大変貴重な経験になっただろう。


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2017年11月05日

樋口新葉、初のファイナルへ大きく前進/ロシアからまた驚異の新星・ザギトワ 〜フィギュアGPシリーズ第3戦・中国杯〜

女子は、これがシリーズ初戦となる三原舞依、2戦目の樋口新葉、本田真凜の日本勢。強豪ひしめくロシアからは、エレーナ・ラジオノワ、エリザベータ・トゥクタミシェワに、昨季ジュニア2冠のアリーナ・ザギトワ。さらに昨季世界選手権銅のガブリエル・デールマンが加わり、ファイナルに向けた激しい戦いが繰り広げられた。男子は2015・2016世界選手権連覇のハビエル・フェルナンデスに、2016・2017世界選手権連続銅のボーヤン・ジン、ロシア杯3位のミハイル・コリヤダ、2015スケートアメリカ優勝のマックス・アーロン。日本からは昨季全日本選手権2位の田中刑事が参戦した。



【 女子 】

SPを終えた時点で、首位デールマンと7位三原の差はわずか3.75。些細なミスで順位が大きく変わる、非常に厳しい戦いになった。このプレッシャーのかかる状況で、日本の3選手が持ち味を発揮した。本田(総合5位)は前戦・スケートカナダと同様ののびのびとした演技を披露した。前半のコンビネーションのファーストジャンプが2回転になったのが唯一のミスだが、これを最後のジャンプを2アクセルから3フリップに変えることで取り返す冷静さ。また一つ成長した姿を見せてくれた。三原はいつもながらの安定した演技。青と白のグラデュエーションのコスチュームがとてもよく似合う。ほとんどのジャンプをきれいなランディングで降り、スピンやステップも流麗にこなした。PBには届かなかったが、総合4位。次戦のフランス大会に希望を残した。


ロシア大会で3位表彰台をつかんだが、目標のファイナル進出のためには最低2位が必要となる樋口。SP2位から迎えたFS、上位選手が次々と高得点をマークする中でかなりのプレッシャーがかかったはずだ。しかし、そんな状況はどこ吹く風といった見事な演技を見せてくれた。高くキレのあるジャンプ(特に前半・後半の両方に入れた3ルッツ−3トウループの高難度のコンビネーションは完璧だった)、「007・スカイフォール」のテーマに合わせたパフォーマンスで観る者を惹きつける。「絶対にファイナルに出る!」という気迫がありありと伝わってくる、すばらしい演技。見事に2位表彰台をゲットした。

シニアデビューの昨季は、フランス杯で3位に入ったが、次戦のNHK杯で表彰台を逃し、ファイナル進出はならなかった。その後の四大陸選手権や世界選手権ではジャンプに精彩を欠き、下位に沈んだ。「あのジュニア時代の大物感はどこに行ったんだ」といぶかっていた私だったが、この中国杯で面目を一新した。「強くなったな、樋口新葉・・・!」これでファイナルへ大きく前進するとともに、平昌五輪の出場枠も視界に入ってきた。


SP上位の2人はジャンプのミスが響いた。1位のデールマンは序盤に豪快なコンビネーションを披露したが、後半のいくつかのジャンプで着氷が乱れ、技術点が伸びなかった(総合6位)。2位のラジオノワは、情感あふれる演技を見せてくれたが、後半のジャンプの着氷にややスムーズさを欠き、GOEが伸びなかった。表彰台は確保したものの、5年連続のファイナル進出はかなり厳しくなった。


この大激戦を制したのは、これがシニアデビュー戦となったザギトワ。私にとっては初お目見えだったのだが、「これが本当にシニアデビューの15歳か」と思わせる落ち着きと大人びた雰囲気がある。まずSP、いきなりステップシークエンスから始まった。「あれ、ということは3つのジャンプは後半に持ってくるのか。女王・メドベージェワと同じ構成だな」と思っていたらその通りで、その後半の最初のジャンプが3ルッツ−3ループの最高難度のコンビネーション。惜しくもループで転倒してしまったが、その他のジャンプはきれいに決め、ステップやスピンも完成度が高い。また振付も細かなところに工夫が行き届いていて、この点でもメドベージェワのシニアデビューの時と似ている。聞けばメドベージェワとコーチが同じとのことで、ここで納得。転倒という大きなミスがあったにもかかわらず、SPは僅差の4位発進(転倒がなかったら余裕の首位だった)。

そしてFSも、7つのジャンプをすべて後半に跳ぶという驚異のタフネスプラン。シニアデビューの年にこんな冒険的な構成を組めるのも、同窓の先輩の世界2連覇という「大成功例」があるからだろう。しかしそれをこなせる実力が伴わなければ、この意欲的なプログラムは絵に描いた餅になってしまうのだが・・・、これを15歳の少女がものの見事にやってのけた。前半、コレオシークエンス、スピン、ステップシークエンスをあでやかにこなす。そして後半、まず3ルッツ−3ループを鮮やかに決め、SPのリベンジを果たす。この後のジャンプも、メドベージェワ顔負けの手を挙げたジャンプを次々と決め、着氷の乱れもほとんどない。大きな盛り上がりの中でフィニッシュ、堂々の逆転優勝。まさに圧巻のシニアデビューだった。

ザギトワのこの圧巻の演技を目の当たりにして思うこと:「平昌五輪の金はメドベージェワで決まりと思っていたが、強力な対抗馬が現れたな」。シニアデビュー年にしてこの完成度・熟成度の高さは、まさに先輩メドベージェワを彷彿とさせるのだ。次戦・フランス杯が待ち遠しい。現時点では、平昌五輪のロシア女子代表は、メドベージェワ、ザギトワ、そしてソツコワの3人・・・かな?


【 男子 】

すばらしくハイレベルな戦いとなった女子と比べ、男子は、はっきり言ってしょぼかった(笑)。上位選手で完璧な演技を見せたのは、SPでのコリヤダと田中、FSでのアーロンぐらいで、他はジャンプのミスが多く、他よりミスの少ない選手が上位に残ったという結果になった。

田中刑事は、SPはTV解説の佐野稔さんが絶賛していたように、ノーミスのすばらしい演技だった。しかしFSでは、冒頭の4サルコウは決めたものの、演技後半、3ループを跳びに行こうとして転倒する(これはあとでわかったことで、演技中はなぜ転倒したのかわからなかった)など、ジャンプに抜けや着氷の乱れがあり、不本意な出来だった。故障明けだったこの大会、シリーズはこの試合のみ。五輪切符は暮れの全日本選手権にかかっている。あと1か月余り、コンディションをどこまで上げてこれるか。


前世界王者・フェルナンデスは、「どうしたんだ?」と思うほどFSでジャンプが乱れた。ほとんどクリーンなジャンプがなく、技術点が伸びない。総合6位に沈み、4年連続のファイナル進出は絶望的になった。パトリック・チャンと同様、かつての世界チャンピオンがジャンプの乱れに苦しんでいる。


「元祖・驚異の4回転ジャンパー」ボーヤン・ジンも本来の出来ではなかった。FS冒頭、トレードマークの4ルッツで手をつき、続く4サルコウもステップアウト。結局4つの4ジャンプはいずれもクリーンに跳べなかった。技術点の基礎点の高さで2位を確保したが、ファイナルや五輪を考えると多くの課題が残った。


SPでベスト演技を決めて100点越えを果たし、PBを更新してトップに立ったコリヤダ。しかしFSでは、シリーズ初優勝のプレッシャーからか、ジャンプに転倒や抜けが出た。しかし後半に4トウループをきれいに決めたのが効いて、SPのリードを守ってシリーズ初優勝。初めてのファイナル進出を決めた。層の厚い女子に圧倒されているロシア男子、新星が大舞台で羽ばたけるか。


上位選手が不出来な中で、会心の演技を見せたのがアーロンだった。パワフルでダイナミックなジャンプを次々に決め、PBを更新して見事に表彰台をつかんだ。2015年のスケートアメリカで「大当たり」し、宇野昌磨の「日本選手初のシニアデビュー戦でのGPシリーズ優勝」を阻んだ。私にとっては「憎き男」だったアーロンだが(笑)、この演技には素直に「あっぱれ!」を差し上げよう。


これでシリーズは早くも前半戦が終了。次戦は日本開催のNHK杯である。羽生結弦の第2戦、そしてケガで戦線を離れていた宮原知子の復帰戦でもある。日本女子の第一人者・宮原がどこまで回復しているのか。まさに「刮目して」見つめよう。


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2017年10月30日

宇野昌磨、もはや貫禄の優勝/本田真凜はほろ苦いシニアデビュー 〜フィギュアGPシリーズ第2戦・スケートカナダ〜

男子は昨季の世界選手権銀メダリスト・宇野昌磨と、2011〜13年に世界選手権3連覇のパトリック・チャン、ジェイソン・ブラウンが登場。女子は参戦4年目の本郷理華と、これがシニアデビューとなる本田真凜の日本勢に、アンナ・ポゴリラヤ、マリア・ソツコワのロシアティーネージャー、アシュリー・ワグナー、昨季世界選手権銀メダリストのケイトリン・オズモンドと実力者がひしめき、激戦が予想された。


【 女子 】

五輪シーズンにシニアデビューとなった本田。このGPシリーズの結果も「2枠」の重要な選出基準になる。それがプレッシャーになったのか、SPではジャンプにミスが出た。冒頭の3ルッツ−3トウのセカンドジャンプで転倒。後半の3ループはきれいに決めたが、2アクセルがシングルになってしまい、規定により得点にならず。演技後の表情は曇ったままだった。しかしFSではふっ切れたのか、本来の伸びやかなスケーティングが戻った。冒頭の3ルッツをきれいに決め、続く3フリップ−3トウも流れよく決める。後半のコンビネーションジャンプもクリーンに降り、ほぼノーミスの演技。SPの10位から総合5位にジャンプアップした。課題は残ったものの、まずまずのデビュー戦か。次戦は中国杯に「連闘」で臨む。この経験をどう生かすか。

本郷はSP・FSとも大きなミスなくまとめたが、ジャンプで着氷のわずかな乱れや回転不足が散見し、得点が思ったより伸びなかった。不調に終わった昨季からの巻き返しを図る今季だが、昨季も苦しんだジャンプの微妙な乱れをまだ修正しきれていないようだ。しかし総合6位にとどまったので、次戦に望みを残した。

ワグナー(3位)とソツコワ(2位)はともに持ち味を発揮した。ワグナーはジャンプにわずかな乱れがあったものの、持ち前のダイナミックな演技を披露し、SP7位から表彰台へ。ソツコワも優雅で柔らかな表現力を存分に見せ、SP3位からポジションを上げた。この人の高いレベルでの安定感は、女王メドベージェワにも迫る感がある。

SP2位のポゴリラヤと1位のオズモンド。FSの曲はともに「ブラックスワン」だが、明暗が分かれた。オズモンドはジャンプに抜けや転倒があったものの、持ち味のスピードあふれるダイナミックな演技をふんだんに見せ、SPのリードを守って優勝。昨季世界選手権2位の実力を示した。かたやポゴリラヤは、前半のジャンプはきれいに流れよく決めたが、後半のコンビネーションから乱れが見え始め、抜けや転倒、スピンでも転倒するなど、まさに負の連鎖。シーズン前にケガをし、十分に練習ができないままに迎えた本番だったそうだが、後半にその不安が出てしまった形だ。昨季のシリーズ連勝・ファイナル3位で一皮むけたかと思った彼女だったが、また試練が襲ってきている。大事な五輪シーズン、立て直しはできるのか。


【 男子 】

無良崇人のFSの曲は「オペラ座の怪人」。2014年の同じスケートカナダで圧巻の演技を見せて逆転優勝した、メモリアルな曲だ(私の中では、この時のFSでの演技が無良のベストパフォーマンスだ)。五輪シーズンに思い入れの強い曲を再度持ってきて勝負してきたが・・・、ジャンプにことごとくミスが出て、総合12位に沈んだ(本人も「ここ数年で一番悪い出来だった」と嘆いた)。本人もこのままでは終われまい。次戦のスケートアメリカまで、どう持ち直してくるか。

パトリック・チャンはジャンプに乱れが出た。「熟成派」のチャンは、ジャンプを完璧に決め、得意の表現力、演技構成で高得点を狙う戦略だが、そのジャンプにミスが出ては、「高目追求派」の宇野には勝てない。このままでは今季は苦しい戦いを強いられそうだ。

ジェイソン・ブラウンは、もともと4ジャンプはほとんど跳ばない(SPでは回避)。昨今の「4回転戦争」には背を向け、その独特の表現力と演技構成で勝負する。そのため残念ながら優勝を争うには至らないのだが、彼の芸術的な演技は観る者を魅了してやまない(私も彼の演技の大ファンである)。今大会もSP・FSとも、彼にしかできないステップや振付を披露して見事に2位をゲット。次戦・NHK杯で、日本のファンの前でまたすばらしい芸術作品を見せてほしい。

SPで100点台をマークして首位発進の宇野。FSの曲は、2年前に演じた思い入れのある「トゥーランドット」。そして演技構成は、4ジャンプ4本、そのうち3本を後半に入れ、コンビネーションも後半に3本入れる、極めてハイレベルなジャンプ構成だ。この過酷な構成を、やや乱れはあったものの最後までやり抜き、FSでも200点近い高得点。総合では300点を超え、2位に40点近い差をつけての優勝。シニア3年目の今季、もはや貫禄さえ感じさせる圧勝劇である。五輪シーズンに極めて意欲的なプログラムで挑む宇野。そのより高みを目指す姿勢には、羽生結弦と同じ目線の高さを感じる。今季、どこまで飛んでいくのか、目が離せない。


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2017年10月23日

「疑惑残し沈黙勝ち」:オウンゴールに助けられ、安倍政権継続へ 〜衆議院議員総選挙〜

今回の総選挙の記事は、詳しく書く気がしない。「与党3分の2維持・立憲民主躍進・希望低迷」この結果をもたらした最大の原因は、小池百合子・希望の党代表の「選別」だ。

安倍政権を本気で打倒したいのなら、民進党が合流を申し出てきた時、無条件で受け入れなければならなかった。確かに掲げる政策にバラつきはあっただろうが、「数の論理」で強引な政権運営を行ってきた安倍政権を倒すには、自らも数をそろえることを何よりも優先させねばならなかった。数をそろえ、東京都議会議員選挙における「都民ファーストの会」のような「反安倍の受け皿」を作らねばならなかったのだ。

それを冷たく突き放し、生命線の「数」を自ら減らしてしまった。合流しなかった旧民進党の議員たちは立憲民主党を立ち上げた。「受け皿」が大きく割れてしまったのだ。さらに悪いことに、この冷たい仕打ちが国民の反感を買い、事前の調査では希望の党への支持は低迷した。加えて掲げる政策も与党との明確な違いを示せず、この点でも希望の党は「反安倍の受け皿」にならなかった。

そして結果は、本来なら与党に拮抗した勢力になるはずだった希望の党は、「排除」した立憲民主党にも後れを取って野党第2党に甘んじた。完全な戦略ミス、国民感情の読み間違いである。

今回の選挙は自民が勝ったのではなく、野党が勝手に分裂し競合し、勝手に負けた。まさに「オウンゴールで転がり込んだ勝利」だった。タイトルに掲げた「疑惑残し沈黙勝ち」:これは毎日新聞の見出しのパクリだが、この短い言葉が今回の自民を端的に表している。


これで安倍政権がまだまだ続く。2019年のラグビーワールドカップも、2020年の東京オリンピック・パラリンピックも、安倍強権(狂犬?)政治のもとで行われることになるのか? そのころのこの国は、どんな恐ろしい国家主義国家に変貌しているのだろうか。それを許さない活動は細々としていきたいが、それよりもそんな国家体制にどっぷり取り込まれないよう、今から準備をしておかねばならないな。


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2017年10月22日

絶対女王・貫禄の船出/男子は早くも熾烈な4回転合戦 〜フィギュアGPシリーズ第1戦・ロシア大会〜

今年もこの季節がやってきた。フィギュアスケート・グランプリシリーズ。今季は特に来年2月に平昌オリンピックを控え、シリーズの結果が五輪への出場権の獲得に大きく関わってくる。

日本勢は、男子が3枠・女子が2枠の出場権を争う。男子は羽生結弦宇野昌磨がダントツの2トップで(この2人が五輪でも表彰台を競うことになるだろう)、事実上残り1枠を誰が手にするかの戦いになっている。女子は第一人者の宮原知子、本郷理華、樋口新葉、三原舞依のシニア勢に、今季からシニアデビューを果たす本田真凜、坂本花織、白岩優奈を加えた7人がGPシリーズに参戦する。この粒ぞろいの中から、五輪に出場できるのはわずか2人。実にもったいないが、これが世界の厳しさだ。


【 男子 】

昨季のGPファイナルの金・銀メダリストが、開幕戦でいきなり激突した。羽生結弦VSネイサン・チェン(アメリカ)。ともにFSでは4回転ジャンプを5回跳ぶ、意欲的なプログラムを組んできた。


シーズン前、羽生結弦がこの五輪シーズンのFSの曲に、2年前に使った「SEIMEI」を再び使うというニュースを耳にした時、私は快哉を挙げた。2015-16シーズン、NHK杯とGPファイナルで世界最高得点を連発した、あの伝説の演技。私はあの快挙を目にした時、「このプログラム、2年早かったんじゃないか」と思った。純和風の音楽、陰陽師・安倍晴明を演じる、これも「和」の香りを濃く漂わせる演技構成、そして羽生の涼やかな容貌と雰囲気にすばらしくマッチしたコスチューム。この「ニッポンの塊」のような至高の芸術作品は、世界中の注目が集まる2年後の平昌五輪の大舞台でこそ披露してほしいと思ったのだ。

それだけに、「SEIMEI」を今季再度使うというニュースは私を狂喜させた。「羽生結弦、よくぞ決断した!」。しかもこの決断を、本人は2016年のGPファイナルの直後に下していたというのだ。すばらしい! あの至高のプログラムを五輪シーズンに、しかもさらに演技の難度をグレードアップさせて挑む。ファンにとってこんなエキサイティングなことはない。

注目の両雄の激突は、今回はチェンに軍配が上がった。羽生はSPでジャンプが乱れ、FSでは冒頭の4ルッツは何とかこらえたが、4ループが3回転に、後半の4サルコウが2回転に抜けるなど、ジャンプでいつものような精度を欠き、GOEを大きく稼げなかった。一方のチェンも完璧な出来ではなかったが、技術点の基礎点の高さで羽生を上回り、SPでのリードを守ってGPシリーズ初優勝を飾った。

今後シリーズには宇野昌磨、ボーヤン・ジンの「高目追求派」や、ハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャンの「熟成派」ら、世界の強豪たちが続々参戦してくる。五輪シーズンの勢力図はどうなるのか、見どころ満載だ。


【 女子 】

シーズン前、「ユリア・リプニツカヤ引退」のニュースが飛び込んできた。15歳で出場した2014年のソチ五輪・団体戦で、SP・FSとも完璧な演技でロシアの金メダル獲得に大きく貢献し、その柔軟さを生かした「キャンドルスピン」が鮮烈な印象を残した。しかしその後は、GPシリーズでSPとFSの演技をそろえることがなかなかできず、ロシアの気鋭の後輩たちの後塵を拝していた。精神的にも追い詰められていたようで、わずか19歳で引退となってしまった。

ロシアティーネージャー軍団は層が厚すぎるほど厚く、毎年次々と実力のある新星がシニアデビューする(一昨年はエフゲニア・メドベージェワがいきなりGPファイナルと世界選手権で勝ち、昨季はともに連覇している)。この激流の中で生き残るのは容易なことではない。引退は非常に残念だが、あのキリリとしたラシアン・ビューティーの雄姿は、しっかりとこの目に焼きついている。


シリーズ開幕戦に、地元ということもあって絶対女王・メドベージェワがいきなり参戦してきた。私的には平昌五輪の女子シングルは、大きなミスをしない限り彼女の金はほぼ決まりだろうと思っている。そして今大会で、その予断が間違っていないことを証明した。SP・FSとも自己ベストをわずかに下回るだけのハイレベルな出来。FSの最後のジャンプ・2アクセルでまさかの転倒をしたのは「ご愛敬」で、それでも余裕で優勝を果たした。転倒という大きなミスをしても(転倒で-1点・GOEで-1.5点)、それ以外の要素が非常にハイレベルなので、逆転には至らないのだ。この女王の盤石さは、今季も揺るぎそうにない。

ソチ五輪銅メダリストのカロリーナ・コストナー(イタリア)がGPシリーズに帰ってきた。30歳のベテランは、そのブランクを全く感じさせず、4年前の名演技を彷彿とさせる、その長い手足を生かした優雅でなめらかな演技を披露してくれた。ジャンプの難度はさほど高くはないが、彼女にはそれを補って余りある表現力と演技構成力がある。4年ぶりのGPシリーズで、貫禄の表彰台ゲット(2位)。彼女の復活によって新たなコストナーの芸術品に触れることができることは、フィギュアファンにとっては至上の喜びである。

日本勢は、樋口新葉・坂本花織の高校2年生コンビが躍動した。これがシニアデビューの坂本は、SPで会心の演技を見せて5位につける。FSでは冒頭のコンビネーションで転倒したが、その後をよく持ち直してノーミスでこなし、総合5位に食い込んだ。本人は悔しがっていたが、デビュー戦としては上々の出来と言っていいだろう。かたや樋口は、SPで回転不足にとられたジャンプをFSではきっちり修正し、持ち前のスピードを生かして「ワカバボンド」を演じ切った。シリーズ2度目の表彰台(3位)だが、これは五輪出場を目指す彼女にとっては最低限の結果だろう。

GPシリーズで通算4勝・2位2回・3位2回と一度も表彰台を外したことがなく、GPファイナルも4年連続の出場を誇るエレーナ・ラジオノワここ数年は身長が大きく伸び、身体のバランスの変化に苦しんできた。その影響がまだ残っているのか、この大会でもジャンプにやや安定感を欠き、総合4位に終わった(シリーズ初のメダルなし)。18歳にしてシニア5年目の歴戦の強者、このまま終わってほしくないし、五輪でも彼女の演技はぜひ見たい。次戦の中国杯では本来の正確無比な演技を見せてほしいものだ。

posted by デュークNave at 11:25| Comment(0) | スポーツ-フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする