とんでもないものを見てしまった。
名古屋で開催されたフィギュアGPファイナルの男子シングル・フリー。SP3位からの逆転優勝を狙うイリア・マリニン(アメリカ)の演技が終わった瞬間、胸をよぎった思いがこれだった。
そしてこうも思った。「こんな超絶演技を見せられては、このあとの佐藤駿や鍵山優真がノーミスの完ぺきな演技をしても、マリニンには追いつかない。事実上、この時点でマリニンの優勝は決定だな」。
まずはマリニンのフリーのジャンプの構成と得点結果をここに並べてみる。
4フリップ:基礎点11.00・GOE(出来栄え点)+3.77=14.77
4アクセル:基礎点12.50・GOE+4.48=16.96
4ルッツ:基礎点11.50・GOE+4.27=15.77
4ループ:基礎点10.50・GOE+3.15=13.65
4ルッツ+1オイラー+3フリップ:基礎点17.30×1.1=19.03・GOE+4.60=23.63
4トゥループ+3トゥループ:基礎点13.70×1.1=15.07・GOE+2.85=17.92
4サルコウ+3アクセル:基礎点17.70×1.1=19.47・GOE+2.91=22.38
☆神の領域・そのT:7つのジャンプで6種類の4回転をすべて跳び、それをすべて成功させた
単独・コンビネーションともすべて4回転、しかも6種類すべてが含まれているのが驚異的。この異次元、というより天上の領域と言っていい超高難度のジャンプを、すべてノーミスで決めた。これだけでも空前絶後である。
☆神の領域・そのU:3つのコンビネーションジャンプをすべて後半に入れ、すべて決めた
さらにすさまじいのが、3つのコンビネーションをすべて後半に入れていること。これは言うまでもなく、基礎点が1.1倍になる後半に組み込んで得点を極大化するためだが、疲れの出る後半に跳ぶコンビネーションは失敗のリスクも大きい。
この「ハイリスク・ハイリターンの極限」と言っていい演技構成を、すべてミスなく決めた。まさに「ブッ飛んだ」演技だった。
☆神の領域・そのV:GOE(出来栄え点)のとんでもない高さ
上記の得点結果を見てほしい。それぞれのジャンプのGOE(出来栄え点)がとんでもなく高い。最低でも2.85、最高は4.60、平均すると3.72だ。
GOEは+5〜ー5までの幅が設けられている。ジャンプで転倒した時のGOEは容赦なく大減点されるが、+4以上の大きな加点はめったなことではお目にかかれない。
それがこのマリニンの演技では、GOE+4以上のジャンプが3つもある。後半の4ルッツ+1オイラー+3フリップは、基礎点とGOE合計で23.63という、「1つのジャンプでこんなに得点が稼げるのか…!」と呆然とするほどの巨大な得点源となっている。
今回のGPファイナル・男子シングルでは、マリニンの他にも佐藤駿やダニエル・グラスル(イタリア)がフリーで会心の演技を披露してくれたが、とにかくマリニンの演技がすごすぎて、他の選手の演技をコメントする気力が湧かない。
すさまじいものを見てしまった。
今はただ、その余韻に浸るのみである。
2025年11月29日
「ひねもすのたり日記 7」を読んで:ちばてつや先生へのファンレター
前略 ちばてつや先生
新刊の「ひねもすのたり日記 7」、さっそく読ませていただきました。いつもながらのほんわかとした温もりがうれしく、楽しませていただきました。

特に印象深かったのが、末弟の樹之さんのエピソード。幼いころは栄養失調で失明寸前だったチー坊が、小学生の頃は近所でも有名なわんぱく少年に。ある日、「チビのくせに生意気」と近所の子供たち4人にリンチにされた。ケガをして服をボロボロにされて家に帰ってきたが、その4人の母親たちが「またお宅のチー坊ちゃんがっ」と、それ以上のケガをさせられた子供たちを連れてやってきた。
このエピソードを読んで思い出したのが、「のたり松太郎」のエピソード。松太郎が相撲教習所時代に、将来を嘱望されていた矢野に再起不能のケガを負わせ、そのお詫びのために矢野の見舞いに行ったのに、しまいには図々しく矢野の見舞い品をガツガツ食べてしまい、部屋のドアの外にいた矢野と同部屋の若手力士たちを激怒させ、帰り道に待ち伏せのリンチに遭った。松太郎がボロボロになって帰ってきたのに田中清君が驚いたが、のちに松太郎を襲った4人の方がはるかに重傷を負ったことがわかった。
この松の乱闘事件のエピソードは、樹之さんのことを思い出してちば先生が描かれたのか、それとも樹之さんがご自分のこのエピソードをアイディアとして提供されたのか、どっちなのかな?と思いました。
ご三男のあきおさんへのアドバイス「こっちのめだたないヤツを主人公にしたら?キャプテンにしてよ」とは、あの名作「キャプテン」の谷口君のことですかね?
それと、「のた松」の田中君の「酒ぐせをうんと悪くして松太郎を困らせる」というキャラ設定を考え出したのも樹之さんだったことを初めて知りました。大阪巡業中に松に連れられて行ったキャバレーで大騒ぎし、酔っ払い運転をしようとする男の車を2人でひっくり返して無理やり宿舎の寺まで送らせ、玄関に鍵がかかっているのを知った田中君がやらかした「誰が為に鐘は鳴る事件」も樹之さんのアイディアとは…!
「怪力粗暴の大男」松太郎と「努力と精進と酒乱の人」田中君の名コンビ誕生には、樹之さん(七三太朗さん)が深く関わっておられたのですね。
「ひねもすのたり日記」、これからも楽しみにしています。
草々
新刊の「ひねもすのたり日記 7」、さっそく読ませていただきました。いつもながらのほんわかとした温もりがうれしく、楽しませていただきました。

特に印象深かったのが、末弟の樹之さんのエピソード。幼いころは栄養失調で失明寸前だったチー坊が、小学生の頃は近所でも有名なわんぱく少年に。ある日、「チビのくせに生意気」と近所の子供たち4人にリンチにされた。ケガをして服をボロボロにされて家に帰ってきたが、その4人の母親たちが「またお宅のチー坊ちゃんがっ」と、それ以上のケガをさせられた子供たちを連れてやってきた。
このエピソードを読んで思い出したのが、「のたり松太郎」のエピソード。松太郎が相撲教習所時代に、将来を嘱望されていた矢野に再起不能のケガを負わせ、そのお詫びのために矢野の見舞いに行ったのに、しまいには図々しく矢野の見舞い品をガツガツ食べてしまい、部屋のドアの外にいた矢野と同部屋の若手力士たちを激怒させ、帰り道に待ち伏せのリンチに遭った。松太郎がボロボロになって帰ってきたのに田中清君が驚いたが、のちに松太郎を襲った4人の方がはるかに重傷を負ったことがわかった。
この松の乱闘事件のエピソードは、樹之さんのことを思い出してちば先生が描かれたのか、それとも樹之さんがご自分のこのエピソードをアイディアとして提供されたのか、どっちなのかな?と思いました。
ご三男のあきおさんへのアドバイス「こっちのめだたないヤツを主人公にしたら?キャプテンにしてよ」とは、あの名作「キャプテン」の谷口君のことですかね?
それと、「のた松」の田中君の「酒ぐせをうんと悪くして松太郎を困らせる」というキャラ設定を考え出したのも樹之さんだったことを初めて知りました。大阪巡業中に松に連れられて行ったキャバレーで大騒ぎし、酔っ払い運転をしようとする男の車を2人でひっくり返して無理やり宿舎の寺まで送らせ、玄関に鍵がかかっているのを知った田中君がやらかした「誰が為に鐘は鳴る事件」も樹之さんのアイディアとは…!
「怪力粗暴の大男」松太郎と「努力と精進と酒乱の人」田中君の名コンビ誕生には、樹之さん(七三太朗さん)が深く関わっておられたのですね。
「ひねもすのたり日記」、これからも楽しみにしています。
草々
2025年11月23日
毎日新聞への投稿:絶妙手「飛車の不成」!
今日の毎日新聞朝刊の記事がめったに見れない面白い内容だったので、珍しくウェブサイトの投稿欄に下記の投稿をした。
「11月23日「囲碁・将棋スペシャル」欄の片山史龍新四段の自戦記は読みごたえがありました。
特に目を見張ったのが飛車の不成!銀や桂香の不成はよく見ますし、歩や飛車角の不成も詰将棋でまれに見ることがありますが、実戦でお目にかかれるとは!「実戦で飛車や角が成らないことなんてあるのか?」と思っていた私にはまさに「目からウロコ」。「こんな絶妙手があるんだな」と唸りました。」

私は将棋を指すことはめったにしないが、子供の頃からの長年の将棋ファンであり、日曜のEテレの「将棋フォーカス」も毎週録画して観ている。今でいう「観る将」と言えるかもしれない。
この将棋について最近ふと思ったのが、「飛車や角が成らないなんてことあるんだろうか?」という疑問。銀、桂や香の不成は終盤戦でよく見るが、これはこの3つは成ることで駒の動きが変わり、成らない方が有利になることがあるからだ(特に桂や香で王手をする時に不成はよく見られる)。
一方飛車と角は、成ることで動きが増え(飛車は斜めに1マス、角は縦横に1マス動けるようになる)、元の動きはそのまま残る。つまり成ることで損することは何もないわけで、実際飛車角の不成なんて、今まで見たことがなかった。
そう思っていたところに今日の新聞で「飛車の不成」という手を見て、まあ驚いたのなんの!よく読むと、不成にすることで相手の歩の王手が打ち歩詰めになるのだ。
片山四段は「これまでの将棋人生で最も印象に残る一手」「詰め将棋で見られるようなテクニックが実戦に現れ、気分が高揚した」と記している。これは確かに、発見した時は胸が躍っただろう。
「将棋は八十一マスの広大な世界」とよく言われるが、その広大さ・深淵さを改めて味わった、「飛車不成」の絶妙手だった。
「11月23日「囲碁・将棋スペシャル」欄の片山史龍新四段の自戦記は読みごたえがありました。
特に目を見張ったのが飛車の不成!銀や桂香の不成はよく見ますし、歩や飛車角の不成も詰将棋でまれに見ることがありますが、実戦でお目にかかれるとは!「実戦で飛車や角が成らないことなんてあるのか?」と思っていた私にはまさに「目からウロコ」。「こんな絶妙手があるんだな」と唸りました。」

私は将棋を指すことはめったにしないが、子供の頃からの長年の将棋ファンであり、日曜のEテレの「将棋フォーカス」も毎週録画して観ている。今でいう「観る将」と言えるかもしれない。
この将棋について最近ふと思ったのが、「飛車や角が成らないなんてことあるんだろうか?」という疑問。銀、桂や香の不成は終盤戦でよく見るが、これはこの3つは成ることで駒の動きが変わり、成らない方が有利になることがあるからだ(特に桂や香で王手をする時に不成はよく見られる)。
一方飛車と角は、成ることで動きが増え(飛車は斜めに1マス、角は縦横に1マス動けるようになる)、元の動きはそのまま残る。つまり成ることで損することは何もないわけで、実際飛車角の不成なんて、今まで見たことがなかった。
そう思っていたところに今日の新聞で「飛車の不成」という手を見て、まあ驚いたのなんの!よく読むと、不成にすることで相手の歩の王手が打ち歩詰めになるのだ。
片山四段は「これまでの将棋人生で最も印象に残る一手」「詰め将棋で見られるようなテクニックが実戦に現れ、気分が高揚した」と記している。これは確かに、発見した時は胸が躍っただろう。
「将棋は八十一マスの広大な世界」とよく言われるが、その広大さ・深淵さを改めて味わった、「飛車不成」の絶妙手だった。
2025年11月16日
のたり気まま川柳 Vol. 23「立花逮捕・いらんヤツ」
連日の「のたり気まま川柳」、今日のテーマは「立花逮捕・いらんヤツ」。

久々の政治関係の朗報だった。「NHKから国民を守る党」党首・立花孝志が名誉棄損容疑で逮捕された。事実無根な情報を交流サイト(SNS)上に流したことで元兵庫県会議員の竹内英明さんへの大量の誹謗中傷が相次ぎ(竹内さんはこれを苦に今年1月に自死)、竹内さんの妻が立花を刑事告訴していた。
この立花の悪事の数々をここに列挙しても腹が立つだけなので、それはやめる。しかし立花といいトランプといい参政党の神谷といい、「事実無根なことをネット上に書き込んだり大声で演説したりして民衆をあおる」輩が昨今目立つのには暗澹たる気持ちになる。
こいつらは過激なことを書いたりわめいたりすると、メディアがそれを取り上げたり、無知な民衆がそれを鵜呑みにして、こいつらが非難している対象の誹謗中傷に走ることを知っていて、目立つためにわざと過激なことを世間に対して言ったり書いたりしているのだ。
だから一番肝心なのは、ヤツらの書いていることや言っていることを鵜呑みにせず、無視するか批判すればいいのだが、なぜかトランプも神谷もそれなりに支持されている。これは私見だが、アメリカにも日本にも苦しい生活を強いられている人たちが少なからずいて、ヤツらが叩く対象に乗っかって中傷することで、その不満、鬱屈した思いを晴らしているのではないだろうか。
かく言う私もゆとりある生活をしているとはとても言えない状況なのだが、その鬱憤を他人を誹謗中傷することで晴らそうとは全く思わない。なぜなら、そんなことをしても現状は何も改善されないし、逆に自分をマイナスの感情で包むだけで何のメリットもない、ムダな時間と労力を費やすだけの、「百害あって一利なし」の行為だからだ。
あんなヤツらの扇動に乗せられて他人の中傷に走ってしまっている皆さん、一刻も早くそんなことはおやめなさい。そんなことをネット上に書き込んでいる時のあなたは、トランプみたいに眉間にしわを寄せて、「赤鬼顔」になっているんじゃないですか?
そんなドロドロしたものからは距離を置いて、もっとあなたにとって楽しいこと、うれしいこと、夢中になれることに目を向けましょうよ。心をオープンにして視野を広げれば、あなたにとって楽しいことは世の中たくさんありますよ!

久々の政治関係の朗報だった。「NHKから国民を守る党」党首・立花孝志が名誉棄損容疑で逮捕された。事実無根な情報を交流サイト(SNS)上に流したことで元兵庫県会議員の竹内英明さんへの大量の誹謗中傷が相次ぎ(竹内さんはこれを苦に今年1月に自死)、竹内さんの妻が立花を刑事告訴していた。
この立花の悪事の数々をここに列挙しても腹が立つだけなので、それはやめる。しかし立花といいトランプといい参政党の神谷といい、「事実無根なことをネット上に書き込んだり大声で演説したりして民衆をあおる」輩が昨今目立つのには暗澹たる気持ちになる。
こいつらは過激なことを書いたりわめいたりすると、メディアがそれを取り上げたり、無知な民衆がそれを鵜呑みにして、こいつらが非難している対象の誹謗中傷に走ることを知っていて、目立つためにわざと過激なことを世間に対して言ったり書いたりしているのだ。
だから一番肝心なのは、ヤツらの書いていることや言っていることを鵜呑みにせず、無視するか批判すればいいのだが、なぜかトランプも神谷もそれなりに支持されている。これは私見だが、アメリカにも日本にも苦しい生活を強いられている人たちが少なからずいて、ヤツらが叩く対象に乗っかって中傷することで、その不満、鬱屈した思いを晴らしているのではないだろうか。
かく言う私もゆとりある生活をしているとはとても言えない状況なのだが、その鬱憤を他人を誹謗中傷することで晴らそうとは全く思わない。なぜなら、そんなことをしても現状は何も改善されないし、逆に自分をマイナスの感情で包むだけで何のメリットもない、ムダな時間と労力を費やすだけの、「百害あって一利なし」の行為だからだ。
あんなヤツらの扇動に乗せられて他人の中傷に走ってしまっている皆さん、一刻も早くそんなことはおやめなさい。そんなことをネット上に書き込んでいる時のあなたは、トランプみたいに眉間にしわを寄せて、「赤鬼顔」になっているんじゃないですか?
そんなドロドロしたものからは距離を置いて、もっとあなたにとって楽しいこと、うれしいこと、夢中になれることに目を向けましょうよ。心をオープンにして視野を広げれば、あなたにとって楽しいことは世の中たくさんありますよ!
2025年11月15日
のたり気まま川柳 Vol. 22「ドジャース日本人三人衆の大活躍」
ちょっとばかり久しぶりの「のたり気まま川柳」シリーズ、今回のテーマは「ドジャース日本人三人衆の大活躍」。
(実はこの6句はドジャースのワールドシリーズ(WS)連覇の直後にすでに作っていたのだが、先週が多忙だったのと、三人衆賞賛の記事を載せるのを先にと思ったので、このちょっとずれたタイミングでの掲載になった)

1句目:レギュラーシーズン(RS)では、山本由伸と大谷翔平がそれぞれ投打のエースとして、ナショナル・リーグ西地区4連覇に大きく貢献した。そして今季はワイルドカードシリーズ(WCS)からとなったポストシーズンマッチ(PSM)では、大谷と山本の活躍はそのまま続いたが、RSを右肩の故障でほぼ棒に振った佐々木朗希がリリーフ投手として復帰し、セットアッパーやクローザーで大きな役割を果たした。このPSMでの「日本人三人衆そろい踏み」の大活躍は、特に我々日本人には信じがたいほどうれしいことで、WSの最終戦まで狂喜乱舞の連続だった。
2句目と3句目:その中でも特筆すべきなのが、WSでの山本の激投・熱投だ。初戦敗戦を受けての第2戦の先発、2勝3敗の「カド番」での第6戦の先発、そして最終第7戦のサプライズ連投リリーフ。このすべてが敵地で、すべてが「絶対に負けられない」窮地だったが、それをすべて抑え込んで勝利。ドジャースのWS4勝のうち3勝を山本が挙げ、当然のMVPに輝いた。ドジャース球団史に、そしてドジャースファンの記憶に永遠に残るであろう快投だった。
4句目と5句目:WSでドジャースと対峙したトロント・ブルージェイズは、MLBで唯一のカナダに本拠地を持つチームで、1992・1993年にWSを連覇して以来の頂点を目指していた。アメリカン・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)ではシアトル・マリナーズに2勝3敗と追い詰められたが、本拠地ロジャース・センターで連勝してWS進出を決めた。そしてWSでは、逆にドジャースに王手をかけてホームに戻ってきた。
ALCSでの逆転を見ているだけに、「これはまずい展開になったな…」と思った。特にドジャースタジアムでの3連戦は、第3戦の延長18回の死闘をフリーマンの劇的サヨナラホームランで制し、「このいい流れのまま、一気に連勝してWS連覇だ!」と思っていたのが、まさかの連敗を喫してカド番に追い詰められた。第6戦、ロジャース・センターは22年ぶりのWS制覇への期待で充満していた。
しかしその熱気を、山本とドジャース打線のしぶとさが押し戻した。第6戦では山本が6回を1失点に抑えて勝利。そして最終第7戦では、先発の大谷が先制3ランを浴びたが、2つの犠牲フライで1点差に詰め寄り、2点差に突き放された後は2本のソロホーマーで同点に追いついた。
そして迎えた9回裏、サヨナラのピンチで、前日に96球を投げている山本がサプライズリリーフ。バックの好守備もあってこの修羅場を切り抜けると、延長11回に女房役・スミスのソロホームランでついに勝ち越し、その裏の1死1・3塁のピンチを、名手ベッツの華麗なるゲッツーで締めくくった。ドジャースにとっては出来すぎのハッピーエンドであり、まさに「終わりよければすべてよし」。
6句目:今季のPSMは、ドジャースファンにはハラハラドキドキの連続だった。そもそも昨季と違ってWCSからのスタートになり、より長く険しい道のりだったのだ。
【 WCS 】初戦は大谷がいきなり2ホーマーを放つなど、打線が爆発して快勝。第2戦では山本が先発勝利を挙げ、9回を佐々木が抑え、レッズを連勝で退けてまず第一関門を突破。
【 地区シリーズ(DS)】相手は今季のナ・リーグ最強と目されたフィリーズ。まず初戦で大谷が先発勝利、佐々木が初セーブを挙げる。第2戦では先発スネルが好投、リリーフ陣が1点差に詰め寄られるが、最後は佐々木が締めて2セーブ目。第3戦は先発の山本が打たれて敗れるが(今振り返ると「山本にもこんな時があったんだな」と首をひねる思いだ)、第4戦では3番手佐々木が8回からの3イニングをパーフェクトリリーフ。11回のサヨナラ勝ちにつなげた。これで第二関門も突破。
【 NLCS 】対するは、RSでは6戦全敗となぜか全く勝てなかったブリュワーズ。しかしこのシリーズでは、ドジャースが誇る「先発4本柱」がそれぞれすばらしいピッチングを見せた。まず初戦、スネルが8回1安打無失点の快投。第2戦では山本が111球1失点で見事な完投勝利。ホームに戻った第3戦ではグラスノーがしっかりと試合を作り、最後は佐々木が抑えてPSM3セーブ目を挙げる。
そして王手をかけて迎えた第4戦では大谷が、投げては6回0/3を無失点・10奪三振、打っては先制・中押し・ダメ押しの3ホーマーと鬼神の大活躍を見せ、RSでは全く勝てなかったブリュワーズを、4連勝の"sweep"で屠った。鬼門かと思われた第三関門も突破し、連覇を目指して勇躍頂上決戦に臨んだ。
【 WS 】初戦、PSMで絶好調だった先発スネルが打たれてまさかの敗戦。しかし第2戦で山本がまたも完投勝利を挙げてタイに戻す。ドジャースタジアムでの第3戦はWS史上に残る大熱戦となり、延長18回裏、千両役者・フリーマンのバックスクリーンへのサヨナラアーチで劇的勝利。19回からの登板に向けて準備していた山本がブルペンから駆け寄り、大谷・佐々木と輪を作って喜び合うシーンは実に感動的だった。
しかし翌日の第4戦は、前日4打数4安打・3ホームラン4打点・5四球(このうち4つが連続の申告敬遠)と6時間以上の試合に出ずっぱりだった疲れが残っていたのだろう、先発大谷が打ち込まれて敗戦。続く第5戦も先発スネルが立ち上がりを叩かれ、ホームでまさかの連敗となり、2勝3敗の「カド番」で敵地での戦いに向かうことになった。4勝1敗とヤンキースに快勝した昨季のWSとは打って変わる展開に、「これは今年はやられたかな…」と観念しかかった。
しかしその窮地を、山本の熱投が救った。第6戦で6回無失点、佐々木らリリーフ陣も粘り、最後は本来スターターのグラスノーが抑え、再びタイに戻して逆王手をかける。そして最終第7戦。まれに見るシーソーゲームをドジャースがホームラン攻勢で逆転し、最後は「まさかの連投」の山本が締めくくった。
言い古された言葉だが、まさに「筋書きのないドラマ」。こういうものが観れるから、スポーツ観戦はやめられない。二刀流が完全復活した大谷、エースとしてさらに熟成するであろう山本、そして先発か抑えかが注目され、フルシーズンでの活躍が期待される佐々木。来季も「ドジャース日本人三人衆」の大活躍、そしてクライマックスのWSまでの盛り上がりを期待しよう。
P. S. 大谷翔平がナショナル・リーグのMVPにまたも満票で選ばれた。4度目の受賞は、通算7度のバリー・ボンズに次ぐ単独2位。エンゼルス時代の2021年と2023年にも受賞しており、両リーグにまたがる複数回の受賞は史上初。4度の満票も史上初だ。
今季はタイトルこそ取れなかったが、キャリアハイの55ホームラン、両リーグを通じて最多の146得点、そして史上初のもう1つの「50−50」:「50ホームラン・50奪三振」を達成した。今年は「試運転」から始まった二刀流は、来季はおそらく開幕から全開になるだろう。「優勝を狙えるチームでのフルシーズン二刀流」:大谷がMLB挑戦を決めた時からの念願だったであろう状況がすべてそろう来季、いったいどんな活躍をするのか。これまでもそうだったように、観る者の想像を絶するすばらしい躍動を見せてくれるに違いない。
(実はこの6句はドジャースのワールドシリーズ(WS)連覇の直後にすでに作っていたのだが、先週が多忙だったのと、三人衆賞賛の記事を載せるのを先にと思ったので、このちょっとずれたタイミングでの掲載になった)

1句目:レギュラーシーズン(RS)では、山本由伸と大谷翔平がそれぞれ投打のエースとして、ナショナル・リーグ西地区4連覇に大きく貢献した。そして今季はワイルドカードシリーズ(WCS)からとなったポストシーズンマッチ(PSM)では、大谷と山本の活躍はそのまま続いたが、RSを右肩の故障でほぼ棒に振った佐々木朗希がリリーフ投手として復帰し、セットアッパーやクローザーで大きな役割を果たした。このPSMでの「日本人三人衆そろい踏み」の大活躍は、特に我々日本人には信じがたいほどうれしいことで、WSの最終戦まで狂喜乱舞の連続だった。
2句目と3句目:その中でも特筆すべきなのが、WSでの山本の激投・熱投だ。初戦敗戦を受けての第2戦の先発、2勝3敗の「カド番」での第6戦の先発、そして最終第7戦のサプライズ連投リリーフ。このすべてが敵地で、すべてが「絶対に負けられない」窮地だったが、それをすべて抑え込んで勝利。ドジャースのWS4勝のうち3勝を山本が挙げ、当然のMVPに輝いた。ドジャース球団史に、そしてドジャースファンの記憶に永遠に残るであろう快投だった。
4句目と5句目:WSでドジャースと対峙したトロント・ブルージェイズは、MLBで唯一のカナダに本拠地を持つチームで、1992・1993年にWSを連覇して以来の頂点を目指していた。アメリカン・リーグ優勝決定シリーズ(ALCS)ではシアトル・マリナーズに2勝3敗と追い詰められたが、本拠地ロジャース・センターで連勝してWS進出を決めた。そしてWSでは、逆にドジャースに王手をかけてホームに戻ってきた。
ALCSでの逆転を見ているだけに、「これはまずい展開になったな…」と思った。特にドジャースタジアムでの3連戦は、第3戦の延長18回の死闘をフリーマンの劇的サヨナラホームランで制し、「このいい流れのまま、一気に連勝してWS連覇だ!」と思っていたのが、まさかの連敗を喫してカド番に追い詰められた。第6戦、ロジャース・センターは22年ぶりのWS制覇への期待で充満していた。
しかしその熱気を、山本とドジャース打線のしぶとさが押し戻した。第6戦では山本が6回を1失点に抑えて勝利。そして最終第7戦では、先発の大谷が先制3ランを浴びたが、2つの犠牲フライで1点差に詰め寄り、2点差に突き放された後は2本のソロホーマーで同点に追いついた。
そして迎えた9回裏、サヨナラのピンチで、前日に96球を投げている山本がサプライズリリーフ。バックの好守備もあってこの修羅場を切り抜けると、延長11回に女房役・スミスのソロホームランでついに勝ち越し、その裏の1死1・3塁のピンチを、名手ベッツの華麗なるゲッツーで締めくくった。ドジャースにとっては出来すぎのハッピーエンドであり、まさに「終わりよければすべてよし」。
6句目:今季のPSMは、ドジャースファンにはハラハラドキドキの連続だった。そもそも昨季と違ってWCSからのスタートになり、より長く険しい道のりだったのだ。
【 WCS 】初戦は大谷がいきなり2ホーマーを放つなど、打線が爆発して快勝。第2戦では山本が先発勝利を挙げ、9回を佐々木が抑え、レッズを連勝で退けてまず第一関門を突破。
【 地区シリーズ(DS)】相手は今季のナ・リーグ最強と目されたフィリーズ。まず初戦で大谷が先発勝利、佐々木が初セーブを挙げる。第2戦では先発スネルが好投、リリーフ陣が1点差に詰め寄られるが、最後は佐々木が締めて2セーブ目。第3戦は先発の山本が打たれて敗れるが(今振り返ると「山本にもこんな時があったんだな」と首をひねる思いだ)、第4戦では3番手佐々木が8回からの3イニングをパーフェクトリリーフ。11回のサヨナラ勝ちにつなげた。これで第二関門も突破。
【 NLCS 】対するは、RSでは6戦全敗となぜか全く勝てなかったブリュワーズ。しかしこのシリーズでは、ドジャースが誇る「先発4本柱」がそれぞれすばらしいピッチングを見せた。まず初戦、スネルが8回1安打無失点の快投。第2戦では山本が111球1失点で見事な完投勝利。ホームに戻った第3戦ではグラスノーがしっかりと試合を作り、最後は佐々木が抑えてPSM3セーブ目を挙げる。
そして王手をかけて迎えた第4戦では大谷が、投げては6回0/3を無失点・10奪三振、打っては先制・中押し・ダメ押しの3ホーマーと鬼神の大活躍を見せ、RSでは全く勝てなかったブリュワーズを、4連勝の"sweep"で屠った。鬼門かと思われた第三関門も突破し、連覇を目指して勇躍頂上決戦に臨んだ。
【 WS 】初戦、PSMで絶好調だった先発スネルが打たれてまさかの敗戦。しかし第2戦で山本がまたも完投勝利を挙げてタイに戻す。ドジャースタジアムでの第3戦はWS史上に残る大熱戦となり、延長18回裏、千両役者・フリーマンのバックスクリーンへのサヨナラアーチで劇的勝利。19回からの登板に向けて準備していた山本がブルペンから駆け寄り、大谷・佐々木と輪を作って喜び合うシーンは実に感動的だった。
しかし翌日の第4戦は、前日4打数4安打・3ホームラン4打点・5四球(このうち4つが連続の申告敬遠)と6時間以上の試合に出ずっぱりだった疲れが残っていたのだろう、先発大谷が打ち込まれて敗戦。続く第5戦も先発スネルが立ち上がりを叩かれ、ホームでまさかの連敗となり、2勝3敗の「カド番」で敵地での戦いに向かうことになった。4勝1敗とヤンキースに快勝した昨季のWSとは打って変わる展開に、「これは今年はやられたかな…」と観念しかかった。
しかしその窮地を、山本の熱投が救った。第6戦で6回無失点、佐々木らリリーフ陣も粘り、最後は本来スターターのグラスノーが抑え、再びタイに戻して逆王手をかける。そして最終第7戦。まれに見るシーソーゲームをドジャースがホームラン攻勢で逆転し、最後は「まさかの連投」の山本が締めくくった。
言い古された言葉だが、まさに「筋書きのないドラマ」。こういうものが観れるから、スポーツ観戦はやめられない。二刀流が完全復活した大谷、エースとしてさらに熟成するであろう山本、そして先発か抑えかが注目され、フルシーズンでの活躍が期待される佐々木。来季も「ドジャース日本人三人衆」の大活躍、そしてクライマックスのWSまでの盛り上がりを期待しよう。
P. S. 大谷翔平がナショナル・リーグのMVPにまたも満票で選ばれた。4度目の受賞は、通算7度のバリー・ボンズに次ぐ単独2位。エンゼルス時代の2021年と2023年にも受賞しており、両リーグにまたがる複数回の受賞は史上初。4度の満票も史上初だ。
今季はタイトルこそ取れなかったが、キャリアハイの55ホームラン、両リーグを通じて最多の146得点、そして史上初のもう1つの「50−50」:「50ホームラン・50奪三振」を達成した。今年は「試運転」から始まった二刀流は、来季はおそらく開幕から全開になるだろう。「優勝を狙えるチームでのフルシーズン二刀流」:大谷がMLB挑戦を決めた時からの念願だったであろう状況がすべてそろう来季、いったいどんな活躍をするのか。これまでもそうだったように、観る者の想像を絶するすばらしい躍動を見せてくれるに違いない。

